絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~【更新停止中】 作:黒鋼丸
魔力と神気をコントロールする為に三界の学園、トリニアス学園に転入した古暮達。
5時限目の数学、インキュバスの教師ジャックが李雄に奇妙な視線を向ける中、真雄は市街地裏
路地で、三界の不良達とケンカを始めるのだった。
「けっ、こんなもんか」
市街地の裏路地に、そんな詰まらなそうに呟く真雄と、その真雄とケンカした結果、道路に横た
わる羽目になった不良達の姿があった。
「うぅぅ……」
「くっそ……」
「な、なんで……」
「て、テメェ、ホントに人間か!?」
そう言いながら睨んで来る不良達に、真雄はニカッとほほ笑みながら答える。
「いんや、俺の糞両親それぞれ魔族と天族で、人間の血なんざぁ一滴も流れてねぇらしいぜ」
そう言いながら木刀を担ぎながら真雄は倒れている不良の1人に近付く。
「所でよぉ、俺が勝ったんだから俺の言う事 聞いてもらうぜ」
「ぐっ………」
真雄の言い分に抵抗を試みる不良だが、真雄にボコボコにされ指1本 動かせれず、渋々と真雄の
言う事を聞く以外の道は無かった。
「そんじゃま、行くとすっか」
そう言いながら真雄は裏路地から市街地の表へと歩き出した。
◇◆◇◆◇◆◇
「ふぅー、食った食ったぁ」
学園島の市街地にある一件のファミレス。
そこから腹をポンポンと叩き、満足そうな表情の真雄が出て来た。
「な、なんつー食欲だ……」
「おいおい、あの聖王候補生並だぞ……」
「奴の胃袋は底なし沼かよ……」
その後ろから、すっかり懐が寒くなった不良達が出て来た。
そう、真雄がケンカに勝った事で不良達に命じた事、それは腹が減ったのでメシをおごれという
命だったのだ。
最初、不良達はその程度の事かと侮っていたが、真雄の暴食とも言える無限の食欲に、流石に汗
だくになっていた。
「あっ、そういやよ。この学園で一番強いのって誰だ?」
その時、不意に真雄は不良達にそんな事を聞いて来た。
その目は、まるでこれから冒険にでも行く少年の様に輝いている。
(すっげー目が輝いてる)
(まるでガキだな)
(ホントにこいつ、先まで俺達を倒してた奴なのか?)
「おい、どうなんだよ?」
「あ、あぁ。やっぱ王候補生の人じゃねぇか……じゃなっかた、ないっすか?」
真雄の目に一筋の汗をかきつつ、不良達はやや動揺しながら答える。
それに対し真雄は、何処か難しそうな表情になった。
別にあの3人の事を聞いて何か思う事があったからではない。
「別に敬語とかめんどいからいい。普通に話せ」
そう、ただ単に敬語を使われるのが嫌だっただけだったのだ。
「へ、は、あぁ」
「んで、その候補生の中じゃ誰が1番
「あー、やっぱエヴァンじゃねぇか? あの
「スケバンねぇ……」
その不良達の言葉に、真雄の脳裏に校庭での
体格では圧倒的な差があったにも拘らず、
聞けば彼女は歴代の獣王を輩出している竜人族の出身で、戦闘能力に限れば三界においても最強
との事だ。
「いや、エストレイアも侮れないんじゃねぇか? 神気を纏った剣撃 使やあ近・中 両距離行けっ
ぞ」
「それだったらクリスも強いぜ。武器の扱いに関してならエストレイアより上かも」
「遠距離なら魔法 使えるセンシアが有利か?」
「成程な。ならその4人以外にゃ誰がいる?」
不良達の説明に納得を感じた真雄は、他に誰かいないのかを尋ねる。
「他っつたら、ユーロとかブレイとかか? 傭兵種族だし」
その言葉に真雄は首を傾げた。
ユーロは傭兵種族であるギガースとして知っているがブレイという男の名は始めて聞いたのだ。
「ユーロってのはあの変態だろ?」
「あぁ。変態紳士で有名だぜ」
「んじゃ、ブレイってのは?」
「奴も傭兵種族の1つ、
その言葉に、真雄はセンシアの説明を思い出した。
蟲人族。
ギガースと並ぶ傭兵種族の一角であると同時に、今尚も生き続ける生き続ける数少ない存在であ
る。
「んで、そのブレイってどんな奴なんだ? 戦い方とか、性格とか」
そう言い強者への興味がそそられる真雄は不良達に尋ねる。
だが、その問いに不良達はどこか表情が青くなっていた。
「ん? どうした?」
「いや…さ。あのブレイって奴はさ……」
「ハッキリ言って……変態だな」
真雄の問い掛けにようやく絞り出した言葉は、変態の一言だった。
「変態って、ユーロみたいなか?」
「いや、アレとは全く違う意味の変態だ」
「もうアイツとだけは2度とケンカしたくねぇな」
そう言い何やら燃え尽きた様に真っ白に化した不良達。
「ん、そうか。なら、他に誰かいねぇのか、強え奴は」
「他つったら、エヴァンと並ぶ戦闘力を誇る
「人狼族?」
その言葉に、真雄は新たなる興味が湧いた。
人狼とは、俗に「狼男」または「
の事である。
一般的には満月の夜に変身し、人に襲いかかる事で有名だが三界ではどうなのかは真雄は知らな
いが、恐らくこれまで見た種族から変化して襲いかかるなどという事は無いだろう。
「俺は人狼族ってのを知らねぇが、そうとう強えのか?」
「あぁ。人狼族は獣人界の辺境に住んでる少数民族なんだが戦闘能力に限れば竜人族にも匹敵する
らしいぜ」
「実際、獣王を輩出した事もあったらしいからな」
その不良達の話に真雄はさらに強い興味を感じた。
竜人族に匹敵する強さという事もだが、何より何故か人狼族という種族に強さ以上に何かを感じ
るのである。
「そのカグヤってのはどの位 強えんだ?」
「そうとう強いらしい。あのエヴァンと獣王を競える程らしいからな」
「へぇ。他にゃ誰かいないのか?」
「後は……武道部のケルロル。素でも強えが水中なら最強レベルだぜ。前に海でクラーケン仕留め
てたぜ」
「うっほぉ、よりどりみどりだな」
そう言い不良達の言う生徒達に目を輝かす真雄。
「他には。他にはどんなのがいる!!?」
「後はエストレイアの従者のサーシャも結構 強いらしいぜ。」
「そういやエストレイアといや、奴と並んで聖王を競えるイザナミのイズミとかな」
「イザナミ?
そのイズミという者の名、そしてその種族の名に首を傾げる真雄。
伊邪那美とは、日本神話において天地開闢の際に神世七代の最後に生れた神産みにより日本列島
と日本の多くの神を生んだ創世の女神にして死した後、一日に千の命を奪う事を誓った冥府の女神
でもあるが、無論この世界における種族なのだから神と言う事は無いのだろう。
「そいつ等って、どのくらい強いんだ? 俺が今戦ったらどうなる?」
『瞬殺されるな』
「あ゛っ?」
その不良達の即答に真雄の声のトーンが変わり、その声に不良達はビクッと震え出した。
(や、やべ、ちょっと調子に乗りすぎたか?)
(ま、マジで
(こ、今度こそ殺される!?)
真雄のドスの利いた声と先程ボコボコにされた経験から不良達は完全にヤバイと感じ取った。
「俺が瞬殺される……すなわち俺より強いねぇ………く、くくくくく……いいねいいねぇ、楽しい
ねぇ、楽しみだねぇっ!!」
が、意外にも真雄は特に起こった様子を見せず、ましてやその強さの差に恐れる様子もない。
むしろ闘争心が更に燃え上がっている。
「おんもしれぇ! 今は勝てねぇってんなら徐々に強くなって倒すまでだ!!」
『な、なんつー自信』
その真雄の自信満々というか、前向きなポジティブ思想に不良達は唖然となると同時に、真雄の
不思議な魅力を感じていた。
「よっし、ならまずは経験値を稼がねぇとな。ファンタジー世界ならやっぱ戦闘による経験値で
Lvアップだ!!!」
そう言い意気揚々と歩き出した時だった。
「む?」
不意に真雄は足を止め、視線を裏路地の方へと視線を向ける。
「どうしたんだ?」
「……匂う、ケンカの匂いだ!」
首を傾げる不良達に対しそう答えた真雄は裏路地の方へと走り出した。
その真雄の行動に驚いた不良達は、驚きつつもついて行く。
そしてその裏路地には、確かに複数の不良達がケンカをしていた。
「どこに目ぇつけとんだ我ぇっ!」
「そりゃこっちのセリフじゃいっ!!」
「いいぞーやれやれ!!」
「どっち賭ける?」
「俺はデカイのに」
「んじゃ俺はもう片方の方へ」
そんな声が張りあがる中、真雄は細くほほ笑んだ。
「いいねぇ、俺も参戦だぁ!!!」
そう言い真雄は木刀を手にケンカする不良達の中へと突撃して行った。
◇◆◇◆◇◆◇
真雄が裏路地にて不良達とケンカを繰り広げようとしていた頃、学園は6時限目を迎えようとし
ていた。
教科は英語。
何故異世界に英語の授業があるのかは永遠の謎だ。
そしてその担当は。
「では皆さん、始めるわよ」
つるっぱげオカマ教頭ことザビエラだった。
彼はその規則に厳しい性格から、真っ向から逆らえる生徒は少なく、ましてや彼の行う授業を
サボったりからかったりする者などさらに少ない。
「ウガッ! 河童先生!!」
が、そんな数少ない人物がザビエラの目の前に1人いたりした。
その名は篠原 勇。
「ぷ、ぷははははははっ! イサムっち最高ーっ!!!」
「ぷぷ、あっはははははははははっ! い、イサイサ、アンタおかしすぎーっ!!!」
その勇の発言にアリッサとチマのコギャルコンビは大爆笑。
それ以外にも所々から声を抑えた様な笑い声が聞える。
「笑うんじゃありません!! 大体私は河童じゃないわ!!!」
その笑い声にザビエラは一喝。
その大声と迫力に笑い声は収まった。
「え~、でもどう見ても河童ダ。頭が」
が、
「あのな勇、この際100歩譲って先生の頭が河童だとしよう」
「ちょっとシノハラ カイくん? それはどういう意味かしら?」
そこへ見かねた魁が説得に入るが、その際の発言に血管が浮き出るザビエラ。
だが魁はそれを無視して説得を続ける。
「だがな勇、河童ならば水掻きがある筈だろ? 甲羅がある筈だろ? 見て見ろ、先生の何処に
そんな物があるか?」
そう言いザビエラに視線を向ける魁と、その魁に釣られ視線を向ける勇。
「理解したな勇」
「ウガ」
その魁の言葉に頷いた勇は、ゆっくりとザビエラに近付いて行く。
「先生……」
「あ、うん、分かってくれた? 私は……」
そう言い自分が河童ではないとザビエラ言いかけた時だった。
「何で水掻きと甲羅 取っちゃったダ? 勿体ねぇダ!!」
勇は全く理解していなかった。
「今の会話でどうやったらそう言う答えにたどり着くんだぁっ!!!!」
その勇の予想を斜め行く言葉に魁の叫び声に等しい声が教室に、いや学園中に木霊した。
「あっはははははは! イサムっちマジで最高!!」
「ぷっはははははは! イサイサ、アンタどんだけよ、あっははははははは!!!」
「ケケケケケ、バカもここまで来ると爆笑コントものだぜ!!」
そんな勇のバカさにまたしてもアリッサとチマが、更にはアンゴルモアも笑い出し、もはや授業
どころではなくなってしまった。
「ちょっとシノハラ イサムさん!!」
「おう委員長、フルナームめんどくせぇからイサムでいいダ」
「そんな事はどうでもよろしい!! アナタ授業の邪魔をする気ですか!!!」
「ウガ? 何のこっちゃ?」
「無理ですユーメリアさん。バカに効く薬はこの世に存在しないんです」
ユーメリアが勇を叱りつけようとするが効果は皆無。
魁に至っては、既に諦めているのか頭を抱え机に伏せてしまった。
「あ、あの、カイさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫よリュアナ。これいつもの事だから」
そんな魁を心配するリュアナに、これまた頭を抱える優希が説明をした。
結局、この勇のバカ騒ぎにより授業は流れて行くのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「起立、礼」
委員長ことユーメリアの号令と共に、今日の学園でのやるべき事は全て終わった。
「ふ、ふああぁ………終わった……」
その事に気が抜けたのか、李雄は欠伸をしてしまう。
「リオっちでば、欠伸もかんわいぃ~。どうしたらそんな声が出るの?」
そんな李雄の姿を見たアリッサとチマがやって来た。
「リオリオ、ちょこっと顔上げて見て」
「え? は、はぁ」
そのチマの申し出に李雄は素直に顔を上げた。
するとチマとアリッサは李雄の首をマジマジと見つめる。
「わぁお、喉仏全然ない」
「マオマオといいリオリオといい、アンタら本当に男子?」
「あの、何度も言う様に僕も兄さんも男だから、特に兄さんの前でそんな事言っちゃダメだよ」
そう言い苦笑しながらも2人の事を心配そうに見つめる李雄。
その視線に、アリッサとチマはやや顔が赤くなった。
「……ふふ、ホント、リオっちて優しいね」
「まっ、このチマちゃんの隣に立つぐらいなら認めて上げるわ」
「?」
そのアリッサとチマの言葉に首を傾げる李雄。
どうやら2人が何を言っているのか理解していない様だが、その首を傾げる仕草がさらに可愛さ
を増している事に自覚は0の様だ。
「さてと。優希、帰る前に商店街で買い物をしようと思うんだけど」
そう言いながら優希に視線を向ける李雄だが、いつもならすぐに返事をする優希はノム達の所に
いた。
「それじゃ、交換ね」
「えぇ、いいわよ」
「ありがとうございます!」
「……やったー♪」
「優希、ノムさん、ニムさん、ネムさん、何してるの?」
その優希とノム達の会話に首を傾げた李雄は4人に尋ねる。
「あぁ、ノムちゃん達 人間界の物に興味があるみたいだから、ちょっと貸してあげたの」
「この腕時計って、ずいぶん小さい時計ね」
「腕につける為に細かく精巧に作られてるね」
「………けんきゅうの、しがいがある」
そうやら腕時計を貸したらしい。
TVも携帯もあるのに腕時計が無いのは不思議な話である。
「優希、あの腕時計って………」
「うん、
「あ、あの……」
そう言い李雄の声の下、優希がやって来たと同時にリュアナが何かを尋ねたそうな表情だ。
「真雄様を探しに行った方がよろしいのでは………」
「いいわよあのバカ」
「大丈夫ですよ、兄さんの事だからお腹でも減ったら電話してきますよ。それよりも今晩の献立だ
けど………」
そう言い李雄の言葉と共に今日の献立を考えだす。
その様はまさに主婦3人による会話の如しだ。
「ちょっと、リオさん」
そこへユーメリアが李雄の声をかけて来た。
「ユーメリアさん、何か?」
「アナタ、何故優希さんとリュアナさんと一緒に今晩の献立を?」
「あれ? 委員長 言ってなかったけ」
そのユーメリアの質問に答えたのは優希だった。
「私達、寮に空きが無いから近くのバラックで一緒に暮らしてるの」
「なっ!!??」
その優希の言葉にユーメリアは驚いた表情だ。
「りゅ、リュアナさんもですか!?」
「は、はい。私は……真雄様と李雄様に身も心も捧げた身ですので………」
そう言いユーメリアの言葉に、顔を赤くしながら答えるリュアナ。
それに対し、ユーメリアはプルプルと体を震わしだした。
「あ、あぁ………」
「? 委員長?」
「あの、ユーメリアさん、どうかしましたか?」
「いや、どうもこうも、な」
ユーメリアの態度に優希とリュアナが首を傾げる中、魁はその原因に察しがついたのか、
軽くため息をしながら答えた瞬間。
「あ、アナタ達、何を考えてるんだすかっ!!!!!!」
ユーメリアの怒鳴り声が教室中に木霊した。
「
「だんじょななさいにして、なに?」
「席でオナラする? 優希とリュアナ、オナラなんてしてないダ」
「勇、言葉も意味も全然違うから」
ユーメリアの言葉にチマが首を傾げ、勇に至っては完全に言い間違い、そこに魁がツッコミをか
ます中、ユーメリアは優希とリュアナに視線を、というか説教する様に睨みつける。
「私は、ベルトラス様から2人のメイドをするよう頼まれています」
「私だってオジさんやオバさんから真雄と李雄をよろしくってたのまれてるし、それに李雄と献立
考えたりするの
「そう言う問題じゃありません!! 年頃の男女が同じ部屋にいる事に問題があるのです!!」
「ウガ、部屋はちゃんと別々ダ」
「勇、話がややこしくなるからお前は黙ってろ」
そう言い勇を止めた魁は、ユーメリアに視線を向ける。
「ユーメリアさん、アナタの言いたい事は大いに理解できます。しかしこれは李雄達の両親、並び
に先生方の許可の下 生活をしているのです。いくらアナタが正論を説こうとも、こればっかりは
何ともならないと思いますが」
「う……」
その魁の言葉に、ユーメリアは言い返す事ができなかった。
先生達が認めている上に、古暮達の両親はかつて魔王と聖王を務めていたベルトラスとマリア。
その2人と先生までもが許可しているのでは、如何にユーメリアでも反論ができないのだ。
これぞまさに、権力の力である。
「うわぁお、カイっちユメりんを黙らせちゃった」
「すご、あの口うるさいユメりんを」
「さて、それじゃ帰ろっか」
その魁の言動力にアリッサとチマが軽く驚く中、魁は李雄達にそう言い教室を後にしようとしつ
つ、その途中でユーメリアの方に視線を送り口を開いた。
「ですが、アナタの忠告だけは頭に入れておきます。では」
そう言い魁は改めて教室を後にし、李雄達と廊下を歩き出した。
「それじゃ、そろそろ商店街へ……」
「あ、リオさん達。今 帰りですか?」
そこへ背後から声が掛かり、李雄を始めとした面子は後ろを振り向く。
そこには声の主であるフィルとセシリーの姿があった。
「フィルミリアさん、セシリーさん」
「オッス!」
「我々は今からですが、御2人も?」
「いえ、ボク達はこれから喫茶に行くんです」
そのフィルの言葉に、喫茶?と首を傾げる勇。
「この学園、喫茶店があるんです。今日はフィルちゃんと一緒に、そこのケーキの試食に行くんで
す」
「なに、ケーキ!?」
そのセシリーのケーキの言葉に反応する勇。
「ケーキの試食ですか」
「はい。セシリーお姉ちゃんはお菓子作りが得意んです」
「それで新しいお菓子作りのアイディアの為に、こうしてフィルちゃんと時々食べに行くんです」
「ウガ! オラも行くダ!!」
そのフィルとセシリーの言葉に、勇は目を輝かし、口からヨダレを滝の様に流しながら2人に視
線を向ける。
「おい、そのヨダレ何とかならんのかお前は」
「ウガガァ♪」
「褒めてねぇよ」
「ほえ? 今ので何言ってるのか分かるんですか?」
「長い付き合いの腐れ縁の家族ですので」
そう言いながら頭を抱える魁。
「えっと……勇じゃないですけど僕も良いですか? 僕もお菓子作りの為に試食してみたいです」
「ほえ、リオさんもお菓子作れるんですか?」
「ハッキリ言って、私もお菓子じゃ李雄に勝てないわ」
そう言いため息を付く優希。
女の意地や誇りもあるのか、男の李雄に菓子作りで負けているのは少なからずショックの様だ。
「では、皆さんで行きましょう。美味しい物はみんなで食べた方がより美味しいですし」
「ウガ! 行くダ行くダァーッ!!!」
「お前は少し落ち着け」
そう言いはしゃぐ勇を抑える魁。
こうして、李雄達は喫茶店へと向かうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
トリニアス学園の喫茶店は校舎内に存在する。
一般の喫茶店にも勝るとも劣らない、静かで落ち着きのある雰囲気だ。
しかも喫茶店とは言うが、コーヒーやケーキだけでなく、レストラン並に食事のバリエーション
がある。
その為、昼休憩にここで食事をする者も多い。
それでも、大きな窓より見える森林の緑と日光、更にあくまで喫茶店らしい木製の作りにより落
ち着いた感じがする……筈だった。
「こ、これは、一体………」
魁が喫茶店の出入り口でそう唖然となるのは無理のない事だった。
本来、皆が落ち着いてコーヒーやケーキを楽しむ喫茶店には、いかにも悪ですといわんばかりに
制服を改造し武器を携えた不良達が多数、全席を占領していたのである。
「なに、これ……」
「はわわ、喫茶店が不良さん達にせんりょうされちゃいました~」
「あらあら、これは大変ですね」
「て言うか、何でこんなにいんのよ」
そんな不服そうというか不安が駆け巡る面子だが。
「おい、メシまだか!?」
「急げやこらぁっ!!!」
不良達の怖さに言うに言えない。
「おい、オラ達にも席よこせ」
この
「んだコラァ、文句あんのか我ぇっ!!!」
「おう、あるダ!!」
「あん? 言うじゃねぇか」
そう言い勇に詰め寄る不良達。
一触即発と思われたその時。
「おい、たかが席ぐれぇでわめくな」
1つの声が響き、不良達の動きが止まる。
同意に魁達は声のした方に視線を向け驚いてしまった。
何故ならそこには、多くの不良に囲まれながら食事を貪る真雄の姿があったのだ。
「よぉ」
「何がよぉだ! 何してんのお前!?」
「メシ食ってんだ」
「そんな事 見ればわかるのよ!! 大体アンタは……」
「おい」
真雄のマイペースな表情と態度に、魁と優希が怒りを顕わにするのに対し1人の不良、というか
辺りの不良がギロリと優希達を睨んで来たのだ。
「テメェ、アニキに文句あんのか? あぁ?」
「ぶっ殺されてぇの君?」
「ヒャッハー、命知らずだねぇ」
そう言いながら不良達はある者は武器を手にし、ある者は拳を構え、またある者は手から魔法陣
を生み出し攻撃態勢を取り始めた。
「ひっ」
「うぅ……」
「はうっ」
「あ……」
その不良達の殺気に優希達女子はビクつき、魁は女子達を守る様に前に出る。
「やめねぇか」
だが、ここで思わぬ待ったが掛かった。
真雄だ。
「しかしアニキ」
「いいんだよ、そいつ等は人間界の時からの腐れ縁+クラスメイトだ、大目に見ろ。つかメシ食い
中にうるせぇ」
その真雄の言葉に不良達はしぶしぶと殺気を納め、席に戻った。
「おう、テメェらも食いに来たんだろ? 遠慮はいらん、座れ座れ」
「何でお前が仕切ってんだよ」
「今この場において俺に逆らえる奴がいないからだ」
「ケッ、何ぬかしてんだか………」
その真雄の傍若無人な言葉にアンゴルモアがバカにした様にほほ笑んだ。
『あぁん?』
その瞬間、不良達が武器を手にその矛先をアンゴルモアに向けた。
「ま、真雄様!」
「よせテメェら、カボチャの戯言だ」
その行動にリュアナが声を上げるのにほぼ同時に真雄は不良達をやめるよう言い、その言葉に不
良達は渋々と武器を収めた。
「兄さん、いつの間に不良達のアニキに?」
「ん? 午後の授業サボってる間」
そんな中、李雄はいつの間にやら真雄の隣の席に座りそんな事を聞きだしていた。
それに対し真雄は特に気にも止めずいきさつを話しだした。
何でもケンカして負かした相手から奢らせたりしている内に、いつの間にやら負かした相手から
アニキと呼ばれる様になっていたらしい。
「お前相変わらず変なカリスマ性を持つよな」
「おう、褒め言葉として受け取っとくぜ」
魁の言葉にそう言うと同時に、真雄は食べていた骨付きの肉を食い終わり、その席を立つ。
「おっし。腹いっぱいになった事だし、次のケンカ相手 探しに行くか。行くぞテメェら」
「まだやるんだ……」
その真雄の言葉に呆れる李雄。
「あ、あの、真雄様」
「あん?」
そこへリュアナが真雄を呼び止めた。
「あ、あの、今晩の献立なんですけど、何かご希望は……」
「別にねぇよ」
そのリュアナの言葉を素っ気なく返す真雄。
その態度にリュアナはやや沈んだ表情だ。
「このボンクラ……」
「真雄、お前なぁ……」
「アンタねぇ……!!」
そんな状況にアンゴルモア、魁、優希はそれぞれ真雄に呆れと怒りを感じる。
だが次の瞬間、それはあっさりと消えてしまう。
「テメェの作るメシは俺が食って来た中でも美味の部類だ。何作っても問題ねぇよ」
「え……あ」
その真雄の言葉にリュアナが驚いた瞬間、リュアナは見た、真雄のやや照れたほほ笑みを。
李雄と同じ、本当に褒めたりする嘘偽りのない天然の笑顔を。
ただ李雄と少し違うのは、やや顔が赤い所だった。
どうも真雄は照れ屋な所があるらしい。
「そんじゃ、メシよろしく」
「は、はい!!」
その言葉と共に、真雄は不良達と喫茶を後にした。
「………はぁ、真雄様ぁ~」
「……アイツ、時々すごいって俺は思う」
先程の真雄の言葉にうっとりとなっているリュアナを見て、魁はそんな事を呟いた。
「確かに、真雄と李雄って変な所でそっくりだわ……」
「え? どこが??」
「しかも自覚0かよ、このボンクラ兄弟」
「はう、マオさん以外にも優しい笑顔でしたぁ」
「あらあら、マオさんもリオさんと同じ笑顔ができるんですね」
魁に続き他の面子もそんなことを口走る。
「ん? おい勇は…………?」
その時 魁は勇の姿が消えている事に気づき辺りを見渡す。
するとあっさりと見つかった。
「フガ、フガ……」
真雄達が食い散らかした食事後に残っている、骨をガブガブと食べていたのだ。
「勇! 人の食い残しは食うなって言ってるだろ!!!」
「だって勿体ないダ」
「骨まで食べて……アンタはハイエナか!!!」
「いやぁ~、それほどでも~♪」
『褒めてない(ねぇよ)!!』
そんな勇の食欲に魁、優希、アンゴルモアがツッコミをかます中、リュアナと李雄は喫茶の人と
共に、食事後を片付けていた。
「すみません、お客様」
「いえいえ、兄の食い散らかしたものですので」
「真雄様の後始末でしたら、メイドである私が」
「ケッ、あのボンクラの弟ってのも大変だな」
そんな律儀な李雄に、流石のアンゴルモアも感心している。
「ねぇ李雄」
「ん? 何?」
その時、不意に優希が李雄にしか聞こえない小声で李雄の耳元に語りかけて来た。
「喫茶の後、ちょっと私と一緒に屋上に来て」
「え?」
その優希の言葉に首を傾げる李雄であった。
◇◆◇◆◇◆◇
トリニアス学園、校舎、屋上。
ここに、2つの人影があった。
「ふぅ~、良い風~♪」
「うん、そうだね」
先程の約束通り屋上までやって来た優希と李雄である。
尚、セシリーとフィルはそのまま帰り、勇はどこかへ遊びに、魁は探索、リュアナは真雄を探し
に、アンゴルモアは何処かへ行ってしまった。
「それで優希、どうしたの?」
「ふっふっふ~、これを見よ!!」
そう言いながら優希はカバンの中から一冊の本を取り出した。
辞書の様に分厚いが、それ以外は特に変な所は無い
筈なのだが李雄はその本みた瞬間、何故か妙な違和感を感じていた。
「それは?」
「ふふん、先ノムちゃん達に腕時計 貸した時に代わりに借りた魔法の本よ!」
「魔法の本!!?」
その優希の言葉に李雄は軽く驚いてしまった。
確かに魔法でもモンスターでもいる
さか優希がノム達からそんな物を借りるとは思わなかったのである。
何より優希に魔法に憧れる様な趣味など無かった筈だ。
「優希、どうしてそんな本を?」
「決まってんでしょ。
そんな李雄の疑問にあっさりと、当たり前の様に答える優希。
古暮兄弟を元に戻す。
つまり、角が生えたり髪が生えたりしなくなる様にするつもりらしい。
「え、えぇと、本気?」
「当たり前でしょ。私は
せる!!」
そう言いギュッと握りこぶしを作る優希に、李雄は何処か心配そうな表情になった。
(大丈夫なのかな………)
李雄が心配するのも無理は無かった。
これまで魔法とは無縁の人間界に住んでいた李雄達にとって魔法とは未知の領域だ。
ましてや魔王と聖王の息子で魔力やら神気やらがあるという古暮兄弟ならいざ知らず、ただの人
間である優希に果たして魔法などができるのだろうか。
ただ李雄はそんな理屈以上に、優希のある事が心配だった。
(優希、いっつも僕達の事になると無茶ばっかりするのに……)
そう、何より心配だったのは優希の行動パターンだった。
優希は古暮兄弟の保護者及びお姉ちゃんを自称しているだけに、古暮兄弟の事になると昔からど
んな無茶でもしてしまう、寧ろこっちの方が危なっかしくて心配になるほどだ。
「やっぱやめさせ………ん?」
その時、李雄は気づいた。
自分がどうするかと悩んでいる間に優希が本を開けながら、何やらブツブツと呪文の様な物を唱
えている事に。
その呪文と共に優希を中心に風が巻き起こっている事に。
そして風と共に学園の上空に暗雲が立ち込め、しかも辺りの空は赤く染まっている。
「な、何だ!?」
「しっ! 今、集中してるんだから邪魔しないでよ」
「いやあの優希、ちゃんと周り見て! なんか変だよ!!?」
「え?」
その李雄の言葉に優希もようやく気付いた。
「おかしいよ。いくら三界がファンタジーだからって、こんな天気昨日は無かったし放送でもやっ
て無かったよ!?」
「な、何よ。何がどうなって……」
そのあまりの出来事に驚いた時だった。
優希はうっかり魔法の本を手から滑り落としてしまった。
そして次の瞬間、本は眩い閃光を放ち出し、それと同時に暗雲より一筋の稲妻が屋上に降り注い
だ。
「きゃあぁっ!?」
「な、何だ!!?」
その光と爆風に、2人は飛ばされてしまうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「ふわぁ~………んぐ」
一方、喫茶を後にした真雄は校舎近くの森林に不良達と共に来ていた。
「へぇ、ここは昼寝に最適そうだな」
「おっ、分かるぜアニキ。ここポカポカしてて気持ち良いだぜ」
「しかもこの辺ってあんま人 来ねぇし」
そう言いながらその場に寝っ転がる真雄と不良達。
「しっかし、次は誰にケンカ売ろうかねぇ~。センシアとかは強そうだが、さてはて」
「いやアニキ、流石に魔王候補生っすよ相手は」
「俺も建前上はそうだけど」
「真雄様〰〰〰〰」
寝っ転がりながら話をしていると、不意に真雄を呼ぶ気子覚えのある声が真雄の耳に響く。
「ん? リュアナか」
その声に上半身だけ起こした真雄は声のした方へと視線を向ける。
そこにはこちらに駆けて来るリュアナの姿があった。
「真雄様、こちらでしたか」
「よぉリュアナ。どうした?」
「すっげー、アニキメイドさんまでいるのか」
「しかも、結構 可愛い」
そのリュアナの登場に不良達から歓声の様な声が上がる中、真雄はその場を立ち上がり、リュア
ナに近付いて行く。
「どうかしたのか?」
「あの、真雄様。差し出がましい様なのですが、ここで寝るのはおやめになった方が……」
「あん? 何で??」
そのリュアナの予想して無かった言葉に真雄は首を傾げた。
「最近この辺りにはモンスターが出る様なんです」
「ほぉ、さすがファンタジー世界。そりゃ楽しみだ」
「出るというのはその辺りにいる様な野良モンスターではないんです! 最近ではドラゴンの様な
大型モンスターも現れる様になってるんです!!」
「へぇ、ドラゴン」
そのリュアナの発言に、真雄の脳裏に学園早々にドラゴンの亜種であるワイバーンを見た時の事
を思い出した。
ハッキリ言ってあの時ワイバーンを見た時、確かに恐怖はあった。
だがそれ以上に、強者への挑戦という闘争心が恐怖を凌駕していたのだ。
「へへ、いいねぇ。ドラゴンとの対決が出来るってのはゲームだけと思ってたが、ここならリアル
で出来るって訳だ」
「真雄様………」
その闘争心溢れる真雄を心配そうに見つめるリュアナ。
「真雄様、私は……」
「危険な目に合って欲しくないってか?」
その真雄の言葉に頷くリュアナ。
「……
そう言いながら木刀を手にする真雄。
「何だってかまわねぇ。竜でも人でも、俺を満足させてくれりゃあ………」
それで良い。
そう言おうとした真雄だったが、その時 真雄はある事に気づいた。
自分達の上に何か丸い影がある事に。
そしてその影は徐々に上から落ちて来て、こちらに向かっている事に。
「真雄様?」
「っ!!??」
首を傾げるリュアナを無視し、真雄は視線を上に向ける。
そして見た。
上から落ちてくる黒い物体を。
それは明らかに、自分達の数倍の大きさを誇っている事を。
そしてそれを受ければ確実にマズイ事を、真雄はこれまで様々なケンカと危険を冒して来た経験
から瞬時に理解した。
だから真雄は口を大きく開けた。
そして叫んだ。
「逃げろおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!」
その真雄の絶叫と共に、黒い物体は落下した。
ドスウンッという凄まじい音共に。
『~第9話~転校日早々!?その6 《終》』
どうも、黒鋼丸です。
今回の話により、真雄は不良達の大アニキとなりました。
何故そんな事が可能だったのかはいずれ説明するとして、今回の最後は真雄も李雄も大ピンチ!?
次回、何が起こるのかお楽しみに~♪