竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第八話 知識と日陰の少女

 

門番を撃退し、紅い屋敷に入った俺と霊夢。

屋敷の内装も外観と同じく紅を色調にしているが、灯りがロウソクだけだから全体的に暗い印象を受ける。

今の時刻が深夜だからかもしれないが、もう少し明るくても良いと思うがな。

 

「それじゃ、私は左側を調べるから、リュウは右側を調べてきて」

「へっ? 二手に別れて調べるのか?」

「そっちの方が効率良いでしょ。それじゃ頼んだわよ」

 

霊夢はそれだけ言うと、さっさと左側を調べに行ってしまった。

何か一言かけようと思ったのだが、特に言葉も思いつかず、そのまま右側を調べに行く事にした。

 

 

 

………

……

 

屋敷を調べていると、当然の如くメイド服を着た妖精達が襲って来る。

なんとか襲ってくる奴等を撃退して行くんだけど、今まで放って来た妖精の弾幕よりも厚いから結構辛い。

妖精に苦戦しているのに、この屋敷の主と戦う事に為ったら如何しよう。

仕えてる妖精でコレだから、屋敷を束ねている主はもっと凄いんだろうな。

………最悪の場合は、竜の力を使うしかないか。

霊夢も居るんだし、暴走しても多分止めてくれるだろうが、暴走するような竜は使いたくない。

出来る事なら『ジャブジブ』や『ナイト』辺りでケリを付けたいところだが、それは向こうの出方次第ってところか。

 

「って、なんだこれ?」

 

色々と考え事をしながら屋敷の中を調べていると、廊下の片隅で地下への階段を見つけた。

俺はこの屋敷に地下室は無いモノだと思っていたから、この階段の発見は予想外だった。

まだ探索していない部屋もあるけど、犯人が下に居る可能性もあるし、まずは地下の探索を済ませよう。

そう考えた俺は、階段を降りて一人地下の探索を開始した。

 

地下に降りてまず驚いたのは、その広さだった。

俺はてっきり部屋が一室あるだけだと思っていたんだけど、階段を降りた先にあったのは長い廊下だった。

場所が地下だから当然窓はなく、廊下を照らすのは壁に備え付けてあるロウソクの灯りだけ。

その所為で、この廊下は一階よりも薄暗く不気味な感じがする。

 

とは言え、この程度の不気味さで恐れるほど生易しい経験はしていない。

あの世界での旅で、此処以上に暗い場所や不気味な場所を探索して来たんだ。この程度ならまだ優しい位だ。

……不気味なところは本当に不気味だからな。変な度胸はついた気がするよ。

 

「ほんとあの場所はきつかったな……って、今は思い出に耽っている場合じゃなかった。早く探索を終わらせないと」

 

頭を切り替えた俺は、薄暗い地下の廊下の探索を開始した。

その道中でまたメイド妖精達に襲われるが、苦戦しつつなんとか撃退して行く。

次に団体で来たらスペカを使おうか考えていると、前方に大きな扉を発見した。

ただの地下室の扉にしては大きく、地下牢にしては扉のデザインが豪華な気がする。

他に地下に有りそうな部屋を考えるけど、特に思い浮かばず。

結局、何も考えずにその部屋に入る事にした。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 

俺が扉を開けると、其処には大量の本とそれを納める大量の棚があった。

この見た感じからして、恐らく此処は屋敷の図書館と言った所なのだろうか。

……正直な話、此処まで大量の本を見た事が無いので軽く引いた。

 

本を納める棚の一つ一つのサイズが大きいし、其処に収まっている本の数もまた凄い。

この部屋がどれだけ広いのか知らないけど、よく此処まで集めたと関心するよ。

でもこの本って管理は如何してるんだろ? これだけ多いと、一・二冊無くなっても分からないんじゃないのか?

 

「……一冊くらいなら持って行ってもばれないかな?」

「持っていかないでー」

「うぉッ?! 誰だ!?」

 

突如上から声が聞こえ、慌てて上を見上げると紫のラインが入ったワンピースに、薄紫の帽子とカーデガンを来た紫色の髪の少女が浮んでいた。

見た目は完全に人なんだけど、門番の例もあるし、彼女も人間じゃないんだろうな。

なんでこうまで人型の妖怪が多いんだろ。何か意味でもあるのかな? ……いや、そんな事を言い出したら俺も人型の竜になるのか。

 

「今、私の本を持って行くとか聞こえたんだけど?」

「確かにそう言ったけど、俺の本来の目的はこの屋敷の主探しかな」

「あら、レミィに用事なの」

「(レミィ?)…ちょっと霧を止めて欲しくて」

「そう。だったら貴方を会わせる訳には行かないわね」

「出来れば穏便に済ませたいんだけど……」

「無理に決まってるでしょ。あの子我が侭だもの」

「さいですか…」

 

出来れば能力を使わないで解決したかったから、話し合いで済ませたかったけど……無理そうだな。

俺の知り合いに我が侭な子なんて居なかったし、こう言う時は如何すれば良いのかイマイチ分からん。

……やっぱり、此処は霊夢を見習って力付くで行くのが一番なのかな?

 

「……ところで、貴方だれ?」

「俺の名前はリュウ。ただのリュウだ」

「私はパチュリー・ノーレッジ。ただの魔法使いよ」

 

簡単な自己紹介を終えると、パチュリーは青白い光線を放って来た。

俺は上に飛んでその光線を回避するけど、その後直ぐに移動して全方位に赤い弾幕を張って来る。

その弾幕も隙間を縫って避けるたけど、また移動して次は光線と弾幕の合わせ技で攻めてきた。

弾幕の回避は出来るんだけど、彼女が彼方此方移動するもんだからコッチの攻撃がイマイチ当たらない。

なんとか頑張って弾を放つけど、やっぱりこう言う戦闘は苦手だ。

 

「……水符『プリンセスウンディネ』」

 

スペカを宣言すると、パチュリーは三本の水のレーザーと無数の水の弾丸を放って来た。

それ等をなんとか避けたと思ったら、その直後に大粒の水の弾丸が一斉に放たれた。

弾の速度事体は其処まで速くないけど、一度に放たれる弾の数が多い。

隙間を縫うように回避しても、直ぐにさっきと同じレーザーと小粒の弾丸が襲い掛かってくる。

お陰で避ける事に集中してないと不味い状況に……って―――、

 

「―――これは無理だ」

 

気がつくと俺は、壁際にまで追い詰められていて、目の前にはレーザーが迫っていた。

既に回避出来るスペースも無く、被弾する事は誰の眼にも明らか。

だからと言って、このまま喰らう心算もない。せめてお返しくらいはしないとな。

 

「散弾『散烈拳』!」

 

俺は当たる直前にスペカを取り出し、拳に力を込めて前に突き出した。

突き出した拳から放たれた力は、散弾の様に拡散しパチュリーの弾幕を掻き消して行った。

命中こそはしなかったが、これで彼女のスペカを破る事が出来た……筈。

 

「……貴方、もしかしてうちの門番みたいに気でも使えるの?」

「いや、俺のはそう言うのとは違うものだけど」

「そうなの。…随分と変わってるのね」

 

イマイチ自覚はないんだけど、俺ってそんなに変わってるのかな?

霊夢にもさっき似た様な事言われたし、やっぱり変わり者なのかな。

 

「それじゃ次行くわよ。…木符『シルフィンホルン上級』」

 

パチュリーの二枚目のスペカは、水の弾幕ではなく木の葉の弾幕だった。

さっきの弾幕とは違い法則性はなく、舞い落ちる葉の様に辺りにばら撒かれる。

そこら中からばら撒かれるもんだから、どの弾に注意して避ければ良いのか分からない。

目の前だけに集中していると、突然横から弾が飛んでくるし、左右に集中すると前方不注意になる。

全体的に把握しないと行けないんだけど、そんな余裕は今の俺にはない。

 

「だーッ! 避け難い!!」

「簡単に避けられたら勝負にならないじゃない」

 

確かに彼女の言っている事は正論だけど、それでも文句の一つは言いたい!

魔理沙の星屑も面倒だったけど、この弾幕はそれよりも面倒だ!!

あの弾幕はコレと大差ない速度だったけど、此処まで細かく散らばってなかったぞ!

……いや、これは弾の大きさによるところがデカイのか。

 

「考え事するのは勝手だけど、そんなんじゃ当たるわよ」

「へっ? …あいだッ?!」

 

ぐぉ~……。余計な事を考えすぎた。

お陰で迫って来ている弾に反応が遅れてしまい、ついに被弾してしまった。

まぁ、この程度でやられる俺じゃないし、今はこの弾幕の攻略に集中しよう。

木の葉はまだ辺りに散らばっているけど、何度も同じ失敗を繰り返したりはしない。

辺りに舞い散る弾幕なら、風で全部吹き飛ばすだけだ!

 

「疾風『(フー)』!」

「キャアッ?!」

 

俺がスペカを発動させると、名前の通り風が巻き起こり、弾幕ごとパチュリーを吹き飛ばした。

今の(フー)で彼女の弾幕を止める事が出来たけど、スペカってこう言う使い方であってるのか?

この調子で使っていくと後々困りそうだな……。

 

「うぅ…。まさか室内で突風に襲われるとは思わなかったわ」

「これでも一番ランクの低い風なんだけど……」

「……アレでねぇ」

 

俺が(フー)のスペカを使った事で、室内は倒れた本棚で滅茶苦茶になってしまった。

もしコレで最上位の牙流風(ガルーフ)だったら、もっと酷い事になってそうだな。

最低ランクでこの威力だとなると、真重属魔法はどうなってるいるのやら……。

 

「まぁ、本棚は後でこあやメイド達に直させるとして……続きを始めるわよ」

「やっぱ、この程度で終わる訳ないか」

「当然でしょ。……それじゃ三枚目。水&木符『ウォーターエルフ』」

 

彼女の三枚目のカードは、大粒の水弾と小さい木の弾を連続で放ってくる物だった。

放たれる割合で言えば木弾の方が多く、水弾の数は多くない。

ばら撒く様に放つ木とは違い、水の方は何処と無く俺を狙って来ているみたいだ。

それでも、さっきの弾幕よりも弾の軌道は読める方だ。

……まぁ、飽く迄も読めるだけであって、絶対に回避が出来ると言う訳でもないけどね。

とりあえずは、手持ちのスペカを消費しないで避けられているから良いか。

 

「……このスペカじゃ倒せそうに無いわね」

 

少しの間避け続けているとパチュリーはそう言い出し、放っていた弾幕を撃ち止めた。

その代わり懐からに別のスペカを取り出し―――、

 

「金&水符『マーキュリポイズン』」

 

―――そのカードを宣言した。

四枚目のスペカは水の弾と金属の弾の複合弾幕。

弾は左右から挟撃する形で放たれる為、弾の軌道が把握し辛い。

把握し辛いが左右から同時に教われないだけマシか。

それに放たれる弾のサイズもそこまで大きくないし、距離さえ離していれば隙間を縫う事が出来る。

後は動き回る彼女に、コッチの弾幕を放ち続ければ勝てそうだ。

 

「むぅ。中々当たらないわね」

「そう何度も被弾したくないんでね」

 

軽口を叩きつつパチュリーの弾幕を避け続ける。

その隙をついてコッチの弾を放っているけど、向こうも中々当たってくれない。

このままだとジリ貧になりそうだし、此処はスペカを使って一気に決めるか。

俺はポケットから一枚のスペカを取り出した。

 

「蒼雷『ババル』!」

 

カードを宣言すると、四方から蒼い雷がパチュリーに襲い掛かった。

パチュリーも急いで回避しようとするが―――、

 

「むきゅーッ!」

 

―――俺の雷の速度の方が速く、回避出来ずに地面に落ちていった。

落とす事が出来たとは言え、まだ他にもカードを持っているかもしれない。

念のためにも、もう少し警戒しておくかな。

 

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

「……あれ?」

 

何が起こっても良い様に警戒していたんだけど、パチュリーが動く気配はなく地面に倒れたままだった。

一瞬何かの罠かと思ったけど、特にそんな様子は無さそうだ。

だとすると、なんで倒れたままなんだ? 一応とは言え、弾幕にしてるから死んだりはしないと思うんだけど。

 

「おーい、大丈夫かー?」

「…しびれて、うごけない……」

「あ、あはは……」

 

どうやら彼女は、ババルを受けて身体が痺れたみたいだな。

それじゃ、どれだけ警戒しても何もしてこない訳だ。

……でも、あの魔法にスタン効果なんて付いてたか? あんまりこの魔法使わないから、よく覚えてないんだよな。

 

「とりあえず、この勝負は俺の勝ちで良い?」

「すきに、して」

「分かった。(……勝ったのにこれじゃ素直に喜べないな)」

「あと、ここにれみぃはいないわよ…」

「そうなのか? …だったら此処に用はないか」

「なら、さっさといきなさい……」

「ああ。…それじゃあなパチュリー。ゆっくり休んでくれよ」

「いわれなくても……」

 

こうしてパチュリーとの戦いに勝った俺は、図書館から出て別の場所の探索に向かった。

今回の戦いで結構スペカを消費したから、今残っているカードを確認してみると………今の状態で使えるカードが殆ど残っていなかった。

竜変身(トランス)すれば少しは増えるんだけど、それでも不安は尽き無い。

……やっぱり攻守で一番バランスが良い『カイザー』を使うしかないかな。

出来る事なら使いたくないけど、俺の腕前じゃ無理そうだ……。

 

「ハァ。憂鬱だ……」

 




オマケ

リュウが図書館から出て行った後。
倒れているパチュリーの傍に一匹のコウモリが近付いて来た。

「……これで良かったのレミィ?」
《えぇ。ありがとうパチェ》

パチュリーがコウモリに話しかけると、喋る筈の無いコウモリが少女の声で返事をした。
彼女はその事になんの疑問も持たず、そのまま話し始めた。

「彼に会いたいから負けてくれなんて、面倒な注文してくれたわね」
《あら。パチェも彼の力を見れて良かったじゃない》
「……咲夜も居るんだし、別に私が戦う必要は無かったと思うけど」
《咲夜じゃ駄目よ。彼を本気にさせる前に倒しちゃうもの》
「私でも本気は出さなかったみたいだけどね」
《なら、私が彼を本気にさせてあげるわ》
「……お願いだから図書館に被害が出る様な事はしないでよ」
《それは(かれ)次第ね》

そう言うとコウモリは何処かへと飛んで行き、パチュリーは何事も無かったかの様に起き上がった。
そして辺りを確認すると、部屋の惨状を見て大きな溜息を吐いた。

                   終わり
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