東方の原作ネタは其処まで長い話にならないので、少しの間リュウと霊夢の戦闘回が続くと思ってください。
……もっとも、全てのキャラと戦うわけじゃないんですけどね。
私は紅い月が照らす中、紅を基調にした屋敷の庭で空を見上げていた。
地面には、何かの爆撃を受けた様なクレーターが無数に出来ていた。
そのクレーターの中には、蝙蝠の翼を生やした少女と銀髪のメイドも居るが、彼女達はクレーターから出ようとはせず、私と同じ様に空を見上げている。
私達の視線の先には何もいないけど、はっきりと強大な力を持った何かが居るのを感じる。
巫女として今まで何度も妖怪には会って来たけど、これ程までに強大な力を感じたのは数える程度しかない。
そのまま空を見上げていると、上空から腕に空色に光る四対の羽を持つ琥珀色の鱗の竜が降りて来た。
降りてきた竜は、攻撃する訳でも喋る訳でもなく、ただ静かに私達を見ている。
あの竜が何故居るのか分からないけど、紅い月を背景に空に浮ぶ竜の姿は凄く幻想的に見えた……。
………
……
…
「―――って言う夢を見たのよ」
「………それを聞いて、俺にどう反応すれと?」
「別に如何とでも」
リュウが突然ウチにやって来てから季節も変わり、穏やかな春から暑い夏になって半月ほどが経った頃。
私とリュウは
夏に入ったと言うのに、幻想郷の空を紅い霧に空を覆われている所為で、今年は薄暗く寒い夏と為っていた。
十中八九どこかの妖怪の仕業でしょうけど、ただ寒いだけで過ごせない訳じゃないから、あんまり気にしてもいない。
「ところで霊夢。いい加減、この霧なんとかしないか?」
「なんとかねぇ~。割とめんどくさい」
「異変を解決するのが巫女の仕事だろ? そろそろ動かないと里の人間の信用を失くすと思うんだが」
「……只でさえ、参拝客が居ないのに信用を失うのは困るわね」
リュウに痛いところを突かれてしまい、思わず私は苦々しい顔になってしまう。
先代の頃はそこそこ来ていたのに、私の代になってトンと客足が途絶えたわね。
仕事が楽だから良いんだけど、このままの状態が続いて里の信用が無くなったら……確実にご飯が食べられなくなるわね。
「だろ? 俺も手伝うから異変解決に行こう」
「それは良いけど……なんでそんなに積極的なのよ」
「…俺、寒いの苦手なんだ」
「そんな格好してるからでしょ」
リュウの格好は、ノースリーブのシャツにズボンを穿いているだけのシンプルなもの。
暑い夏場ならともかく、肌寒い今みたいな季節ならかなり辛いでしょうね。
「似た様な格好をしている霊夢に言われたくない!!」
「アンタのよりは暖かいわよ」
リュウの文句を聞き流しつつ、手元に置いてあったお茶を飲み干し、異変解決に動き出すかどうかを考えてみる。
このまま放置して外の世界の人里に妖霧が届いても困るから、そろそろ動かないと駄目かな~って思ってたんだけどね。
……それにしてもあの夢、実際の光景の様な現実味があったわね。
それにあの竜……まさかとは思うけど、変身したリュウじゃないでしょうね?
「……………」
「ん? どうかしたか霊夢」
「いや、アンタはどうやって私について来る気なのかなって」
「風の力を使って飛んでいくから大丈夫だよ」
「あっそ。…それなら、自分の身は自分で守りなさいよ」
「分かってるって」
守る心算なんて一切無いから、念のために釘を刺しえてみたけど、リュウは特に気に触った風も無く気楽そうに笑う。
他人の事いえないかもしれないけど、コイツもコイツで結構な楽天家なところがあるわね。
いきなり別の世界に飛ばされたのに慌てる様子も無く、気がついたらすっかり順応してしまっている。
……こう言うやり取りをしていると、あの夢に出て来た竜とは思えないわね。
と言うか、夢に出て来た竜がコイツだとしたら、私が見たあの夢は予知夢って事になるじゃない。
私にそんな能力は無かったはずだし、アレが予知夢の線は薄いのよね。
「……ま、いっか」
あれやこれと考えるのが面倒に為った私は、夢の事を考えるのは止めて、頭を切り替える事にした。
アレが如何言う意味を持つのか分からないけど、今は妖怪退治に専念しよう。
今回は久々の妖怪退治なんだし、他の妖怪たちが何かしようと思わないくらいに派手に暴れよっと。
………
……
…
準備を終えた私とリュウは、神社から飛び立ち『霧の湖』を目指していた。
あの湖を目指している理由は特に無い、強いて言えば只たんになんとなくね。
ただの勘でしかないけど、私の勘は良く当たるから今回の犯人も湖に居る筈……なんだけど、霧の湖に妖怪なんて住んでたかな?
あそこは年中霧に包まれてるから、暮らしていくには適してないと思うんだけど。
「ところで霊夢。妖怪退治って何をするんだ?」
「そのまんまの事をするだけよ。異変を起している輩を倒す、ただそれだけ」
「……本当にそのまんまなんだな」
「昔は完全に退治してたみたいだけど、今はスペルカードがあるし多少痛い目を見てもらうだけよ」
「スペカなら相手を殺さないと?」
「基本的にはね」
そこ等辺に居る妖怪は兎も角、人間相手だと当たり所が悪い場合、本当に死ぬ可能性もあるけど……まぁ、リュウなら気にしなくても良いわね、根本的に人じゃないし。
見た目だけはただの人間と相違ないけど、中身は全くの別物と言うよりも本物の化け物だ。
コイツを殺せるスペカなんて、この幻想郷でも数えるほどしかないでしょうし、心配してやるだけ無駄でしょうね。
……そう言えば、妖怪は精神的な生き物だけど、竜はどうなるのかしら?
コイツは私達の理とは違う生物だし、弾幕ごっこじゃ倒せないかもしれないわね。
今はルールに乗っ取って戦うだろうけど、暴走したらそんな事言ってられないか。
「……そう考えると結構厄介ね」
「なにがだ?」
「アンタの存在がよ」
「なんで俺?!」
「自分の胸に手を当てて、よく考えなさい」
「う~む……」
私の言った事を真に受けて、リュウは手を胸に当てて考え始めた。
考えるのは良いけど、考えすぎて木にブツかっても知らない―――、
ゴンッ!
「あいだッ!」
―――少し遅かったみたいね。
でも、考え始めて直ぐに木にブツかるって言うのも、ある意味凄いわね。
それだけ集中していたのか、只単にドジなだけか。
……リュウの場合、両方の可能性があるからなんとも言えないわね。
「いたた…。なんでこんな所に木があるんだ?」
「前方の注意を怠ったアンタが悪い」
「そうは言うけど、こう暗いと前が見えないだろ」
「……まぁ確かに」
昼間に出発すると悪霊が少ないから、今回は夜に出てみたんだけど……こう暗いとドッチに進んでるのかも分からなくなる。
まぁ、適当に飛び回っていれば、その内元凶の元に着けると思うから大丈夫でしょう。
リュウも考え事さえしてなければ逸れる事もないでしょうし、逸れたときは……その時考えれば良いか。
そんな風なことを考えながら空を飛んでいると―――、
「ねぇ、貴方たちは食べてもいい人間?」
―――黒い服を着た、黄色い髪に赤いリボンを巻いた少女と出くわした。
いきなりこんな事を聞いてくる辺り、目の前に居るのは間違いなく妖怪ね。
見た目は幼いし、大した力は感じないんだけど……髪に巻いているのは、もしかしてお札?
私はあんな妖怪に会った事ないから、恐らくは先代以前の巫女が封じたんでしょう。
「ねぇ、貴方たちは食べてもいい?」
「いや、俺たちを食べたら腹を壊すぞ」
「そーなのかー」
「……なに真面目に返事してるのよ」
「なんとなく?」
「やれやれ…」
「食べれないなら別にいいや。他の所に行こう」
それだけ言うと、黄色い髪の妖怪はそのまま何処かへフヨフヨと飛んでいった。
どうやら今回の件とは関係ないみたいだけど、なんか物足りないわね。
普段は出会った妖怪は片っ端から退治してるから、今回みたいに戦わずに済むのはイマイチね。
「それにしても、あんな小さい子が人を食べるなんて想像出来ないな」
「あんなんでも妖怪よ。驚いたりする事じゃないでしょ」
「でも、あの子が人を食べてるとは思えなくて」
「幻想郷じゃ珍しくないわよ」
「すごいな」
「アンタは早く慣れなさいよ」
「努力するよ」
そんな事を話しつつ、私とリュウは霧の湖に向かって暗い夜道を飛んでいった。
道中で妖精や毛玉に出会うけど、大した力もないし適当に撃ち落とす。
はぁ、こんな雑魚相手じゃストレスが溜まるから、ちゃんとした勝負になる妖怪を叩き潰したいわ。