竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回は全編霊夢視点でお送りします。


第七十五話 闇鍋パーティー

 

スライム……もとい、グミ大量出現から二週間が経った。

里に現われたグミもその日のうちに全て掃討し終え、幻想郷は何時もと変わらない平和な毎日に戻っていた。

季節も冬から春へと移ろうとしていて、日中は暖かな日差しが差し込むようになった。

そんな日差しの下でお茶を飲んでいると、段々と眠くなってくるから困りものね。

別に昼寝をしても良いのだけど、ウチの神社には何時も通り騒がしい奴が遊びに来るから、寝てても起こされたりするのよ。

かく言う今日だって、縁側でリュウと二人お茶を飲んでいたら、いきなりたっちゃんがやって来たしね。

 

「―――と言う訳でお前達! 今宵は闇鍋をするぞ!!」

「……なんでよ」

「てか、やみなべってなんだ?」

 

リュウのボケは置いておくとして、本当に突然何を言い出してくるのやら。

大体、なんで〝闇鍋〟なのよ、普通の鍋でもおいしく食べられるじゃない。

……只単に暇だからって理由だったら、呆れてものも言わないわね。

 

「なんじゃリュウ。お主は闇鍋を知らんのか」

「あぁ、知らん。鍋の一種か何かか?」

「その通り―――」

「あんなの只のゲテモノ料理よ」

「ゲテモノ?」

「―――おい、霊夢」

「事実じゃないの」

 

私の言った事が気に入らないのか、たっちゃんが睨んでくるけど……とりあえず気にしないでおく。

そんな事を気にしていたら身が持たないし、割といつもの事だしね。

 

「ただの鍋料理なのに、どうしてゲテモノ料理になるんだ?」

「アレは好きな食材を一人一つ持ち寄って、鍋の中に入れる料理なんだけど……入れるときに灯りを消すから、誰が何を入れたのかわからないのよ。下手なものを入れると鍋と呼べない料理になるわ」

「変な物など入れたりはせんわ。第一、良識の在る者ならばちゃんと食べられる物を入れるじゃろ」

「……昔、魔理沙とやった時に変な茸を入れられたわよ」

「まぁ、霧雨じゃから仕方が無いじゃろ」

「それで済むなら苦労はしないって」

 

あの時の事を思い出したら少し気分が悪くなってくる。

魔理沙の奴は食べられる茸だって言ってたけど、スープは変な色に為るわ、他の具材の味が変わるわで散々だったわ。

まぁ、リュウとたっちゃんだったら変な物を入れないでしょうけど、あの時の鍋の所為であんまりやりたくないのよね~。

 

「なぁ良いじゃろ霊夢。妾はこう言う時でしか闇鍋を食べる機会がないのじゃ」

「龍の世界に戻って、同族達と一緒に鍋をつつけば良いじゃない」

「アヤツ等がそんな事をしてくれる訳ないじゃろ。第一、あの世界でやると言う事は、本来の龍の姿に戻ると言う事。……でかい龍の身体で小さな鍋をつつけと?」

「そんなの知った事じゃないわよ。大体、リュウだって興味ないでしょ?」

「……いや、ちょっと興味はあるかな」

 

リュウは私から視線をそらして、申し訳ないような声で小さく呟いた。

 

「ほれみぃ! 竜は妾の味方の様じゃぞ! これはもう闇鍋をするしかあるまい」

「……だからって三人で闇鍋ってのもね。少なくても六人くらいは集めてくれないと」

「あら? 何の話をしてるのかしら?」

「ん?」

 

なんとかたっちゃんを言い包め様としていると、聞きなれない第三者の声が割って入ってきた。

声が聞こえてきた方を見てみたら、珍しい事に輝夜と永琳が私達の方にやって来ていた。

永遠亭からあまり出て来ない二人がウチに来るなんて、一体どういう風の吹き回しかしらね。

 

「二人共いらっしゃい。今日はなんの用で来たんだ?」

「家に居ても暇だから散歩ついでに寄っただけよ。……それよりも、闇鍋が如何こうって聞こえたけどわたし達も参加して良い?」

「ちょっとアンタ、何を言って―――」

「勿論歓迎じゃ! そっちの従者も無論参加するのじゃろ?」

「当たり前じゃない」

「……姫様がそう言うなら私も参加するしかないわね」

「―――只付き従うだけが従者じゃないでしょう」

「別に邪険にする理由も無いもの」

「それはそうだろうけど……」

 

永琳の一言に反論することが出来ず、そのまま押し黙ってしまう。

確かに彼女には邪険に扱い理由が無いのだろうけど、私はアイツの所為で嫌な思い出しかないのよね。

あの思い出さえなければ、私も乗り気で参加できたんでしょうけど、アレは本当に酷かったから……。

 

「よっし、これで衣玖を入れれば六人となり条件は整った。……各員! 今宵の鍋は夕方六時にこの神社で決行する! それまでに具材を集めてくるのじゃ!!」

「分かったわ。…それじゃ永琳、今から里で買い物をするわよ」

「家の食材で十分だと思うけど?」

「ありきたりな物じゃツマラナイから買いに行くのよ。ほら、早く早く」

「はいはい」

 

楽しそうに笑う輝夜に引っ張られて、永琳は彼女と一緒に神社を後にした。

神社を後にする二人の後姿は、主従関係と言うよりも仲のよい姉妹にも見えなくもない。

レミリアの所とは随分と違うみたいだけど、あの二人にとってはアレが自然なんでしょうね。

そんな二人が帰った後、言いだしっぺのたっちゃんも準備の為に帰ったのか、既にこの神社には居なかった。

 

「……何も知らされず強制参加の衣玖に同情するわ」

「ははは。衣玖さんは苦労人みたいだからな、コレは仕方がないんじゃないのか?」

「それで納得出来るのだから不思議よね」

 

そんな適当な事を良いながら、私は重い腰を上げ、鍋の準備を始める為に台所に向かう。

リュウは具材の調達の為に、今から釣りに行くって言ってるけど……約束の時刻までに間に合うのかしらね。

釣り道具を取りに行ったリュウの背中を見ながら、私は既に時刻が二時を回っている事を思い出していた。

 

 

 

 

 

………

……

 

リュウが意気揚々と釣りに行っている間に、私は干しシイタケを水の張った鍋に放り込んで火に掛けていた。

シイタケから取った出汁に、醤油・みりん・酒なんかで味を調えるだけの簡単な出し汁。

ウチで鍋をする時の定番だけど……どうせだから、何時もとは違う出し汁で食べてみたい。

何時も同じって言うのも味気ないし、コレだとどんな具材が入っているのか分かるから、たっちゃん辺りから文句を言われそう。

何かないかと調味料や食材を探してみるけど、特に思いつかないから何時もの出しに為ってるのよね。

 

「……何か良いアイディアでも無いかしら」

「何がですか?」

「あ、来てたの衣玖」

「強制的に……ですけどね」

 

何時の間にかやって来ていた衣玖は、無理やり参加させられた事に苦笑いを浮かべる。

その様子に同情してしまうと、衣玖は特に気にする様子も無く私の隣にしゃがみ込んで、一緒に調味料を眺め始める。

私が鍋の出汁の事で悩んでいると言うと、衣玖は少しの間考えた後、一つの案を出してくれた。

 

「…でしたら、豆乳を使うと言うのは如何でしょう? コレなら具材も隠れると思いますよ」

「あ~良い考えだと思うけど、ウチに豆乳なんてないわよ」

「豆腐屋さんに行けば分けて貰えるかと」

「……それもそうね。なら、衣玖。悪いんだけど―――」

「今から里に行って豆乳を分けて貰えば良いのですね」

「帰ってきたらお金を払うわ」

「分かりました。…では、暫しお待ちを」

 

衣玖は立ち上がってお辞儀をすると、そのまま玄関から出て行き、里へと向かって飛んでいった。

私は彼女が帰ってくるまでの間に、鍋の火の様子を見ながら、今夜使う具材を選ぶ事にした。

他の連中……特にたっちゃんが何を持ってくるのか分からないし、無難な白菜でも入れようかな。

豆乳鍋を使うんだし、味や匂いがキツイ食材を入れるわけにも行かないしね。

あ、でも、豆乳鍋ならこの出し汁は必要なくなるんじゃないかしら? ……まぁ、作って置いて困る物でも無いし、今度別の料理に使えば良いか。

 

そんな事を考えながら鍋の準備を進めていると、思ったよりも早く衣玖が買い物から帰ってくる。

無事に豆乳を買って帰ってきた衣玖は、その序でに自分が選んだ具材も買ってきた。

何を買ったのか聞いてみたけど、適当にはぐらかされて結局は分からず仕舞い。

まぁ、彼女の事だし、魔理沙みたいに可笑しな具材を鍋に入れたりはしないでしょ。

 

そう思いながら二人で鍋の準備をしていると、輝夜と永琳も食材を持ってやって来た。

今から鍋が楽しみなのか、輝夜は満面の笑みだけど……永琳の方は、何処と無く呆れた様な顔をしている。

永琳の表情から察して、恐らくは輝夜の奴が変わった食材を里で買ってきたんでしょう。

ソレが何なのか問い質しても、きっと教えてはくれないだろうし、深く考えるのはやめよう。

 

そうこうしている内に鍋の準備も終わり、それぞれが食べ易いように食材を切った所で、言い出しっぺのたっちゃんが漸くやって来た。

私が早く食材を切り分けるように言うと、たっちゃんは〝既に切って来ている〟と告げてきた。

まな板が汚れない分、私としては助かるのだけど……包丁の音で何を切ってるのか察する事の出来ない分、若干怖いものがある。

流石のたっちゃんでも、私達が食べられない食材を入れたりはしないだろうけど、何を持って来たのか予想が出来無いから困るわ。

何だかんだで五人が集り、残りはリュウだけになったのだけど―――

 

「……遅い! アヤツは何処で油を売っておるのじゃ!!」

「龍神様、少し落ち着いてくださいまし」

「リュウ。何処で何をしてるのよ……」

「もしかして彼、迷子に為ったんじゃないの?」

「姫様、幾らなんでもソレはないかと……」

 

―――もう少しで約束の六時に為るって言うのに、リュウは未だに帰って来ないでいた。

釣りに行ったのだから、神社に来るのが一番遅くなるとは予想していたけど、コレは余りにも遅すぎる。

時間にルーズって訳でも無いから、恐らくは良い魚が釣れなくて、時間が掛かっているだけだと思うけど……流石に心配になってくる。

アイツの強さは私も知ってるけど、何時もなら遅くならない内に帰ってくるからどうも落ち着かない。

四人を残して、私だけでも捜しに行こうかと考え始めたとき―――

 

「たっだいま~。いや~悪い、遅くなった」

 

―――私達の心配を他所に、縁側から暢気なリュウの声が聞こえてきた。

その声が聞こえてきた瞬間、私の中に在った心配は呆れとなり、そのまま怒りへと変わった。

 

「ちょっとリュウ、幾らなんでも遅い過ぎるわよ。一体何処で何をしてたのよ」

「いや、何時もの様に湖で釣りをしてたんだが、中々良いのが釣れなくて。結局ギリギリまで粘る羽目に為ったんだよ」

「そんな事だろうと思ったけど、少しは時間を気にしなさいよね。皆、アンタが帰ってくるのを待ってたのよ」

「……はい、すいません」

「大体アンタは―――」

「其処までですよ、霊夢さん。リュウさんも反省してますし」

 

自分の感情に任せてリュウに説教をしていたら、私の言動に見かねたのか衣玖に止められてしまった。

私としてはまだ言い足りないんだけど、一応リュウも反省してるみたいだし、いい加減お腹も空いて来たし、今回は此処までにしておこう。

 

「……ったく。次遅くなるときは、ちゃんと連絡しなさいよね」

「連絡ってどうやって?」

「私に思いつく訳無いでしょ。…それよりも、さっさと釣ったのを切ってきなさいよ」

「お、おう」

 

私に促されたリュウは、縁側で靴を脱いで、そのまま台所へと向かった。

アイツが具材を切っている間に、たっちゃんが用意した鍋用の七輪に火を入れ、出汁を暖めておく。

こうしておけば、リュウが切り終った頃には丁度沸いてくるでしょ。

それにしても……さっきから、輝夜とたっちゃんの視線が妙に気になるんだけど……。

 

「さっきから変な眼で見てくるけど、何か用なの?」

「いや、何だかんだで確りと竜の手綱を握っておるなと思ってな。……当時の妾には出来なかったと言うのに」

「霊夢ってさ、意外と男性を尻に敷くタイプなのね」

「それは分からんぞ、永遠の姫。口調はこんなんじゃが、性根は乙女じゃからな」

「え、そうなの? なんか意外」

「酔っ払った時のコヤツを見れば分かるじゃろ。恐らくはアレが本性じゃ」

「つまりは、普段からあんな事がしたいと?」

「恐らくはな」

「アンタ等ねぇ……」

「お、落ち着いてください霊夢さん」

 

さっきから好き勝手な事を言っている二人に、今この場で『夢想封印』を叩き込みたくなった。

衣玖が止めなかったら、間違いなく札を取り出して叩き込んでる。

私の気など知らずに二人はまだ好き放題に言ってるし、永琳は止める気が無いのか、我関せずっと言った感じにお茶を飲んでいる。

ホントにコイツ等を如何しようかと考えていると、食材を切り終ったリュウが居間に戻って来た。

 

「なんか楽しそうだが、何かあったのか?」

「お主には分からん楽しさじゃよ」

「鈍いのも大概にしなさいよリュウ」

「……はい?」

「アンタは気にしなくて良いの! それよりも、さっさと火を消して始めるわよ」

「あ、あぁ」

 

リュウはイマイチ釈然としない様子だったけど、私に言われた通り灯りを消して部屋を暗くした。

更に空気を読んだ衣玖が、雨戸や障子を閉めてくれたので、今はより一層薄暗くなる。

後は、七輪からの明かりが漏れないように隠せば、誰が何の食材を入れるのか分からない程に暗くなった。

 

「入れる順番は、私から始まって右回りに行くわよ」

「なら、俺が最後か」

「そう言う事ね。……それじゃ入れてくわよ」

 

そう言って私は、鍋の蓋をとり切っておいた白菜を適当に入れていく。

私が入れ終ると次は衣玖の番になり、鍋に彼女が持って来た何かを入れ始めた。

白菜みたいな葉物とは違って、ポチャンと何かが出汁の中に沈む様な音が聞こえてくる。

衣玖も入れ終ると、今度は輝夜の番となり、鍋から大きめの何かが沈む音が聞こえた。

そうして輝夜も終わると、順番は永琳・たっちゃん・リュウとドンドン移っていく。

全員が入れ終わったところで、私は鍋に蓋をして、少しの間煮込むことにした。

 

「あ、そうじゃリュウ。お主に言っておく事があった」

「ん? なんだ?」

「この鍋のルールとして、一度箸で掴んだものは必ず食べねば為らぬぞ」

「へぇ~……変わったルールがあるんだな」

「うむ。じゃから必ず守れよ」

「はいはいっと」

 

二人がそんなやり取りをしてる間に、鍋の方は大分沸騰してきた。

私は鍋の蓋をとり、少々遅くなったけど漸く晩御飯を食べることが出来そうだ。

 

「……そろそろ良いみたいだし、食べましょうか」

「あれ? 灯りは消したままで良いのか?」

「最初はそちらの方が面白いじゃろうて」

「姫様、自分の分は自分でよそって下さいね」

「もう。わたしだって子供じゃないんだから、その位分かってるわよ」

「それでは、いただきます」

「「「「「いただきます」」」」」

 

衣玖の合図を皮切りにそう言った後、全員で鍋に入っている具材を箸で掴んだ。

暗闇で視界が利かない中、何処に何が入っているのかも分からないので、勘を頼りに適当なものを取る。

汁が垂れない様に反対の手に取り皿を持って、箸と一緒に口元まで持っていき、掴んだ食材を食べる。

口の中に入った食材を歯で噛み切ろうとするんだけど……弾力があるのか上手く噛み切れない。

別に不味くはないんだけど、今まで食べた事のない食感だから、美味しいとも感じる事ができないのよね……一体なんの食材を食べたんだろ?

 

「……なんか、滅茶苦茶硬いモノを食べたんだが、石かコレは」

「わたくしは葉物野菜でしょうか? 豆乳の出汁と絡んで美味しいのですが、もう少し煮込みたいですね」

「私のはつみれかしら。噛んだら肉の旨みが口の中に広がったわ」

「妾のは筍じゃな。……流石にこの時期に食べられるとは思わんかった」

「わたしのは良く分からないけど、美味しいと言う事だけは分かるわ」

「んで、霊夢は何が当たったんだ?」

「……さぁ?」

「さぁって……」

「何を食べたのか分からないんだから仕方が無いでしょ。とりあえず、灯りを点けて確認してみましょう」

 

私がそう言うと、隣に居たリュウが能力を使って部屋の灯篭に火を燈してくれた。

その状態で鍋の中を覗いてみるけど、豆乳の白さで何が入っているのか分からない。

とりあえず、さっきのと同じモノを取り出してみたけど、やっぱりなんなのか良くわかないわね。

私が掴んだものを一言で言うと、吸盤の付いた肉片ってところかしら。

……それだけで、鹿や猪なんかの肉じゃないって事だけは分かるわ。

 

「……本当に何よこれ」

「あ、それは俺の火星ダコだ」

「火星ダコ?」

「今日釣ってきたやつだよ。まさか幻想郷に居るとは思わなかったな」

「……食べられる物なんでしょうね」

「俺も今日初めて食うから知らん」

「ちょっと?!」

 

リュウのあんまりな一言を聞いて、私が詰め寄ろうとすると、他の連中も具材の答え合せを始めた。

 

「この白くて四角いは一体なんでしょうか?」

「あぁ、それはウチで余っていたお餅よ。食べ易いように切っておいたの」

「葉物は白菜だとして、わたしが食べたコレは何?」

「それは妾が入れたアワビじゃな。外の世界にある海で取れる食材じゃ」

「へぇ~」

「ちなみに、量はそんなに無いから早い者勝ちじゃぞ」

 

四人の答え合せを聞いて、鍋に入っている具材が全部分かったけど……なんでリュウだけ変なのを入れてるのよ!

たっちゃんのも変な食材だけど、リュウのはその上を行く気がする。

食べても身体に異常が無いから良いんだけど、釣に行ったのならちゃんとした魚を入れて欲しかったわ。

 

「全く……なんでコレにしたのよアンタは」

「いや~他の魚が全然釣れなくてな。時間もなかったからコレにするしかなかったんだよ」

「……それなら里で買ってくれば良かったじゃないの」

「ネタとしては面白くないか?」

「全然面白くない」

「そりゃ残念」

 

そう言って面白そうに笑っているリュウを見ると、私だけが怒っているこの状況が馬鹿らしくなってくる。

リュウに呆れた様な溜息を吐いた私は、姿勢を元に戻し、食事を再開する事にした。

鍋は既に四人が好き勝手に食べてるからか、既に大体の具材が食べ尽くされている。

そろそろ新しいのを入れないと駄目か思いつつ、私は鍋の中に残っている具材に箸を伸ばした。

すると、丁度リュウの箸も伸びていたらしく、偶然リュウの箸が私の指を挟んでしまった。

 

「あ、悪い」

「気を付けなさいよね」

 

リュウは直ぐに箸を離して、ちゃんと食材を掴もうとしたら―――

 

「ちょっと待てリュウ。お主、先ほど話してルールを忘れておらぬか?」

「ルール?」

 

―――いきなりたっちゃんが変な事を言い出してきた。

衣玖と永琳は、何の事が察しが付いたらしく呆れた顔になり、輝夜は私の顔を見た途端、何かを察したのか肩を震わせて小さく笑い出した。

私もなんとなく察しは付いたけど……まさか本気で言う心算じゃないでしょうね。

 

「リュウよ、一度掴んだものは」

「必ず食べる?」

「うむ。……と言う訳で、霊夢を食べるんじゃリュウ!」

「何を言ってるのよバカ神ッ!!」

 

予想通り言って来たたっちゃんのアホな発言に、私は思わず持っていた箸を投げ付けてしまった。

この場に封魔針か札が有れば、迷わずソッチを投げていたんだけど、手元に無いからコレで我慢。

流石にリュウも、こんな事を真に受けないと思っていたけど……何故か私の方をジーっと見てくる。

 

「な、なによリュウ」

「いや、霊夢って喰えるのかなぁ~って」

「それって如何言う意味よ。私じゃ物足りないって言いたいの?! 確かに胸や尻は薄いけど、きっとコレから成長するわよ!!」

「……何を言ってるんだお前?」

「な、なにって……」

「俺は人肉って喰えるのかなぁ~って意味で言ったんだぞ?」

「…………えっ?」

 

リュウの言葉を理解した途端、顔が物凄く熱くなって耳まで真っ赤になるのを自覚した。

自分が今何を言ったのか思い返してしまうと、恥かしすぎて穴が有ったら入りたい位の心境になる。

なんて言うか…こう……リュウの顔をまともに見る事が出来ない位に恥かしい……。

 

「ぷっくくく……。もうむり、げんかい……」

「姫様、笑ったら失礼ですよ」

「流石竜じゃな。妾の期待通りの反応だったぞ」

「どんな期待だよ」

「その霊夢さん。……頑張って下さい、色々と」

「…………あ~もう! アンタ等全員コレ以上喋るなーッ!! てか、輝夜は笑いすぎ!!」

「あはははははははははッ。わらいすぎておなかいたい」

「うがーッ!!」

 

私が叫び声を挙げると、他の四人も一斉に笑い出した。

笑っている方は楽しいのかもしれないけど、笑われている私はちっとも楽しくないわよ!!

 




次回からは『花映塚』の異変になります。……遂に此処まできたのか。
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