竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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今回は霊夢視点です。


第九話 紅魔館のメイド

 

リュウと別れて紅い屋敷を探索しているんだけど、一向に犯人らしき人物が見付からないわね。

この屋敷、見た目以上に中が広いから彼方此方捜して回るのも面倒だわ。

私としては、早く犯人を取っちめたいんだけどな。

……もしかしてリュウが向かった方に居るのかも。それなら私が行けば良かった。

 

「あ~ぁ。いい加減妖精を倒すのも飽きて来たわね」

「だったら、倒さないでスルーすれば良いでしょ。掃除する身にもなりなさいよ」

「そんなの私の知った事じゃないわ」

 

私の前にいきなり現われたのは、銀の短髪のメイド。

それにしても、今まで気配も無かったのに急に現われたわね。

どんな手品を使ったのか知らないけど、そこら辺にいる妖精よりは手強そうね。

 

「それでなに? お嬢様のお客様?」

「(倒しに来たと言っても、通してくれないわね)」

「通さないわよ」

「まだ何も言ってないんだけど」

「どんな目的でも関係ないわ。お嬢様には既に先約が入ってるのよ」

「こんな真夜中に尋ねるなんて、そいつは随分と物好きね」

「貴女だって、真夜中に侵入して来たじゃない」

「侵入するなら、真昼間よりも真夜中の方が雰囲気あるでしょ」

「そんなの知らないわよ」

 

そう言うとメイドは、四つの魔法陣を展開し全方位に弾幕を張って来た。

それと同時に、本人は隠し持っていた銀のナイフを私に向かって投げつけて来る。

全方位に弾幕を張るだけならまだしも、メイドが投げて来るナイフが厄介ね。

数こそ少ないけど、偶に弾幕の影に隠れて発見が遅れるのよ。

全く。何処にナイフを隠しているのか知らないけど、馬鹿みたいに投げて来るんじゃないわよ。

 

「……流石に当たらないわね」

「この程度の弾幕に当たる訳無いでしょ」

「そう。ならこれは如何かしら? 幻符『クロックコープス』」

 

メイドが一枚目のスペカを宣言すると、全方位に弾幕を張って来た。

でも、ただそれだけの事。只単に辺りに弾を撒き散らすだけなら如何と言う事は……って!?

 

「何時の間にナイフ投げたのよ!?」

「さぁ? 何時かしらね?」

 

今、私の周りには最初に放った弾幕以外にも、無数の銀のナイフが投げられていた。

しかも、ナイフの方は全て私に狙いを付けているみたい。

何時の間に投げたか分からないけど、面倒な事この上ないわね。

 

でも気をつけないといけないのは、先に放たれた弾幕の方。

今度は投げられたナイフの数が多いから、散らばっている弾幕がナイフの影に隠れちゃってるのよね。

だけど、ナイフが私狙いなら引き付けて避ければ大丈夫。

先に放ってきた弾幕の数は少ないし、ナイフを避けた後でも回避は間に合う筈。

 

「あら。思ったよりやるのね」

「当然でしょ。私を誰だと思ってるのよ」

「働かない事で有名な神社の巫女でしょ」

「失礼ね。ちゃんと働いてるわよ……ウチの居候が」

「貴女が動かないんじゃ同じじゃない」

「私の専門は、妖怪退治や異変解決だから良いのよ」

「……私は貴女の言う居候に同情するわ」

「それは如何言う意味よ」

「言葉の通りよ」

 

……一々余計な事を言うメイドね。

それにこれは私とリュウの問題であって、赤の他人であるメイドに同情される筋合いはないわよ。

コレ以上余計な事が言えない様に此処で徹底的に叩こうかしら?

 

「考え事とは余裕ね」

「実際の所、余裕だからね」

「ならこれは如何かしら? 幻象『ルナクロック』」

 

メイドが宣言した二枚目のスペカ。

まずは全方位に弾幕を張るだけだけど、さっきの事を考えるとまたナイフが飛んでくるわね。

どんな風に飛んでくるのか分からないけど、何時でも後ろに下がれる様にしておこう。

 

案の定私の予想は的中し、また突然銀のナイフが投げられていた。

だけど今度は、私狙いのナイフ以外にもばら撒かれる様に投げられたナイフも存在する。

でも、ばら撒かれたナイフが追加された位で、さっきのスペカと大差ない。

その程度の差異しかない弾幕の攻略なんて、そう難しいものでもないわ。

 

「……これでも駄目か」

「唐突にナイフを出現させるのは良いけど、それだけじゃ私は落せないわよ」

「なら、搦め手で攻めさせて貰うわ」

 

そう言うとメイドは、無数のナイフを四方に投げ付け始めた。

でも私が居るのは彼女の正面。後ろや左右に投げても当たる訳が無い。

彼女の言う『搦め手』が何か知らないけど、正面以外のナイフにも気をつけた方がよさそうね。

 

私はナイフの軌道に注目していると、壁にぶつかったナイフが跳ね返りコッチに襲い掛かって来た。

コレは所謂『跳弾』って奴かしら。手品以外にもこんな芸当が出来るなんて、意外と芸達者ね。

 

でも、種さえ解れば大した脅威じゃない。

何も無い空間から飛んでくるんじゃなくて、ただ壁に当たって跳ね返っただけ。

跳ね返ってくるナイフ同士の隙間は大きいから、落ち着いてさえいれば特に問題はない。

 

……まぁ、問題があるとしたら私の弾幕が当たらない事か。

如何言う原理か知らないけど、あのメイドが瞬間移動するもんだから中々当たらないのよね。

私も似た様な事は出来るけど、此処まで精度は良くないわよ。

 

「これも当たらないなんて」

「それはお互い様よ。私としてはさっさとやられて欲しいんだけど」

「そんなのお断りよ」

「私はアンタと遊んでるほど暇じゃないの」

「私も暇じゃないけど、お嬢様の命令なのよ」

「あーそうですか」

「えぇそうなのよ。だからコレで遊んでいて。…メイド秘儀『操りドール』」

 

メイドは三枚目のスペカを宣言した。

今までのカードを考えると、コレもナイフを出現させる手品みたいな奴なんでしょ。

流石に同じネタを三回も見ると飽きるわ。

 

実際の所、メイドが最初にナイフを投げた後、ばら撒く様に別のナイフが出現する。

ばら撒く様に投げたナイフは、壁に跳ね返って来るけどさっきと同じ要領で避ければ大した事はない。

最初のナイフは、真っ直ぐ私を狙って来るけど跳ね返る訳じゃないから大きく避ければ良いだけ。

……正直な話、攻略法さえ分かれば避け続けるのは難しくないわ。

 

とは言え、このまま避け続けて相手のスペカが尽きるのを待つのも面倒ね。

通常の弾幕じゃまともに当たらないし、此処は手持ちのボムを使って一気に片付けますか。

 

私は懐から一枚のスペカを取り出し、メイドに狙いを付ける。

メイドは彼方此方移動してるけど、このスペカは幾ら移動しようとも関係ないわ。

 

「夢符『封魔陣』!」

 

私がスペカを宣言すると周囲に結界が張られ、その結界範囲が一気に拡大していった。

その過程で周りに飛んでいるナイフは全て弾き落とされる。

メイドは拡大し続けた結界を避けようとしたが、四方に広がる結界の前には無意味だった。

 

「キャアッ?!」

 

避ける事の出来なかったメイドは結界に捕まり、そのまま弾き落とされた。

本当は『夢想封印』でも良かったけど、此処の主の事を考えてコッチにしたんだけど……これ火力がイマイチなのよね。

でも、全体に攻撃出来るのが強いから重宝してるんだけど。

 

「いたた…。ちょっと油断したわ」

「あ、やっぱりまだ起き上がるのね」

「あの程度じゃ私は折れないわよ。それにスペカはまだ余ってるし」

「一体何枚持って来たのよ」

「後七枚ほどあるわ」

「多いわね」

 

此処に来るまでに戦っていた連中を考えると、メイドの七枚と言うのはかなりの枚数ね。

さっき三枚ほど使ってるから、合計で十枚ものスペカを用意していたことになる。

沢山のスペカを用意する奴は初めて見たけど、よく沢山の数を作れたわね。

 

「お嬢様からは貴女の足止めを命じられてるのよ。むしろコレでも心許無い位よ」

「……私の足止めですって」

「えぇ。…我が主はもう一人の侵入者との戦いを望んでいるの。その障害となるものを止めるのは従者として当然の事でしょ」

「もう一人の侵入者って……ッ?!」

 

メイドの話を聞いた私は、急ぎリュウの元に行こうとした。

だけど彼女は、今までにも見せたナイフの手品を使って私の行く手を遮って来た。

 

「何処に行こうと言うのかしら? 貴女の相手は私よ」

「悪いけどアンタの相手をしてる暇が無くなったわ。……だから邪魔をするな」

「それは無理な相談ね。…だって、今の私の仕事は貴女の足止めだもの」

「……即行でケリをつけるわ」

「出来るかしら? 貴女の時間は私の物よ」

「そんなの……知った事じゃないわよ!!」

 

私は少しだけ本気でメイドを倒す事に決めた。

こんな奴に時間を掛けた所為で、リュウに暴走されたら堪ったもんじゃない。

もしアイツに暴走でもされたら、今の私の手持ちじゃ倒し切れないわよ。

お願いだから絶対に暴走だけはしないでよリュウ。そんな事になったら、面倒な事この上ないのよ!!

 

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