絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~【更新停止中】 作:黒鋼丸
始まりの500年、三界は平和であった。
神々の創った世界は広大であり、人々は十分な土地を持っていたからである。
魔力に満ちた暗き地『
光輝く聖なる地『
緑の溢れる豊饒の地『
続く500年は争いの時代となった。
伸ばされた腕が互いの頬に触れるようになったからである。
世界の境の小さな戦火が、いつしか三界を巻き込む大きな戦渦となった。
長い間、戦いは幾度となく繰り返された。
多くの戦費が費やされ、多くの命が失われた。
しかし何れの戦いも決着を見る事はなかった。
勝者は無く、全ての者が敗者となった。
争いのために力を蓄えては、争いによってそれを浪費した。
三界の民には互いを貫く剣はあっても、互いを理解するための言葉がなかったのである。
これを見て神はおおいに嘆いた。
しかし神々は三界の民の内に正しき者たちの在ることも知っていた。
彼らは心清く、知恵と勇気に優れた者たちであった。
神々の王は彼らを深く愛した。神は彼らのもとに御使いを遣わした。
御使いは空色の髪をした美しい女の姿をしていた。
御使いは神の言葉と魔法の品を携え、三界を巡った。
最初に御使いは魔界に下りた。
魔界には智謀に長けた青年がいた。
御使いは青年に神の言葉を伝え、漆黒のマントを与えた。
そのマントは身に着けた者を瞬きの間にどこでも望む場所へと運ぶことが出来た。
青年は神の言葉に従い魔界の王となり、戦を鎮めることを誓った。
次に御使いは天界に下りた。
天界には気高い徳を備えた少女がいた。
御使いは少女に神の言葉を伝え、純白の甲冑を与えた。
その甲冑を身に着けた者はどんな刃からも傷つけられることはなかった。
少女は神の言葉に従い、天界の王になり、世を治めることを誓った。
最後に御使いは獣人界に下りた。
獣人界には何事にも屈することのない勇気を持つ男がいた。
御使いは男に神の言葉を伝えた。
御使いは男には何も与えなかったが、御使いが男の身体に触れると、男はどんな鉄もどんな岩も
打ち砕く力を手に入れた。
男は神の言葉に従い、獣人界の王になり、三界を護ることを誓った。
3人の若き王たちは神から賜った力と共にトリニアス平原を目指した。
折りしも平原では三界の軍勢が対峙していた。
若き王たちは軍勢の前に立ちはだかった。
魔界の軍勢は青年に激しく炎や雷を浴びせかけた。
しかし漆黒のマントを身に着けた彼に届くことはなかった。
青年はマントの力で軍勢の中心へと飛び込み、司令官の襟を掴むと遥か祖国の城まで帰してしま
った。
魔界の軍勢は統率を失い、その場に立ち尽くした。
天界の軍勢は少女に無数の槍や矢を浴びせかけた。
しかし純白の甲冑を身に着けた彼女に毛ほどの傷も負わせることは出来なかった。
少女は甲冑の力で軍勢の中央まで進み、司令官の剣を真っ二つに折ってしまった。
天界の軍勢は戦意を失い、その場にひれ伏した。
獣人界の軍勢は男に夥しい数の岩や礫を浴びせかけた。
しかし男の拳は全ての岩を打ち砕いた。
男は己の力で軍勢の中心まで進み、司令官の陣地を粉々に叩き壊してしまった。
獣人界の軍勢は勇気を失い、その場に泣き崩れた。
若い王たちは軍勢を治めると平原の中央に歩み出て手を取り合った。
するとそこに再び御使いが現れて彼らを祝福した。
彼らはお互いの言葉を理解出来るようになった。
やがて軍勢はそれぞれの世界へと退いた。
三界の民は喜び、彼らを王として迎え入れた。
王は民に言葉を伝え、三界に争いは無くなった。
これを見て神はおおいに満足したが、さらにもう1度御使いを地上へと遣わした。
御使いはトリニアス平原の上空に学び舎を建て、三界の王にこれから王はこの学び舎での試練を
潜り抜けた者を選ぶようにと伝えた。
これが『
そしてそれから5000年後の現代。
これは、三界からは異世界と呼ばれる人間世界で、かつて名君と言われた魔王と聖王との間に生
まれた双子の兄弟と、彼等を取り巻く人々の愛と戦いの全く新しい学園生活の物語である。
~第0話~ここは何処なんだよおっ!!
人は常識から外れた出来事が起こると、混乱するものである。
現状の彼等がその例だ。
「一体どうなってやがんだ!?」
1人の少年は林らしき場所で唸っていた。
背中の中間近くまである白銀のロングヘアを後ろで緩く1つに結び、右が紅で左が紫の
首にはリングペンダントを揺らし、身長は高いが華奢な体格、顔は女にも子供にも見える童顔。
そしてトーンの高い声。
これらの特徴から女子と思われがちだが、今年で18を迎える正真正銘の男子。
名を“
真雄は手にある木刀を握り締め前方の存在を睨みつけていた。
「何なんだ、コイツら……」
「兄さん……」
睨みつける真雄の後ろに、もう1人の少年の姿だあった。
綺麗に整った白銀のショートヘアに、右が蒼で左が緑の
身長は低く華奢な体格、顔は女にも子供にも見える童顔。
そしてトーンの高い声。
これらの特徴から女子と思われがちだが、彼もまた今年で18を迎える正真正銘の男子。
名を“
そんな古暮兄弟が動揺している訳、それは彼等の目の前にいる存在だった。
彼等の目の前には黒い6匹の犬がいた。
犬嫌いでもない限り犬ならそれ程 恐怖を抱く程ではない。
それが普通の犬ならば。
古暮兄弟の前にいる犬は、普通とは違う異形な部分があった。
それは目だ。
犬達の目は本来白い筈の強膜が血の様に赤いのである。
それだけでも異形だが、何より異形なのは目が3つあるのである。
普通の犬ならこんな事はあり得ない。
(くそ!一体何なんだよコイツらは!!)
(どうして、こんな事に………)
そう思いながら2人の脳裏に、先程までの出来事の記憶が蘇っていた。
◇◆◇◆◇◆◇
「ふぁ~ぁ、今日もうぜぇ授業だったぜ~。いや~疲れた疲れた」
大あくびをしながら、真雄は李雄と、
そして腐れ縁の悪友達と学校から帰宅の途中だった。
「アンタねぇ、授業中 寝てただけでしょ?」
大あくびをする真雄に対してそう言い放つ少女が1人。
そこそこ長い茶髪を水色のリボンで後ろで結び、その青い瞳には、真雄に対する呆れと怒りが混
ざりこんでいる。
名は“
どの位 腐れ縁かと言うと、まず古暮家とは家がお隣さん。
それに加え近所付き合いも良かった為、3人が出会うのはかなり早かった。
それに加え、3人はなぜか行く学園も、その学園でのクラスも、そして席替えしても席が近かっ
たりと、神懸りな縁がある様だった。
また、優希は古暮兄弟より2日誕生日が早いこともあり、昔からなにかとお姉さんぶっては2人世
話を焼いてくるのだ。
今もこうして真雄に説教するのもその為である。
「まぁまぁ優希。兄さんには言うだけ無駄だよ」
そう言い後ろから優希を抑えるのは、大概 李雄の役目だ。
「そうそう、俺のこたぁかまうなよ」
「アンタねぇ、そんな事 言ってるとお弁当作ってあげないわよ!」
そう言い放つ優希の言葉にやや反応する真雄。
実は、古暮兄弟の母は家事全般が全くダメであり、特に料理は見た目も味も最悪で、それを食べ
た古暮兄弟は3日間 生死の狭間をさ迷った事があるのだ。
これにより地獄を見たくない古暮兄弟は、李雄は自ら食事を作る様になり、真雄は隣の優希に援
軍を求めたのである。
それ以降、古暮家の食事は全て李雄と優希によって行われているのである。
「へ、そーかい。李雄、今後は俺の分の弁当も頼むぜ?」
「え?」
そう言い視線を李雄に向ける真雄に戸惑う李雄。
「李雄ー、ダメよこれに餌上げちゃ」
それに対し優希は李雄の静止に掛かる。
兄と姉代わりの幼馴染に睨まれ、李雄は戸惑うばかりだった。
「あはははははは! オメーらっていつ見てもおもしろいなぁっ!!」
そんな状況を見て笑う少年が1人。
褐色の肌にワイルドにボサボサした金髪と琥珀色の瞳、顔にはやや幼さが残る物の、袖を始めと
した所々破れている学ランの下からは引き締まった筋肉がよく見える。
彼の名は“
中学時代よりの悪友であり、よく笑い、よく食い、よく動く、典型的な運動系のバカの言葉の
似合う少年だ。
「お前な、人の事が言えるのか?」
そう言い呆れた表情で勇を睨む1人の少年がいた。
腰まである長い紫色の髪を後ろで緩く結んび、首からはヘッドホンをぶら下げた、黄色い色の瞳
の美男子。
彼の名は“
「真雄の居眠りはイビキをしてないだけまだマシだ、百歩譲ってな。だがお前の居眠りのイビキは
デカ過ぎる」
「しゃーねぇじゃん、出るんだから」
魁の言葉に対し、しれっと言い返す勇。
この真雄と優希が口ゲンカして李雄は抑えようとする、勇が魁の説教を受ける。
これが彼らのいつもの日常だった。
「そういや、
不意に気になった真雄が魁に言い放つ。
悠馬と幻八は、どちらも中学時代よりの悪友であり、普段ならこの2名もプラスして帰るのだが
今日に限って何故か2人は来なかった。
「あぁ、悠馬は何か限定本を買いに本屋へ、幻八も何か用があるとか言ってたな」
「あっそ」
魁の言葉につまらなそうに返した真雄は、自宅への帰還を急ぐ。
「ならいいや、さっさと帰って昨日の続きだ!」
そう言い駆け出そうとする真雄。
「なぁなぁ、アレ何だ?」
が、不意に放った勇の言葉に真雄を含めた全員が足を止め、勇が指差す方に視線を向ける。
そこは、人通りの少ない住宅街の道路。
その住宅街の道路の隅っこに、奇妙な物体があった。
いや、それは物体と言えるのだろうか?
黒く輝き、渦巻くその姿はまるでブラック・ホールの様だ。
「……何だ、ありゃ?」
真雄の言葉に、一同は首を傾げた。
アレは一体何なのか。
得体の知れない黒い渦に、皆はその場を動けなかった。
「ウガ、コレなんだろうな」
訂正、約1名 好奇心で動けた奴がいた。
バカこと勇である。
「おい勇! 不用意に近づくなよ!!」
心配した魁が声を掛けるが、勇はなりふり構わず近づいて行く。
「おもしれぇ」
そしてその勇に便乗するかの様に真雄も好奇心で近づいて行く。
「ちょ、兄さん!!?」
「ちょっと! 危ないわよ真雄!!」
真雄に注意する李雄と優希だが、そんな事を聞く真雄ではない。
「おい勇、あの渦にどっちが早く触れるか競争しようぜ。負けたらなんか奢るって事で」
「おっ、いいぞ!!」
そう言い互いに一気に走り出す。
「お、おい、バカ!」
「兄さん! 勇!」
「ちょっとこのバカコンビ!!」
心配した3人も2人を追い渦に近づいて行く。
「俺が先だ!!」
「オラが勝つ!!!」
そしてほぼ同時に2人が渦に触れた時だった。
不意に黒い塊が、ピカ――――――――ッ!!!と輝きだしたのだ。
「な、何だ!!?」
「ウガッ!?」
2人が触れた瞬間、渦から眩いばかりの光が輝きだし2人を包み込んでいく。
「えっ!!?」
「な、何なの!?」
「っ!!?」
いや2人だけではない。
残りの3人をも飲み込んでいく。
その輝きの中で、皆は意識を失っていった。
◇◆◇◆◇◆◇
そして気が付いた時、古暮兄弟は見た事も無い林の中にいたのだ。
しかもここに居たのは古暮兄弟だけであり幼馴染と悪友の姿は無く、2人は幼馴染と悪友を探し
つつ、ここが何処なのかを探ろうとしていたらこの犬の群に出くわしてしまったのである。
(えぇい、考えても埒があかねぇ!)
悩んでいたが答えが出ないと判断した真雄は頭を横にと振った後、木刀を構え直す。
元来「物事を深く考えるのは性に合わん」と自分の性格は把握している真雄は、兎も角この状況
を打開する事を優先とし、木刀を持つ手に力を込める。
「兄さん!」
「李雄、テメェは下がってろ! 邪魔だっ!!」
真雄の言葉に李雄は後ろへと下がり、それを確認した真雄は犬達の群れの内、1番自分に近い奴
に向かって駆け出す。
普通、犬と人間では身体能力などの差から人間に勝ち目は無い。
真雄の動きに対し犬達は牙を剥き襲い掛かる。
だが、この犬達にとって不運だったのは、彼が普通じゃない点にあった。
「オラァァッ!!!」
襲い掛かって来た犬の1匹に、真雄は木刀で迎撃する。
昔から身体能力に関しては人間離れしていた真雄は、喧嘩の経験力と剣道で鍛えた木刀さばきで
犬の1匹を沈める。
「ギャウゥン!」
犬の悲鳴が林に響く中、他の犬達が真雄に襲い掛かる。
「ちぃっ!」
真雄は果敢に木刀を振い、襲って来た犬に木刀を振り下げる。
犬は先程やられた1匹のように悲鳴上げ倒れるが、その隙を突き、3匹目の犬が真雄の背後を狙っ
て牙を立てる。
「ヴオォォォォンッ!!」
「くそがっ!!」
それに対し真雄は、木刀を持っていない方の腕による裏拳を3匹目の犬の顔に叩き込む。
「ギャウゥン!」
それにより犬の悲鳴が林に響く。
だがこれにより、真雄はある事を見落としていた。
「ヴオォォンッ!!」
「っ!」
(しまった!!)
真雄が3匹目の犬を相手している内に、別の1匹の犬が真雄の後ろにいた李雄に向かって行ったの
だ。
「李雄!!」
「っ!!」
肉食の獣は群を襲う時、狙うのは弱い者と決めている。
その方が被害も最小限で済むからだ。
犬の群は3匹を犠牲に真雄を足止めし、その隙を狙い真雄より弱そうな李雄を狙ったのである。
だが、この犬達の判断は過ちであった。
「くっ――――――はっ!!」
「ギャウン!!?」
犬は、一瞬、何が起こったか理解できなかったであろう。
李雄に襲い掛かった犬は、地面に叩きつけられ失神していた。
犬の攻撃に対し李雄は蹴りを放ち、犬はその攻撃により失神、白目をむく事となった。
李雄もまた、真雄と同じく武術の心得があるのだ。
最も、李雄の性格上 使う事はあまりないのだが。
「バウッ!」
この李雄の意外な攻撃に、群のボスは危機感を感じたのか一声吼えると、残った仲間達と共に林
の奥へと去って行った。
「……行ったか……」
犬の群がいなくなった事に安堵した真雄は、木刀を肩に背負い李雄の方を向く。
「無事か?」
「何とか……」
そう返す李雄の声は、どこか元気が無かった。
無理もない。
いきなり光に包み込まれ、気が付いたら見知らぬ場所で3つ目の犬という異端な生物に襲われた
のだ。
不安にならない方がおかしい。
「くそがっ! 一体ここは何処なんだよおぉぉぉぉっ!!!!!!」
ここがどこか分から無い事と、幼馴染と悪友の安堵が分からない事へのイラ立ちから、真雄は唸
りながらその辺りの木に攻撃したりして暴れまくった。
まるで子供が駄々をこねる様に。
「ケッ、まるで駄々をこねる
「誰がガキだ!! ってか同じ事2度も言わんで良いだろぅがあぁぁっ!!!!!」
「ちょ、兄さん落ち着いて。と言うか誰に言ってるの?」
李雄の言葉に「あん?」と機嫌悪そうにしながらも、真雄はある事に気づく。
「今のセリフ、誰が言ったんだ?」と。
声がしたという事は、どこかに人がいるのでは。
そんな考えをした真雄は振り向いた瞬間。
「…………は?」
固まった。
何故なら振り向いたそこには、人間からはかなりかけ離れた生物らしき物がいたからである。
それを一言で言い表すならば、カボチャだった。
白い目、犬歯の様な牙を生やした口を持ったカボチャの頭に、魔法使いが被るような黒い尖がり
帽子と黒いコートを着たその姿は、まるでハロフィンにでも出てきそうなカボチャのお化けの様な
ものだった。
「………カボチャの人形?」
「ぬいぐるみ?」
「アァンッ!? 誰が人形だ! 誰がぬいぐるみだコラアァァッ!!!!」
『しかも喋ったああぁぁぁっ!!!!???』
真雄と李雄は、益々混乱した。
3つ目の犬が出てきたと思ったら、今度は言葉を話すカボチャのお化けの様な物が出て来ては誰
だって驚く。
「ケッ、一々 驚いてんじゃネーよ………うぉっ!!?」
古暮達を馬鹿にした態度を取っていた生き物と思われるカボチャは、不意に自分におきた出来事
に一瞬何が起きたのか理解できなかった。
気づくと、先程まで自分の視点で見ていた物が、全てひっくり返っているではないか。
いや、ひっくり返っているのは景色ではない。
よく見ると、自分の体を真雄に掴まれ、ひっくり返されている。
つまり、景色ではなく自分がひっくり返されているのだ。
「テメー! 何しやがんだ!!!」
「おい、スピーカーはどこだ?」
カボチャの言葉を無視し、真雄はカボチャの体中を調べまくる。
「ちょ、兄さん?」
「李雄、手伝え。どっかにスピーカーがついてる筈だ」
「んなもん付いてネーよ!!」
「何? んじゃあ、どっかに腹話術師がいるのか?」
「だから俺は人形じゃねぇって言ってんだろうがぁぁぁぁっ!!!!!」
真雄の言葉に怒るカボチャはジタバタしながら真雄の手から逃れようとするが、剣道を始めとし
た武芸と喧嘩で鍛えられた真雄の握力は強く一行に逃げ出せれない。
「だったら口だ! 口の中に何かあるのかもしれねぇっ!!!」
体に無いなら口の中。
そう判断した真雄はカボチャの口に手を伸ばし、こじ開けようとする。
「うがあぁっ!! テ、テメ、なにひやがる!!」
「ん?」
「兄さん?」
カボチャの口をこじ開けた真雄は、ある事に気づく。
まずカボチャの歯だ。
犬歯の様に鋭い歯は、間違いなく本物の様だ。
さらには舌、そして唾液までちゃんとある。
「歯に舌に唾液………」
「兄さん、これって………」
その存在に、古暮兄弟は視線をカボチャへと向ける。
「お前、人形じゃなかったのか!?」
「ぬいぐるみじゃなかったんだ………」
「だから先からそう言ってんだろうがあぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
古暮兄弟に対して怒りが爆発したカボチャは火事場の馬鹿力により、真雄の腕から抜き出る事に
成功した。
「ふー、ふー、ったく何て奴等だ」
「おいカボチャ野郎」
「俺はカボチャじゃねえっ!!」
真雄の言葉にカボチャは怒りをあらわにするが、真雄は「知るか」の一言で言い返し、木刀をカ
ボチャに向ける。
「テメェが人形とかじゃ無い事は分かった。だから全てを説明しろ!! テメェは一体何で、ここは
何処なのかをなっ!!」
「兄さん、それ人にものを聞く態度じゃないよ」
「どう見てもコレは人じゃねぇよ」
真雄の爽やかな回答に李雄は「うっ」と言葉を失った。
「テメェは人の形してなきゃ礼儀もしねぇのかよ!!」
「うるせぇんだよっ! テメェのどこが人だ! とっとと俺の質問に答えやがれっ!!!」
「兄さん、お願いだから落ち着いて!」
真雄とカボチャの口ゲンカの悪化を恐れた李雄が、2人(?)の間に入り宥めようとする。
「ね、ねぇ、カボチャくん?」
「だからオレはカボチャじゃねぇっ!! オレには“アンゴルモア”って名前があんだよっ!!」
李雄の言葉にカボチャ、もといアンゴルモアは己の名を明かし、古暮兄弟に向かって己の目が輝
き始める。
「な、何!?」
「何だぁっ!!?」
アンゴルモアの目の輝きに、古暮兄弟は妙な感覚を感じた。
何か、やな予感がする。
「死ね!!」
『っ!!?』
アンゴルモアの言葉に殺気を感じた古暮兄弟は、咄嗟にアンゴルモアから逃げる様にその場から
横へと飛び伏せたその瞬間、アンゴルモアの目から光り輝く光線、いわゆるビームが発射された。
古暮兄弟は間一髪、咄嗟の判断によりビームを避ける事に成功し、ビームはそのまま古暮兄弟の
後ろの木々を直撃。
木々は焼け焦げ、ドスーン、と大きな音を立てて倒れた。
「……マジかよ……」
「……び、ビーム?」
先程まで強気だった真雄も、さすがにこれには驚きを隠せず、
同時に2人は、改めてこのアンゴルモアが只者じゃない事を自覚する。
「ケケケケケケッ! ビビりやがったかチキン共がっ!!!」
驚く古暮兄弟にアンゴルモアはケラケラとバカにする様に笑い出す。
「………なぁ李雄」
「なに?」
不意に声を掛けて来た真雄二首を傾げる李雄。
「あのカボチャの笑い方、誰かに似てねぇか?」
真雄の問いに李雄はやや考え、その答えに行き着く。
「………幻八?」
「だよな」
李雄の回答に、うんうんと頷く真雄。
幻八とは、古暮兄弟と腐れ縁の悪友の1人の名前であり、笑い方が独特でこのアンゴルモアとど
こか似ているのだ。
「最も
「あははは……」
真雄の言葉に乾いた笑いをする李雄。
◇◆◇◆◇◆◇
(………こいつら何考えてやがんだ?)
そんな状況の古暮兄弟を見ていたアンゴルモアは、心中でいろんな意味で動揺していた。
この2人は先程、自分の放ったビームで死に掛けたかもしれない筈なのだ。
にも拘らず、この2人は今 笑っている。
この2人は神経が図太いのか、それともタダ単にバカなのか、それがアンゴルモアには分からな
かった。
「………おいオメェら、何で笑ってんだ?」
気になったアンゴルモアは思い切って2人に尋ねてみた。
「あん? あぁ、テメェの笑い方が俺らの悪友に似てたもんだからよ」
「ゴメンね、そう考えたら、ちょっと可笑しくて………」
その古暮兄弟の言葉に、アンゴルモアは「そんな理由かよ」とあきれ果てた。
(やっぱコイツらタダのバカだ)
「んなこたぁ どうでもいい」
呆れるアンゴルモアに対して、真雄は立ち上がると木刀を向ける。
「先のビームはどういう仕組みだ? それと先の質問にも答えろ!」
「オメェ、先のビーム見て何も思わねぇのかよっ!!」
アンゴルモアは呆れるを通り越していた。
先のビームを見て、真雄は引く所か先程と全く変わらない表情で、アンゴルモアに問いだしてい
るのだ。
「……どうやらオメーは頭がいってるみてぇだな」
「そう見えるか? ならとんだ節穴だな、テメェの目玉は」
そう言い互いに睨みあう真雄とアンゴルモア。
真雄は余裕がある様に笑いながら、アンゴルモアは気に食わないといった表情でお互いに引く気
は無い様に見えた。
「ちょ、ちょっと待った!」
とここで動いたのは李雄だ。
李雄は2人の中に割って入り、互いの顔を見ながら口を開く。
「兄さん落ち着いてよ。どう考えても兄さんの尋ね方は礼儀に反してる!」
そう言いながら李雄はアンゴルモアの方を向きながら、ポケットから1つの袋を取り出す。
それは、李雄が今日作ったクッキーの入った袋だった。
「アンゴルモアさん、取り合えず今日の所はこれで許してくれませんか?」
「……あのな、クッキー如きで俺の機嫌をとろうってのか?」
「まぁそう言わずに」
そう言い李雄はやや無理やりクッキーの1つをアンゴルモアの口に押し込む。
アンゴルモアは「むごっ!?」と声を上げながらも、クッキーをむしゅむしゃ食べてみる。
「………お、結構うまいな」
そして意外な美味しさにアンゴルモアは先程の怒りを忘れて微笑んだ。
「気に入ってもらえて嬉しいよ」
そのアンゴルモアの言葉に李雄は嬉しそうにニッコリと微笑む。
その微笑みに、アンゴルモアは先程の怒りは何処へやら、すっかり落ち着いていた。
「あ、アンちゃん!」
「ん?」
「え?」
「あん?」
そこに不意に声が響く。
声のした方に一同が向くと、そこには1人の少女がいた。
年齢は古暮兄弟と同じ位であり、褐色の肌に黒いリボンを結び後ろで2つに分けた腰まである銀
髪、そして古暮兄弟が何より目を引いたのは、その少女の服装だった。
一言で言うなら、それはメイド服だった。
黒いロングスカートの似合う、古暮達の悪友の1人が見たら泣いて喜びそうなメイド服だった。
「おう、リュアナか。どうかしたのか?」
「どうかしたって、アンちゃんがいつもいる所で爆発した様な音が……」
アンゴルモアにリュアナと呼ばれた少女は、ここでようやく古暮兄弟の存在に気づく。
「え、えっと………」
「おいアンタ、ちょっと聞きてぇ事があんだが……」
「兄さん、聞き方が悪い」
古暮達に驚くリュアナにいつも通りの態度で、ここが何処なのかを聞こうとした真雄を制した李
雄は軽く微笑みながらリュアナに語りかけ様とする。
「あの、ちょっとお伺いしたい事があるんですけど、良いですか?」
「あ、えっと………」
李雄の問い掛けに、リュアナはやや戸惑っている様だ。
どうやら人付き合いが苦手なタイプ、そう真雄は見抜いた。
「あー、あれだぜリュアナ。コイツら人間界からの漂流者だ」
「え?」
「は?」
「はい?」
◇◆◇◆◇◆◇
「人間界からの漂流者、だと?」
不意に言い放ったアンゴルモアの言葉に、リュアナは驚きの表情となり古暮兄弟は首を傾げた。
何故なら、アンゴルモアの言った言葉、人間界だの漂流者だのと、妙に聞きなれていない様な、
聞いた事ある様な言葉に、2人の脳内は混乱しそうになったのだ。
同時に、先程の3つ目の犬やこの喋るカボチャ、アンゴルモア。
そして先のアンゴルモアの言葉をつなぎ合わせると、おのずと答えが見え出してくる。
よくライトノベルなどでよく使われるネタ、普通ならありえない筈の答えが。
「おいおい………まさかとは思うが……異世界トリップ……か?」
「ま、まさか………」
真雄の言葉を否定したかった李雄だが、自分も同じ事を考えていたので否定が出来ない。
異世界トリップ。
漫画やライトノベルなどで使われる、自分達の住む世界とは違う異世界へと行ってしまう事である。
普通ならありえない。
だが、自分達の目の前であり得ない事が起こっていた。
それが、ここが異世界と考えれば辻褄が合う。
「って事は、ここは俺らの居た世界………人間界ってのとは違い世界なのか?」
「え、えっと……そうなります……」
真雄の言葉にリュアナはオドオドしながらも答える。
「え、えっと、とりあえず、お名前は?」
リュアナの問いに、2人はそういえば自分達はまだ名乗ってなかった事を思い出す。
特に礼儀正しい李雄はその事を忘れていた事を悔やんだ。
「失礼しました。僕は古暮 李雄と言います」
「古暮 真雄、そいつとは兄弟で兄だ」
そう言いそれぞれ名乗った古暮兄弟に対し、リュアナは驚きの表情となっていた。
「……コグレ……マオ……リオ………」
「あん?」
「あの、どうかしました?」
リュアナの様子がおかしい事に首を傾げる古暮兄弟に対し、やがてリュアナはコレまでにない位
の笑顔を古暮兄弟に向けるとその場で頭を大きく下げる。
「は?」
「あ、あの、何か?」
いきなりのリュアナの行動に、頭上に?マークを飛ばす古暮兄弟に対し、リュアナははっきりと
した声で言い放つ。
「お待ちしておりました、
そのリュアナの言葉に、真雄と李雄は益々首を傾げるのだった。
『~第0話~ここは何処なんだよおっ!! 《終》』
どうも、黒鋼丸です。
「
本作は、「絶対★魔王 ~ボクの胸キュン学園サーガ~」を原作とした二次小説ですが、「絶対
★魔王」は様々な理由で「クソゲー」と言われ、発売前の人気は何処へやらのゲームです。
自分は動画で見た事があるですが(今ではその動画も消えちゃってますけど)、サイトを見つけた
時から小説書きたくて苦労の末に投稿いたしましたが……ぶっちゃけ、原作いろんな意味で崩壊。
まず主人公の違い。
これはまぁ二次小説ではよくある話だけど、ちょっと違う。
主人公“古暮 真雄”。
原作では“木暮 真央”なんですよねぇ。
読みは同じだけど漢字違う、外見違う、性格も全然違う。
二次創作によく見られる原作主人公最強モノじゃあつまらないので、性格も外見も違うけど名前
の読みだけが原作と同じ主人公にしてみました。
さらにこの作品には主人公がもう1人、双子の弟“古暮 李雄”。
兄とは性格も目指す王も正反対のもう1人の主人公。
主人公が2人居るという時点で原作が結構崩壊。
さらにさらに、異世界に行く羽目になった原因がさらに違う。
原作ではオヤジが穴に落としましたが、こっちでは次元の歪に巻き込まれて。
しかもその際に優希及びオリキャラまでもが付いて来ちゃうし、もう崩壊しまくり。
こんな崩壊しまくりですけど、コレを読んでくれた読者の皆様方、何卒、長~い目で見届けてく
ださい!!
ではまた次回、お会いしましょ~う。