竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第七十二話 召喚事故

 

???Side

 

紅の屋敷の地下にある大図書館。

其処で深夜遅くにも拘らず三人の魔法使いが何かの儀式を行っていた。

 

「……それじゃ始めるけど、準備は良い?」

「おう。何時でも良いぜ」

「なんでこんな事に為ったのかしらね……」

「んな細かい事気にするなって」

「はぁ……」

 

白黒の魔法使いは、励ますように隣に居る人形遣いの肩を叩くが、彼女から返って来たのは呆れた様な溜息だけだった。

紫の魔女は、そんな二人の様子に特に関心も無く、魔力を自身の目の前にある魔法陣に集めて起動させる。

魔力を注がれた魔法陣は、起動に必要な魔力を得て輝きだし、その中心点には黒い孔の様なものが出来始めた。

その光景を人形遣いは興味無さそうに見詰め、逆に白黒は子供の様なキラキラとした眼で見詰めている。

 

何故彼女達が子の様な儀式をしているのかと言うと、事の発端は今から二週間ほど前にまで遡る。

自身の研究の為に図書館に訪れた人形遣いが、ある棚で少々変わった魔導書を見つけた。

人形遣いが見つけた魔導書には、色々な生物を召喚するための魔法陣が幾つも描かれていた。

様々な本が存在する図書館なのだから、召喚魔法だけを集めた魔導書が在ってもなんら不思議じゃない。

人形遣いは中身を軽く確認して自分には必要の無い物だと判断し、仕舞ってあった棚に戻そうとしたところを、白黒の魔法使いに見付かってしまった。

 

図書館から色んな本を持ち出していく事で有名な白黒は、直ぐに人形遣いが持っていた魔導書にも興味を示す。

その書を人形遣いから奪い取った白黒は、書に描かれている魔法陣を見て何を考えたのか〝試してみるか〟と言い出した。

人形遣いとしては、召喚魔法に何の興味もそそられないのだが、白黒の勢いに押されて半ば強引に手伝わされる破目に。

二人の騒ぎを聞きつけた紫の魔女は、新しい魔法の実験体が欲しかったと言う事も在り、本を持ち出さない代わりに此処で実験しても良いと言って来た。

魔女の提案に乗った白黒は、二人の協力を経て、早速準備をはじめ……今日に至るのだった。

 

「さって、一体なにが召喚されるんだろうな? 今から楽しみだぜ」

「楽しみって……なんで、言い出しっぺの貴女が知らないのよ」

「実はあの本、ちゃんと解読できて無くてな。だからそこら辺の事は、パチュリーに任せてた」

「……パチュリー、一体何を召喚する気なの」

「知らないわよ。私はてっきりアリスが管理してると思っていたし」

「特に興味も無いのに、なんでそんな事しないといけないのよ」

「……んじゃこれ、誰が管理してるんだ?」

「「……………」」

 

確認するかのように白黒は二人に尋ねるが、二人からの返事はなく沈黙が返ってきた。

管理者不在と言う事体に気が付いた三人の魔法使いは、慌てて起動している魔法陣を止めようとする。

しかし、既に魔力を得て起動している魔法陣は、周囲から更に魔力を貪るように得て黒い孔をより拡大させていく。

このままでは不味いと判断した白黒は、服のポケットから八角形の小さな炉を取り出し、自慢の砲撃を孔に向けて放とうとする。

炉に魔力の火が燈り、威力を更に高めようと魔力集束させていくと、慌てた様子で二人の魔法使いが白黒の動きを止めた。

 

「な、何するんだよ二人とも!?」

「それはコッチの台詞よ! 貴女は今何をしようとしてたの!」

「なにって……『マスタースパーク』で孔を撃ち抜こうと」

「そんな事をしたら、孔が更に魔力を得て、私達の手にも追えない様な大悪魔を召喚するかもしれないじゃないの!!」

「…仮に撃ち抜けたとしても、孔に溜まっていた魔力が行き場を失って、私たち諸共、紅魔館を消し飛ばすわ」

「んじゃ如何しろってんだよ!?」

 

切迫した白黒の声が図書館に響くが……時既に遅く、孔の中からは何かが此方の様子を窺うように眼を覗かせていた。

召喚には成功したようだが、一体何を喚び出したのか分からず、三人は生唾を飲み込んだ。

喚び出してしまったソレは、自身が通って来た孔を体内に飲み込みながら姿を現した。

なんとも形容し難い姿のソレを見た三人は、どんな反応をすれば良いのか分からず、ただただ呆然とするしかなかった。

召喚されたソレは何を思ったのか、自分を召喚してきた三人に激怒し、行き成り襲い掛かってくるのだった。

 

「「「き、キャアァァァァァァァァァァッ!!」」」

 

 

???Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リュウSide

 

何時もの時間に眼を覚ました俺だが、朝早くから裏庭を見ながら頭を抱えている霊夢を見かけた。

朝から何を悩んでいるのかと思い、彼女の隣りに立ってその視線の先に在る物を捜してみる。

この時期の裏庭なら、普段は雪が積もって白銀の世界が広がっているのだが……今日は様子が違った。

 

「……なんだこりゃ?」

「そんなの私が聞きたいわよ……」

 

霊夢が頭を抱えていた原因を見た俺は、どんな反応をすれば良いのか分からず、ただ呆然と突っ立っているしか出来なかった。

何故なら俺達の目の前には、目玉が浮いたスライムの様な魔物の『グミ』に占拠されているからだ。

一体や二体なら迷い込んだで済むけど、裏庭には少なく見積もっても二十体以上はいるだろうな。

更に詳しく気配を調べてみると、境内の方からも感じられるから……神社の敷地だけでも五十体以上はいそうだ。……考えただけでも、物凄く頭の痛くなる話だな。

 

「なんだって、神社にグミがいるんだ?」

「リュウ、コイツ等の事知ってるの?」

「前に居た世界で何度も見かけたからな。……中には俺の知らないタイプもいるけど」

「こんな気持ち悪いのが大量にいる世界ってどんなのよ……」

「流石にこんだけの数が集ってるのは稀だぞ」

 

あの世界で探索した『皇城』の一角にも、何故かグミが大量に出現するエリアはあったけど、流石に此処まで酷くは無かった気がする。

種類も六つくらいしか居なかったし、一応他の魔物も出て来たから特に気にしなかったな。

……ソレに比べて、今の神社は見える範囲だけでも八種類はいるみたいだ。

コイツ等は見た目や色の違いで種類の判別が出来るけど、これだけ数がいると大して意味がない気もするな。

 

「とりあえず霊夢」

「なによ」

「腹が減ったから飯にしないか? コイツ等を如何するかはその時に考えよう」

「……それもそうね。それじゃ、直ぐに作るから少し待ってて」

「分かった」

 

そう言って俺が頷くと、霊夢は轡を返して台所へと向かった。

霊夢を見送った後、グミが家の中に入ってこないように縁側に雨戸を立て、顔を洗いに洗面所へと向かう。

朝から酷い光景を見た様な気もするが、如何するかは後で考えるとして今は余り気にしないようにするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

朝食を食べ終わった俺と霊夢は、それぞれの部屋で討伐用の装備を固めていた。

食事中に話し合った結果、グミ達は即時殲滅する事が決定し、食べ終わったら直ぐに決行する事に為った。

只でさえ、里の人間から『妖怪神社』なんて言われているのに、コイツ等まで野放しにしていたらどんな噂が立つのか分かったもんじゃない。

 

そういった理由から、グミが何処から湧いたのかを考える前に殲滅することにした。

敷地内に五十体は居るとしても、所詮は雑魚モンスター。

俺と霊夢の手に掛かれば、この程度の数は問題にすら為らず、あっという間に殲滅出来る。

グミの中には異様に物理耐性の高い個体もいたが、そう言う奴は霊夢のスペカに任せてしまえば問題ない。

逆に魔法耐性の高い個体ってのはいなかったけど、グミ自体は其処まで強い魔物ってわけでも無いから、物理耐性さえなければ簡単に倒す事が出来る。

……もっとも、この場にグミオウが現われたなら、迷わず竜変身(トランス)を使うけどな。

本当にアイツだけは別格なんだよな。……今まで何度死に目に遭ったことか。

 

神社に居るグミを殲滅した俺達は、その足で人里など他の地域の様子を見に行く事にした。

今回の一件が神社だけの事なら、張ってある結界を強化すれば良いだけの事だが、他の地域でも同様にグミが出現しているのなら異変と処理するしかない。

高がグミ程度で異変だなんだって騒ぎたくないけど、ほっておくと神社の信用に関わってくるから面倒でもやらないと。

 

そんな事を考えながら人里に向かうと、何時かの異変の時みたいに里は綺麗に消え去っていた。

代わりに敷地には大量のグミがうろついていて、その上空には上白沢さんと妹紅が頭を抱えて悩んでいた。

俺達は上白沢さん達に近寄って、里の状況なんかを聞くために声を掛ける。

 

「上白沢さん」

「ん? …あぁ、リュウと霊夢か。お前達が動いていると言う事は、これはやはり異変なのか」

「それを調べる為に見て回ろうとしてた所よ。里の方は……聞くまでも無いわね」

「嗚呼。朝起きてみたら、奴等が我が物顔でうろついていてな。妹紅と協力して追い払った後、里を隠したわけだ」

「それじゃ今は何を?」

「私と慧音は、下にいる連中を如何するべきかって考えていたところ」

「アイツ等なら殲滅しても大丈夫よ」

「簡単に言うな。下にはかなりの数が集っているんだぞ」

「此処に来る前に、神社でも似たような数を殲滅してきたわよ」

「まぁ、極端な奴が出ない限りは雑魚だからな~」

「「極端な奴?」」

「そう」

 

グミに付いて良く知らない二人に説明しようとした時、竹林の方から輝夜が慌てて飛び出して来るのが見えた。

普段から永遠亭に篭っていて、あまり外に出ないアイツが一人なんて珍しいと思っていると、輝夜の後を追いかけるように巨大なグミが狭い竹林の隙間を縫って姿をを現した。

通常の数十倍はありそうなそれは、巨体をバネの様に使って跳びながら、輝夜の後追いかけている。

あまりにも突然の出来事に呆然としていると、輝夜は俺達の方へと全速力で飛んで来たかと思えば、いきなり妹紅の腕を掴みかかった。

 

「手を離せ輝夜!」

「良いから…黙って……行って来なさい!!」

「う、うわぁぁぁぁぁぁッ?!?!」

 

妹紅の腕を掴んだ輝夜は、背負い投げの要領で彼女を巨大グミへと投げつけた。

あまりにも突然の出来事に碌な反応も出来ず、妹紅は投げられた勢いのままグミと衝突し……そのままグミの中に飲み込まれてしまった。

 

「あ~もう! 役に立たないわね!」

「そう言う問題か貴様! いきなり何をしてるんだ!!」

「妹紅を身代わりにしようとしただけよ」

「しれっと言うな!!」

 

上白沢さんは妹紅を投げた輝夜に食って掛かるが……それよりも先に妹紅を助けるべきだろ。

グミに飲み込まれる奴なんて初めて見たけど、あの中に酸素があるなんて到底思えない。

それ以前に、アイツ等に鼻や口なんてないから、呼吸をするのかも怪しいしな。

見た目が完全にスライムに為っているのも居るんだし、空気の無い場所でも生きて行けるんじゃないのか?

 

「あ、妹紅が苦しみ始めた」

「蓬莱人でも息出来ないのは辛いのよ」

「暢気に言ってないで、さっさと助けにいかないか!」

「それなら上白沢さんが助けに行けば良いんじゃないのか?」

「……流石にあの中に突入するのはちょっとな」

「「あ~確かに」」

「いや、気持ちは分からなくも無いけど……」

 

暢気に言う三人に呆れて、俺は思わず呆れてしまい深い溜息を吐いた。

謎の生物の体内に侵入するのに抵抗があるのは分かるけど、知り合いが苦しんでるんだから助けてやれよ。

心の中でそう思いつつ、俺は愛刀と叢雲を鞘から抜き、その刀身に軽く力を纏わせる。

 

「それじゃ妹紅を助けてくる」

「別に良いわよリュウ。どうせ復活するんだし」

「俺がそうしたいんだよ」

 

輝夜の言を突っ撥ねた俺は、双剣を構えて巨大グミへと突撃して行った。

速度を上げてグミの元へと一直線に向かっていき、邪魔な奴の身体を切り刻みながら、妹紅まで突き進んで行く。

二つの剣を振るい、グミの弾力のある身体を斬り出し、破片を放り投げるだけの簡単な作業。

斬られて痛みを感じているのか、異物が入るのが嫌なのか、突き進んでいくたびに激しく抵抗するが、斬り裂いていくには何ら問題はない。

抉るように奴の身体の中を突き進み、真ん中辺りにいた妹紅を救出した俺は、斬り出した道を戻ないで、そのまま奴の身体の中を突き抜けた。

 

外に脱出した俺は、直ぐに反転し、左手に持っていた叢雲を仕舞い、妹紅を脇に抱える。

そして愛刀に力を注ぎ込み、巨大な光の刃を作り上げて……そのままグミへと振り下ろした。

刀身が接触したときに、グミ独特の手応えが感じられたが、斬り裂く分には何ら問題は無い。

剣を握る手に力を込めて、一気に振り下ろして奴の身体を両断した。

 

「……でかくなってもグミはグミか」

 

一言そう呟いた俺は、愛刀に纏わせていた光の刃を霧散させ、邪魔に為らない様に鞘に仕舞う。

そうしていると、妹紅が詰まっていた何かを吐き出すように咳き込み、直ぐに意識を取り戻した。

普通なら人工呼吸でもしないと危ない状況だろうけど、この回復の早さは蓬莱人だからこそなんだろうな。

 

「お前が助けてくれたのか…ありがとう」

「気にするな。…それよりも飛べるか?」

「嗚呼、問題ない」

 

そう言って俺から離れた妹紅は、多少よろけながらも炎の翼を出し、空へと羽ばたいていく。

炎の翼をはためかせた彼女が、真っ先に向かったのは……予想通り輝夜の所だった。

投げ飛ばされた事に腹が立っているのか、妹紅は拳に炎を纏わせて殴りかかった。

 

「輝夜ーッ!!」

「あぶなッ!? ちょっといきなり何をするのよ!!」

「それはコッチの台詞だ! 言い訳とか聞く気は無いから殴らせろ!!」

「嫌に決まってるでしょバーカ!」

「……その澄ました顔を歪ませてやる」

「やれるものならやってみなさいな」

 

ちょっとした言い合いを済ませた二人は、そのまま空の上で殺し合いを始めようとする。

そんな二人を見て、俺は呆れ果ててしまい、上白沢さんは〝またか〟みたいな深い溜息を吐いた。

初めて妹紅と会った時も、俺が輝夜の知り合いだって知ったら本気に為ったからな。

あの二人の因縁は相当古い上に、かなり仲が悪いんだろう。

そんな事を考えて呆れていたら、霊夢が殺し合いを始めようとしている輝夜に話しかけた。

 

「ちょっと輝夜。一つ聞きたい事があるんだけど」

「何かしら。わたしは今から竹林ホームレスを滅ぼすから手短にね」

「アンタ、竹林から飛び出してくるとき大分慌ててたけど、一体如何したのよ」

「如何もなにも、家に居ても暇だから竹林を散歩してたら、いきなりさっきのに襲われて逃げてたのよ」

「あんなのから逃げ出すなんて、お前も大した事無いな」

「十数匹から同時に襲われれば誰だって逃げるに決まってるでしょ」

「……十数匹?」

 

聞こえてきた輝夜の言葉に嫌な予感がした俺は、そっと竹林の方を見てみると……さっきのと同じサイズのグミが、狭い隙間を縫って何体も姿を現していた。

どうやらアイツ等は、自分の目玉が通り抜けれるのなら、どんな隙間の中にも入れるみたいだ。

……でも、一斉に隙間から出てこられると流石に気色悪いな……。

 

「霊夢」

「なに」

「如何するアレ」

「めんどくさい」

「だよな」

「「………うん」」

 

眼を見合わせて頷いた俺と霊夢は、三人を置いてこの場を後にした。

あの程度のグミなら、特に問題も無く勝つことは出来るけど……イチイチ相手にしてられない。

だからこの場はあの三人に任せて、俺と霊夢はこの事件の元凶を叩きに行くとしよう。

 

「あ、お前達! いった何処に行く気だ!?」

「何処って異変解決に決まってるでしょ!」

「申し訳ないですけど、後は宜しくお願いします!」

「ふざけるな! せめてリュウは此処に残れ!!」

「そんなの私が認める訳無いでしょ。…それじゃ頑張ってね」

「頑張れるかーッ!!!!」

 

背中で上白沢さんの悲鳴にも似た絶叫を聞きつつ、俺達は急いで今回の元凶を捜しに行った。

このままほっといたら、幻想郷中がグミだらけになるからな、急いで探さないと。

そう思いながら空を飛んでいると、後方から激しい戦闘音が聞こえてきた。

恐らくは輝夜と妹紅が本当に殺し合いを始めたんだろうけど、こんな状況なんだから今やらなくても良いだろうにと呆れてしまう。

……それにしても、魔理沙の奴は一体何処に行ったんだ? この手の騒ぎなら喜んで首を突っ込んで来そうなのにな。

 

リュウSide out

 




ブレスオブファイアを代表する雑魚キャラのグミですが、実際はコイツ等が登場したのはⅡからで、初代で登場していたのはただのスライムでした。
しかも見た目も全然違って、アメーバ状と言うか…本当にスライムなんだなって感じでした。
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