出来に関しては……まぁ何時も通りです。
霧の湖に程近い森に、湖に住む
彼女等が何時何処で知り合ったのか、本人達ですら覚えていないが、こうして時々集ってはお喋りを繰り広げていた。
「と言う事があって、またしてもあの男にしてやられたんだ」
「リグルはバカだなぁ~。そんなこざいくなんてしないで、アタイみたいに正面からいどめば良いのに」
「私、チルノが神社に住む彼に勝ったって話聞いた事無いけど」
「あ、アレはアタイが変なのにかちをゆずってるのさ。本気を出せばアタイがかつ!」
チルノは、ミスティアの言をムキになって反論するが、誰も彼女の言う事を信じなかった。
強大な力を持った妖怪が一目おく彼に、妖精の彼女が正面から戦って勝てるなんて信じられる訳が無い。
「あー! 二人してアタイの言う事信じてないな!!」
「信じろって方が無理だって。妖怪の私から見ても化け物なのに、正面から彼に挑むなんて……無謀も良いところだよ」
「本当かは兎も角、聞いてる噂はどれもとんでもない物ばかりだからね。関わらない方が身の為だと私は思うな」
「「それは出来ない!」」
「二人して即答しないでよ……。ルーミアも黙ってないでなんとか言ってやって」
「…? お兄さんは良い人だよ」
「「「……………」」」
余りにも妖怪らしくない事を言うルーミアに、残りの三人は〝またか〟と呆れてしまう。
ルーミアにこの話題を振ると、彼女から返ってくる返事は何時も決まってコレ。
一年ほど前に一緒に猪を狩って以来、ルーミアはご飯をくれる彼の事を気に入ったらしい。
彼と余り接点のないミスティアと、口では悪く言ってるが何だかんだで嫌いじゃないチルノは特に気にしないが、同胞を数多く殺され、自身の計画を何度も邪魔しているリグルには、ルーミアのこの発言を素直に受け止める事はできなかった。
「ちょっとルーミア。君も妖怪なんだから、もっと誇りを持って生きた方が良いよ」
「誇りなんかじゃお腹は膨れない。そんなのを食べるくらいなら、わたしはお肉が良い」
「肉ならあの男を襲って食べれば良いじゃん。油断してるところガブーっと」
「リグル、それはセコイ」
「せこいって何さ!!」
ルーミアの言葉に食って掛かるリグルだが、他の二人は彼女を止めようとはしなかった。
彼の話に為ると意見の違いから、二人は毎回このように言い争ってしまうので、チルノとミスティアはすっかり止める気が失せてしまっている。
それにこうして言い争ったりしても、険悪な関係にはなることもなく、直ぐに元通りになるので必至に止める必要が無かったりする。
「お兄さんは良い人だから食べたくないし、あの人がいないとまた飢えるからいや」
「だから……少しは自分で獲物を獲りに行けって!!」
「あいた」
リグルがツッコミの心算でルーミアの頭を叩いた瞬間、彼女の頭の赤いリボンが解けてしまった。
彼女のトレードマークのリボンだが、三人とも只の赤い布としか思っておらず、リボンが解けた事など気にも留めてなかった。
頭を叩かれただけでリボンが解けるとは思えないが、長い事使い続けていた所為で布自体が古くなっていたのだろう。
……だが、ルーミアのリボンが地面に落ちた途端、何の前触れもなく赤い布は灰になって消滅し、彼女の身体から光すら飲み込んでしまいそうな程に暗い闇が噴出した。
「ちょっと如何したのさ、ルーミア。いきなり闇なんか噴出して……もしかして、今のがそんなに痛かった?」
「あールーミアを泣かせたな! あとで先生に言ってやろう!」
「怒ってるかもしれないけど、泣かせてはいないから! ゴメン、ルーミア。悪気はなかったんだ!」
「……ねぇ、二人とも。なんだか、ルーミアの様子が変じゃない?」
「「……えっ?」」
ミスティアの言う通り、リボンが取れたルーミアは普段とは様子が違っていた。
何かと子供っぽい印象を受けるルーミアだが、闇の中から見える彼女の瞳は虚ろで、何を考えているのか良く分からない。
何処を見ているのかも判断できないその瞳は、長らく友人関係を続けている彼女達にも、今のルーミアは不気味にしか映らなかった。
「る…ルーミア?」
勇気を出したチルノが、恐る恐るルーミアに声を掛けてみるが、彼女は録に反応を示さなかった。
益々心配に為る三人を他所に、虚ろな瞳のルーミアは小さな声でポツリと一言呟いた。
「…オナカ…スイタ……」
リュウSide
良く晴れた夏のある日、俺は霊夢を連れて紅魔館に遊びに来ていた。
神社に居ても暑すぎて堪ったもんじゃないから、フランドールと遊ぶついでに涼しい地下室に避難しに来ている。
日の光が全く入らないと言う事もあって、地下室は俺達の予想以上に涼しくて夏場は過ごし易い環境になってた。
今日はこのまま部屋に篭ってようかと考えていると、屋敷の外の方から何処かで感じた事の在る異様な力を感じ取った。
「…? なんだ今の」
「如何かしたのリュウ?」
「いや、湖の方から変な力を感じたんだが……気の所為か?」
「そんな事より、次はお兄ちゃんの番だよ! 早く取って!」
「あ、悪い悪い」
俺は感じた力の事を気にしつつも、フランドールに促されて〝ジェンガ〟とか言う積み木の一部を抜いて、そのまま一番上に置いた。
コレは咲夜が森近さんの店から買ってきたらしいが、このゲーム俺の予想以上に難しかったりする。
最初の内は、大量の木片が積み重なってるから気にしなくて良いんだが、ゲームが進むに連れて積み木のバランスが崩れてくるから、何処を如何抜けば良いのか考えないといけないから、意外と頭を使うんだよな。
今俺が新たに木を抜いた事で、順番は霊夢に移ったんだが……何処を抜くかで珍しく真剣に悩んでいる。
ゲームを始めて十分くらいは経ってるから、そろそろ誰かが崩してもおかしくないんだが……。
「……よし、此処ね」
何処を抜くか決めた霊夢は、その箇所に指を伸ばしたとき、天井付近の空間が突然裂け、其処から八雲がいきなり顔を覗かせてきた。
「はぁい、お久し振り」
「うわぁッ?!」
あまりにも突然の出現に驚いた霊夢は、驚きの余り積み木を乗せていた机に足をぶつけてしまう。
その時の衝撃で机が揺れ動き、バランスを崩した積み木は無残にも崩れ落ちてしまった。
「あ~ぁ……崩しちまったか」
「はい、霊夢の負け~」
「ちょっと待ちなさい! 今のは紫の所為であって、私の所為じゃないでしょ?!」
「言い訳なんて見苦しいわよ霊夢」
「元凶のアンタが言うなーッ!!」
好き勝手に言う八雲に激怒した霊夢は、机の上に散らばっている木片を何個か掴み、そのまま天井から顔を出している八雲に向かって投げ付けた。
だが八雲は、木片が当たる前にスキマの中に逃げ込んでしまい、霊夢が投げた木片は空を切って石造りの天井にぶつかった。
「あらあら、行き成り木片を投げるなんて礼儀がなってないね」
「アンタに示す礼儀なんて存在しないわよ」
「……それはちょっと酷いんじゃない?」
「そんな事より今日は何の用で来たんだ。ただ邪魔しに来た訳でもないんだろ?」
「えぇ。少し厄介な事が起きたみたいだから、霊夢と竜神さんに仕事依頼をね」
「「うわ、めんど」」
俺と霊夢はあからさまに嫌な顔をするが、八雲はそんな事お構い無しに理由を話してきた。
「竜神さんは感じてたと思うけど、とある妖怪の封印が解けたわ。だから、その妖怪の再封印か処断をお願いしたいの」
「処断って……穏やかじゃないわね。今の幻想郷にはスペカがあるのよ? 其処までする必要は無いと思うけど?」
「普通の相手なら良いのだけど、その相手が何でも食べちゃうような暴食屋の困った子でね。普通の処分だと人妖の双方に多大な被害が出るのよ」
「それで処断か封印なのか……。しかし、封印するって言っても如何すれば良いんだ?」
「彼女を封印したのは何代も前の博麗の巫女だから、霊夢が知ってるはずだけど……貴女、どの封印式か分かる?」
「全ッ然。封印術って言っても色々とあるから、どの事を言ってるのかさっぱりだわ」
「……だと思ったわ。全く、色ボケるのは勝手だけど、少しは修行もしなさい」
「いやよ、めんどくさい」
相変わらずの霊夢の一言に、妖怪の賢者の八雲も流石に呆れ果ててしまった。
まぁ、霊夢が修行をしないのは何時もの事だし、そんな事をイチイチ気にしていても仕方が無い。
それよりも問題なのは、八雲が言っていた封印が解けた妖怪を如何するかって事だ。
霊夢がどの封印式か知らないって言ってる以上、処断するのが一番手っ取り早いんだろうが……いきなり処断するってのもなんかな。
本当に碌でもない奴なら気兼ねなくやるが、あの時感じた力は知り合いの妖怪に似ていた。
そんな相手をいきなり斬り捨てるのは気が引けるし、まずは会ってみてから如何するか考えるか。
「考えは纏まった竜神さん?」
「まぁな。とりあえず会ってみてから考える事にした」
「随分と暢気ねぇ……。まぁ、方法は貴方達に任せるから後は宜しくお願いするわ」
言いたい事だけ言うと、八雲は何も無い空間にスキマを作り、そのまま何処かへと行ってしまった。
八雲が部屋から消えた後、机の上に小さなスキマが出現し、其処から霊夢が使っている札の束が落ちてきた。
「その妖怪を如何するにしても、とりあえず持っていけって事かしらね」
「多分そうだろうな。どちらにしても札は使う事に為るだろうし」
「やれやれ、変な所で準備が良いんだから」
口では文句を言いながらも、霊夢は机の上に置かれた札の束を手に取り、席を立ち上がった。
俺も霊夢についで席を立ち上がり、両腕を伸ばして固まっていた背筋を伸ばしていると、フランドールが面白く無さそうな顔でコッチを見ていた。
「むぅ……二人とも行っちゃうの?」
「悪いわね、フラン。面倒だけどコレが私の仕事なのよ」
「今度埋め合わせするから、それで機嫌を直してくれ」
「なら、今度来た時はウチに泊まっていってよ!」
「嗚呼、次に来た時は必ずな」
「……しょーがないわね。私も付き合うわよ」
簡単な約束を取り交わすと、フランドールは何時もの笑顔を見せてくれた。
彼女の笑顔を見た俺達は、そのままフランドールを残して部屋から出て、俺が異様な力を感じた湖周辺へと向かった。
リュウSide out