七月も終わり、そろそろ八月に入ろうかと言う今日この頃、俺は古めの直刀を手に、境内のど真ん中で独り立ち尽くしていた。
コレは前に萃香が集めた龍の力を持っている剣で、今日はこの剣の力を見ようかと思っている。
この直刀には厳重な封印が施されていて、ちょっとやそっとの事では鞘から抜けないようになっている。
最初はこんな事をせず元の場所に返そうと思ったのだが、剣の持ち主が誰なのか分からないし、下手な輩に渡すわけにもいかないので、博麗神社で管理する事になった。
「……さて、始めるか」
俺は鞘に沢山張られているお札を剥がし、この剣に施されている封印を少しずつ解いていく。
封印が解除されていくに連れて、剣からは圧力に似た何かを感じ取れるようになる。
イメージとしては、巨大な蛇から此方を品定めをする様に無言の圧力を掛けられているような感じ。
封印されている時点で普通の剣じゃないと分かっていたが、流石にこの圧力は予想していなかったな。
……だが、俺はこれでも竜の端くれだ。この程度の圧力に屈したりはしない。
俺は剣の圧力に負けない為に、心の奥底に眠っている竜の力を全身に張り巡らせ、剣の圧力に対抗し始める。
その影響で俺の身体から赤いオーラが漏れるが、この程度の事は大した問題にはならない。
剣から放たれる圧力に抗いながら札を剥がしていくと、今度は鞘の隙間から雲の様なオーラが漏れ始めた。
雲の様なオーラからは害意は感じないものの、このオーラが出てから俺の頭上に何故か雲が掛かる。
その現象を不思議に思いつつ、鞘に張られている札を全て剥がし、剣を引き抜こうとしたその時―――
「リュウ、其処で何をしている」
「ッ!?」
―――突然鳥居の方から声を掛けられ、驚いた俺は咄嗟に剣を鞘に納めてしまう。
剣を納刀した瞬間、俺の頭上にあった雲は綺麗に消え去り、空は何時もと変わらない晴天が広がっていた。
「……今の雲はなんだったんだ?」
「それは此方の台詞だ。お前は一体何をしている」
「あ、上白沢さん」
先ほど俺に声を掛けてきたのは、寺子屋で教師をしている上白沢さんだった。
人里に住んでいて、ウチの神社に来る事なんて滅多にないのに今日は如何したんだろ?
「何やらおかしな剣を持っているが、それはお前の剣か?」
「まぁ、一応。変な封印が施されていたので、ちょっと解除してたところです」
「……お前独りで出来る様な事か?」
「暴れても力付くで抑えますから、なんとかなりますよ」
俺が気楽そうに笑いながら言うと、上白沢さんは呆れたように溜息を吐いた。
多分俺の発言に呆れてるんだろうけど、何時もの事なので諦めてくれるとありがたいかな。
「…まあいい。それよりもリュウ、霊夢の奴はいるか?」
「霊夢なら、今頃は部屋でバテてると思いますよ」
「暑いのは分かるが、些かダラけ過ぎではないか?」
「何時もの事です」
「……頭の痛い話だな」
霊夢の生活態度を聞いた上白沢さんは、頭痛を抑えるように頭を抱える。
俺からしたら本当に何時もの事なので、あまり気にした事はないんだけど……そんなに酷いのか?
他の巫女の生活がどんなのか知らないけど、霊夢はアレで良い様な気がするけどな。
「それは兎も角、今日は何の用ですか?」
「……今日は仕事の依頼をしにな」
「仕事ですか?」
「嗚呼。詳しくは本人に直接話すさ」
そう言うと上白沢さんは、真っ直ぐに母屋の玄関の方へと歩いていった。
一緒に着いて行っても良かったのだが、このまま行けば確実に霊夢は彼女の頭突きを喰らう破目になるな。
流石にそれはちょっと可哀相だし、此処は先回りして霊夢に上白沢さんが来たことを教えに行くか。
そう考えた俺は、上白沢さんとは別に方向に歩いていき、縁側から母屋の中に入る。
急いで靴を脱ぎ捨て、早足で霊夢の部屋に向かい、ノックもせず彼女の部屋の障子を開け放つ。
「霊夢、上白沢さんが来たぞ」
障子を開けた俺の眼に飛び込んで来たのは、衣服をはだけさせて眠っている霊夢の姿だった。
衣服がはだけているのは、今日の気温も高いからだと思うが……これはちょっと眼のやり場に困る。
それ以前に、この状況で霊夢を起こそうものなら確実に『夢想封印』を叩き込まれる。
「……………」
色々と考えた結果、俺は霊夢の部屋に入っていないし、中を見てもいない事にした。
俺だって命は惜しいし、悪いことに今は上白沢さんも来ているんだ。
もし、霊夢の柔肌を見たなんてあの人に知られたら……俺も確実に頭突きを喰らうな。
「俺は何も見ていない俺は何も見ていない俺は何も見ていない……よしッ!」
自分にそう言い聞かせ、今見た事を記憶から消し去った俺は、上白沢さんを出迎える為に玄関に向かう。
霊夢の部屋の障子を閉め、そのまま右を振り向くと……其処には極上の笑みを浮かべる上白沢さんの姿があった。
「リュウ、何か言う事はあるか?」
「えっと……ごめんなさい」
「フンッ!」
上白沢さんに両肩を掴まれた俺は、そのまま彼女から頭突きをもらってしまう。
里の人達から〝彼女の頭突きは見た目以上に痛い〟と聞いてけど、これは予想以上に痛い……。
あまりの痛みからその場で蹲っていると、上白沢さんは俺の横を通りすぎ霊夢の部屋に入る。
「何時までも寝てないでいい加減起きろ!!」
部屋の中からは、怒鳴る上白沢さんの声と硬い何かを力いっぱいぶつける音が聞こえて来る。
俺は頭の痛む箇所をさすりながら、心の中で霊夢に向かって合掌するのだった……。
………
……
…
アレから少しだけ時間が経って、俺は眼を覚ました霊夢と共に、上白沢さんから今回の依頼の内容を聞く事になった。
まだ頭突きされた箇所が痛むものの、話を聞く分には大した影響はないだろう。
俺は用意した氷入りの水を一口飲んで、二人の会話の邪魔に為らない様に黙っている事にする。
「それで今回の依頼だが……」
「また妖怪でも出たんでしょ。今度はどんな妖怪よ」
「いや、今回は雨乞いを頼みたい」
「……面倒な依頼してくるわね」
依頼の内容を聞いた霊夢は、心の底からめんどくさそうな顔をして呟く。
上白沢さんにも聞こえているはずだが、彼女は眉一つ動かさず話を続ける。
「此処最近の猛暑日の影響か、人里の作物が萎れてきていてな。このままでは今年の作物は凶作になってしまう」
「別に川の水が干上がった訳でもないでしょ? それで間に合わせられないの?」
「間に合わないからこそ、こうして依頼しに来ているんだ」
「……まぁ、そうでしょうね」
一言呟いた霊夢は、そのまま黙り込んで何かを考え始めた。
里の事を想うのであれば、此処は引き受けるしかないと思うんだが……何かあるのか?
霊夢が何を考えているのか分からないまま、無常にも時間だけが刻々と過ぎ去っていく。
彼女が考え込み始めて大体十分くらいが経過した時、漸く考えが纏まったのか、霊夢は大きな溜息を一つ吐いた。
「どの位の効果があるか分からないけど、やれるだけの事はやってみるわ」
「頼む」
「それじゃ、ちゃっちゃと準備するから少し待ってて」
「俺も何か手伝おうか?」
席を立ち上がり、そのまま何処かに行こうとする霊夢に声を掛ける。
何をするのか分からないけど、俺に手伝える事なら少しだけでも手伝ってやりたい。
そんな思いで霊夢に尋ねてみたが、彼女は顎に手を当てて難しい顔をする。
「有り難いけど……今回は手伝える事なんて無いわよ」
「そうなのか?」
「えぇ。私がやろうとしてる雨乞いは、神仏に祈りを捧げるやつだから、祭壇を整えたら直ぐにでも始めるわ」
「あ~確かにそれだと俺に出来る事はないな」
「そう言う事。分かったら今回は大人しくしてて」
「了解っと」
俺が返事をすると、霊夢は一つ頷いてから居間を出て何処かへと向かっていく。
さっきの台詞を考えれば、恐らく神社本殿にある祭壇を整えに行ったんだろう。
何時もの妖怪退治なら俺も手伝えるのだが、こういった神事だと何もする事が無いな。
俺が一つ溜息を吐くと、上白沢さんが不思議そうにこっちを見ているのに気が付いた。
「えっと…なにか?」
「いや、前々から気に為っていたのだが、お前達は一体どう言う関係なんだ?」
「如何言うって……居候と家主ですかね」
「そんな風には見えなかったがな」
「そうですか?」
「嗚呼」
上白沢さんはそう頷いてから、出しておいた氷入りの水を飲み干す。
俺は〝変な事を言う人だな〟と思いつつ、コップの中に残っていた水を飲み干した。
………
……
…
雨乞いの準備を終えた霊夢は、本殿の祭壇前で祝詞の様なものを呟き、神に祈祷をし始める。
上白沢さんも霊夢と一緒に祈祷しているが、俺は離れたところでその様子を眺めていた。
俺も二人と一緒に祈りを捧げた方が良いんだろうけど、どうも神様に祈りを捧げる気には為れない。
あの世界での経験がそうさせるのか、俺が神殺しの力を持っているからか分からないが、二人みたいに祈りを捧げれそうになかった。
霊夢は少しの間こうして祈祷していたら、近くに置いていた沢山の鈴が付いている道具と扇子を手に取り、突如その場で立ち上がる。
二つの道具を手に取った霊夢は、手に持った鈴で音楽を奏で始め、その場で踊り始めた。
霊夢は両手を大きく動かしたり、二つの道具を細かく動かしたりして、無心になって舞い続ける。
俺には踊りの素晴しさなんてのは良く分からないが、ああして音に合わせて舞う霊夢は凄く綺麗だと思った……。
……霊夢の神に捧ぐ舞いは大体五分間くらいは続いたのだろうか。
一曲踊り終えた霊夢は、また祭壇の前に座り込み、二つの道具を置いて祈る様に祝詞を呟く。
その祝詞も呟き終わると、霊夢は祭壇の方に一礼してから立ち上がり、コッチを振り向いて来た。
「はい、これで雨乞いは終了。もう楽にして良いわよ」
霊夢が気楽そうに言うと、一緒になって祈っていた上白沢さんも立ち上がる。
「済まないな霊夢。……後はちゃんと雨が降ってくれれば良いんだが」
「それは如何かしらね。一人祈ってないのがいるし」
「……そうだな」
溜息を吐くように呟いた上白沢さんは、俺の事を責める様な眼差してコッチを睨んでくる。
その視線にたじろいでしまうが、此処で逃げ出しても仕方が無い。
上白沢さんの眼力に負けないように、俺も彼女を睨み返すことにした。
「なんですか」
「いや、神社に住んでるのに、こう言う事には不真面目なのだなと思ってな」
「……………」
「ちょっとアンタ等、こんな所で喧嘩なんかしないでよね」
俺と上白沢さんの間にあった不穏な空気は、霊夢の一言で消え去る。
だけど、何となく此処に居づらくなった俺は、本殿を出て境内の真ん中に向かった。
境内から空を見上げてみると、雲一つ無い見事な晴天が広がっている。
今さっき雨乞いを終えたばかりで、直ぐに雨が降ったりはしないだろうと思っていたが、此処まで見事な晴天だと本当に雨が降るのか不安になる。
「あら、リュウさん。この様なところで如何かしたのですか?」
「衣玖さん」
俺が呆然と空を眺めていると、空の向こうから衣玖さんが境内にやって来た。
この間の一件以来、彼女は偶に神社に遊びに来る事があるから、突然やって来ても不思議じゃない。
……そう言えば、衣玖さんは『空気を読む程度の能力』で天候の気質が分かるんだったな。
彼女の能力を使えば、コレからの天気が如何なるか分かるんじゃないのか?
天気に不安を感じた俺は、思い切って衣玖さんに質問して見る事にした。
「……なぁ、衣玖さん。今日これから雨が降ったりするのか?」
「今日ですか? ……いえ、恐らく今日一日は晴れだと思います」
「急に変わったりしないのか?」
「ないと思いますよ」
「……そっか」
衣玖さんの回答を聞いた俺は、表情を変えないまま心の中で落胆と軽い後悔をする。
こんな事なら、ちゃんと祈りを捧げておけば良かったと思うのだが、やっぱり神に祈りを捧げる気には為れそうにない。
もし今回の雨乞いに失敗したら、博麗神社の信仰が更に減りそうだが……如何しても駄目みたいだ。
このまま黙って失敗するのを待っている訳にも行かないし、なんとかして雨を降らせないとな。
一番手っ取り早いのは、俺が魔法を使って雨を降らせる方法だが……あの魔法だと嵐になるか。
ランクが一番低い魔法でも、暴風雨になるから作物が吹き飛びかねない。
魔法を使うのなら雨だけを降らせるような魔法だが、そんな都合の良い魔法は俺のスキルにはない。
「さて、如何したもんかな?」
「何に悩んでいるのか存じませんが、龍神様からの伝言をお伝えしても宜しいでしょうか?」
「龍神の伝言?」
「はい。〝叢雲はお主に預ける、大切に保管しろ〟との事です」
「……なんの事言っているんだ?」
「前に鬼が集めた剣の事です。わたくしも龍神様から聞かされたときは驚きました」
「ん? あの剣ってそんなに凄い剣なのか?」
「はい。…正式名は『
「天を操る…………それだ!!」
「キャアッ?!」
衣玖さんの話を聞いた俺は、彼女を境内に残し、急いで部屋から叢雲を取りに向かう。
縁側で靴を適当に脱ぎ散らかし、自室に無造作に置いていた剣を手に取る。
急いで境内に戻ろうとすると、不機嫌そうに眉をよせた霊夢が居間から顔を出す。
「ちょっとリュウ。家の中でドタバタ走らないでよ」
「悪い、今急いでるから後で」
霊夢からの説教も軽く無視し、靴の踵を踏みながらも俺は急いで境内に戻る事にした。
後ろから霊夢の変な視線を感じるが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
この剣の力を使えるのか分からないけど、安全に雨を降らせるにはコイツの頼るしかないな。
俺は霊夢の視線を無視し、境内でこの剣を解放する事にした。
………
……
…
駆け足で境内に戻った俺は、驚いて呆然としている衣玖さんを余所目に、封印を解いておいた叢雲を鞘から抜く。
鞘から抜かれ、顕わになった天叢雲剣の刀身には一切のサビは見受けられず、表面は揺らめいているように見える。
剣の刀身からは、封印を解除したいた時に出た雲のオーラが出現し、刀身に纏わり付いた。
ソレと同時に、俺の目の前には八つの頭と尾を持つ大蛇の幻影が姿を現す。
恐らくコイツが、さっき衣玖さんの言っていた『ヤマタノオロチ』とか言う龍の姿なんだろう。
今見えている幻影は、この剣の中にある残留思念の様なものが同じ竜である俺に見えているのかもしれない。
ただオロチの幻影は言葉を発する事は無く、ただジッと八つの頭で俺の事を見詰めてくる。
その視線は威嚇とも威圧とも取れるが、俺はそんな物に屈したりせず剣に力を込めていく。
俺が刀身に力を込めると、前から纏わり付いていた雲のオーラは、俺が込めた力に押し流される。
オロチは一瞬だけ俺の力に反発しようとしたが、直ぐに格の違いを思い知ったのか、八つの頭は何も喋る事無く頭を垂れて俺を主と認めた。
頭を垂れたオロチの幻影は空気に溶けるように消えてなくなり、刀身に纏わり付いているオーラの量が増加する。
ソレを見た俺は、誰に言われる訳までも無く、自然と叢雲の刀身を指でなぞり、剣全体にそのオーラを纏わせ、その状態のまま剣を天に向かって突き上げると、晴天だった空は一転し、どす黒い曇り空に変わる。
突き上げた剣を軽く振るようにして下に下げた瞬間、どす黒い雲から雨がいきなり降り出し始めた。
俺は突然の雨に打たれながら、天叢雲剣が力を貸してくれたことに喜び、全身の力を抜くように息を吐き出した。
「リュウさん、貴方は一体何をしたのですか?」
「別に大したことはしてないよ。ただ、この剣の力で雨を呼んだだけだ」
衣玖さんにそう言いながら、俺は雨に濡れる剣を一振りして鞘に仕舞う。
もう少しだけ雨に打たれていようかと考えていると、後ろから誰かが立ち俺を傘の中に入れる。
一体誰だと思い、後ろを振り向くと……其処には俺と一緒に傘に入りながらも、不機嫌そうにしている霊夢の姿があった。
「何してんだ霊夢?」
「それはコッチの台詞よ。全く、人が雨乞いをしたってのになんでアンタが雨を降らせてるのよ」
「……衣玖さんの話だと天気は変わらないそうだからな」
「雨乞いってのはやって直ぐに振るもんじゃないの。暫くは様子を見ておかないと」
「それでも振らなかったら如何するんだ?」
「その時は……その時よ」
俺と霊夢は、口論と言うには些か静か過ぎる言い合いをし始める。
別に霊夢の力を信じてない訳じゃないけど、あのまま黙っていても天気は変わらない気がした。
だからこうして叢雲の力を使って、雨を降らせたんだが……それが気に入らなかったのかな?
でも、アレだけ綺麗な舞いを披露してくれたのに、ただの徒労に終わるなんて悲しいだろ。
だから俺は、霊夢が見せてくれた舞いに応えたくて、この剣の力を使ったんだがな……。
「大体アンタは―――」
「あの…一つ宜しいでしょうか?」
「……なによ」
「霊夢さんは今日雨乞いを行ったのですか?」
「そうよ。…もっとも、成果をコイツに掻っ攫われて失敗した形になっちゃったけどね」
「……トゲのある言い方だな」
「事実じゃないの」
衣玖さんがしてきた質問に、霊夢は不機嫌そうな声で答える。
……やっぱり勝手に雨を降らせたのが気に入らないのか。
この調子だと、今日一日はこの事で文句を言われそうだな。
「霊夢さん、別に今回の雨乞いは失敗してないと思いますよ」
「はぁ? 何処を如何見たらそうなるのよ?」
「
「……………」
衣玖さんの言い分を聞いた霊夢は、何も言えなくなり呆然と立ち尽くす。
俺としては神様扱いされる事に異を唱えたいが、霊夢の舞いに応えたかったのは本当の事だ。
何時もなら反論してるけど、今回は衣玖さんの言い分の方が正しいのかもしれない。……でもやっぱり神様扱いは止めてもらいたいもんだ。
「さて、コレ以上雨に打たれると風邪を引いてしまいますので、わたくしは神社で雨宿りさせて頂きますね」
そう言うと衣玖さんは、俺達の返事を聞く前に母屋の方へと向かっていく。
残された俺と霊夢は、雨を防いでくれる傘の中でなんとも言えない空気に為る。
傘の下で微妙な沈黙が続く中、先に口を開いたのは俺の方だった。
「霊夢」
「…なによ」
「さっきの舞い、綺麗だったぞ」
「ッ!? …………あ、ありがとう」
「…ん」
霊夢は消えるように小さな声で返事をし、俺は一つ頷いてソレに答える。
止む事無く雨が降り続く中、俺と霊夢は一つ傘の下でその様子をジッと見詰めるのだった……。
叢雲を登場させた最大の理由……それは、リュウにこの剣を持たせたかったからだったりする。
いや、折角公式で幻想入りしてるんだし、コレを使わないのは勿体無いかなぁ~っと。