竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第六話 湖上の氷精

幻想郷を覆う紅い霧を打ち払うべく、博麗神社を飛び出した俺と霊夢。

人の姿で空に浮ぶという慣れない動作に少し苦戦しながらも、なんとか先行する彼女の後に続いていた。

翼も無いのに良く飛べるもんだと関心しながら、空を赤い霧に覆われて薄暗い道を進んだ。

地形なんて把握してない俺は、霊夢の直感を頼りに目的地へと向かって飛んでいると―――

 

「……迷った」

 

―――何時の間にか周囲を白い霧に覆われ、気が付いた時には霊夢とはぐれていた。

足元に水が広がっているところを見ると、此処はどうやら大きな湖の様なものらしく、白い霧の発生源も恐らくはこの湖が原因だろう。

俺はちゃんと飛んでいた積もりだったんだけど、白い霧に周囲を覆われてしまった時には既に霊夢の姿は無く、自分が何処に居るのかも分からなくなってしまっていた。

……別に俺が方向音痴って訳じゃないぞ、本当だぞ。

 

「しかし、如何したもんかな?」

 

霊夢とはぐれ、何処に向かえば良いのかも分からない俺は、その場に立ち止まり如何したもんかと悩み始める。

このまま立ち往生していても仕方が無いんだが、白い霧に包まれている所為で何処に行けば良いのか分からない。

霊夢と合流出来れば一番良いんだけど、彼女が俺の事を捜してるとは思えない……となると、俺の方が霊夢を見つけないといけないのか。

 

「まぁ霊夢の事だから、既に元凶の元に辿り着いてそうだな」

 

一番有り得そうな未来を想像して呟くと、思わず苦笑いが零れてしまう。

それはそれで問題ないけど、折角ついて来たんだから異変を解決するところを見ておきたい。

……その為にはやっぱり霊夢を捜すしかないか。

 

「俺にも優れた直感が有れば良かったんだけど、無い物強請りしても仕方が無いか」

 

溜息を吐くように言い捨てた俺は、視界の利かない霧の中で霊夢を捜す為に動き始めた。

動き始めたのは良いが、周りは相変わらず霧ばかりで何が有るのかすら把握出来ない。

下には湖が広がっているから、目の前にいきなり巨木が出現したりはしないだろうけど、やっぱり地形を把握できないと不安になるな。

この霧を一気に晴らす事が出来れば色々と助かるんだけど、そんな事が簡単に出来るわけもないか。

 

「……いっその事『メタ=ストライク』で、この霧を切り裂いてみようかな?」

 

あの竜の属性は風だし、アレだけ巨大な剣なら巻き起こる剣風だけでも霧を吹き飛ばせそうだ。

事の序でに、この紅い霧の元凶も切り飛ばせたらかなり楽なんだけど……それは霊夢に怒らそうだな。

……どんな形であれ、今起こっている異変を解決できるならそれで良いと思うが、勝手な事をして怒られるって理不尽だよな。

でも、霊夢を怒らせると食事抜きとかありえるから、あんまり怒らせたくない。

 

「…うん。『メタ=ストライク』は止めて、牙流風(ガルーフ)辺りにしておこう」

 

俺は早速竜語魔法を発動させようとしたが、今の姿ではあのランクの魔法は使えない事を思い出した。

スペルカードを作っている時に分かった事だけど、どうやら今の姿でもランク2の魔法は使えたが、牙流風(ガルーフ)みたいなランク3の魔法は無理だった。

ランク3に付いては、今まで通り竜変身(トランス)しないと発動すらしないみたいだけど、今の姿でも竜語魔法を使えるのは凄い事なんだがな。

今までは、竜変身(トランス)してないと魔法が使えなかったから、この辺りは力が一つになった恩恵って事なのかな?

 

「まあなんでも良いか。さっさとこの霧を吹き飛ばそう」

 

俺は牙流風(ガルーフ)を使うのを諦め、ランクが一つ下の羅風(ラフ)を使う事にした。

右手に風の力を溜め、程よく溜まったところで腕を振り上げ―――、

 

羅風(ラフ)!」

 

―――手の中に溜めた風の力を一気に解き放った。

解き放たれた力は風を巻き起こして旋風となり、俺の周囲の霧を吹き飛ばして視界が利く様になる。

でも、霧を吹き飛ばせたのは俺の周りだけだから、この湖の全容を把握出来た訳じゃない。

それでも、風のお陰で霧がなくなったのは変わりないし、さっきよりは大分マシになったのは確かだ。

これで多少は楽に進めるようになったし、さっさと先に進もうとすると―――

 

「キャアァァァァァッ?!」

「……〝キャア〟?」

 

―――俺の耳に聞き覚えのない少女の悲鳴が届いた。

悲鳴が気に為って辺りを確認すると、緑色の髪をして虫の様な羽を持つ少女が風に吹き飛ばされていた。

……周りの状態を考えると、どうやら俺の魔法に巻き込まれて吹き飛ばされたんだろう。

でも、羽を持っていると言うことは飛べるはずだし、この程度の風なら大した事はないと思うんだが、魔法の力加減を少し間違えたのかな?

 

ドボーンッ!

「あ、湖に落ちた」

 

暢気に少女が吹き飛ばされた原因を考えていたら、風に飛ばされた彼女は下の湖に落ちてしまった。

このまま無視して先に行くのも後味悪いし、恐らく原因は俺だろうから助けに行くとしますか。

そう考えた俺は、湖に落ちてしまった少女を救出すべく自ら湖に入っていった。

 

 

 

 

 

………

……

 

「た、助かりました……」

「気にするなって」

 

湖に落ちた少女を助けた俺は、彼女を近くの岸にまで運んだ。

多少グッタリしているものの、水を大量に飲み込む前に救出できたので意識ははっきりしている。

今は岸辺で服の水を搾り出しながら、彼女から事情を聞こうとしているところだ。

 

「ところで、君はあんなところで何をしていたんだ?」

「友達を捜していたんです」

「友達?」

「はい。青を基調にしたワンピースを着て、氷の羽に髪に青いリボンをしてるんですけど……見かけませんでしたか?」

「いや、此処まで飛んでいてそんな子には会ってないな」

「そうですか……」

 

この子の友達に会っていない事を告げると、彼女はがっかりした様子で肩を落とした。

探している子がどんな子か知らないけど、彼女の様子からしてよっぽど大切な子なんだろう。

視界の悪い霧の中に入ってまで捜していたんだ、早く合流できると良いんだけど……今の調子だとちょっと危ないかな。

彼女を吹き飛ばしてしまったのは俺だし、霊夢探しは一度止めて彼女の手伝いをしてあげようかな。

 

「…もし良かったら、俺がその子を捜そうか?」

「え、良いんですか?!」

「まぁ、罪滅ぼしも兼ねて」

「はい?」

「あ、コッチの話だから気にしないで。それで、その子の名前は?」

「チルノちゃんって言います。もし会えたら『何時ものところで待ってる』と伝えて下さい。大ちゃんからの伝言と言えば伝わりますから」

「了解。それじゃ待っててね」

「はい、宜しくお願いします」

 

大ちゃんは頭を深く下げた後、地面から立ち上がって何処かへと飛んでいってしまった。

俺は飛んでいく彼女の背を見送り、行方不明の少女を探すために濃い霧の中に飛び込んだ。

何処に居るのか分からないが、この辺りで捜していたと言う事は湖の何処かに居るだろ。

それにしても氷の羽の妖精か……どうやって空を飛んでいるのか物凄く謎だな。

簡単に壊れてしまう様な気もするけど、案外その羽は只の飾りなのかもしれないな。

 

 

 

………

……

 

さっきの少女と別れ、霊夢探しからチルノちゃん探しを始めた俺だが……探索は結構難航していた。

魔法を使って霧を吹き飛ばしても、視界が良くなる範囲はそんなに広い訳じゃないし、湖自体が広くて少女一人探すのも一苦労だ。

何もしないよりはマシだけど、こうも視界が悪いとドッチに進んでいるのか分からないな。

 

「……霊夢の奴、もう元凶の元に辿り着いたかな?」

 

霊夢の身を案じながら呟くものの、辺りに争っているような物音は聞こえないでいた。

湖は来た時と変わらず静まり返っていて、魚が跳ねる音すら聞こえやしない。

こうも音が聞こえないとなると、はぐれてしまった霊夢の身が本気で心配に為ってくる。

俺は幻想郷(ここ)に来てまだ日が浅いから、霊夢の実力がイマイチ分からないけど……やっぱり心配だな。

 

「早いとこ霊夢を見つけられれば良いんだが、友達探しをすっぽかす訳にもいかないか」

「やい、そこの変なの止まれ!」

「ん? 変なのって俺の事か?」

 

突然呼び止められた俺は、何事だろうと思い声が聞こえて来た方に振り向く。

振り向いた先には、さっきの子から聞いた衣服を着て背中に氷の羽を持つ少女がいて、自分の腰に手を当てて偉そうにふんぞり返っていた。

あの妖精の話を聞く限りだと、あの子が『チルノちゃん』で間違い無さそうだが、思ったよりも態度がでかそうな子だな。

霊夢より先に見つけられたのは、運が良かった……と言って良いのかな?

 

「おい、お前! ここはあたいのなわばりよ! 直ぐにどっか他所に行け!」

「そんな事言われてもな……俺は君を捜してたんだし」

「あたいを探してた? …………はっ?! もしかして、あたいを倒して最強の座を手にしようって訳ね?!」

「……君は何を言っているんだ?」

「そんな事はさせない! 喰らえ、氷符『アイシクルフォール』!」

「いきなりかよ?!」

 

何を如何勘違いしたのか知らないが、少女は左右から氷の塊を弾幕にして放って襲い掛かってきた。

襲い掛かってきたんだけど、如何言う訳か正面には弾幕が展開されておらず、謎の空白地帯が出来ている。

一瞬罠かと警戒してしまうが、あの子の様子を見る限りだとそれは無い様な気がする。

俺は左右から来る弾を避けつつ、氷の妖精との間合いを詰め、掌に溜めた力を弾に変えて連続で叩き込んだ。

 

「んぎゃッ!?」

 

俺の弾をまともに受けた少女は変な悲鳴を挙げ、弾の勢いに押されて後ろに後退する。

今の攻撃で弾幕は収まったけど、魔理沙のと比べて随分と簡単に攻略出来てしまったな。

 

「……少しは落ち着いたか?」

「……この程度じゃあたいはやられたりしない!」

「いや、それより俺の話を―――」

「次はこれよ! 凍符『パーフェクトフリーズ』!!」

「―――頼むから聞いてくれよ!!」

 

俺の必至の叫びも空しく、少女は服からカードを取り出し次のスペカを宣言した。

今度のカードはさっきのと違い、氷の弾ではなく色取り取りの弾を周囲にばら撒いて来た。

なんの法則も無くばら撒かれた弾の数は多いが、俺に向かって一斉に飛んで来ると言う事も無い。

この程度なら無理に間合いを詰めず、離れたところから弾を放っていれば大丈夫だろう。

そんな事を考えながら間合いを取っていると、少女は余裕そうな笑みを浮かべてきた。

 

「ふふん、かかったわね」

「…?」

「今だ、凍れ!!」

 

あの子がそう言うと、さっきまでバラバラに飛んでいた弾幕が凍り付いた様に動きが一斉に止まった。

お陰で俺の周囲は動きの止まった弾だらけとなり、行動できる範囲がかなり制限されてしまう。

その隙を狙ってなのか、少女は掌を俺に向けて無数の氷の弾を放ってくる。

動いていた物を止めたのは凄いと思うが、止まっている弾なら避けるのは簡単だ。

一応あの子も別の弾幕を放ってはいるけど、距離をとっているから回避は難しくない。

 

「なんで当たらないのよ!」

「だって避けやすいし」

「むぅ~。それならこれは如何だ!」

「今度はなんだ?」

「動け!」

 

少女が大きな声でそう言うと、さっきまで止まっていた弾がいきなり不規則に動き始めた。

動き始めたけど……弾の速度はかなり遅いから、落ち着いていれば回避は楽なもんだ。

粉雪の様に舞い散る弾ってのは、遠目から見れば綺麗なんだろうけど実践向きじゃない気がする。

早いとこさっきの子の伝言を伝えたいし、霊夢を捜さないと行けないからこれで決めるか。

俺はポケットに入れていたスペカを適当に取り出し、一度カード名を確認して―――

 

「旋撃『烈風撃』!」

 

―――少女と同じ様に取り出したスペカを宣言した。

このタイミングで宣言するとは思ってなかったのか、驚いた少女は動きを止めて身構えた。

この程度の事で身構えるとは思ってなかったけど、俺からすれば動きが止まってくれたのは好都合。

俺はあの子との間合いを一気に詰め、右腕に風を纏わせて旋風を巻き起こす。

そして風を纏った掌で殴りかかったりはせず、彼女のお腹を優しくそっと触れた。

 

「ん? なんともない……って、うわッ?!」

 

少女は何もない事に疑問視するが、腕に纏った風に煽られて吹き飛ばされた。

見た目が幼い少女と言う事もあって、かなり手加減して叩き込んだけど……予想以上に風が強いな。

元々この技は打撃メインの技だから、ここまで強い風を発生させたりしない筈だ。

竜語魔法と同じで威力が高まっているとなると、今後は使ったりし無い方が良いのかもしれないな。

 

「なに今の?! 弾が飛んでこなかったわよ!?」

「だって弾幕じゃないし」

「そんなのヒキョーよ!!」

「……そんな事言われてもな」

 

少女は自分の知っているスペカとの違いに抗議してくるが、こう言うのしか手持ちに無いんだから仕方が無い。

俺が作ったスペカは、元々俺が使える技や魔法を元にしてるから、その性質上の問題で弾幕に為らない物が多いんだよな。

ちゃんとした弾幕に出来た奴もあるけど、そう言うのは羅風(ラフ)よりも威力が高い技が多いんだよ。

合体魔法のバル系ならまだ弾幕っぽいんだけど……アレはアレで微妙な感じがするな。

 

「ヒキョーな技を使ったから、今回はあたいの勝ちね」

「なんでそうなるんだよ?!」

「アンタがヒキョーな技を使ったからよ!」

「いやいや、霊夢は大丈夫だって言ってたけど?!」

「そんなの知らない!」

 

勝手な事を言い出した少女は、俺の抗議を無視して勝手に話を進めようとする。

別に勝ち負けを気にしてる訳じゃないんだけど、彼女は俺の話を聞こうともしてくれない。

あの子から預かった伝言を伝えるだけなのに、なんでこんな面倒な事になるんだよ……。

 

「分かったら早く此処から―――」

「やっと見付けたわよ、リュウ。全く、何をやってるのよ」

「あ、霊夢」

 

この状況を如何しようか悩んでいると、俺達の騒ぎを聞きつけたのか霊夢がこっちにやって来た。

正直な所、俺を置き去りにして先に進んでいると思ってたから、此処で霊夢と合流できたのは意外だ。

 

「ほら、先を急ぐんだからさっさと行くわよ」

「それは分かってるんだけど……」

「分かってるなら早くする」

「―――だぁー! あたいを無視するな!!」

「なによ。コッチは急いでるんだけど」

 

霊夢と二人で話し込んでいたら、無視されていた少女が突然怒り出した。

目立ちたがり屋……って訳でもないだろうけど、無視され続けるのは嫌いなんだろうな。

 

「その変なのを最初に見つけたのはあたいよ! 後から来てしゃしゃり出ないでよね!」

「なに訳の分からない事を言ってるのよ」

「分からないってなによ!」

 

氷使いの少女は結構な怖いもの知らずなのか、霊夢相手に一歩も譲らずにイチャモンをつけて始める。

霊夢は霊夢で、手にお札を掴んで何時でも投げられる様にしてるし……一触即発な空気に為りつつあった。

流石にこんな事で時間を食っている訳にもいかないし、先に行くためにもあの妖精をなんとかしてみるか。

 

「あ~ちょっと良いかな?」

「…なによ」

「大ちゃんからの伝言で『何時もの所で待ってる』だって」

「それ本当?」

「うん。大ちゃんは君の事を捜してたみたいだから、早く行ってあげたら?」

「分かった、そうする」

 

落ち着いて話せば分かる子なのか、氷の妖精は急いで飛んでいきこの場を後にした。

これでいきなり襲い掛からなければ楽なんだけどな~。あの性格じゃ無理そうかな?

 

「…なんなのアレ?」

「気にしたら負けなんじゃないか?」

「まあ良いわ。さっさと行くわよ、リュウ」

「了解」

 

色々と遭ったけど、なんとか霊夢と合流出来た俺は、今後こそ元凶の元へと向かうのだった。

……それにしても、烈風撃なんかの体術は卑怯なのかな?

もしそうなると、通常時に使えるスペカがかなり制限されるんだよな。

一番マシなのは『散烈拳』くらいだが、手元に剣が有れば『せんぎり』も使えたんだけど…まぁ、仕方が無いか。

 




初めの方の話はやっぱり荒さが目立つな。
自分の所為とは言え、修正するのも一手間だ。
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