竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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第九十二話 光の三妖精

 

???Side

 

わたし達『光の三妖精』は、普段は近寄る事の無い『博麗神社』周辺の森にやってきた。

普段は人間相手に悪戯を仕掛けているけど、今回は神社に居る変な奴相手に悪戯を仕掛ける事にしている。

今まで多くの妖精が試してみたけど、誰一人として驚かす事のできなかった相手……。

そいつをわたし達三人の力で驚かしたとなれば、他の妖精達から一線を画く存在と為れる筈!

 

「二人共、準備は良い? 手はず通りにやるわよ」

「ワタシは何時でも良いよ」

「……絶対失敗すると思うんだけどなぁ~」

「やる前から弱気に為って如何するのよ! こう言うのは当たって砕ければ良いの!」

「いや、砕けちゃ駄目でしょ」

「はいはい、喧嘩は其処まで。例の人が来たみたいだよ」

 

『ルナ』に言われて、茂みの中から確認してみると……確かに青髪の人間もどきがいた。

背中には大きな籠を背負っているけど、腰には長剣を差していて、下手に近付きすぎると斬られてしまいそう。

でも、わたしの能力で光を屈折させれば姿を消せるし、ルナの能力で音を消せるからばれる事はない筈。

 

「よっし。それじゃ先回りして悪戯しまくるわよ。『スター』はアイツの動きを見失わないでよ」

「そんなヘマしないわよ」

「うぅ…乗り気がしないなぁ……」

 

???Side out

 

 

 

 

 

リュウSide

 

何時もの様に森に落ちている道具を拾いに来たが、森の様子がなんかおかしい気がする。

この森は何度も歩いているから、何処にどんな木が生えてるのか大体覚えてるんだけど……俺の知らない木が生えてるな。

一日やそこ等で木が成長するわけ無いし、幽香なら植物を操れるだろうが……態々こんなことするわけ無いか。

そうなると誰かの悪戯なんだろうけど……こんな事して何がしたいのやら。

 

「やれやれ、めんどくさいな……」

 

俺はうんざりしながら一言呟き、目の前に生えている木の横を通って、森の奥へと進んで行く。

知らない木は他にも何本もあるが、通行の邪魔には為らないし、イチイチ斬り捨てるのも面倒なんで横を通り過ぎていく。

売れそうな道具を籠に放り込みながら進むと、何時の間にか辺り一帯が無数の木に覆われていた。

幾らなんでも不自然すぎるこの状況に、如何したものかと頭を悩ませていると……生い茂っている木々に違和感を覚えた。

隣り合って成長した木々が、直ぐ隣りの葉にぶつかる事は良くあるけど、幻の様に隣りの葉に溶け込んでいる光景は初めて見たな。

 

「……もうちょい考えて幻影を作れよ」

 

余りにもずさんな幻影に呆れて、思わず作った奴に駄目だしをしてしまった。

俺の駄目だしを何処かで聞いていたのか、幻の木は直ぐに修繕されて、ごく普通の木に見えるようになる。

修繕されたとは言え、今の変化でどの木が偽物なのか大体を把握する事ができた。

映し出されている幻影を気にする事なく進み、またそこら辺に落ちている道具を拾い始める。

 

俺が幻に惑わされる事なく道具を拾っていると、直ぐ傍で茂みがざわついたにも関わらず、音が全くしないと言う不自然な箇所を見つけた。

どうやら、あのずさんな木を作った奴に仲間が居るらしく、あの茂みから俺の事を観察しているようだ。

……まぁ、それが分かったところで何かをする心算も無いんだがな。

この程度の悪戯で腹を立てるのもアホらしいし、道具を拾うのを邪魔しなければそれで良い。

俺はあの茂みを無視しながらも、悪戯を仕掛けて来る奴等が如何動くのか様子を見る事にした。

 

良く分からない銅像や、骨董品らしき器を籠に入れつつ、森の中を散策する。

その道中で岩や動物なんかが出てくるが、良く観察してみるとそれ等の足元に影が無く、ただの幻である事が直ぐに分かる。

よくも懲りずに悪戯を仕掛けられるなと呆れつつ、俺は現われる幻たちを悉く無視し続ける。

実体の無い幻だと分かっているのなら、恐れる必要なんて何処にもないし、この程度の幻なら何体現われようとも驚けるわけが無い。

いい加減諦めてくれないかなぁ~と考えていると、目の前に突然霊夢が姿を表した。

 

《りゅ、リュウ。これから買い物に行くんだけど、付き合ってくれない?》

「……………」

 

目の前に居る霊夢は、何時もと変わらない調子で話しかけてくるけど、声が聞こえてくるのは〝前〟ではなく〝後ろ〟からだった。

少しは霊夢の声に似せ様と頑張っているが、俺がアイツと他のやつの声を聞き間違える訳が無い。

大体、声が後ろから聞こえてくる時点で致命的なのに、相変わらず影は再現出来ていない上に―――

 

「ちょっと『スター』。もっと真面目にモノマネしなさいよ」

「ワタシも精一杯やってるわよ。…そんな事言うなら『サニー』がやってよね」

「二人とも。今は私たちの声も聞こえてるから、もっと小さな声で喋らないとばれるわよ」

 

―――後ろの方から犯人と思われる三人の声が聞こえてる時点で駄目だろ。

俺相手に悪戯なんか仕掛けて、一体何が楽しいのか知らないが、こう言うのは程々にして貰いたいもんだな。

飽きもせず悪戯をしてくる三人に、俺は気付かれないように溜息を吐いた。

このまま話を合わせて、もう少しだけ付き合って良いが……あんまり遅いと霊夢が心配するな。

それにこの辺りはもう調べつくしたし、いい加減腹も空いて来たし、そろそろ追っ払うとするか。

 

そう思い至った俺は、背負っている籠を地面に下ろして、負担の掛かっていた肩や首を軽く解す。

肩の凝りも少しはマシに為ったところで、手の中に叢雲を呼び出し、剣の中で眠っている八岐大蛇の魂を呼び起こす。

俺の力に呼応した……と言うか、力を注ぎ込んで叩き起こしてやると、剣に纏っている雲の様なオーラが膨張して八つの頭を持つ巨大な龍の姿に形成させる。

どうやら寝起きが悪かったのか、大蛇は物凄く不機嫌そうな顔をしているが、後ろに居る三人を脅すには十分な迫力がある。

後はこの大蛇に驚いて、後ろに居るバカ三人がさっさと帰ってくれる事を祈るか。

 

リュウSide out

 

 

 

 

サニーSide

 

「大体スターは、動きを察知するくらいしか出来ないんだから、こう言う時に頑張りなさいよ」

「ワタシの能力が無かったら、トンチンカンな方向に能力を使うのは何処の誰かしら?」

「あら、本当に何処の誰なのかしらね」

「何時もワタシ達のリーダー面をしている、赤い服の子に決まってるじゃない」

「赤を馬鹿にするなーッ!!」

 

自分の服を馬鹿にされて、久々にカチンと来たわたしは、悪戯そっちのけでスターに飛び掛かる。

スターも受ける気満々らしく、わたしの髪を引っ張ったり頬を抓ったりしてくる。

わたしも負けじと応戦して、そのまま取っ組み合いの喧嘩へと発展した。

やられた事をそのまま相手にやり返して、スターに謝らせようと必至になって髪を引っ張り、頬を力いっぱい抓る。

二人でそんな事をしていると、ルナがわたし達の服を引っ張り何かを知らせてくる。

 

「なによ、ルナ! 今良いところ……なんだから……」

 

服を引っ張るルナの腕を振り払い、顔を上げてみると……八つの頭を持つ巨大な蛇がわたし達の事を睨んでいた。

何時の間にあんなのが現われたのか分からないけど、少なくともわたし達が如何足掻いても太刀打ちできる相手じゃない事は分かる。

幾ら死ぬ事のない妖精だと言っても、あんな化物相手に悪戯を仕掛け様なんて思える訳が無い。

それはルナとスターも一緒なのか、二人とも顔を青白くして震え上がっている。

 

「「「……………」」」

《■■■■■■■■■■ーーッ!!!》

「「「ッ?! ご、ごめんなさーいッ!!!」」」

 

蛇が大口を開けて吼えたのと切欠に、わたし達三人は一斉にこの場から逃げ出した。

恐怖の余り涙を流しながら、恥じも外聞もかなぐり捨てて蛇から少しでも遠くへと逃げる。

無我夢中で逃げていると、わたし達は気が付くと『魔法の森』にある自分の家に辿り着いていた。

三人して家の中に飛び込み、ドアに鍵を掛けた後、こっそりと窓から外の様子を盗み見る。

蛇に追い掛けられてないか心配だったけど、窓の外を見る限りだとあの蛇の姿は何処にもない。

パッとスターに視線を送ってみると、わたしの意図を理解してくれたのか、能力を使って周りに誰か居ないか調べてくれる。

調べ終わったスターは、わたしに向かって首を横に振って、この辺りには誰も居ない事を教えてくれた。

それを知ってホッとしたわたしは、急に力が抜けてしまい、その場にへたり込んでしまった。

 

「た…たすかった~……」

「だから私は失敗するって言ったのよ……」

「あんな大蛇が出るなんて思う訳無いじゃないの」

 

あの姿を思い出すだけで、恐ろしさから今でも振るえ出してしまいそうになる。

幻想郷に長く住んでいるけど、あれほど強大な蛇が神社周辺に住んでいるなんて思わなかった。

あそこまで強大な存在だと、蛇神として何処かで崇められていても不思議じゃないわよ。

 

「全く、あの蛇は何処から湧いてきたのよ!」

「湧いてきたんじゃなくて、あの人が剣から召喚してきたの」

「剣から召喚って……流石にそれは信じられないわよ」

「私は二人が喧嘩してる時に一部始終見てたから間違いないわ」

「それじゃ、あの変なのは何処でも蛇を召喚出来るって訳?」

「多分ね……」

「……ぷ、ぷははははははははははッ。流石にそれはないって!」

 

真剣な表情で頷くルナを見て、わたしは思わず噴出してしまった。

あれ程の存在が、何処の誰とも知れない変な奴に従うなんて……冗談でもそれは無いわ。

スターもわたしと同じ考えなのか、そっぽを向いて肩を震わせながら笑うのを堪えている。

 

「ちょ、ちょっと!? 如何して其処で笑うのよ?!」

「だって、あれだけ強大な蛇が誰かの言う事を聞くなんて思えないんだもん」

「ワタシ、ルナに冗談を言う才能があるだなんて初めて知ったわ」

「冗談でも嘘でもなくて、私は本当に見たのよ!!」

「あーはいはい。凄いねー恐かったねー」

「真面目に聞きなさいよ!!」

 

ルナは凄い剣幕で怒り出すけど、何度聞いても彼女の言葉を信じる事ができない。

何を言っても信じないわたし達に呆れたのか、ルナは肩を落としてコレ以上言ってくる事はなかった。

とりあえず、今度はあの神社周辺で悪戯を仕掛けるのは止めておこうかな。

また騒ぎ立てて、あの蛇神にまた睨まれたくなんてないもんね。

 

サニーSide out

 





今回光の三妖精を出しましたが、妖精大戦争の話を書く心算はありません。
あの話って基本的に妖精同士のいざこざですし、リュウを絡ませられる要素が思いつかないんですよ。
同じ理由でダブルスポイラーもやりません。文花帖は文視点で一話だけやるって感じですね。
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