竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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この小説は偶に後書きにオマケが入ります。


第七話 華人小娘

 

霧の湖で迷子になった俺は、なんとか霊夢と合流することが出来た。

その途中で出会った氷の妖精に、行き成りヒキョー者呼ばわりされたけど……風を纏って殴るのは卑怯なのか? ……この騒動が終わったら、もう一度スペカの構成を考え直してみよう。

そんな事を考えながら深い霧を霊夢と二人で飛んでいると、霧の向こうに紅を色調にした大きな屋敷が見えてきた。

湖から立ち込める霧の所為でまだ輪郭しか見えないが、その建物が紅い事だけははっきりと分かる。

この霧の中でもはっきりと色が分かるなんて、あの屋敷を立てた人物はどれだけ紅が好きだったんだろ。

 

「アレが、今回の異変の犯人が居る屋敷ね」

「その根拠は?」

「『紅』繋がり」

「……無理矢理すぎると思うけど?」

「うっさいわね。私の直感を信じなさい」

「信じてない訳じゃないけど、根拠が余りにもずさんだから」

「根拠なんて如何でも良いのよ。間違ってたら別の犯人を捜すだけだし」

「……異変解決って、そんな感じで良いんだ」

「そうよ。分かったら、さっさと突撃するわよ」

 

そう言うと霊夢は、あの紅い屋敷目指して先へと進んでいった。

俺も彼女を見失わない様に慌てて後を追い掛けた。

 

 

 

 

………

……

 

屋敷に近付くに連れて、妖精や毛玉みたいなのからの攻撃が激しくなってくる。

俺は放たれる弾幕の厚さに驚いているが、前を行く霊夢には大した事ではないみたいだ。

現に霊夢は、妖精達の弾幕の隙間を掻い潜って、逆に撃ち落としている。

俺は避けるで精一杯で、彼女みたいに上手く撃ち落とす事が出来ないでいる。

 

言い訳みたいになるが、元々俺はこう言った撃ち合いの経験が殆ど無い。

あの世界では剣を使って戦っていたし、竜変身(トランス)した後は肘打ちやブレス攻撃をしていた。

魔法も確かに存在しているけど、それ等は仲間達に任せてたな。

それに俺の知っている魔法も、魔理沙の様スペカみたいなのと違うから、回避の参考には為らないんだよな。

 

「ちょっとリュウ。さっきから後ろでフラフラ飛んでるけど、そんな調子じゃ落とされるわよ」

「解ってるけど、まだ色々と慣れなくて」

「だったら今の内に慣れておきなさい。幻想郷(ここ)で暮らす心算なら尚更ね」

「なんとか頑張ってみる」

「今すぐ慣れなさいよ」

「それは無理だって」

 

霊夢は無茶振りしてくるけど、流石にこの短いやり取りの間に慣れるのは無理だって。

幾ら俺が竜だからって、出来ない事も結構あるんだぞ。

空を飛ぶのはまだしも、弾幕の回避は身体が付いてこれないから結構キツイし。

眼で弾幕の軌道は把握出来てるんだけど、身体の方が間に合わないんだよな。

……この辺りは経験を重ねて、慣らしていかないと駄目か。

 

「其処の二人、止まれ!」

「「ん?」」

 

俺達を呼び止めたのは、何処かの民族風の衣装を着て、『龍』と言う文字が彫られた星型のバッチの付いた帽子を被った、紅い長髪の少女だった。

見た目だけを言うと少女なんだけど……こんな物騒な所に人間の少女が居るわけないよな。

そうなると、彼女も妖怪って事に為るんだけど……見た目が普通の人間と大差ない。

この世界の妖怪って本当に色々と変わってるよな、主に見た目的な意味で。

 

「貴方達、侵入者ね。大人しく立ち去るなら良し。立ち去らないと言うのなら……此処で排除します!」

「はいそうですかって、こっちもやられる心算はないわよ」

 

霊夢がそう言うと、二人は弾幕を放ち戦い始めた。

俺は邪魔に為らない様に、少し離れたところで様子を見る事にした。

紅い髪の少女は、青い弾をばら撒く様に飛ばしたり、移動してから自分の周囲に赤い弾を飛ばしてくる。

霊夢は弾幕の隙間を掻い潜り、大量の札や針を飛ばし確実に命中させている。

彼女の弾幕は紅い髪の少女の様に周囲に広がらないが、射線上に入ってしまえば回避が難しい。

そんな弾幕を喰らい続けた少女は―――、

 

「こうなったら……華符『芳華絢爛』!」

 

―――1枚目のスペカを取り出し宣言した。

宣言した少女は動きを止め、赤と黄色の弾幕を全方位に放ってきた。

波状攻撃の様に放たれるソレは、少し離れたところに居る俺にも襲い掛かって来る。

弾幕の軌道を読んでなんとか避けているけれど、放たれる感覚が短いから避けるのがかなり辛い。

こう言うのを見ると、妖精が放ってきた弾幕が可愛く見えるから困る。

 

一方霊夢は、最低限の動きで弾幕を掻い潜り回避していた。

弾の方も、相手が動かなくなったからさっきよりもスムーズに当てている。

幾らごっこ遊びとは言え、アレだけの弾幕を眉一つ動かさずに回避出来るのは凄い事だと思う。

そのまま攻撃を続けていると、突然少女の弾幕が止んだ。

 

「くそ、こうなったら背水の陣だ!」

 

紅い髪の少女はそう言い捨てると、わき目も繰らず一目散に後退していった。

……それにしても『はいすいの陣』か、懐かしいな。

頑張って覚えたのに、使う機会も無ければ、特殊スキルだった所為で結局使いこなせなかったけ。

 

「あんた一人で『陣』なのか」

「いや、一人でも『はいすいの陣』は使えるぞ」

「あれ、そうだったけ?」

「うん。でも、アレを使うと防御力がゼロになるから使い所が難しくて」

「……それはリュウのスキルの話でしょ」

「違うのか? 俺はてっきり、彼女も同じスキルが使えるもんだと」

「そんな訳無いでしょ」

 

霊夢にツッコまれつつ、俺達はさっきの少女の後を追いかける事にした。

彼女が逃げた先に、あの紅い屋敷もあるし、倒すついでに屋敷に乗り込む心算の様だ。

……いや、乗り込むついでにあの子を倒すのか? まぁ、どっちでも良いか。

 

 

 

 

 

………

……

 

「追って来るなよ~!」

「別にアンタを追い掛けてた訳じゃないわ。私達は、あの紅い屋敷に用があるの」

「あの屋敷には何も無いって」

「……何もねぇ」

 

少女の背後に聳え立つ紅い屋敷。

ただの紅い壁の屋敷である筈なのに、周りの雰囲気と相まって物凄い存在感がある。

……それに、この屋敷には何かが潜んでいるみたいだ。

俺は霊夢みたいに勘が良い訳じゃないけど、長い事戦い続けてたから何となく解る様になった。

これだけの雰囲気を醸し出しておいて、何も無いって言うのは流石に信じられないな。

 

「それはコッチで判断するわ。だから其処を退きなさい」

「そんな事をしたら、私がお嬢様に怒られるじゃない」

「知った事じゃないわね。如何しても退かないって言うなら、無理矢理にでも退かせるだけよ」

「……さっきと立場が逆になっているのは気のせいだろうか?」

「男が細かい事を気にすんじゃないの」

「お仕置き回避の為にも、此処は絶対死守してみせる!!」

 

そう言うと紅い髪の少女は、霊夢に向かって波状型の弾幕を放って来る。

波状型と言っても、さっきのスペカよりも弾幕は薄く、俺でも簡単に回避出来る様な品物だ。

この程度の弾幕、霊夢も当然の様にかわし、彼女に大量の針を放って行く。

今のままでは不味いと判断したのか、彼女はポケットから一枚のカードを取り出した。

 

「虹符『彩虹の風鈴』!」

 

彼女が宣言したスペカは、様々な色の弾が渦を描きながら全方位に放つと言うものだ。

放たれる弾幕は、見る角度によっては虹にも見えるが……個人的にはさっきの方が脅威だったかな?

密度で言えば、この弾幕よりもさっきの方が厚かった様に思えるし、隙間もこっちの方が多い。

そんな事を考えていると、霊夢が彼女のスペカを破っていた。

 

「また破られた!?」

「この位余裕よ。さあ、次のカードを宣言しなさい。次も破ってあげるから」

「ぐぬぬ……」

「門番さ~ん!」

「ッ?! み、皆さん。来てくれたんですか!?」

 

屋敷の方から声が聞こえて来たと思ったら、赤いメイド服を着た六人の妖精がやって来た。

なんでメイド服を着ているのか物凄く疑問だけど、これは援軍登場って事だよな。

妖精くらいなら霊夢だけでも大丈夫だろうけど、俺も加勢した方が良いのか?

 

「霊夢。俺も手伝おうか?」

「別に良いわ。アンタは其処で見てなさい」

「いや、でも……」

「妖精が増えた程度でやられたりしないわよ」

「……分かった」

 

霊夢は必要ないって言うけど、やっぱり少し心配だな。

確かに加勢に来たのは妖精だけど、現状としては七対一な訳だし……。

……霊夢には悪いけど、もしもの時は加勢に入ろう。

 

「「「「「「キャアーッ?!」」」」」」

「み、皆さーん!?」

「どれだけ群れても、所詮は妖精よね」

「……うわぁ~」

 

今の一瞬に何が起こったかと言うと、霊夢が六人のメイド妖精を撃ち落とした。

……いや、確かに妖精だけどさ。倒すの早過ぎじゃないかな。

妖精も妖精で、もう少し頑張れと言いたい。幾らなんでもあっさりやられ過ぎ。

 

「よ、よくも皆さんを……」

「いきなり入って来る方が悪い」

「くっ。……ならこれは如何だ! 彩符『極彩颱風』!!」

 

今度彼女が宣言してきたスペカは、様々な色の弾を全方位にばら撒くと言うものだった。

なんの法則性も無くばら撒かれる弾は、弾幕に大きな隙間を作るが弾の軌道が読みにくく厄介だな。

……まぁ、そう感じているのは俺だけで、霊夢には何の問題も無いようだ。

現に今も霊夢は余裕で回避して、自分の弾を彼女に当てているし。

霊夢の場合、弾の軌道が読めていると言うか、何が来ても動じないって感じだな。

只単に興味がないだけって気もするけど、此処まで冷静に動けるのも凄いな。

 

「これで終わり!」

「うわぁー!」

 

気がつくと、霊夢は彼女のスペカを攻略し終わっていた。

どうやらさっきのが最後だったらしく、彼女は地面に大の字に為って倒れた。

結局霊夢は一枚もスペカを使わずに、門番と呼ばれた少女のスペカを攻略していた。

俺だったら何枚か使ってそうだし、この辺りは俺と霊夢の実力の差かな。

 

「さて、通させてもらうわね」

「済みません、お嬢様~」

「……終わってみれば圧倒的だったな」

「当然でしょ。寧ろリュウが心配し過ぎなのよ」

「そりゃ、霊夢は大切な人だし。心配するのは当然だろ」

「……莫迦な事言ってないで、さっさと行くわよ」

「えっ? 俺、今変な事言った?」

「言った言った。だから早く行くわよ」

 

霊夢はそれだけ言うと、ドンドン先へと進んで行った。

それにしても、俺そんなに変な事を言ったかな? 居候とは言え一緒に暮らしているんだし、霊夢が怪我をしないか心配するのは当然だと思うんだけど。

……もしかして、言い方が変だったのか? でもこの場合は、なんて言えば良いんだ?

 

「う~む……」

「ちょっとリュウ! 先を急ぐんだから、早く来なさいよ!」

「あ、ごめん!」

 

……とりあえず、ここら辺の事も異変が片付いた後で考えれば良いか。

今は紅い霧をなんとかする方が先だしね。

 

 




オマケ

全く。リュウの奴、いきなり何を言い出すのよ。
私の事を心配しだしたと思ったら、突然『大切な人』だなんて訳が分からないわ。
第一、私の心配をするよりも先に自分の心配をしなさいって。
あの門番の弾幕に何度か落とされかけてた癖に、如何して私の心配をする余裕があるのよ。

まぁ、アイツは人じゃなくて竜な訳だし。多少落とされた程度なら大丈夫な気がするわ。そこらに居る妖怪だって、只のごっこ遊びじゃ死なないんだし。

……それにしても、あんな事言われたの初めてだったな。
リュウの事だから、何も考えないで適当に言っただけって可能性も強いけど。
……でもまぁ、悪い気はしないかな。

「待ってくれよ霊夢」
「遅いアンタが悪い」
「酷いな」

コイツの真意は如何であれ、今は妖怪退治が先決。
こんな異変さっさと片付けて、布団に入って早く寝たいわ。

                      終わり
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