竜が辿り着いた幻想郷   作:ベヘモス

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さぁ~って、いい加減貯まってるストック分を消化しないと。もうすぐ百話だっていうのに第三章分は結構残ってるしね。
あ、今回もリュウ視点でお送りします。


第九十七話 魔法の森の蟲事件

 

「「害虫の大量発生?」」

「そうだぜ」

 

夏の暑さに参って、母屋でダラけていた所にもたらされた魔理沙からの変な依頼。

なんでも『魔法の森』に巨大な害虫が大量発生して、ソイツ等が森の植物を食い荒らしているんだとか。

去年の梅雨頃にも、妖精から巨大ナメクジが出たって依頼があったが、今度は巨大害虫が出現したって訳か……。

 

「アンタの住んでる所って『魔法の森』でしょ? なんだってそんな所に虫が大量発生したのよ」

「そんなのわたしが知るわけ無いだろ。気が付いたらバカみたいに数がいて、木々や茸を食い荒らしてんだ。お蔭でわたしの店に人が来なくて参ってるって訳だ」

「魔理沙の店に人が来ないのはいつもの事でしょが」

「んだとー! おい、霊夢! 幾ら本当の事でも言って良い事と悪い事が有るぞ!」

「とりあえる落ち着け、鬱陶しくてかなわん。…それよりもなんで茸まで食ってんだ? あそこに生えてるのって、全部化け物茸だろ?」

「そんなのわたしが知るか。魔法の力でも身に着けたいんじゃないのか?」

「只の虫にそんな知能が有るわけ無いでしょ」

 

霊夢の言う通り、普通の虫にそんな知能があるとは到底思えない。

妖怪も余り寄り付かない場所だから、繁殖するには良い環境なのかも知れないが……どちらにせよ、普通の状況じゃ無さそうだな。

魔法の力云々は兎も角、何かの異変の前触れかもしれないし、一度調査に行った方が良いかもしれないな。

 

「魔理沙。その虫たちは、森のどこら辺で見られるんだ?」

「お? 手伝ってくれるのか、リュウ」

「なんかの異変の前触れでも困るしな。一応調査はしておかないと」

「……めんどくさいわね」

「本職の霊夢がそう言う事言うなよ……」

 

全くやる気を見せない霊夢に、俺は思わず呆れ果ててしまう。

確かに暑いこの時期に、森にまで行って調査するのが面倒なのは分かるけど、虫たちが何かを仕出かしたら動く事になるんだから、今動こうが後で動こうがやる事は同じなんだよ。

 

「ったく、巫女が調査をめんどがって如何するんだよ」

「これが霊夢なんだから仕方が無いだろ。……それで虫の場所は何処だ?」

「奴等にコレと言って決まった場所はないぜ、森全体が奴等の住処になっちまってる」

「森の広域調査か……それは面倒だな」

「結局お前も言うのかよ!」

 

魔理沙にツッコミを入れられつつも、俺と霊夢は『魔法の森』の虫討伐に出かける事になった。

場所が場所なだけに、余り派手な呪文は使えそうにないし、普段以上に気をつけて戦わないとな。

……それにしても、前にも巨大昆虫と戦った記憶が在るんだが……俺の気の所為か?

 

 

 

 

 

 

………

……

 

準備を終えて森にまでやって来たが、外から見る分には普段通りの陰鬱とした森のままだ。

この中に植物を食い荒らすほどの虫が居るとは思えないが、耳を澄ましてみると……奥の方から何らかの物音が聞こえてくる。

どの位の数が居るのかまでは把握出来ないけど、魔理沙の言う通り森が荒らされているのは確かな様だな。

 

「さって、どうやって調べていくかな」

「今回は魔理沙も居る事だし、手っ取り早く三人に別れて調べましょう」

「別れて行動ねぇ……」

「霊夢がリュウと別れて行動するだと?!」

「何よ魔理沙。私だってそう言う時くらいあるわよ」

 

霊夢から意外な提案が出されるが、この森を三人纏まって行動するのも効率が悪い。

効率重視で行くなら別れて調べた方が良いけど、魔理沙一人にすると何を仕出かすか分かったもんじゃないんだよな。

それに霊夢の装備も妖怪に効果的であって、只の虫には其処まで威力を出せる訳じゃない。

一応は針を持って来てるみたいだけど、木々が生い茂る森じゃあ何処まで使えるのか分からないか。

 

「……霊夢、悪いけど今回は魔理沙とコンビを組んでくれ。俺は一人で行動するから」

「えっ…?」

「ちょっと待てよリュウ。わたしは一人でも問題ないぞ」

「お前一人にすると、何を仕出かすか分からないからに決まってるだろ。……んじゃ、俺は東側を調べるからソッチは西側を頼むぞ」

「あ、ちょっとリュウ?!」

 

少々不安の残る二人を残して、俺は森の中に入り東側のエリアの探索を始めた。

森の中は胞子の影響で空気が悪いが、蟲に食われている所為なのか、何時もよりは呼吸しやすい感じがする。

このまま胞子が無くなってくれれば動きやすくなるんだが、それだと魔理沙やアリスが困るんだろうな。

あんな茸から魔法薬が出来るなんて信じられんが、実際に使ってる奴も居るし疑うのも馬鹿らしいか。

 

「もう! なんだって魔理沙なんかとコンビを組まないといけないのよ! コレなら変な事言わないでリュウと一緒に行けばよかった!!」

「……ちょっと待て、わたしなんかって如何言う意味だ!!」

「アンタが問題児だからに決まってるじゃない」

「普段から旦那に仕事を押し付けてる奴に問題児扱いされたくないぜ」

「……なんですって?」

 

後ろの方から不穏な空気を感じるが……きっと気のせいだろう。そうだと信じたい。

なにやら後ろから戦闘音のようなものが聞こえてくるけど、ただの空耳だと信じ込む事に決めた。

それよりも問題なのは、森の中を徘徊している巨大な虫たちの様子の方か。

魔理沙が言っていた通り、森のアチコチに通常の何倍もある芋虫や昆虫たちが、木の皮や地面に生えている茸を食べている。

 

虫が木の皮や茸を食うのも違和感があるが、それ以上に不思議なのが虫たちの行動の方だ。

何故か茸の傍で死んだように動かない芋虫や、何の前触れもなく突然共食いを始める虫もいる。

意味も無く岩を掘り返そうとしているのも居るし、どいつもコイツも頭がおかしくなったとしか思えない行動ばかり取ってる。

コイツ等の奇行の原因は、化け物茸の胞子にやられて幻覚でも見てるのか、この森独特の瘴気に犯されて頭が狂ったのかのドッチかだろう。

『魔法の森』ってのは、そう言うのが原因で人間も妖怪も寄り付かない場所に為ったって聞いてるしな。

それ等が原因で虫がおかしくなったのは分かるが、森に虫が蔓延っている理由には為らないか。

 

「……こりゃ、もっと詳しく調べないと駄目かもな」

 

俺はめんどくさそうに呟きながらも、早く調査を終わらせる為に歩を進める。

ドンドンと森の中に入っていくと、頭のおかしくなった五・六匹の虫が突然襲い掛かってきた。

相変わらず正気を保てているとは思えない動きだが、立ち向かって来るのならコッチも容赦はしないぞ。

俺は手の中に愛刀を取り出し、迫り来る虫たちの間を走り抜けながら、全て一撃で斬り捨てた。

刀に付いた微量の体液を振り飛ばし、刀身を鞘に納めると……真後ろから虫たちの奇声と、何かが噴出す音が聞こえてきた。

俺は斬り捨てた虫たちの事など気にも留めず、調査を続けるために森の奥へと進んでいった。

 

 

 

 

………

……

 

奥へ奥へと進むに連れて、虫たちの奇行はより酷くなり、中には頭から茸を生やしいる虫なんかも出て来た。

変なものは今までにも何度か見てきたが、此処まで変わった光景って言うのも中々無いぞ。

あの死骸を見る限りだと、俺達が手を下さなくても放っておいたら全滅してそうだな。

 

そんな事を考えながら森を歩いていると、視界の片隅に無数の虫たちに追い掛けられている緑の髪の少年の姿を発見した。

こんな所に人が居るわけ無いから、彼は十中八九妖怪なんだろうが……一体何をしてるんだ?

茸を取りに来て虫に襲われたって考えられるけど、なんとなくそうじゃない様な気がするな。

……まぁ、なんにしても助けて事情を聞けば変わることか。

そう考えた俺は、愛刀を鞘から抜いて、少年を襲っている妖怪の群れに突撃していった。

 

「だ、誰か助けてー!」

「其処の少年、下手に動くと怪我じゃ済まないぞ」

「……へっ?」

 

注意を呼びかけた俺は、少年を襲っている虫たちに向かって、無数の斬撃を飛ばした。

蟻みたいに空を飛べない虫はこれで片付くが、ハエみたいにすばしっこい奴には避けられてしまう。

空を飛んでいる虫は、標的を少年から俺に変えて襲い掛かってくる。

その数は大よそ十匹もいるか如何かってところだろうか。

虫たちは素早い動きで一斉に襲い掛かってくるが、俺は虫が接近するのに合わせて剣を振るい、次々と飛んでいる虫を斬り落としていく。

最後の一匹も難なく斬り落とし、剣に付いた体液を振り払ってから鞘に納めた。

 

「大丈夫か少年。こんな所に居たら命が幾つあっても足りないぞ」

「……………」

「ん? お~い、大丈夫か~」

 

少年に声を掛けてみたけど、彼からの返事はなく、ただ両肩を震わせていた。

虫に襲われたのが恐かったのかとも思ったが、如何も只の恐怖から肩を震わせている訳でも無さそうだ。

だとしたら、一体如何して肩を震わせているんだ? 俺はただ虫を斬っただけの筈なんだがな。

 

「な、なんて事をしてくれたんだ! もうちょっとで計画に使えそうだったのに!!」

「うおッ?! いきなり如何した!?」

「如何したじゃないよ! 僕が密かに育てていた虫たちを皆殺しにするなんて……幾らなんでも酷いんじゃないかな?!」

「……んな事言われてもなぁ~」

 

なんか訳の分からない理由で怒られているが、それよりも彼が言った言葉に気になる単語があった。

今確かに〝僕が育てた虫たち〟って言ってたよな? って事はだ、今回の騒動の原因はコイツになるのか。

こんな所で虫を育てて何をする心算なのか気になるが、彼は自分で育てた虫に襲われてたって事になるよな。

……なんて言うか、随分とマヌケな妖怪な気がしてきたぞ。

 

「な、何さその目は。僕に何か文句でもあるっていうの?」

「幾つかな。…まず一つ、何を企んでるのか知らないが面倒は起こすな。二つ、自分でも制御出来にない虫を育てるな。三つ、助けて貰っといて礼も言わないとは如何言う了見だ」

「そんなに一遍に言われても分かる訳ないだろ!」

「……んじゃ計画って何の事だよ」

「それは勿論、蟲の地位向上の為に決まってるだろ。僕たち蟲がどれだけ凄いのかを、人間だけじゃなくて妖怪にも思い知らせるのさ。その為に人も妖怪も滅多に来ないここで、邪魔になる巫女と戦える戦力を整えようとしていたのに……」

 

少年は崇高な目的であるかのように理由を語るが、興味の無い俺からしたら如何でも良い目的だ。

虫の地位を向上させるにしても、巨大な虫を生み出すってのは間違ってるだろ。

それに彼の顔をよく見てみると眼に光がなくて、何処か危ない雰囲気を漂わせてる。

恐らくは、この森で蟲の世話をしている内に自分も胞子の毒にやられたんだろ。物凄く世話の焼ける奴だ。

第一、標的に霊夢も入っているみたいだし、コレ以上コイツの好きにさせる訳にも行かないな。

 

「……言いたい事はよーく分かった。その上で言わせてもらうが……んな事、俺がさせる訳ねぇだろ」

 

俺は射殺さんばかりに睨みつけ、少年に向けて殺気を浴びせかける。

少年は直ぐに後ろに跳んで距離を取り、片手を挙げるが……コレと言って変化は起こらなかった。

慌てた少年は、何かを求めるようにキョロキョロを周囲を見るが、周りに居るのは相変わらず奇行を取っている虫ばかり。

恐らく周りにいる虫たちを呼ぼうとしたんだろうけど、この森の瘴気と茸の胞子にやられておかしくなった虫たちが、彼の言う事を聞く訳も無かった。

 

俺は力を使って少年の周りの大気を操り、風の塊とも言える大きな球体を創り上げる。

中に閉じ込められた少年は、なんとか抜け出そうと中でもがくが、風の塊を壊せるだけの力は持ち合わせていない様だ。

俺は風の塊の傍に立って、鞘の付いた愛刀を振りかぶって―――

 

「とりあえず、彼岸まで行って頭冷やして来い!!」

 

―――愛刀を力いっぱい振って、風の塊を遠くにまで吹き飛ばした。

物凄い速度で飛んでいく塊からは、中に閉じ込めた少年の悲鳴が聞こえた……様な気がするが、直ぐに遠くなった所為で確認する事は出来なかった。

全力で愛刀を振り抜いた所為だろうが、俺の予想以上の速度で飛んでいってしまった。

相手は妖怪とは言え、流石にこれはやり過ぎたかなぁ~っとも思うが、やり過ぎるのは何時もの事だし、イチイチ気にしていても仕方が無い。

 

「……さって、後は暴れてる虫を片付けながら霊夢達と合流するか」

 

俺は軽く背筋を伸ばした後、霊夢達が居る……筈の森の西側へと向かって歩きだした。

虫たちは俺が手を下さなくても、森の瘴気と茸の胞子にやられると思うが、森の外に出られても困るし、面倒でも始末しておかないとな。

 




前回が濃かった分、今回はやけにアッサリ感じるけど……これ前フリなんだ。
次回は三話更新するのでお見逃し無く。
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