絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~【更新停止中】 作:黒鋼丸
魔力と神気をコントロールする為に三界の学園、トリニアス学園に転入した古暮達。
そんな中、李雄は自分達を元に戻そうと奮戦する優希の魔法に巻き込まれ、
真雄は配下にした不良達とリュアナと共にいる所に、黒い影が降り注いできた。
「う、うぅ………」
トリニアス学園、屋上。
優希の持つ魔法の書により発動した稲妻の爆風に飛ばされ、視界が暗くなっていた李雄は、倒れ
た体をフラフラと起こしながら立ち上がった。
「ゆ、優希……どこ?」
そう言いながら李雄は辺りをキョロキョロとしながら見慣れた幼馴染を探しだし、やがて爆風に
より巻き上げられた砂塵が晴れ、ぼやけていた視界が見えるようになり、そこへ李雄の目に飛び込
んで来たのは。
「な、なに、こいつ………ちょっと、こっちに来ないでよ!!」
尻もちを付き、恐怖の表情をした顔馴染みの幼馴染、優希。
そしてもう1つ、先程まではいなかった巨大な影。
「なっ!? えっ!!?」
その姿を見た李雄も驚きと恐怖に包まれた。
そこにいたのは、畏怖すら感じる程の獰猛さを感じる化け物だった。
パッと見的にはライオンにも見えるが、明らかに普通のライオンとは違う部分があった。
背には白い鳥の翼と蝙蝠の様な羽が片方ずつ生え、尻尾は蛇で口から舌をチョロチョロと出して
いる。
そして肉食動物にはある筈のない、ねじ曲がったツノが生えている。
ゲームなどではよく
「グルルゥ………」
「ひっ!」
低く唸る獣の様な唸り声に優希が怯み、その姿を見て3mはありそうなモンスターの迫力に圧倒
されていた李雄は、はっ! と我に返った。
見ればモンスターは、今にも優希に喰らい付きそうな距離だ。
危ない、助けなきゃ。
李雄の脳内にそんな2文字が浮かび上がり、李雄は優希の元へと駆け出した。
「優希!!」
「李雄!」
李雄は一気に駆け出し、優希の手を取って逃げようと考え、優希に向かって思いっきり手を伸ばす。
「グルゥ」
だが、それを許すモンスターではなかった。
モンスターは駆け寄ろうとした李雄の方を向き。
「グオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!」
鼓膜が破れん程の咆哮を放った。
しかも唯の咆哮ではなかった。
「ぐわああぁっ!!!!!」
「李雄!!!??」
一瞬、李雄は、そしてその光景を見ていた優希にも何が起こったのか分からなかった。
だが、体に感じる痛みがこれが何なのかを李雄の脳と身体が理解させた。
咆哮と共に襲いかかった衝撃波と体中に感じる痛み、つまり李雄は今の咆哮により発生した
衝撃波により飛ばされたのだ。
人間界ではありえなかった出来事に、李雄は対処しきれなかった。
「あぐっ!」
結果、受け身を取る暇もなく屋上のドアの方へと飛ばされ、そのままドアと壁に激突、凄まじい
激痛が李雄を襲った。
「う、ぐぅ……」
「李雄!!」
激突のショックと激痛にもうろうとする意識の中、李雄の目に映ったのは心配そうな瞳でこちら
に駆けて来ようとする優希の姿。
「グルルルルルル………」
「ひっ!」
その前に立ちはだかるモンスター。
その存在に脅える優希を見たモンスターの表情が満足そうに表情を歪めた様に見えた。
(助けなきゃ………)
その様子を見た李雄は優希を助けるべく、今一度 立ち上がろうとする。
「ぐっ!」
だが、激痛のあまりその場に倒れてしまった。
(ゆ、優希………)
倒れながらも優希に視線を向ける李雄。
優希はモンスターへの脅えと李雄への心配が入り混じった複雑な表情だ。
(僕は……また、泣かせるのか……)
「優希………」
幼馴染1人助けれない。
昔から守ってくれてた幼馴染にこれ以上迷惑を掛けまいと武術を始めたのに、またしても優希を心配させている。
その事実に、李雄はモンスターへの恐怖以上に幼馴染を心配させた自分自身への悔しさと情けな
さに、目より一筋のシズクを流した。
◇◆◇◆◇◆◇
「何だ、コイツは?」
トリニアス学園校舎より南に位置する森。
そこに、声の主である真雄とメイドのリュアナ、そして真雄につき従う不良達は空より振って
来た黒い物体に目を丸くしていた。
その姿は、一言で言うならば蛇、らしき物だった。
らしきというのは、確かに黒い燐と顔は蛇だが、幾つか普通の蛇とは違う部分もあった。
まず蛇は普通、足を持たぬ胴の長い生き物だが、目の前にいる生き物は確かに後肢は無いのだが
代わりに蝙蝠の様に前肢が翼があり、大きさも明らかに普通の蛇を凌駕する巨体を誇っている。
まるで今朝見たワイバーンに似ているが、その目付きと荒々しい殺気はワイバーンよりも凶悪に
感じる。
「ジャーッ!!!」
巨大な蛇は真雄達に殺気を向けながらベロリと舌を出し、今にもこちらに噛みついて来そうだ。
「リュアナ、コイツは何だ?」
「お気を付けください真雄様! これはワイアームです!!」
真雄の言葉にそう答えるリュアナの言葉に、真雄はゲームやライトノベルなどで得た知識を
フル回転させた。
ワイアーム。
それはワイバーンにも似た細長い蛇の様なドラゴンの一種であり俗に言う蛇竜である。
ワイバーンや本家ドラゴンに比べるとその知名度は低く、下級のドラゴンとして出る事も多いが
その強さは後ろでおびえる不良達を見れば一目瞭然だった。
「わ、ワイアームだ……」
「やべぇぞおい!?」
そう言い慌てる不良達。
しかも大半は逃げ出してしまっている。
普通の者なら恐怖を感じ、逃げ出すだろう。
ましてや10年以上モンスターとは無縁の人間界で暮らしていた者ならば。
そう、普通なら。
「く、くくくくく、ワイアーム、か………」
真雄は笑いと共に感じた。
恐怖、それは確かにある。
だがそれ以上に、未知の強者との闘いへの好奇心と闘争心が勝っている。
(つくづく俺は、闘い無しじゃ生きられない身だな……)
「真雄、様?」
そんな真雄を心配そうに見つめるリュアナだが、今の真雄には聞こえない。
ワイアームと言う未知との闘い、それだけしか見えない。
「くく、くくくくく、くははははははははははははっ!!! 行くぜぇ、ワイアーム!!!」
「ジャァーッ!!!」
その真雄の掛け声に等しい笑いと共に、真雄は木刀を手にワイアームに向かって駆けだし、それ
と同時にワイアームも口を開き、迎撃の態勢を取る。
「ぜぃやぁっ!!」
掛け声と共に真雄は木刀を突き立てる。
狙いはワイアームの頭だ。
特に策がある訳ではなく、今まで通り、ケンカの要領で攻める真雄。
「ジャーッ!」
それに対しワイアームは牙を付きたて真雄に咬み付こうと迫る。
「けっ」
それを真雄は突き攻撃にしていた木刀の軌道を微妙にそらす事でいなしてかわし、木刀の狙いを
頭から首元に変えた。
「おらああああああぁぁぁぁっ!!!」
掛け声と共に木刀を振るう真雄。
ガギシィッ! と鈍い音共に木刀をワイアームの首元を直撃。
真雄の攻撃は成功、したかに見えた。
「げっ!?」
だが、真雄は木刀を見て唖然としてしまった。
木刀の刀身部分が、削れ、抉れてしまっていたのだ。
ワイアームの首元は黒い鱗の鎧で覆われ、鉄の様な硬さを誇っていたのだ。
「ジャーッ!!」
「っ!!!」
そこへワイアームが器用に首を捻じ曲げながら真雄の方を向き、再び咬み付きに来た事に真雄は
咄嗟にバックしてかわす。
「きゃっ! 真雄様!!」
「騒ぐな、喰らってねぇよ!!」
真雄を心配し声を上げるリュアナに対し、真雄はやや乱暴に答える。
(しっかし、木刀が効かねぇとなると、拳でも無理っぽいな)
「ジャアアアアァァッ!!!」
次の攻撃をどうするか考える真雄に対し、ワイアームはいきなり翼を羽ばたかせ上昇し、真雄の
方をギロリと睨み出した。
「ジャアアアッ!!」
「なっ!?」
そして次の瞬間、真雄は驚きで目を丸くした。
ワイアームが口内より紫色の液体の様な物を吹き出したのだ。
真雄は咄嗟に判断した。
ワイアームはドラゴンなのだから、炎や毒の
故に全速で横に避けた。
真雄という標的を失った液体は、真雄がいた場所にある木に命中し、シュ〰〰という音と焦げく
さい煙を出し、木を腐食させた。
「やっぱ毒の
「ジャアアアアアアッ!!!」
「!!!」
毒の吐息に驚く真雄にワイアームが再び咬み付こうと突っ込んで来た。
これに対し真雄は跳躍してかわす。
勇などには劣るが真雄の身体能力も高い方であり、ワイアームはそのまま真雄の居た場所にある
木に突っ込んだ。
うまく避けれた。
そう思った時だった。
「いっ!!??」
真雄は己のミスに気づいた。
咬み付き、毒の吐息。
確かに蛇にはよくある攻撃方法だ。
だが、蛇にはまだ武器がある事を忘れていた。
その1つは蛇の柔軟な身体。
自在な形を作れるその体は、人間には不可能な動きと攻撃を可能にする。
口のふさがったワイアームは、その柔軟な身体を利用して、尻尾で攻撃して来たのだ。
それに気づいた時、全てが遅すぎた。
行かに真雄の様に身体能力が優れた者でも、空中では身動きが取れない。
ワイアームの持ちの様にしなる尻尾は、超スピードで真雄に迫る。
「ぐっ!!!」
それでも真雄は、少しでもガードしようと、少しでも逸らそうと木刀を構える。
その瞬間、ワイアームの尻尾が直撃する。
「ぐおぉっ!!??」
「真雄様あぁっ!!!」
その直撃に、真雄の意識はグラ付いた。
空中では碌に動けなかった事と、ワイアームの早さと力は想像以上で、木刀で防ぐ事もそらす事
も出来ず、木刀は物の見事に砕かれてしまった。
尻尾は真雄に直撃、そのまま真雄は飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「ぐほぉっ!!?」
そのまま横転し、真雄は体中に傷と泥まみれになった。
「真雄様あぁっ!!!」
その真雄の元へリュアナが駆け寄って来た。
「ちっ、糞が………」
「真雄様、しっかりして下さい! 真雄様ぁっ!!」
悔しそうに歯ぎしりをする真雄に、リュアナは涙目で見つめて来る。
「ジャアァッ」
『っ!!?』
そこへワイアームが牙を突き立てて迫って来る。
「真雄様!」
「お、おい!?」
その時、真雄の目の前でリュアナは驚くべき行動を取った。
それは、真雄を庇う様にワイアームの前に立ちはだかったのだ。
「バカ、逃げろ!! 死ぬ気か!!?」
「私にも魔法の心得はあります! それに………」
そう言いながら、リュアナは恐怖を感じつつも、信念が籠った優しい瞳で真雄に視線を向けてき
た。
「私は、真雄様のメイドですから」
「!!??」
その時だった、真雄の目にリュアナの笑顔が、
「来なさいワイアーム!!!」
「ジャオオオォッ!!」
そんな真雄の視線に気づく事なく、リュアナは呪文を唱えワイアームに立ち向かった。
リュアナは手の平より光り輝く球体を打ち出し、ワイアームを迎撃する。
「ジャアアアアアアッ!!?」
その攻撃にワイアームは多少のダメージは喰らってる様だ。
だが、致命傷とまでは行ってない。
「ジャァーッ!!!」
「きゃあ!」
ワイアームはリュアナの魔法攻撃に耐えると、リュアナの詠唱の隙を狙って攻撃して来た。
リュアナは魔法の心得はあるようだが、体術などの体を動かす心得は無い様だ。
「糞がっ!!」
その事に、長年武術をやって来た真雄は気づいていた。
そして長年ケンカをして来た勘が告げていた。
このままではリュアナは負けると、死ぬと。
(冗談じゃねぇ! このままじゃ、俺の主義に反しちまうだろうが!!!)
それを感じた真雄は怪我と痛みで震える体に鞭を打って立ち上がった。
古暮 真雄はただの暴れん坊ではない。
天下御免の歌舞伎者に義があった様に、人に何と言われようとも
に、歴史の偉人を愛する真雄にもケンカに拘りと、
それは「無関係な奴を巻き込まない」だ。
自分はケンカをしても、他の無関係な者はケンカに巻き込まない様にするのが真雄なりの義なの
だ。
そして今、その義が砕かれようとしているのだ。
頑固で意地っ張りな真雄が、そんな事を傍観していられる筈がなかった。
「ぐ、おおぉぉ……動け、動け、俺の足………!!!」
必死で足を、身体を動かそうとする真雄。
だが、叩きつけられたダメージは早々以上なのか中々動けない。
(動け、動け動け動け動け動け動け動け動け動け動けぇいっ!!! 糞っ!! 動け、動けよ!!! 俺は
――――
そう思い、死んでも立とうとした時だった。
真雄は自分の足に、いや全身に違和感を感じた。
それは、まるで風だった。
風が吹く度に体に何かが入って来ている様な感じ。
いやそれだけではない。
木々が、大地が、全てが自分に何かを注ぎ込んでいる、そんな感じがしたのだ。
(!!? 何だ、この感じは……いや、この感じ前にも……)
その不思議な感じに、真雄は憶えがあった。
三界《こちら》に来て、不良達と闘っている時に感じた妙な感覚。
いや、それ以上の感覚、そう三界に始めて来た時、ベルトラスとマリアに封印を解かれた時感じ
た、あの感覚と同じ。
(………ちっ、あの糞夫婦の面が見えやがるとは………)
そう思った時、真雄は何処か憎々しげに、それでいて何かを確信する様に立ち上がった。
(……おい糞夫婦。テメェらが俺の親で、元魔王と聖王だっつんなら、血ぃ繋がった俺にその力貸
しやがれ!!!)
そう思いながら、真雄はフラフラと立ち上がった。
そして、すぅと軽く息を吸い込み。
「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!!」
「きゃっ!? ま、真雄様!?」
空手、柔道、剣道、様々な日本武道における基礎、掛け声を放つ真雄の大声にリュアナが驚く中
真雄は自分の体の変化を感じた。
頭にバキバキという音と共に何かが生えて来るような感覚を感じ、同時に体中の血が熱く、激し
く体内を駆け巡る様な力を感じた。
「………ふぅぅぅ………」
「ま、真雄、様?」
そして気合いを入れる掛け声を終えた時、自分を驚いた表情で見つめて来るリュアナに気づいた。
いやリュアナだけではない。
先程まで襲いかかろうとしていたワイアームも今は動きを止め、何かに驚いている様だ。
「ん?」
その時、真雄は近くの泉の存在に気づき視線を向け、そして気づいた。
なぜリュアナが驚いているのかに。
体中から赤いオーラが経ち上り、頭にはあの時の赤い角が生えている。
「何だ、これは……?」
真雄はそう呟きながら、自分の体中を見渡す。
別につの意外何か変わった訳ではない。
だが、真雄は明らかに変化を感じていた。
今までにない高揚感、体は熱く燃える炎の様な闘争心が溢れ出て来る。
こんな事、今まで感じた事がなかったが、不思議と不安は感じなかった。
むしろ、今なら何でもできる気がする。
そう、目の前にいるワイアームを倒す事すら。
(分かる、分かるぞ。今なら負けねぇ!!!)
そう思い真雄は視線をワイアームに向ける。
先程まで勝てるかどうかわからない相手だったが、今なら勝てる。
そんな気がするのだ。
「ジャ、ジャアァ………」
ワイアームも真雄の変化に、いやそれ以上に真雄より立ち昇るオーラに、何かの怖れを感じてい
る様だ。
野生生物は人間以上に本能的に脅威や恐怖、自分より強い者と言うのが分かるらしい。
「さて、ワイアームとやら。テメェには色々と落とし前をつけてやらねぇとなぁ?」
「ジャ、ジャアアァーッ!!!!」
その真雄の殺気に、ワイアームは毒の吐息を吹き、それと同時に空へと舞い上がった。
どうやらブレスを煙幕に逃げるつもりの様だ。
だが、この時 真雄にはブレスの攻撃が非常にゆっくりに見えた。
「リュアナ、来い!!」
「えっ、きゃっ!?」
真雄はリュアナを引き寄せると、そのままお姫様だっこをして跳躍した。
いや、それはもはや跳躍の領域を超えていた。
今までの真雄ならば決して跳べない程の跳躍。
軽く木の上まで行き、今まさに飛び立とうとしているワイアームの頭上が見えた。
「貰ったあぁっ!!!!」
「ジャ!!?」
その真雄の言葉に、ワイアームは真雄が跳躍した事に気づいた様だが時既に遅し、真雄は急降下
しワイアームの頭上に迫っていた。
右手にリュアナを持ち、左手に渾身の力を込め、その左手には赤いオーラが集中している。
「うおらああああああああああああああああああああっ!!!!」
真雄はその拳をワイアームの頭、特に生物学的に脳があると思われる場所へと叩きこんだ。
「ジュアアアアアアアァァッ!!!??」
その拳の前に、ワイアームは絶叫と共に喀血、その場に沈んだ。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ………や、やったか………」
「あ、あの、真雄様………」
ワイアームを倒したものの、先程のダメージ故かやや息切れをする真雄に、リュアナは抱かれた
まま心配そうに見つめてきた。
確かに今回は危なかった。
死すら覚悟した。
だが何故なのだろう、死を体感し、己の道に踏み外す事があったというのに生きながらえた事よ
りも、得体の知れない感情が高ぶって来ている。
「………へ、へへへへ………」
「ま、真雄、様?」
不意に笑いだした真雄に心配そうに見つめて来るリュアナだが、真雄は一切気にしたそぶりを見
せず笑い続ける。
(やっぱな、やっぱ俺には闘い無しじゃダメなんだ。)
「つくづく救われねぇな、俺は」
「え?」
「何でもねぇよ」
首を傾げるリュアナにそう答え真雄はリュアナを降ろすと、尚生えている自分の角に触れた。
「これが魔族の証ってやつか」
「はい……真雄様、とても勇ましかったです」
「おう、サンキュー。………あと悪かった……」
「え?」
「何でもねぇよ」
そう言い真雄がプイッとリュアナから視線をそらした時だった。
「ん?」
「真雄様?」
不意に真雄は辺りから感じる視線、いや飢えに近い殺気を感じた。
よく見ると、辺りを何かに囲まれている。
少なくともヒトではない。
ヒトではなく、殺気に溢れたケダモノの感じがしたのだ。
「グルルルルルゥ………」
「コイツ等!」
やがて森の中から姿を現したその姿に、真雄は軽く驚いてしまった。
それは、真雄達がこの学園島に始めてきた際に撃退した、血の様に赤い3つ目を持った黒い犬達
が現れたのだ。
しかも先日以上の数で。
「おいおい、前見た時より数が多いな。リュアナ、コイツ等 何だ?」
「これは……クロエナです!」
「クロエナ?」
「はい。集団で行動し、主に肉食ですが同時に
「腐肉食か……」
腐肉食とは「ふにくしょく」とも読み、文字通り腐食が進行した、或いは動物などの死体を主と
する食物とする性質を持つ、肉食の一群である。
ハイエナやハゲタカなどがその代表例だ。
「成程、クロエナっては黒いハイエナって訳か。面白れぇ……」
そのリュアナの説明と共に、真雄はその場に転がっている木刀の残骸の中でも特に長い物を選ん
で手に取り構えだした時だった。
『おおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!』
「え?」
「あん?」
不意に森の奥、入口の方から雄叫びに等しい声が響き、真雄はリュアナと共に声のした方へと視
線を向けた。
「アレは……」
「アイツ等!!」
それは、先程 逃げた不良達だった。
「オメェら、逃げたんじゃなかったのか?」
「逃げたさ! 逃げたんだけどよ………」
「その、何つーか、アンタらを残して行ったら、後悔する気がしてよ………」
その不良達の言葉に、真雄は確信した。
コイツら、ガラは悪いが根は悪い奴らじゃねぇ。
「…………へっ、物好き共が………」
そうほほ笑みながら、真雄は木刀を手にリュアナを自分の後ろにさせる。
「真雄様!?」
「リュアナ、離れんなよ!」
そう言い驚くリュアナを牽制させると、真雄は木刀を構えクロエナ達の群れを一睨み。
それだけでクロエナ達がやや後ずさりしたのが分かる。
「へへへ、
おいオメェら! 俺らの為に戻って来たってんなら、俺の指示通りに動け!! 人間なんぞより強い
って言う三界の
その雄叫びと共に真雄は木刀を高く振り掲げ、クロエナの群れに突っ込んで行った。
◇◆◇◆◇◆◇
時は少しさかのぼり、学園の屋上。
李雄は未だに動けずにいた。
(助けなきゃ、優希を……、なのに……なのに!!)
理由は至極簡単、吹き飛ばされた際のダメージが残っている事と、何より圧倒的な威圧感を放つ
モンスターへの恐怖だった。
にも拘らず、李雄はフラフラと、だが確実に立ち上がろうとしていた。
「グルルルルルルッ!!」
「ひっ!!」
立ち上がろうとする李雄の目に映るのは、モンスターに今にも襲われそうな幼馴染、優希の姿。
それこそが李雄が立ち上がろうとする最大の理由。
幼馴染の優希を助ける。
そして何より、優希を含め、2度と皆を悲しませないとあの時、あの人に約束したからだ。
(助けなきゃ。約束したんだ………
助けたい。
助けなきゃいけない。
その為に武術を習い、力を手に入れて来た。
それでも、このモンスターには勝てない事が分かる。
(欲しい……力が欲しい!! 兄さんや勇の様な……圧倒的な力が!!!)
「グルオォォォッ!!!」
李雄の目に、モンスターが優希に迫る姿が見える。
(ダメだ! 動いて、動いてよ!! 僕は……聖王候補生なんだろ!? 僕には
てるんだろ!? 僕は、僕はもう――――――――
――――
「うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」
そう思い、死ぬ気で立ち上がった時だった。
気づけば李雄は自然と立ち上がり、走り出していた。
席程とは比べ物にならない位の迅速さで。
(え、あれ? 何だ、この感じ………)
そして李雄は感じていた、自分の体に起こった違和感に。
この違和感は前にも感じた。
三界に始めて来た時、ベルトラスとマリアに封印を解かれた時感じた、あの感覚。
まるで自分の体、細胞1つ1つが自分に声を掛け、力を与えているかの様な、そんな感覚だ。
不思議とその感覚に違和感を感じつつも李雄は不安は感じなかった。
(あの時と同じ感覚………これが……僕の
「うおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」
そう確信した時、李雄の動きは素早かった。
その速さを持ってして、優希を庇う様にモンスターの前に立ちはだかった。
「李雄!?」
「グオオオオオオオッ!!」
その行動に驚く優希の声と、飛び掛かるモンスターの唸り声が聞える。
だが李雄は、その全てを聞き流し、無言で、力の流れるままにモンスターの口元を掴んだ。
「グブウゥッ!?」
この李雄の行動に、誰よりも驚いたのはモンスターだろう。
先程あっさりと飛ばされた奴に口を塞がれ、何よりも李雄からあふれ出る殺気に恐れおののいて
いる。
「ぐっ……うぅ。……優希、大丈夫!?」
「り、李雄? その、髪……」
「え?」
その優希の言葉に、李雄はようやく気付いた。
自分の髪が伸び、蒼く染まっている事に。
そして同時に自分の体から蒼いオーラが立ち昇っている事に。
(……そっか、これが母さん達の言ってた、神気の、僕の力!!)
「待ってて優希、絶対、助けるから!!!」
そう言い李雄は口を塞いでいないもう片方の手、右手の拳に渾身の力を込める。
その際、オーラが拳に集中し青白く輝きだした。
「グルッ、グフルウウゥゥッ!!?」
その輝きに何かの脅威を感じたのか、モンスターはジタバタして逃れようとするが、李雄の口を
ふさぐ握力は強く、逃そうとはしない。
「悪いけど逃がさない。お前だけは、お前だけは絶対に許さなああああああああああいっ!!!」
その李雄の叫び声にも等しい決意の言葉と共に李雄の拳は放たれ、その拳はモンスターの腹部当たりを直撃。
そのまま一筋の閃光となって、モンスターを吹き飛ばし、モンスターは星となった。
「はぁ……はぁ……はあぁ……お、終わった……の………か……?」
そう呟いた時だった。
不意に視界がグラつき、ボヤけて来た。
そして足にも、体に力が入らない。
足はガクンと膝をつき、そのまま意識は薄れていく。
「り、李雄!!」
優希の心配そうな声が耳に入るが、李雄の意識は闇の中へと消えていった。
この時、真雄も李雄も思いもしなかった。
そんな2人の強大なる力を感じる者達がいた事に。
◇◆◇◆◇◆◇
「ん? この魔力、それに神気………」
生徒会室で仕事をしていたセンシアは屋上の方、そして森林の方から強大なる力を感じていた。
1つは眠りから覚めた強大なる魔獣の様に荒々しく、もう1つは生れたばかりでありながらその力
を存分に感じ取る神々しい聖獣の様だ
「………コグレ達、か」
そして、まるで初めて使うかの様に初々しい力、思い当たるのは人間界という魔法の無い世界か
ら転校生である古暮兄弟しか思いつかない。
「……ふふっ」
そんな強大な力に、センシアはどこか嬉しそうにほほ笑む。
そう、センシアは嬉しいのだ。
自分と同じく魔王候補生であり、自分と張り合うライバルである男の底知れない力に。
◇◆◇◆◇◆◇
「………………」
同じ頃、校舎内の廊下にエストレイアが無言で外を眺めていた。
彼女もまた、古暮兄弟の力を感じ取っていた。
「エスト様? ……エスト様? どうかなされましたか、急に立ち止まったりして」
そんな中、サーシャが急に止まったエストを心配そうに見つめて来る。
どうやらサーシャは古暮兄弟の力を感じ取っていない様だ。
「あ、サーシャ……ううん、何でもないの。……ただ………」
「ただ?」
首を傾げるサーシャに対し、エストは自然と視線を近くの森林の方を向け、その後上の方へと視
線を向けた。
それは、真雄と李雄がそれぞれいる場所だ。
「ただちょっと、変な感じがしただけ………」
変な感じ。
どうやらそれが古暮兄弟の力とは感じていないらしい。
◇◆◇◆◇◆◇
「今の……かなり強い力だった………」
時を同じくして、校舎裏の飼育小屋のある林の中。
センシアやエストと並んで古暮兄弟の力を感じ取ったエヴァンの姿があった。
「学園の方………それに森の方からも………」
そう呟きながら、エヴァンは視線を力を感じた方へと向けた。
奇しくもエヴァンのいる位置は、校舎と森が絶妙の位置で見える場所だった。
◇◆◇◆◇◆◇
「むっ」
その頃、学園島の市街地の一角の店でガラス細工を買っていたユーロ。
金を支払い店を出た際に感じた違和感に、視線を校舎に向けていた。
「今、ダーリンが俺様を呼んだ様な気が………」
「いや、違うでしょ」
ユーロの言葉にツッコミを入れるのは、店の前で待っていたクリスだった。
「今の、感じた?」
そう言い真剣な眼差しを向けて来るクリス。
どうやら彼も感じた様だ。
「俺様は何時でも真面目なのだがな。まぁ、少なくとも野獣の様な力と美しい力は感じたがな。
この魔力と神気は間違いなく、ダーリンの
「そのダーリンって止めようよ。下手すればセクハラだよ」
クリスのツッコミを軽くスルーしたユーロは、静かに校舎の方へと視線を向けるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「ん?」
更に市街地のある喫茶店。
そこに、エヴァンに負けたショックでスイーツを自棄食いする学ランゴーレムこと番長の姿があ
った。
学ランの大男がスイーツを食う姿は実にシュールである。
「……何だ、今の力は………エヴァン、じゃねぇな………」
その力を感じた番長もまた自然と立ち上がり視線を校舎と森の方角へと向ける。
「あ、あの~、お客様。申し訳ありませんが他のお客様のご迷惑になりますので、出入り口前に立
つのは、ちょっと………」
「え、あっ、あぁ、悪い」
だが、店員に注意され渋々と席に戻る番長。
体はデカイが心はナイーブ……なのか?
◇◆◇◆◇◆◇
「むぅ、今のは………」
更に時を同じくして、学園島の町はずれにある緑地公園。
整えられた芝生と木陰、ベンチなどがあるのどかな雰囲気の漂う公園に、古暮兄弟の力を感じ取
った者がいた。
灰色のポニーテールに頭には犬らしき耳を生やしている。
服装は上着に制服を着てるが、スカートではなく赤い袴を着こみ、更に制服の上から白い陣羽織
を着込み、肩と手には和風の甲冑、腰には大小2本の刀、更には鉢巻きまで装備したその姿は、
真雄が見たら、これこそ侍だ!! と興奮しそうな格好をした女子生徒だ。
「……でも、そんなことより、腹が減ったでござる………」
「ぴっ! ぴぴぴぴーっ!!」
そう呟きながら、少女は足元にいる1羽のひよこと共にその場を去るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「今のは………」
更に更に別の場所、トリニアス学園、校門前。
ここにも1人、古暮兄弟の力を感じ取った者がいた。
腰まである翠色の髪。
白いリボンに翡翠の髪飾り、紫色の瞳をした顔はなかなかの美人であり、白い和服を加工した制
服を着こみ、手には袋に包まれた長い棒の様な物を持っている。
「神気と魔力……これが、噂の転校生の力なのでしょうか…………」
そう呟きながら、女はそれぞれ森と屋上の方へと視線を向けた。
◇◆◇◆◇◆◇
「あん?」
更にトリニアス学園、体育館。
そこにも1人、古暮兄弟の力を感じた者がいた。
ひと束に緩くまとめた赤のロングに緑色の瞳、左目の下には紺色のカマキリの刺青が彫られてい
る。
その美しい外見は女子の様にも見えるが、白い制服の下の方には黒いズボン。
男か女かわからない、中世的な顔立ちだ。
「なんだぁ? 今の感じ」
その美しい瞳は、森の方へと向けられた。
その顔はやや赤面し、何やら鼻息も荒い。
「なんだ……今の感じは? ……なんか、すんげー興奮する、ヤべぇ、ヤバすぎるっ!!」
そう呟きながらその者は発情したかのような表情をし、その場を歩き出した。
その場には、血まみれで倒れた無数のモンスター達の姿があった。
◇◆◇◆◇◆◇
そして、生徒に気づく者がいれば教師にも気づく者達はいた。
「あらら~、すごい力ですねぇ~学園が壊れちゃいます~」
校舎内の職員室。
大きな胸とのほほ~んとした雰囲気が特徴のディーネが発した言葉はそれだった。
いや気づいたのは彼女だけではない。
「あの坊や達、意外とやるもんだね」
「確かに、流石はあの御2人のご子息ですね」
「ちょっと、ジーナ先生、ジャック先生! そんな呑気でいいの? 問題じゃない!!」
「落ち着いてくださいザビエラ先生」
ナーガ保健にのジーナ、河童教頭のザビエル、インキュバス数学教師のジャック、ウィンディーネ教師にしてシスターのシリル。
この4名も古暮兄弟の力を感じ取っていた。
「まぁ問題だろうけどさ。あれだけの力を発動させたんなら、少々の事が起きても解決してるだろ
うさ」
「いや~、すごいですねぇ~。是非ともボクの個人授業に出てもらいたいです」
「多分 大丈夫だとは思いますけど~、後で事情だけ聞いておいてください~。私は用事で寝てま
すぅ〰〰〰〰〰………Zzz……」
そう呟きながら、ディーネは再び安らかな眠りに突入した。
「寝ないで下さい!!!」
そんなディーネにザビエラが怒鳴り散らすが、そんな事で起きるディーネではないのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
「成程、トンビが鷹を生むとはよく言った物だ」
更に時を同じくして、こちらは学園島内のプール、……とは名ばかりの海の浜辺。
ここにもまた、2人の力を感じ取った1人の教師がいた。
外見は、一瞬 番長の親戚か何かと思いたくなるような巨体と鋼で出来た肉体。
……と言うか、ぶっちゃけ番長の肉体がそのまま鋼になった様な姿だ。
服装は紺色のジャージを着こみ、足元には1体のモンスターの遺体があった。
蝙蝠と鳥の羽を生やし、蛇のしっぽをしたライオン、そう李雄が吹っ飛ばしたモンスターだ。
李雄に殴られ吹っ飛ばされたモンスターは、今ここで、この男に止めを刺されたのだ。
「
そう呟きながら、男は森の方へと視線を向けた。
◇◆◇◆◇◆◇
子供の成長を嬉しがるのは親として当然。
それが例え、三界と人間界という異世界同士であっても。
「ねぇねぇ彦くん! 大変、大変! 今の感じた?」
「勿論だ、まーちゃん。ふっ、真雄と李雄の奴、転校早々に1歩を踏み出したな」
三界より異世界の空間を挟んだ別世界、人間界。
彦左衛門とまりあことベルトラスとマリアは、息子達の成長を感じ取っていた。
「正直どうなるのか不安だったけど、これでひとまず安心かな」
「そうだな。何と言っても俺とまーちゃんの子だからな!」
「そうね」
そう呟きながら、2人は窓の外へと視線を向けた。
まるで空よりも遥か彼方にいる我が子を見守るかのように。
『~第10話~転校日早々!?その7 《終》』
どうも、黒鋼丸です。
今回の話ですが、ついに古暮兄弟が完全に覚醒、魔力と神気、2つの力を発動させました。
これ以降2人は、徐々に力の使い方を知っていく事となります。
更に、2人の力を感じ取った者達が原作よりも大幅にボリュームアップ。
原作ではエヴァンルート以外ではギャグ要因の番長や、まだ登場していない原作キャラと名も分
からぬ新キャラクターも登場。
益々ボリュームアップして行く今小説を、今後ともよろしくお願いします。
それでは、また次回~♪