竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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最近、周りが慌しくて落ち着いて小説を書けない。昨日も何だかんだで大変だったし……やれやれだぜ。
まぁそれは兎も角、今回は全編リュウ視点でお送りします。


第九十五話 約束の為に

 

連日連夜の様に雨が降り続いて鬱陶しい梅雨の時期。

本当は家でダラダラしていたい気分なんだが、ちょっと確認したい事があって雨が降りしきる中、俺は傘を差してちょっとばかし出かけていた。

今回の目的地は春頃の異変の時に見つけたあの向日葵畑。

あの異変で咲いてしまった季節はずれの花の殆どが枯れたが、あの向日葵畑はどうなっているのか未だに確認していなかったりする。

霊夢をあの畑に連れて行くって約束してるんだが、場所が『妖怪の山』とは反対方向の奥地にある上に、あそこで会った妖怪とあんまり会いたくないって言う理由で今日まで先延ばしにしていた。

流石に何時もあそこに居るって訳じゃないと思うが、絶対に居ないとも言い切れないんだよな……。

 

「まぁ、今日は雨が降ってるし、流石に大丈夫だろ」

 

楽観的にそんな事を考えながら、俺は目的地の『太陽の畑』にまでやってきた。

雨が降っている影響で地面がグチャグチャになっているが、それよりも酷いのは畑の状態の方だ。

春頃見た大輪の花は何処にも見当たらず、地面には朽ち果てた向日葵の残骸と思われる欠片が残っている程度。

花が枯れているのは予想できていたが、まさか残骸すら残っていないとは思わなかった。

あの異変から二・三ヶ月は経っているし、仕方がない事なんだろうけど……霊夢との約束は如何するかな?

植物なんて育てた事無いから、残骸から種を見つけて育てるなんて出来ないし、地属性の『バンダースナッチ』でも植物を急速に成長させれないか。

夏までに大輪の花が咲くのか怪しいし、霊夢を此処に連れて来るのは来年以降にして、今回は別の方法を考えた方が良いかもな。

 

荒れた畑を見ながらそんな事を考えていると、背後から何かが伸びてくるような気配を感じた。

俺はすぐさま愛刀を取り出し、後ろを振り返りながら背後から迫って来る何かを躊躇わずに斬り払う。

気配を感じたときは妖精の弾幕かと思ったが、実際に斬り払ってみたら弾幕かと思ったらただの木の根だった。

木の根を伸ばして攻撃してくるなんて、幾ら幻想郷でもそんな事を仕出かすのはアイツくらいなもんだよな。

 

「…いきなり何して来るんだ、幽香」

 

人の姿が見えない森に向かって呼びかけると、木々の間から面白く無さそうな顔をした花の妖怪(かざみゆうか)が姿を現した。

初めて会った時もそうだったが、なんだってコイツはこんな事をしてくるんだ? そんなに俺と喧嘩したいのか。

 

「久し振りね、非常識(リュウ)。軽い悪戯でそこまで殺気立たなくても良いんじゃない?」

「殺す気で攻撃してきたくせに何言ってやがる。あと、今変な風に呼ばなかったか」

「気のせいよ。そんな細かい事を一々気にしてたら将来禿げるわよ」

「それは絶対に無いだろうから問題ない」

「…その自信はどっから来るのかしら」

 

幽香は呆れたような眼でこっちを見てくるが、一々反応していてもキリがないので軽く無視する。

此方が無視したのにも関わらず、幽香は特に気を悪くしたりもせず、済ました顔で俺の隣りにやって来た。

 

「それで? アナタは此処で一体何をしているのかしら」

「別に何も。ただ、あの異変の後、此処の向日葵たちがどうなったのか気に為っただけだ」

「そう。でも残念だったわね、此処の花は見てのとおり全滅よ」

「みたいだな。アンタならなにか手を打ってると思ったんだが……当てが外れたか」

 

少々嫌味っぽく肩をすくめて言ってみたが、幽香はさっきのお返しなのか軽く無視してくる。

 

「此処の向日葵は夏の楽しみの一つだったけど、この分だと今年はもう見れないかもしれないわね」

「……アンタの力なら植物を急速成長させられるんじゃないか」

「出来ない事は無いかもしれないけど、なんでアナタ達(・・・・)を喜ばせるために成長させないといけないのよ」

 

幽香は横目で俺の事を見てくるが、今物凄く聞き逃せない一言を言った様な気がする。

俺は此処の様子を見に来たとしか言っていないのに、なんで幽香は俺が他の誰かを連れてくるみたいな言い方をしたんだ?

コイツと会うのはコレが二度目だし、お互いの近況を話すような間柄じゃない。

カマを掛けて来たって可能性もあるけど、そう言う回りくどい事をするような奴じゃないだろ。

 

「……一つ聞きたいんだが、一体何処でその情報を仕入れた」

「何処も何も結構噂になってるってだけよ。吸血鬼を倒したとか、冥界を滅茶苦茶にしたとか物騒な噂から、博麗の巫女を口説いて天女も侍らせているとかも聞いたわ」

「何処でそんな噂が流れてるのか知らねぇけど、とりあえず言わせて貰う。まず霊夢とはアンタの思っているような関係じゃないし、衣玖さんは龍神の奴の使いとして神社に来てるだけだ」

「……吸血鬼や冥界の噂は否定しないのね」

「いや、そっちは事実だから否定の仕様がないと言うか……」

「見た目に寄らず野蛮人ね」

「誰が野蛮人だ、誰が!」

 

流石に野蛮人と言われて黙ってはいられず、俺は思わず声を張り上げて幽香の事を睨みつけた。

しかし幽香は睨み付けられても臆すことは無く、何処かサドっ気のある笑みを浮かべてきた。

 

「そんな大きな声を挙げないでよ。見っとも無い」

「…アンタ、周りからよく性格が悪いって言われるだろ」

「わたしに正面からそんな事を言える奴なんて早々居ないわよ」

「なら俺が言ってやる。アンタの性格の悪さは八雲と同じかそれ以上だ」

「……流石にアイツと同列にされるのは心外ね」

 

八雲と幽香の間に何らかの確執でもあるのか、幽香は心底嫌そうに呟いた。

まぁ、この二人の間に何があろうと俺の知った事じゃないし、性格の悪さはどちらも同じ位だろ。

 

「まぁ、アンタの性格の悪さは一先ず置いておくとして―――」

「それは置いておかれたくないわよ」

「―――とりあえず今年はもう向日葵を見る事は出来ないんだな?」

「……そうね。わたしの楽しみが減るのは辛いけど、この様子じゃ無理でしょうね」

「そっか。なら、来年の夏に霊夢を連れて此処に来るから、その時は邪魔をするんじゃねぇぞ」

「幾らわたしでも馬に蹴られたくは無いわよ。……でも、アナタ達って本当に如何いう関係なのよ」

「……家主と居候だと思うぞ」

「普通、居候が家主をデートに誘ったりしないでしょう」

「んな事知るか。…それじゃ、俺はもう行くぞ」

「えぇ。精々刺されない様に気をつけることね」

「……なんでだよ」

 

幽香の良く分からん嫌味?に呆れながら、俺はアイツと別れて一人『太陽の畑』を後にする。

今年は向日葵が見られないと為ると、何処か別の場所を捜さないと行けないんだが……何処かあったかな?

大体の場所は霊夢と一緒に回ってるから新鮮味がないし、外の世界とやらに連れ出すわけにも行かないか。……まぁ一度も行った事が無いから出入りできる保障なんて何処にも無いんだけどな。

まぁ一人で考えて居ても仕方が無いし、こうなったら誰かの知恵を借りるとするか。

魔理沙や龍神に話すとからかわれるから除外するとして、衣玖さん辺りに相談してみるのが無難かな。

…でも彼女も常に神社に来てる訳じゃないし、まずは居場所がはっきりとしている人から聞いてみた方が良いか。

 

 

 

 

 

………

……

 

『太陽の畑』から移動した俺は、そのまま神社には帰らずに人里に寄り道をしていた。

雨が降っている所為で外を歩いている人の数は少なく、何処と無く何時もよりも閑散としている様に見える。

まぁこんな時期じゃ何か用がない限り外に出たりはしないか。

そんな事を思いながら、俺は道行く人に道を尋ねてこの里唯一の寺子屋へと向かった。

雨が降っているにも拘らず、寺子屋からは子供達の元気な声が聞こえてくる。

こんな鬱陶しい時期でも子供は元気だな~っと、呆れながらも関心しつつ、俺は寺子屋の裏手に回る。

窓から中の様子を覗き見つつ、部屋の片隅で作業をしていた尋ね人に窓越しから声を掛けた。

 

「上白沢さん、ちょっと良いですか?」

「ん、リュウ? そんなところから一体なにをしているんだ?」

「ちょっと相談したいことがあって。忙しいならまた後で来ますが」

「いや、大丈夫だ……と言っても、時間の掛かりそうな話なら後にしてもらった方が助かる」

「……そんなに時間は取らないと思いますよ」

「なら話を聞こう」

 

そう言って上白沢さんは作業の手を止めて、座ったまま俺の方に振り向いてくれた。

窓越しでの会話ってのも如何かとは思ったが、それほど時間の掛かる話題じゃないし、コレまでの経緯と此処に来た理由を簡単に話した。

すると上白沢さんは、俺が幽香と『太陽の畑』で会ったと聞いて、心底呆れた様な深い溜息を吐いた。

 

「はぁ~……。お前なぁ、あの風見幽香と会うなんて何を考えているんだ」

「いや、別に会いたくて会った訳じゃないですけど」

「まぁそうだとは思うが、アイツは妖怪の中でもかなり性質の悪い方だ。アリスみたいに友好的じゃないんだから、少しは気をつけろ」

「それについては知ってますよ。…いきなり攻撃してきたし」

「分かっているならもう会わない様にしてくれ。お前と風見が戦うなど想像するだけで恐ろしい」

「……さらっと俺の事も危険人物扱いしてません?」

 

幽香と同列に扱われた事に思わず聞き返すと、上白沢さんは呆れた様な眼でこっちを見てきた。

 

「お前は自分の力の強大さを自覚しろ。それはそうと、霊夢と逢引きするのに丁度いい場所だったな」

「いや、別に逢引きとかそんなんじゃないですからね? ただ霊夢と出掛けるってだけです」

「大して変わらんだろ。…まぁ、それはともかく結論だけを言うと私もそんな都合の良い場所はしらん」

「げ、本当ですか?」

「嗚呼。なにせ、この人里を除けば竹林と香霖堂くらいしか行かないからな。それ以外の地域は詳しくない」

「……そうですか」

 

上白沢さんの予想外の言葉に落胆する一方、他に幻想郷に詳しそうな人物は居ないか考え始める自分がいた。

古くから幻想郷に居る事を考えれば、龍神の奴か八雲の奴が適任なんだろうけど……あんまり頼りたくないってのが本音だ。

龍神の奴にはからかいのネタにされたくないし、八雲に聞いてもきっと碌な事にならないだろうから除外する。

そうなると……他に誰が居るんだ? 山には古い妖怪が住んでいるって聞いたけど、あそこに知り合いなんて居ない……と思うから行くだけ無駄か。

 

「さて、如何したもんかな」

「ふむ……場所ではないが、逢引きに適している催しなら今度の夏に行われるぞ」

「逢引きに適している催し?」

「ああ。ちょっと待ってろ、確か乾いてるやつがこの辺に…………お、あった」

 

目的の物を見つけたのか、上白沢さんは一枚の紙を俺に渡してきた。

その紙には大きく〝夏祭り開催〟の文字と、その日程などが手書きで細かく書かれていた。

時期としては梅雨が明けた後に開催されるみたいだが、もしかしてコレって上白沢さんが一人で書いたのか?

 

「えっと……これは?」

「見ての通り夏祭りを告知する為のビラだ。毎年開催されているんだが、お前達は全然顔を出さないだろ」

「顔を出さないも何も、俺が此処に来たのは一昨年の春ですし、去年は……ずっと宴会をやってたっけか」

「あの馬鹿騒ぎは本当に理解に苦しんだぞ。…まぁ、それはともかく霊夢と逢引きするならコレにしとけ」

「……祭りには出た事無いし、アイツを誘ってみるには良いかもしれないですね」

「そうだろ? 序でに霊夢の奴が来年以降の祭りを取り仕切ってくれれば万々歳だ」

「ん? 如何いう意味ですかそれ?」

 

上白沢さんの言葉が少々引っ掛かり、思わず聞き返してしまうと……彼女は本当に疲れたような顔をした。

こんな顔をする上白沢さんは初めてみるが、そんな顔をするくらいに面倒な祭りなのか?

 

「……元々この祭りは博麗の巫女が執り行っていた神事の名残なんだよ。巫女の神事に合わせて里の者が騒ぎ出したのが始まりなんだが、今から何代か前の巫女がその神事をやらなくなってしまってな。今では祭りだけが残っている状態なんだ」

「……先代の巫女は職務に忠実だったって聞いてたんですけど」

「その先代よりも前の話だ。あの博麗の血筋も相当古いをものだからな、廃れた神事など幾らでもありそうだが……少しくらいは手伝ってくれ。毎年準備が本当に大変なんだ」

「お、お疲れ様です……」

「別に神事そのものを復活してくれと言ってる訳じゃないんだ。ただ博麗の巫女が切欠になっているんだから、少しくらい手伝ってくれてもバチは当たらんだろ。大体―――」

 

祭りを執り行うのにストレスでも溜まっていたのか、上白沢さんは延々と愚痴を言い始めた。

別に愚痴を聞きに来た訳じゃないから、さっさと帰って霊夢を祭りに誘いたいんだが……今の上白沢さんを放って置くわけにも行かず、俺は雨が振り続けるなか小一時間ほど彼女の愚痴に付き合う破目になった。

ただ景色のいい場所を聞きに来ただけなのに如何したこうなったんだ?

 




今回は夏祭りに続くための話として書きました。
……しかし、この時期に夏祭りとか季節のギャップが凄いな。
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