絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~【更新停止中】 作:黒鋼丸
~第12話~古暮兄弟、初めてのダンジョン
「つー訳でだセンシア。
魔力及び神気の覚醒、そしてカグヤとの出会いから翌日、真雄は豪華な椅子や本棚が立ち並ぶ生
徒会室でセンシアにそう頼みこんでいた。
「………あー、すまないのだがコグレ マオ、話が全く見えないのだが………」
「兄さん、唐突過ぎるよ」
「真雄、アンタ少しは説明ってもんをしなさいよ」
「あの、真雄様、流石に少し説明をなさった方が……」
その真雄の唐突な言葉に、頼まれたセンシアは元より一緒に来ていた李雄、優希、リュアナもや
や唖然としている。
いや、正確には真雄とリュアナが李雄と優希に付いて来たがと言うのが正しいか。
時を遡る事 数分前、真雄はリュアナと共に李雄と優希の手伝いをしていた。
その手伝いとは、李雄と優希は昨日屋上で無断で魔法を使い、修理したばかりの屋上をやや破損
してしまった罰として生徒会のレポートの手伝いをする事となり、仕方ないので真雄はリュアナと
共に手伝ってやったのだ。
その際、ザビエラから公安委員を武道部に頼む事にしたと連絡を受け、武道部の事を聞きにレポ
ート提出に付き合い生徒会室までやって来たのだ。
「まぁそう言う訳でよセンシア、武道部について何か知らねぇか?」
「成程、事情は呑み込めたが、そうか公安委員か、思いもしなかった事だな」
その真雄の説明にそう呟くセンシア。
無理もない。
生徒会長として、候補生として生徒達を守ろうとするセンシアにとって他の一般生徒達と共に
戦おうという考えは無かったのだろう。
自分だけが苦労すれば良い、そんな風に考える典型的なタイプだセンシアは。
「センシア、いくら俺やオメェ、他の候補生共が一騎当千の
限界があるぜ?」
「一騎当千とか自分で言う?」
その真雄の言葉に優希は呆れ気味だが当の真雄は全く気にしない。
「少なくとも俺は一般ピープルよりゃ
「そりゃそうだけど………」
「なら別に良いじゃん」
そう言い李雄達を一笑すると、真雄を再びセンシアに向き直った。
「つー訳だからよセンシア、その武道部って何処にあんだ? あと武道部ってどんなの何だ?」
「ふむ、武道部ならおそらく道場の方だと思うが、武道部か……」
その真雄の質問に対し、センシアはどこか懐かしげに語りだした。
武道部は文字通り、武道、すなわち剣術や槍術、格闘技に更には
三界における武道、武芸を種類問わずに集まった部活動であり、近年できたばかりの比較的新しい
部らしい。
「部を創り上げたのは、今は休学中だが私達と同じクラスの者だ。名はイズミ、“イズミ・ガドク
リアス”」
「イズミ?」
そのセンシアの呟いた名に、真雄はふとその名を何処かで聞いた様な気がし記憶内の糸を辿る。
(イズミ………イズミ……人名……ブレイ、カグヤ………)
「あっ」
そして思い出した。
不良達の言ってた候補生3人並に強い面子の名前。
ギガースのユーロ、蟲人族のブレイ、人狼族のカグヤ、魚人族のケルロル、従者のサーシャ。
そしてイザナミのイズミ。
「そのイズミってのは、イザナミのイズミか?」
「ん? 知っているのか?」
「名前だけ聞いたことがある。エストの奴と並んで聖王を競える奴ってな」
「そうだったか、なら話が速い。彼女は今 実家の都合で休学中だが彼女に代わり武道部を任され
ている副部長の“ソフィア”がいる。私から彼女にあたってみよう」
そう言いセンシアは席を立った。
「
「いや構わんさ。学園の為にしようとしている者の頼みを聞くのも生徒会長として当然の責務だ」
「お前さん、ホント一々律儀だな」
そう呟きながら、真雄は苦笑いするのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
こうして、放課後に武道部に案内して貰える事になった真雄は、午後の授業の時間が来た時、
教室で己の高ぶりを感じていた。
「く、くくくくくくっ、ついに、ついに来たか、この時が」
「おい真雄、その笑い方 不気味だからやめろ」
その真雄の微笑みに呆れ顔の魁がそう言って来るが真雄は気にも止めない。
何故なら、この高ぶりを抑える事の方が無理だからだ。
ついに来たのだ、待ちに待った時間が。
学園中にピンポンパンポーンと放送が鳴り響く。
〈あーあーマイクテストで~す。候補生の皆さん、時間となりましたのでダンジョンの方へ向かっ
てください。繰り返します……〉
「来たっ!」
声からしてシリアと思われるその放送に、真雄は席より立ち上がった。
そう、今日は待ちに待ったダンジョン授業のある日なのだ。
「兄さん、ちょっと落ち着いて」
「黙れ愚弟。俺はこの時を待ってたんだよ、朝からずっと!」
「真雄様、生き生きしてらっしゃいます」
「リュアナ、あれは生き生きしてんじゃなくて暴走してんの」
李雄の言葉を一笑し、リュアナと優希の声も無視し真雄はダンジョンに向かおうと教室の戸に手
をかける。
尚、ダンジョンの場所は学園内の地図を見て知っている。
意気揚々と今まさに行こうとした時だった。
〈それともう1つ。魔王候補生の“コグレ マオ”さん、聖王候補生の“コグレ リオ”さんは、至
急 職員室に来てください〉
「……………は?」
その放送に真雄は首を傾げた。
自分と弟だけ職員室、何故?
ダンジョンに行く気満々だった真雄はこの放送内容に不満いっぱいだった。
「んだよ、こっちゃダンジョン行く気満々だってのによぉ」
そう不服そうに呟きながら真雄は教室を後にした。
何はともあれ、言ってみれば判る事だ。
(つまらねぇ理由だったりしたら、ぶっ殺してやる!)
そんな物騒な事を考えながら、真雄は職員室へと向かうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「はぁ、兄さん………」
勢い良く教室を後にした真雄に、弟である李雄はやや呆れ気味にため息をついた。
「あのバカ、また暴走して………」
「まぁ、真雄があぁなのは今に始まった事ではない、とは言えなぁ……」
その横では優希と魁も呆れている。
どうも真雄には昔から子供じみた所があると言うか暴走したら止まらない所があると言うか、
ともかく唯我独尊、我が道を行く、壁に当たったらぶち破ると破天荒で付いていけない所が度々あ
った。
「あの、李雄様、私達も行きませんか? 真雄様を追わないと」
「え? あ、うん」
そこへリュアナが声をかけて来た事で、李雄は放送で自分も呼ばれた事を思い出し席を立つ。
「あっ、オラも行くダ」
そこへ勇も名乗りを上げた。
どうやら本気でダンジョン授業に付いていく気らしい。
「勇、ダンジョンを壊すなよ」
「ウガ」
「あと勝手に先々進むなよ。真雄と李雄とリュアナさんと一緒に行けよ」
「うー多分なんとかなるダ」
「多分じゃ困る」
「アハハハハ、なんかカイっち、イサムっちのお母さんみたい」
勇が何かしやしないかと心配な魁にアリッサが笑う声が聞こえた。
(まぁ、確かにそう見えるよなぁ………)
「ちょっと李雄」
その時、不意に後ろから声をかけられ振り向くと、やや不服そうな表情の優希の姿があった。
「ホントに大丈夫なの? 私が一緒に行かなくて」
「大丈夫だよ」
そう言い微笑んで見せる李雄。
今朝からずっとこんな調子だ。
ダンジョン授業が近付く度に優希は古暮達が心配なのか、自分も一緒に行こうか、と言って来る
のだが全て断っている。
(
れないもんね)
「それじゃ、行って来るよ」
「あっ……」
そう言い李雄は教室を後にした。
その際優希がどこか寂しそうな表情をしていた気がしたのだが、気のせいだったのだろうか。
◇◆◇◆◇◆◇
「で、何の様だよ」
職員室。
そこへ向かいディーネに対して真雄がまず言った言葉はそれだった。
「はい~、コグレ君達はダンジョン授業 初めてですから説明をしようと思いましてぇ」
「ウガガ、んじゃ早くおせーてくれダ」
そのディーネの言葉に素直に頷いたのは勇だ。
この男はホントに変な所で素直と言うか、何も考えてないと言うか、ともかく単純な奴だなと真
雄はしみじみ思った。
「それじゃ、こっからは俺が請け負おう」
「ん?」
そこへ不意に声が聞こえ、声がした方へと視線を向ける真雄。
そしてその瞬間、真雄は一瞬 番長と言いたくなってしまった。
真雄の言う番長とは、エヴァンに負けたストーンゴーレムの番長である。
何故ならその声の主は、番長によく似ていたからだ。
巨体でがっちりとした肉体、顔つきも番長そっくりだ。
だが、明らかに番長と違う部分があった。
それは肉体だった。
体格こそ似ているが、番長が岩男なのに対しこの男は全身が鋼の鉄男だ。
更に服装は学ランではなく紺色のジャージ姿だ。
「えっと、どちら様で?」
「李雄様。こちらは体育の先生の“ヴァン・レンボガルス”先生です」
「なに?」
そのリュアナの言葉に、真雄は自分の記憶内を捜索した。
確か以前、リュアナがそんな名前のゴーレムがいるとか言っていた気がしたのだ。
「ウガ、思い出したアイアイゴーレ……」
「テメェは話がややこしくなるから黙ってろ」
そこへ勇がまた余計な事を言いそうになった為、真雄は勇を殴って止めた。
「確かアイアンゴーレムだったか?」
「まぁな。お前らか、昨日の魔力と神気の源は」
『!!??』
そのヴァンの言葉に、古暮兄弟はやや驚いてしまった。
この男も自分達の力を感じていたらしい。
「海岸でお前らに力を感じた。ついでに
「あっ、それ僕だ」
「だが、お前ら2人はハッキリ言ってまだまだ未熟だ」
「なに?」
そこへ不意にヴァンの放った言葉に真雄はイラ立ちを感じた。
「確かに初めて魔力と神気を使いワイアームやクロエナ、キメラを倒したのは見事だ。だがな、ク
ロエナごときに手傷を負わせられてる様じゃまだまだだ。ましてや、神気を使った後ぶっ倒れちま
ったんじゃまるっきりダメだ」
「チッ、言ってくれるぜ」
「うぅ………」
そのヴァンの指摘に李雄は無論の事、真雄も何も言い返せなった。
「だからお前らには徐々に魔力や神気の使い方とか教えてやる。今回はとりあえずダンジョンの方
の説明だ」
そう言いヴァンはダンジョンの説明を始める。
ダンジョンは正式には“試練の迷宮”と呼ばれる物がこの学園の片隅に存在する。
正確には迷宮の入り口のあるこの浮遊島に学園を作ったのが正しいそうだが、その辺の詳しい歴
史は省略された。
ダンジョン内には名前を登録した者以外は入れず、中にはモンスターはもちろん様々な罠も仕掛
けられているらしい。
「ダンジョンは人によって魔法でレベルを合わせる事ができる。お前らはまぁ初めてだからな、レ
ベルは初級で良いだろ」
「初級でもちゃんとモンスターとかは出るんだろうな?」
「当たり前だ。ま、昨日のワイアームやクロエナには劣るがな」
そのヴァンの言葉に、真雄は基礎は大事と頭で理解しつつも少々詰まらなさも感じた。
ワイアーム所かクロエナよりも劣るモンスター?
そんなの倒して楽しいのか?
そこが何より不服だった。
「あの、質問があるんですけど」
真雄がそんな事を考えていると、李雄が手を上げて質問して来た。
「何だコグレ弟」
「あの、ダンジョン内で死んじゃうなんて事はあるんですか?」
「ある」
その李雄の質問に、ヴァンは当然の如く返した。
「え!?」
「へぇ、そうなのか」
そのヴァンのかなりハッキリと、しかもさらりとした答えに李雄は驚いている様だが、不思議と
真雄は恐怖や驚きは感じなかった。
「ちょ、兄さん、へぇって………」
「別に驚く事じゃねぇだろ。王になろうって試験だぜ? 死の覚悟1つや2つしとかねぇとな」
「早とちりするな」
死と隣り合わせかも知れない試練に、恐怖どころか更なる闘志を燃やす真雄に対しヴァンは戒め
る様に言い放つ。
「確かに死にはする、だが死ぬ事はない?」
「あん?」
「え、えっと……????」
そのヴァンの言葉に真雄と李雄は困惑した。
死ぬけど死なない?
さっぱり意味が判らない。
「せんせー、それってなぞなぞダか? 死ぬけど死なないものなーに?」
「違うわ」
勇がそんな事を言い放つがヴァンはあっさりと否定。
「要するにだ、ダンジョン内でモンスターや罠で死ぬとだな、何つーか、最近のTVゲームみたいな
もんだ。死ぬとダンジョンの外に生き返って出てくるんだ、ゲームのコンティニューみたいにな」
「つまり、生き返ってダンジョンの外に出るってのか?」
「簡単に言うとな」
そのヴァンの言葉に真雄達は驚きを隠せない。
いくらファンタジー世界と言っても一様これは現実だ。
ゲームみたいにロードやコンティニューみたく生き返れるとでも言うのだろうか?
にわかには信じられない。
「生き返るとは言うが、どうやってだよ?」
「あぁ、神が生き返らせてくれる」
その真雄の問いに、ヴァンはこれまたあっさりと答えた。
神。
神話やファンタジーではありふれたチート設定。
「ウガ、神様?」
「神様……か………」
「つーか神なんてホントにいるのか?」
「神はいらっしゃいますよ真雄様」
色々と疑問の浮かぶ中、リュアナがそんな事を良いフォローして来るが、どうしてもイマイチ信
用できない。
魔法やモンスターはこの目で見た以上信じれるが、流石に神など見た事が無い。
そう簡単には信じられない。
「まぁいい、悩んだ所で何も始まらねぇ。ダンジョンに行って見りゃ判るだろ」
だが真雄は即座に考えるのをやめた。
考えるより行動した方が手っ取り早い。
行って見れば判る事だ。
「決断が早いな。なら後はリュアナ、案内してやれ」
「はい、ヴァン先生」
そう言いヴァンは職員室を後にして行くのを真雄達は見届けるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「で、ここがそのダンジョンの入り口か?」
「はい、正確には出入り口です」
職員室を後にしリュアナに案内され付いた場所は、体育館より少し先にある木々の生い茂る向こ
うにある古びた遺跡の様な扉だった。
黒い石造りで漆黒の扉、草木が生い茂りその歴史を感じさせる。
「なんか
「小さいのはこの出入り口だけで、中は魔法によりかなり広く複雑な迷宮となっています。真雄様
李雄様、これをお持ちください」
勇の言葉にそう言い説明したリュアナは懐から、緑色に輝くペンダントを2つ取り出した。
「リュアナさん、これは?」
「このペンダントは候補生の証であり、このダンジョンに入るのに必要不可欠なものです。
ダンジョン内には所々に出口の魔方陣がしかれてあり、そこから出る事ができます。その際そのペ
ンダントがそこまでの記録を記憶し、次にダンジョンに入る際はそこから入る事ができます」
「成程な、RPGで言う所のセーブとロード能力があるのか」
そのリュアナの言葉に、真雄はつくづくゲームの様な世界だと実感するのだった。
「よし、行くか」
「ウガ、行っくダーッ!」
「がんばろう」
「真雄様、李雄様、ファイトです」
その瞬間、眩い閃光が真雄達を包み込んで行った。
◇◆◇◆◇◆◇
「こいつは………」
戸を開き、光に包まれたかと思った真雄が目を開くと
そこは先程までの自然と光のあふれた場所ではなくなっていた。
所々にある焚き火による辛うじて明るさを保っている殺風景な場所。
それはまさに、ゲームやアニメで見てきたダンジョンそのものだ。
「ここが、試練の迷宮……」
「ウララ~♪迷宮ダァ、ダンジョンダァ♪」
「私も入るのは初めてです」
他の
「成程な、こいつはまさにダンジョン、ゲームの世界だ」
その人間界では決して味わえない、貴重で緊張感あふれる感覚に真雄は体中に力が入るのを感じた。
「よし、行くぜテメェら!」
「ウラーッ!」
「はい!」
「兄さん、あんまり危ない事はしないでね」
真雄の掛け声に勇とリュアナは同意する様に声を放つ。
李雄は何やら心配げに小声で言っている様だがそんな事は気にしない。
真雄を先頭、次に勇、その次がリュアナで
「ウララ♪ホントにゲームの世界みたいダ」
「みたいっつーか殆どゲームの世界だろ。これでモンスターでも出てくりゃマジゲームなんだが…
………ん?」
勇とそんな会話をしていると、通路が十字に別れている場所に出た。
「流石ダンジョン、1本道って事はなしか」
「どうする兄さん?」
「ここはアレだ、マーキングして進もう」
そう言い真雄は懐から白いペンを取り出し、道に矢印の印をつけた。
「まずは右だ。行くぞ」
そう言い真雄は歩き出し、それに李雄達も続いて来る。
「ん?」
その時、真雄は通路の先に何か動く小さな影を見た様な気がした。
「真雄様? いかがなされました」
「いま何かいたぞ」
「まさかモンスター!?」
「ウガ!」
その展開に真雄は木刀を、勇と李雄は拳を構える。
万が一モンスターだったら、初級とは言えどんなのが出てくるか判らない。
迎撃体勢はとっておいた方が良い。
(何だ? 何が来る?)
何が来るか緊張が走る中、真雄が眼光を光らせたその時、通路の影から小さな何かが飛び出して
来た。
それに対し真雄達は一層緊張感を上げ目を凝らす。
そしてそこにいたのは――――――――――――――――――
「…………ポン?」
頭に葉っぱを乗せた、タヌキの様な生き物だった。
こちらを見て首を傾げている。
「…………………………………………………リュアナ」
「はい?」
「これはモンスターなのか?」
「あ、はい。試練の迷宮、初級の練習用モンスターです」
そのリュアナの言葉に、真雄は先程までの緊張を解き呆れ果てた。
まさかこんな、いかにも弱そうなのが練習相手とは思いもしなかったのだ。
初級モンスターなので某有名ゲームのスライムの様な物を想像してはいたが、まさかここまで
当たりに近いとは思いもしなかったのだ。
「何だが、かわいい………」
「ウガ、殺気ぜんぜんねぇダ」
李雄と勇がそんな事を言っているが、どんな理由であれモンスターとであったのならやる事は
1つ。
「練習がてら、
そう呟いた真雄の行動は早い。
一瞬でタヌキモンスターとの間合いを詰め、木刀を上段より叩き込んだ。
タヌキはポーンという鳴き声と共に消滅し、その場には1枚の葉っぱが残った。
「うわっ、マジで
「ちょ兄さん、別にやらなくても良かったんじゃ…………」
「おー、ゲームみたいに消えたダ」
余りの弱さに呆れる真雄に対し、李雄はモンスターに同情し、勇はまさにゲームの様な展開に目
を輝かせていた。
「ん?」
同時に真雄は見た。
タヌキを倒した事でダンジョンの灯火が増え、その通路の先には壁がある事に。
つまりは行き止まりだ。
「ちっ、
通路を戻ろうとした時、真雄の目に映ったのは、先程倒したタヌキの残した葉っぱを拾うリュア
ナの姿だった。
「このバケタヌキの葉は傷薬の材料として役立つんです」
「へぇ、モンスターがアイテムを落すのか、マジでゲームぽいな」
そのリュアナの説明を聞き、益々ゲームの感覚を感じた真雄は、再び視線を自分達が歩いて来た
方へと向けた。
「さて、戻るぞ」
そう言い真雄は来た道を戻り始めるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「あー、詰まらん」
「兄さん、先からそればっかりだね」
ダンジョンに入って散策して30分程経つ中、李雄は兄である真雄の言葉に苦笑いをしていた。
というのも、このダンジョンに入ってから確かにモンスターや罠はあったのだが、罠は浅い落と
し穴や天井から棒きれが落ちてくる程度の物で、真雄と勇はいとも簡単にかわしてしまうので詰ま
らない。
ではモンスターの方はというと、出てきたのはどれもザコモンスターばかりだったのだ。
棒有名ゲームに出てくる有名モンスターに手足が生えた様なモンスターのスラタマ、青白く光っ
て脅かす以外取り柄のない火玉のブルーウィスプ、臭い匂いのする鱗紛を撒くキノコモンスターで
あるミニファンガスなど、どれも始めて見るが見るからに弱そうなモンスター達で、実際に魔力も
使わぬ真雄の木刀一太刀と勇と李雄の拳や蹴りの前にあっさりと倒されてしまった。
この手ごたえの無さに真雄が飽きて来ているのを、李雄は長年の付き合いから感じ取っていた。
「くそ、もっと
「ウガ、オラ楽しいぞ」
「オメェは単純で気楽だな」
「まぁまぁ」
イラ立ちを勇にぶつけかける真雄を、李雄はなんとか宥め様とし時にある事を思い出す。
「あっ、そうだ。ここえらで休憩しない?」
「休憩?」
「うん、リュアナさんと一緒にお菓子も作って来てるしさ、ね?」
『のった!』
その李雄の発案に、真雄と勇は揃って首を上下に動かした。
そう、李雄とリュアナは念の為にお菓子を作り、ビニールシートも持って来ておいたのだ。
「リュアナさん、ビニールシートを」
「はい、すぐに」
その李雄の言葉にリュアナはあっという間にビニールシートを広げ、その上に持って来たバスケ
ットを置き中を開く。
中には李雄とリュアナ、それに優希が早起きして作ったクッキーとチーズケーキがあり、更に水
筒の中には魔法のハーブで作った良い香りを漂わす紅茶を入れてある。
李雄は水筒の蓋を開け、紅茶をコップに注いだ。
「はい兄さん」
「おう、んーうまい」
「李雄様も飲んでください、後は私がやりますから」
真雄に紅茶を注いでいるとリュアナがそう言い紅茶の入ったコップを差し出してきた。
「あ、ありがとリュアナさん」
「いえ、私は真雄様と李雄様のメイドですから」
そう言いニッコリほほ笑むリュアナの姿に、李雄はつくづく良い人だなと思わずには居られなか
った。
自分はともかく、
りに1日と経たずに消えて行ったというのに
「ウガ、オラ紅茶はいいからケーキ貰うダ」
そんな事を考えていると、勇がチーズケーキを食べようとしていた。
1ホールド丸ごと。
「あっ、テメェ何1人で全部食おうとしてんだ!」
「ウガ! 早いもん勝ちダ!!!」
「んだとこらあぁっ!!!!」
1ホールドごと食べようとする勇と、それを奪おうとする真雄のケーキの奪い合い(食い合い?)
が始まった。
「あ、あの、真雄様!?」
「兄さんも勇も落ち付いて」
リュアナが2人を止めようとするそんな中、李雄は至って落ち着いて、持って来た手提げ袋に手
を伸ばす。
この手提げ袋、少し前に真雄がノム達と人間界のラジコンと交換して貰った何でも入る魔法の袋
だ。
しいて言うならドラ●もんの四次●ポケットの様に、李雄はその中から新たなバスケットを2つ
取り出した。
「こんな事もあろうかと思ってもう2つほど作って来たよ」
そう言い2つのバスケットを開けると、中に先程とほぼ同じのクッキーとチーズケーキが入って
いる。
「それを先に言え」
それを見た真雄は速攻でその新たなバスケットの前までやって来ると、チーズケーキを1ホール
ドごとかぶり付きだした。
「ん〰〰〰〰〰〰、うまい。いつもと味付けが違うな」
「リュアナさんと一緒に作ったから、いつもより少し味が違うのかもね」
「あ、あの、若しかしてお口に合いませんでしたか?」
「オメェはどうしてそう後ろ向きな考えするかな? うめぇぞ」
「あ、ありがとうございます!」
真雄の言葉にリュアナはエルフの特徴とも言える長い耳をピコピコ動かしとても嬉しそうだ。
まるで犬の尻尾、いや猫の耳の様だ。
(兄さんもちゃんと素直に褒めて上げれば良いのに)
そんなリュアナと真雄のやり取りを見てて李雄はそう思わずに入られなかった。
真雄は昔からツンケンしててどうも変な所で素直になれない、へそ曲がりな所があるのだ。
(まぁ、兄さんの性格の歪みの原因て父さんと母さんにあるんだけどね)
「ふぅ」
「どうした李雄? ため息なんぞ付きやがって。菓子が不味くなるからやめろ」
そんな李雄の表情に気づいた真雄がそんな事を言ってくる。
普通に聞いたら李雄を責めてる様に見えるが、これは真雄なりに元気付けてくれている事を李雄
は知っている。
「うん、ゴメン。少し疲れちゃって………」
「そうかい。なら、さっさと終わらせようぜ、こんな面白みのねぇダンジョンゲーム」
そう言い真雄はケーキを全て口に詰め込み、そこへ更にクッキーを詰め、それらを紅茶で全て流
し込むとその場から立ち上がった。
「こいつは俺の勘だが、初級のレベルだからこんだけ簡単なら出口もそう遠くねぇ筈だ。とっとと
クリアーして、もっとレベル上げてもらおうぜ」
「ウラ、はんせータ!(ウガ、せんせーダ!)」
その真雄の言葉に賛同する様に口にまだ物を含めた勇が立ち上がり、先に通路の先へと歩き出し
てしまった。
「………そうだね、そろそろ行こっか」
「では直ちに片づけを」
その李雄の言葉と共に、リュアナはあっという間にバスケットを仕舞い、ビニールシートを畳み
込んでバックに入れた。
「流石に
「は、はい。ありがとうございます」
その真雄の感心する言葉にリュアナは顔を赤めた。
(リュアナさん、毎度思うけどどうして顔 赤くなるんだろ? 熱しやすい体質なのかな?)
その真雄とリュアナのやり取りを見ていた李雄はそんな事を考えながら、先に歩き出した勇の後
を追うを追いかけ始めるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「こりゃあ………」
ちゃちな罠をかいくぐり、雑魚モンスター共を撃退しながら歩き続けその末に真雄達がたどり着
いた場所、それは水色に輝く魔法陣のある小部屋だった。
「これが出口です、真雄様、李雄様」
「これが?」
「はい、この魔法陣に入ればこのダンジョンはクリアとなり入って来たあの場所に出れます」
「ウガ、ゲームで言う所のワープゾーン ダな」
「ならやる事は1つだ」
そのリュアナの説明に、真雄はずかずかと魔法陣の上に立つ。
すると魔法陣が白く輝きだし、真雄の周りは光に包まれた。
「うおっ!」
(コイツは、あの時と同じ)
あの時、すなわちこのダンジョンに入る時の光の感覚だ。
そのまま真雄の意識は光の中へと消えて行った。
◇◆◇◆◇◆◇
「……………………………おっ?」
光が晴れ、真雄が目を開けると、そこはまさに最初 自分達が入って来たダンジョンの入り口
だった。
「成程、まさに魔法の出入り口か」
「あっ、兄さん」
そう呟いていると後ろから声が聞こえ振り向いてみると、声の主である李雄、更には勇とリュア
ナの姿があった。
「全員いるみてぇだな」
「はい、これで今回のダンジョン授業は終わりです。お疲れ様でした、真雄様、李雄様」
そのリュアナの言葉に、真雄はふぅと軽く深呼吸した。
初めてのダンジョン授業。
最初はわくわくし、途中からは程度の低さに呆れもしたが、やはり人間界にいては決して体験で
きない授業内容に真雄はどこか嬉しさも感じていた。
(それに、このまま続けりゃレベルも上がって、もっと面白くなりそうだ)
「あの、真雄様、李雄様。ダンジョンが終わったら、そのペンダントは職員室に提出しなければな
りません」
そんな事を考えているとリュアナの声が聞こえ、それにより真雄がペンダントに視線を向けると
ある事が起こっていた。
「え? これって……」
「色が変わってるぞ」
そう、それはペンダントの色が変わっていたのだ。
最初は確かに緑色に輝いていたペンダントが、今は金ぴかに輝いている。
「それが、ダンジョンを行った証となるんです」
「成程、セーブしましたって訳か」
そのリュアナの言葉に納得を覚えた真雄は、ペンダントを首から取り手に握ると職員室へと向か
い歩き出すのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「やぁコグレか」
「あっ、マオくん」
「…………………」
職員室に着いた真雄の視線に入ったのは、センシアにエスト、エヴァンにサーシャの姿だった。
「よぉ、オメェらも終わってたのか」
「当然だにゃ。エスト様やセンシア殿はお前達とは違うのにゃ」
そのセンシアたちに軽く挨拶を交わす真雄に対し、サーシャは相変わらずの辛口で答える。
「ほぉ……」
「な、なんだ?」
だがこの時、真雄はある事に夢中になりサーシャの言葉など全く届いていなかった。
それはサーシャの服装だった。
サーシャは学園指定の制服ではなく、黒い和服に身を包んでいたのだ。
黒いニーソックスを履き短いスカート、腰には合口と呼ばれる唾の無い小太刀を2刀装備してお
り、その姿はまさに。
「忍者、くノ一か」
「だ、だったらなんにゃ!」
「いいね、
サーシャが忍者と判り、和風趣味のある真雄は子供の様に目を輝かせサーシャに迫る。
「おい、
「にゃ、にゃんだいきなり!」
真雄はサーシャに迫り三界の忍者について聞こうとするがサーシャはそれを避ける。
「ハッ! まさか貴様、弟を聖王にしたいが故にエスト様を篭絡する前に、その外堀である
「は? 意味判んねぇぞ、良いから教えろよ」
挙句の果てにサーシャは何やら訳の判らない事を言い出すが、忍者の事で頭がいっぱいの真雄は
気にしない。
「なぁ教えろよ」
「えぇい、拠るな来るな!」
サーシャは避け続けるものの、興味のある事に関しては蛇の様にしつこい真雄なのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
「兄さん………」
その様子を李雄は職員室の入り口で見ていた。
なにやらサーシャと真雄の声がすると思ったら、どうやらサーシャの姿を見て真雄の和風趣味と
知識欲に火がついてしまったらしい。
「マオくん、どうしちゃったんだろ?」
「コグレが知識欲豊富なのは聞いていたが、ここまでしつこい物なのか?」
そこへ真雄の行動に疑問を浮かべるエストとセンシアの声が聞こえ、李雄はそちらの方へと向か
った。
「すみません、兄さん和風物が好きなんです」
「あっ、リオくん。マオくんって忍者とか好きなの?」
「はい。先日もカグヤさんと随分語っていましたし」
「カグヤ? “カグヤ・サカムビット”の事か?」
「はい、昨日出会ったんです」
そう言い李雄は昨日会ったカグヤの事と真雄の和風趣味について説明した。
事実、真雄の和風趣味は中々であり、刀のレプリカ集めや戦国武将、幕末関連の本やフィギア、
茶道に和歌、俳句、プラモ作りも和物に徹底していたりとそのこだわりは強いのを覚えている。
「成程、それであんなに熱心なのか。中々渋い趣味だな」
「サーシャ、教えてあげようよ~」
その李雄の説明にセンシアは真雄の意外な趣味を知り、エストはサーシャに教えて上げる様に
言ってきた。
「エスト様、しかし………」
「なぁ、そう言わずに教えてくれよぉ」
「貴様は少し黙れ!」
そう言いサーシャは猫特有というかまさに忍者の如く跳躍し、真雄との距離を一気に広めた。
「ほぉ、流石は忍者、猫って訳か。良いねぇ益々
「兄さん、もうその辺でやめなよ」
それでも尚サーシャに迫る真雄を、流石に止め様と思い李雄が割って入った。
「邪魔すんな愚弟」
「兄さん、本人がヤダって言ってるんだからもうその辺で」
「関係あるか。俺は俺の意志を貫く!」
「お願いだから別の事で貫いて」
李雄は真雄の意思の強さに呆れ果てた。
昔から我侭で頑固で、これと決めると一直線な真雄を止めるには、もうこれしかない。
「今日のデザート、僕の手作り和菓子あげるから、ね?」
「あっ、んじゃそれで妥協だ」
その案に真雄はようやく身を引いてくれた。
「ふぅ……何とかなったか……」
「ねぇねぇ、リオくんリオくん、手作り和菓子、私も食べたぁ~い」
真雄の暴走が止まった事に安堵していると、その会話を聞いてエストが目を輝かせながらやって
来た。
しかも口から若干だがヨダレを流している。
「え? あ、はい、別に良いですけど………」
「エスト様! 和菓子でしたら私が作りますゆえコグレなんぞに頼むのはおやめください!」
別に李雄は構わないのだが、それを許さぬ存在サーシャが割って入って来た。
どうも建前上とは言えエストと同じ聖王候補生故か嫌われてしまっている様だ。
「やれやれ、騒ぐのもその辺にしておけよ?」
「あ、あの、李雄様、和菓子でしたら私もお手伝いを……」
「ウガ、オイラも食べるダァーッ!」
そんな光景を見ていたセンシアやリュアナ、勇から様々な声が届く中、李雄はやれやれと苦笑し
た。
(これも異世界ならではの楽しみ方なのかな……………あれ?)
その時だった。
李雄の目にある人物が飛び込んで来た。
獣王候補生であるエヴァンだった。
皆の会話に入らず、どこか寂しげ、羨ましげに皆を、もっと正確に言うと真雄に視線を向けてい
る様に見えた。
「……自分の趣味を、あそこまで公言できるなんて………羨ましいな………」
「?」
何か小声で言っている様に聞こえたが、周りの声が大きくうまく聞き取れなかったが、
そのエヴァンの寂しげな瞳は李雄の脳裏に焼き付くのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
「つまり、ねこまたってのは代々忍びの種族なんだな?」
「あぁ。それにしてもコグレに和物趣味があるとはな」
「よく意外とは言われるな」
学園校舎内の廊下を真雄はセンシアと話しながら歩いていた。
その内容はサーシャに聞けなかった三界の忍びについての話だ。
流石に完全無欠の候補生と名高いだけにかなりの事を教えて貰えた。
「真雄様、生き生きしてらっしゃいます♪」
「兄さんって、ホント好きだよね侍とか忍者とか」
「ウガガァ、歴史難しい、よく判んねぇダ」
「マオくん元気だよねぇ~」
「ふん、あんな奴に和の心など判る筈も無いにゃ」
後ろからはリュアナ達の声が聞こえる。
エヴァンは先に行ってしまったが、そんな些細な事もリュアナ達の声も今の真雄にはどうでも
いい事だった。
「いつか行って見てぇな、人狼族とねこまたの里に」
「ふふ、そうか」
そんな会話をしていたら教室が見えて来た。
時間的には既にホームルームの少し前だ。
これを終わらせれば放課後だ。
そう思いながら真雄は教室の出入り口に手をかけた。
「うぃーす、今 戻ったぞー」
そう言いドアを開けた真雄達を迎えたのは。
「お帰りなさいませ、
なぜかこのクラスの者ではないユーロだった。
「誰が
そのユーロの笑顔に対し、真雄は呆れ気味に答えた。
「てか何でここにいるんだ? クラス
「勿論、義兄上とダーリンをお待ちしていたのだ」
真雄の問いにユーロは当然の如く答える。
「ユーロっち、コグレっち達がダンジョンに行ったて聞いてからずーとここにいたんだよ?」
「全く、どうしてこんな変態ばっかり来るのよ………」
「もはやこれ、古暮達の
そのユーロに他のクラスの面子も呆れ気味だ。
「つまり、僕たちを待つ為に態々ここに?」
その時、李雄が真雄の後ろから顔を出した瞬間、ユーロは真雄の目の前から消え、あっという間
に李雄の前までやって来た。
「ダーリン、怪我はしていないかい?」
『はやっ!』
その高速とかを超えた超移動に真雄と李雄、更には教室にいる殆どの者の声はかぶった。
「君の球の様に美しい肌に傷がいったら俺様は泣きそうだ」
「は、はぁ……」
「それに何故 俺様を呼ばなかったのだ? 君の為ならば俺様は喜んで君の楯にも剣にもなろうと
言うのに!」
そう言いながらユーロはクルクルと回り踊りながら李雄の前に跪いた。
「バレーダンサーかよお前は」
「ふっ、踏め言葉として受け取っておこう義兄上」
「だから誰が義兄上だ」
そう言い真雄は義兄上を否定するが、ユーロは全く聞く耳持たず李雄の手を取った。
「あ、あの、ユーロくん?」
「ユーロで構わないさダーリン。さぁ、おいで~ダーリン。ダンジョンで疲れた君の見も心も癒し
て差し上げよう。俺様の熱い抱擁で」
「するなっ!!!」
李雄を篭絡させようとするユーロを止める者が1人いた。
優希である。
「何だまた貴様か。貴様はどうあっても俺様とダーリンの仲を引き裂きたいらしいな」
「あのね、何度も言うけどこんな顔と声してるけど李雄は男なの! アンタがどんなに頑張ったっ
て手に入らないの! いい加減 諦めなさい!!!」
「ふん。それは普通の者の話だ、俺様の愛の力ならば不可能を可能にできる!!!」
「いや無理だろ」
そのユーロの言葉に真雄は突っ込みをいれずに入られなかった。
「義兄上、アナタまで俺様の愛を疑うのですか?」
「いやオメェの李雄への愛は判ったがな、
「ならば、
「本気かよ」
そのユーロの言葉に、流石の真雄も呆れ果てた。
今まで色んな男が古暮兄弟に告白して来たが、ここまでガチな奴は初めてだった。
「あのぉ、ユーロ?」
とそこへ李雄がユーロの前までやって出て来た。
「おぉダーリン。俺様の抱擁を受ける気になったのだな」
「ちょっと李雄!? アンタまさか!!!」
「わぁお、リオっちついに!?」
「何々、何が始まんの?」
「………ハァ、ハァ、……こ、これは、次の内容に生かせれそう………」
李雄がユーロの前に出て来た事で様々な声が飛び交う中、李雄はゆっくりと口を開いた。
「そろそろ教室に戻った方が良いと思うよ?」
「む? どういう事だいダーリン?」
その李雄の言葉にユーロや真雄は無論、皆が首を傾げた時だった。
教室内にキーンコーンカーンコーン、とホームルームを告げるチャイムが鳴り響いた。
「ね?」
「………ふむ、ダーリンがそこまで言うならばここは一旦戻るとしよう。ではまた会おう、我が愛
しのダーリン♪」
その李雄の言葉に、ユーロはあっさりと退散して行った。
「……………李雄」
「なに、兄さん」
「お前、
「そうかな?」
その真雄の言葉に首を傾げる李雄。
ともあれ何とか事態は収拾できたので良しとし、古暮達が席に着こうとした時だった。
「ん? 待てよ」
真雄は不意にある事を思い出した。
先程、李雄がユーロの前に立った時 様々な声が聞こえたのだが。
「誰か1人荒っぽい息してなかったか?」
そんな疑問を抱えつつも、真雄は席に着くのであった。
『~第12話~古暮兄弟、初めてのダンジョン 《終》』
どうも、黒鋼丸です。
今回の話は古暮兄弟の始めてのダンジョン授業です。
出て来たモンスターは『絶対☆必覧!胸キュンビジュアルBOOK』に乗っていた、スライム、バケタヌキ、ファンガス、ブルーウィスプなどです。
ダンジョンは初めてという事もあり雑魚モンスターばかりでしたが、今後はなるべく強敵を出し
て行こうと思っています。
では、次回もお楽しみに~♪