絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~【更新停止中】 作:黒鋼丸
ついに初めてのダンジョン授業を経験した古暮兄弟。
初級故にゲーム感覚で難なくクリア―し2人は放課後を迎えるのだった。
「ここか」
放課後の学園内。
真雄は約束通りセンシアに武道部のある武道館まで案内され……なかった。
放課後に校長室に呼ばれ、ディーネやザビエラにダンジョン授業での感想やこれからもっと頑張
らなければと叱咤に近い説明を受けて遅くなってしまったのだ。
なのでセンシアには先に武道館まで行くよう伝え、真雄は今ようやくリュアナに案内され武道館
の前までやって来た。
「体育館のすぐ裏にあった訳か」
「はい。元々は柔道部や剣道部が使っていましたけど、数年前に廃部になってからは誰も使わなく
なったそうです。それをイズミさんが武道部の為に使い出したんだそうです」
「廃部? そりゃまた何で?」
「えっと、詳しくは知らないんですが……何でも当時の剣道部主将と柔道部主将が武道館の場所を
取り合って口論し、その結果部員全員を巻き込んだ一大騒動に発展してしまったらしくて……」
「んで、両方とも壊滅したあげく、問題起こしたんで廃部になったてか」
その真雄の言葉にリュアナはコクリと頷く。
どうやらその当時の剣道部と柔道部は相当の武闘派だった様だ。
「楽しかったんだろうなぁ~、その全面戦争♪」
「ま、真雄様………」
そんな柔道部と剣道部の全面戦争を想像した真雄はつい微笑みをこぼしてしまう。
是非、自分も参加してみたかったものだ。
「ま、時は遡れやしねぇしな。今は目の前のもんに行くとすっか」
そう言い真雄は止めていた足を動かし、武道館の入り口と思われるドアへと手をかける。
『せいっ! やぁっ!!』
「ほぉ……」
それと同時に、武道館の中から気合いの入った掛け声が響いて来た。
その声に真雄は益々 興味を持ち、武道館の中へとズカズカと入って行く。
その先に見えたのは、広大な畳の空間だった。
畳の部屋には胴着を着た何人もの生徒達が、ある者達は竹刀を振るい、ある者達は棒を突き、
またある者達は拳を、更にある者達にいたっては真剣を振っている。
その様はまさに武道だった。
「へぇ、結構 本格的だな」
「この武道部にいる方々はいずれも将来の武道の選手を目指す方などが集まっています」
「成程、
そのリュアナの言葉を聞いていると、武道部の面子から声が消えた。
そのことに気付いた真雄が視線を向けてみると、どうやら休憩に入った様で、皆水分補給したり
座っている者がいる。
「ん?」
その時、真雄の視界に奇妙な一団が入った。
休憩中だと言うのに水分も補給せず、誰かと話をする訳でもなく、ましてや座ってもいない。
一部の所に幾人もの部員達が集まり何かに集まってる様に見える。
「アレは……センシアか?」
そして真雄は見た。
その一団の中心と思われる所に、胴着姿のセンシアがいる事に。
「アレは……多分、センシアさんのファンクラブの方々かと………」
「ファンクラブ? いるんだなそう言うの」
そのリュアナの説明に真雄は妙に納得を感じてしまう。
確かにセンシアぐらい美人で何でも出来る優等生ならばファンの1人や2人、いや10人や100人い
てもおかしくは無い。
とその時、不意に真雄は一団の中心にいるセンシアと目が合った。
センシアもどうやらこちらの姿に気づいたらしく、一団の中をすり抜ける様にこちらにやって来
た。
「コグレ、リュアナ、来ていたのか」
「おう、少し前にな」
「お疲れ様です、センシアさん」
「すまない、少し私も汗を囲うと思って夢中になりすぎていた」
そう言いやや申し訳なさそうな表情をするセンシア。
「気にすんな。俺もちぃとばかし遅くなっちまったしな。待たせて悪かったな
真雄はそう言い気にしていない事をアピールした、その時だった。
不意に真雄は辺りの空気が変わった様な気がした。
別に確信がある訳ではないが、僅かに辺りの温度が少しばかり下がった気もすれば、上昇した気
もしたのだ。
(? なんだ、この感じ)
「しかし、それでも私はお前と約束していたのだ」
そんな中、センシアやリュアナは特に何も感じていないようだ。
「まぁそう言うなって、人生にトラブルとかは付きもんさ。大体
でもあるまいに」
そう言いなおも自分の責を感じるセンシアに対し明るく接する真雄。
だがその時、また、しかも前より強く感じたのだ。
辺りの空気の変化を。
しかし辺りを見ても別に何か変わった訳でもなく、この武道館にクーラーなどがある訳でもなか
った。
「そうか、すまないな。コグレは優しいな」
「優しい? 俺が? 細けぇ事を気にしねぇだけだ
けだ…………」
「おいそこの貴様!!!!!」
相変わらずお堅いセンシアにそう言い放ったその時だった。
不意に武道館の奥の方から怒りにも似た声が響き、真雄達はその声のした方を振り向く。
そこには胴着姿の1人の女子生徒がいた。
オレンジ色のショートヘアに顔は色白く整っている。
猫の様な釣り目、左目の舌には泣き黒子がある。
だが、それ以上に特徴的なのは、顔の横と背中から生えた黒い翼だった。
フィルミアと同じハーピーの様にも見えるが、どこか野生的な感じがする。
その手には細長い西洋風の刀剣、レイピアが握られている。
「ソフィア、一体どうしたのだ?」
そのセンシアの言葉から、彼女の名はソフィアと言うらしい。
(ん? ソフィアって確か………)
その時、真雄の脳裏にセンシアの言葉が浮かび上がって来た。
センシアは確か生徒会室で「武道部を任されている副部長の“ソフィア”がいる。私から彼女に
あたってみよう」と言っていた。
(って事は、コイツがそのソフィアか?)
そう考えていると、ソフィアが真雄達の前までやって来た。
なぜか真雄を睨みつけながら。
「センシア様、何なのですかこの無礼者は?」
「あん?」
そのソフィアの言葉に真雄は首を傾げる。
ソフィアの言う無礼者とは、そお睨みつけ具合から真雄の事なのだろうが、何故いきなり無礼者
呼ばわりされなければならないのか。
その事に真雄の頭上に?マークが浮かぶ。
「無礼者とは、コグレがか?」
「そうです。センシア様を呼び捨てした挙句オメェなどと! これが無礼以外の何だと言うのだと
いうのです!!」
「はぁ?」
そのソフィアの言葉に真雄は唖然とした。
つまりソフィアはセンシアに対してため口の真雄の態度が無礼だというのだ。
それの何がいけないのか意味が判らない。
「おいおい、俺がセンシアの事どう呼ぼうが俺の勝手だろうが」
「貴様! またしてもセンシア様を呼び捨ててで!!!」
真雄が反論すると、ソフィアは怒りの形相で刀を真雄に向けて来た。
「んだよ、候補生にゃ敬語使わなきゃならねぇ法律でもあんのか?」
「この部に入る者は皆、センシア様とイズミ様に敬意を持つ事が最低条件なのだ!」
「イズミって、
そのソフィアの言葉に真雄の疑問は益々 深まった。
武道部の主将であるイズミに敬意を持つのは判るが、何故センシアにまで?
「何でセンシアにも何だ?
「貴様! センシア様をコイツだと!!!??」
「おいおい、ソフィア落ち着け」
センシアを親指で指差しながら言う真雄に対し、ソフィアは完全に怒り心頭。
それを見ていたセンシアが止めに入る。
「ソフィア、何度も言う様だが私は別に誰にどんな呼ばれ方をしようと構わん。それにコグレは私
のクラスメイトだ、呼び捨てでも問題ないだろ?」
「いいえ。例え同級生でもクラスメイトであろうとも武道部に入るならばこの決まりは守っていた
だきます」
「だから何でよ?」
どうしても真雄にはその意味が判らない。
イズミと言う主将に敬意を持つのはまだ判るが、別にセンシアは部員でもない筈だ。
「決まりだからだ」
そんな真雄の疑問に対し、ソフィアは当然の如く言い返す。
そのソフィアの態度に真雄はイラ立ちを感じると共に、
つまりソフィアはサーシャと同じタイプ、いやそれ以上の忠義者だ。
自分の敬愛する者に礼儀正しく、その存在になれなれしい者に対しては敵意を燃やし、更には自
分の敬愛する心を他の者にも強要する。
まるで“
(だが、こいつには三成の様な忠誠心はあっても、義将と呼ぶには筋が通ってねぇ)
自分の敬愛する戦国武将の士道と比べれば、ソフィアのなど独り善がりな我侭だ。
「センシア、紹介して貰っといて何なんだが、
「む?」
「こんな小うるさい奴と仲良くやるなんて不可能だわ。ホント
そう言い真雄は武道館を後にしようとクルリと方向転換、出入り口の方へと向かい出す。
「コグレ」
「センシア様、あの様な者ほっておきましょう」
「あ、お待ちください真雄様」
後ろの方からセンシア達の声が聞こえるが無視して行こうとした、その時だった――――――
「あの様な者が子息とは、ベルトラス様とマリア様も御可哀想に」
「…………あぁっ?」
そのソフィアの言葉に、真雄は怒りを感じ足を止める。
「おい、今なんつった?」
「聞こえなかったか? 貴様の様な者が子息とは、ベルトラス様とマリア様が御可哀想だ」
そのソフィアの言葉に、真雄は全身から溢れ出る熱を感じずにはいられなかった。
つまり
て見たのだ。
それは何より真雄が嫌う事だった。
「…………く、くくくくくくくくくくくくくくく…………」
「ま、真雄様?」
「コグレ? どうしたのだ?」
「何だ、急に笑い出して」
いきなり笑い出した真雄に驚く声が背後から聞こえる。
これは可笑しくて笑っているのではない。
聞こえたのだ、プツンという音が。
故に笑う。
これはいわば癖みたいな物だ。
「くくくくくく………聞こえた、聞こえたぜ………」
「聞こえた? 真雄様、一体何が………」
真雄の言葉にリュアナが聞いてくる声が聞こえる。
そして同時に真雄は体中から流れ溢れ出るこの熱さの正体に気付いた。
これは怒りだけではない。
あの時、暴走したカグヤの時やワイアームの時と同じ、いやそれ以上の感覚。
「聞こえたんだよ――――――――――――――――――
緒が切れる音がよぉっ!!!!!!」
そしてその熱、魔力は今、爆発した。
◇◆◇◆◇◆◇
「な、何なんだ、この桁外れの魔力は!?」
その突然の出来事に、ソフィアは驚きと恐怖を感じた。
古暮 真雄。
人間界からやって来たと言う新たなる魔王候補生。
そして噂では人間界に駆け落ちした前魔王と前聖王、ベルトラスとマリアのご子息の1人。
センシアからそう聞いていたソフィアだったが、
見た目は美しく声も綺麗。
だが服装は乱れ、口調も上品からかけ離れている。
しかもあろう事かセンシアの事をオメェだのコイツだのと無礼この上ない。
故に口にした、ベルトラスとマリアを哀れむ言葉を。
その瞬間、
に。
「テメェ、あのクソ夫婦が可哀想だと、あぁ?」
そう言いソフィアに視線を、いや睨んでくる真雄。
先程までは宝石の様に美しさすら感じた
判る。
「く、クソ夫婦だと!? 貴様、仮にも魔王と聖王を勤め、名君と呼ばれた御2人を、しかも自分の
親に対してクソだと!!?」
その真雄の言葉に、ソフィアは真雄に恐怖と脅威を感じつつも言い返す。
どんな理由があれど、名君といわれたベルトラスとマリアを、ましては自分の親の事をクソと呼
ぶ様な事を厳格なソフィアは許せなかった。
「はっ、じゃあカスか? 俺はあんなのと血が繋がってると思っただけでも吐き気がするぜ」
「何だと!?」
その真雄の言葉がソフィアには信じられなかった。
自分の親を、名君をそんな風に言う者など普通いない。
だが、
「コグレ! 流石に今の言葉は私でも聞き捨てならんぞ」
そこへ声を上げたのは状況を見守っていたセンシアだった。
「なに?」
「お前は知らないだろうが当時ベルトラス様はその威風堂々とした佇まいと大胆さから、マリア様
は自愛に満ちた佇まいと優しさから歴代の王達の中でも名君と言わたのだ。御2人は今の私にとっ
ても憧れの存在だ!」
「そうだ、その御2人の事を貴様は!!!」
そのセンシアの言葉にソフィアは続く。
「おいセンシア、オメェは思想の違いってモンを知ってるか?」
「き、貴様! またセンシア様に向かって!!!」
その真雄の言葉にソフィアは再び怒りをあらわにするが、真雄はソフィアの方には目もくれず
センシアに向かって口を開きだす。
「ヒトの考えや思想なんて違うもんだ、偉人に対しての思想もな。1人の偉人に対して憧れを抱く
奴がいたら、それとは別に軽蔑を抱く奴もいるもんだ。
「っ!!!!」
「せ、センシア様?」
その言葉にソフィアにはセンシアの表情が暗くなった気がした。
いや気がしたではない、確実に暗くなった。
理由は判らない。
だがセンシアの表情が暗くなったという事実だけは本物だ。
「貴様!!!」
それだけでソフィアが真雄に対し怒りを爆発させるには十分だった。
ソフィアはレイピアを構え真雄に突っ込んで行く。
「ハン」
「!!!??」
だがそれに対し真雄は鼻で笑い、碌に迎撃の構えも取らない。
自分を舐めているのか?
そう思った時、ソフィアのイラ立ちは更に上昇、渾身の力で突きを繰り出す。
その速度、パワー、どれをともっても自分の出せれる限りの最大の力だ。
勝った。
そう思えた、筈だった。
「なっ!?」
だが、その剣が真雄に突き刺さる事は無かった。
「
「う……嘘だ……!?」
ソフィアの渾身の突きは、刀身を真雄の手で握られ止まってしまっていた。
自分の渾身の突きを止めた?
しかも素手で?
あり得ない、あり得る筈がない。
この突きを生身で止めれたのは
「へぇ、良い突きしてんじゃねぇか。10点満点中3点やるよ、自身をもって散りな」
「なっ!!??」
10点満点中3点?
その真雄から下評価を受けた事に対し、ソフィアは突きを止められた事への驚き以上に、その評
価に怒りを感じ、再び突きを繰り出そうと剣を引く。
「ぐっ」
だが引けない。
剣を握る真雄の握力が強すぎて引く事が出来ない。
「こ、………の……っ!!」
「……型通りの突きにとらわれ、剣を引く事しか頭にない、か。訂正だ、10点中2点だ」
「なっ!!!」
そんなソフィアに真雄から放たれたのは更なる下評価。
そして気付いた時には既に遅かった。
ソフィアが真雄の言葉に怒りを感じた瞬間、真雄は剣を持つ手を引き、剣と剣を持つソフィア
本人を力ずくで引き寄せだした。
「なっ!!??」
そのパワーは桁違いで、ソフィアはあっさりと距離を詰められる。
「ふんっ!!」
そのまま真雄は蹴りをソフィアの剣へと繰り出した瞬間、剣は音を立てて砕け散った。
「……はっ!?」
そのあっという間に起こった出来事に、ソフィアは一瞬何が起こったのか判らなかった。
「散りな!」
「っ!!!?」
その時、気付いた時には真雄は拳を構えこちらに向かって正拳突きを放っていた。
速さ、風圧、どれをとっても避けれないと直感できる程に鋭い突きを。
「あ、あぁ……」
そう思った。
「ま、真雄様!!!」
だが何処からともなくその声が聞こえた瞬間、拳はソフィアの目の前で止まった。
最も、拳による風圧でやや後ろに飛ばされ尻餅を付いてしまったが。
見ると、真雄に付いて来たメイドのリュアナが真雄の肩を握り止めに入った様だ。
そんなリュアナを真雄は不機嫌そうに睨んでいる。
(バカな!? 殺されるぞ!!?)
その姿を見てソフィアはそう考えずに入られなかった。
そんな男に意見するなど死刑宣告に等しい。
だが、真雄の圧倒的な力の前に完全にこしが抜けたソフィアは立つことも出来ないでいた。
◇◆◇◆◇◆◇
「……何だ、リュアナ」
そう言い真雄はリュアナを睨む。
リュアナは
自分の事を
「ま、真雄様……」
そんな真雄に対し、リュアナは体を震えつつも意を決した様に口を開きだした―――――――
「ま、真雄様、暴力はダメです。暴力で全てを解決してはダメです!!」
「っ!!!!!!!」
そのリュアナの言葉を聞いた瞬間、真雄はリュアナが一瞬、
いや気がしたではない、明らかに見えた。
「お願い……お願い………します………」
だがそれも一瞬の事、気付けば
ナの姿があるだけだった。
「………………チッ」
その残像に、真雄は完全に怒りが冷めてしまった事が判った。
体中に感じていた熱が消え、頭の違和感も消えていく。
鏡が無いから判らないが、おそらく角が消えたのだろう。
「あ、あの、真雄様?」
「………興が冷めた、帰るぞ」
心配げにこちらに視線を向けてくるリュアナにそれだけ言い、真雄は出入り口に向かって歩き出
した。
(ん?)
その時、真雄は見た。
センシアの悲しげな表情を。
そういえばセンシアは
(何だ? 偉人への感情の違いを知って唖然としてんのか?)
よく判らないがセンシアからは声を掛け辛そうな雰囲気が出ている様に見え、真雄はそのまま武
道館を後にするのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「……………ふぅ」
夕日の輝く校舎の生徒会室。
そこで生徒会長の椅子に座り、ため息をつくセンシアの姿があった。
(ヒトによって偉人への感情は違う、か………)
そんなセンシアの脳裏に浮かぶのは、武道館で真雄が放った言葉だった。
あの後、真雄の言葉にやや放心していたセンシアだったが武道部部員達の声で我に返り、まだ動
揺のあった武道部の収束に行動した。
特にソフィアは自信のあった攻撃を意図も簡単に真雄に止められた挙句、その戦力を下評価され
た事にえらくショックを受けていた為、励ますのに少々骨を折った。
そして、そんな中でもセンシアの脳裏に浮かぶのは、あの時の真雄の言葉だった。
「1人の偉人に対して憧れを抱く奴がいたら、それとは別に軽蔑を抱く奴もいるもんだ。俺と
「私と
確かに真雄の言い分も一理ある。
事実ベルトラスとマリアは歴代の王の中でも、特に優秀な英傑と評価されている一方で、魔界と
天界を見捨てて人間界に逃亡した者と蔑む者も多い。
だが、それ以上にセンシアの脳裏に浮かんだのは
「………父上……」
自分の父、現魔王であるアルベルトの姿だった。
真雄の言う思想の違いの如く。
だから真雄は自分の事をベルトラスとマリアの息子として見られた事に腹を立てたのだ。
「コグレと私……案外、私達は似たもの同士なのかも知れんな」
そう苦笑しながら、センシアは窓に視線を向ける。
夕日が沈み、空は徐々に暗くなり星々が輝き始めていた。
◇◆◇◆◇◆◇
「お前はバカか」
「あん?」
バラックの食堂で魁に言われた言葉はそれだった。
「武道部見学しに行って何で問題起こしてんだよ」
「アンタ本物のバカでしょ」
それに続く様に優希にも言われた。
バラックに戻った真雄とリュアナは武道部での出来事を魁達に話したらこのザマだ。
「知るか、俺を怒らせたアイツ等が悪い」
だが真雄に反省の色など無い。
寧ろあの場合、怒らない方が無理だ。
「兄さん、気持ちは判るけど明日謝りに行こうよ」
「気持ちを理解してんなら下らねぇ事ぬかすな李雄」
弟である李雄の意見も今の真雄には馬の耳に念仏だ。
あの時はリュアナがあの人に被って見えて身を引いたが、怒りが消えた訳ではない。
「つーかそもそも、突っ掛かって来たのは向こうだぜ? 俺がセンシアをどう呼ぼうと俺の自由だ
ろうが」
「まぁ確かに向こうにも非があったんだろうけど………」
「向こうにもじゃねぇ、向こうにしかねぇんだよ。大体手を出したのも向こうが先だ、俺は被害者
だぜ?」
そう言い真雄は魁の言葉を妨げる様に言い放つ。
確かに真雄は魔力を発動させただけであり、手を出したのはソフィアの方が先だ。
真雄はそれに抵抗しただけである。
「ケッ、オメェの言い分なんぞ誰が信じれるか」
「同感」
そんな真雄の言い分を真っ向から否定する者達がいた。
優希とアンゴルモアだ。
「はっ! 流石はカボチャ、植物の目は飾りの様だな」
「ああん!? ケンカ売ってんのかテメェ!!!」
「売ってんのはどっちだ? 買っても良いけどよ」
そう言い真雄は木刀を手に席を立ちアンゴルモアと対峙する。
「いい加減にしろっ!!! 話が纏まらないだろ!!!!!」
ここで大声で止めに入ったのは魁だった。
この男、この面子の中では一番まとも故にこういう時のストッパーとなる。
「ウガー、魁、怒るとシワが出来るダ」
「俺を常に悩ませている元凶が言うな」
その勇の言葉に頭を抱えつつも魁の言葉により、真雄は木刀を引き、優希は座り込み、アンゴル
モアはその魁の意外な一括に唖然としていた。
「んで? どうするんだ真雄」
「何が?」
「公安執行委員の件だよ。武道部と問題起こしてどうやってなるんだ?」
その魁の言い分は最もだった。
元々 武道部へは公安執行委員になりたくて見学しに行ったのだ。
そこで問題を起こしてしまった今、武道部には入れない。
よって公安執行委員になることも不可能だ。
「兄さん、やっぱり謝って入部するしか………」
「いや、その必要はねぇ」
謝罪を勧める李雄を抑える様に真雄は言い放つ。
「どういう事だ?」
「あの武道部って連中、特にソフィアって奴を見て判った。主将のイズミって奴はどうか知らねぇ
が、アイツ等に公安執行は無理だ」
「どうしてですか?」
真雄の言葉にリュアナが首を傾げた。
当然だろう、武道部という名前だけならこの部以外に公安執行委員をやれそうな所など無い。
そう、名前だけなら。
「あのソフィアって奴、動きが型に捕らわれ過ぎてた」
「型に?」
真雄の言葉に今度は李雄が首を傾げた。
型とは武術における基本の動きの事だ。
型があるからこそ武があり、型無くして武はないと言われる程に重要な要素だ。
「確かに型は大事だが、それに捕らわれているばかりじゃダメだ。ルールのある試合ならそれでも
良いだろうが、モンスター相手の実戦じゃ役に立たねぇ」
「つまり、彼等は型に捕らわれ過ぎてて試合じゃ強いが実戦は微妙と」
その魁の言葉に真雄は頷く。
真雄の大好きな歴史の1つ、幕末。
数多くの者達が剣の腕を磨き天誅、暗殺、捕縛の為に猛威を振るったが、幕末最大の英雄である
坂本 龍馬や、維新三傑の1人、桂 小五郎は道場では強かったが実戦で刀を振る事はなかった。
試合では強いが真剣での斬り合いなど殆ど経験が無かったからだ。
それに対し試合では田舎者と馬鹿にされながらも実戦で猛威を振るったのが新選組だ。
ケンカや出試合、捕縛の下の斬り合いで磨かれた腕は幕末より100年近くたった今でも歴史マニ
ア達の心を掴んで離さない。
「実戦で大事なのは経験力。後あるとするなら武の才能だ。あのソフィアって奴は経験が殆どねぇ
し、他の連中はあの時殆ど動けなかった」
あの時、すなわち真雄が魔力を爆発させた時だ。
怒りに燃える中で真雄は武道部の部員達に視線を向けたが、殆どが真雄の魔力に圧倒され動こう
とする者など皆無だった。
「アンタ怒り狂ってる中でよく見てるわね」
「コイツ頭はキレる方だからな。怒りの方もキレやすいが」
「ふん、うまい事言うじゃねぇか魁。褒め言葉として受け取っとくぜ」
そう言い真雄は不適に微笑む。
「まぁともかくだ。
「まさかそれまで待って、公安執行委員を自分が一から作る何て言わないよな?」
そう言い呆れ気味で見てくる魁に対し、真雄はニヤッと微笑む。
「残念だがそれじゃ正解は半分だな」
「半分?」
「公安執行委員を一から作るってのは良いが、あいにくとそんなに待てねぇ。だから作るのよ」
「作るって?」
その真雄の言葉に李雄を始め一同が首を傾げる中、真雄は口を開く―――――――
「公安執行委員とは違った、モンスターからこの学園島を自分達で守る部活、
『…………………はあぁっ!?』
「まぁ!」
「えぇー!?」
その真雄の発言に魁、優希、アンゴルモアの驚きの声はかぶり、リュアナと李雄も驚いている。
そう、真雄が作ろうと考えたのは公安執行委員を部に頼む様な委員ではなく、公安執行を目的と
した部活その物なのだ。
「幸い俺には100人近くの
「おいおい、顧問とかはどうするんだ?」
「んなもん建前で適当にいりゃ良いんだよ。頭で無理か否かを考えるより体で行動だ」
おいおい、と呆れる魁を尻目に真雄は今後の予定をフル回転させた。
部活を作る上での問題の1つ人数は何とかなる、顧問も適当で良い、最大の問題は部活を作る際
に武道部の連中が文句を言って来ないかという点だ。
特にあのソフィアという奴は、「自分達の仕事を取るな!」とか言って来そうだ。
そして何より、どういう理由で部活を作るのかという理由が必要だ。
まさか武道部の連中と一緒にしたくないから作ったとは流石に学校側も承諾しないだろう。
(やはり、
頭より体と言いつつ、結構色々考える真雄なのであった。
「ねぇーメシまダ?」
そんな真雄の思考を止めたのは、蚊帳の外にいた勇の腹の音だったと言うが、これは全くの蛇足
である。
◇◆◇◆◇◆◇
「おーおー、星が良く見えやがるぜ」
バラックでの夕飯の後、アンゴルモアは夜空を飛んでいた。
理由は無い、何となく空を散歩したくなった故だ。
「しっかし、公安執行部ねぇ…………」
そんあアンゴルモアの脳裏に浮かぶのは、先程の真雄の案、治安維持部の設立の話だ。
ハッキリ言って部の設立は
だがその大胆不敵な案には流石に驚いた。
「………血の繋がりは海よりも深しってか?」
その真雄の姿を見てアンゴルモアの脳裏に浮かんだのは、魔王に在籍中の頃のベルトラスの姿だ
った。
大胆不敵な発言と行動力で善政を行った前魔王ベルトラス。
先程の真雄の発言はあの頃のベルトラスと重なる所がある。
やはり親子なのだ、
「まっ、唯一違うのは女への対応の仕方か」
「アンちゃーん!」
そう呟いた時、下の方からリュアナの声がし下に目を向けてみるとバラックの玄関の前に
リュアナがいる。
「そろそろ帰りますよー」
「おー」
そのリュアナの言葉に、アンゴルモアは珍しく素直に下りて行くのだった。
『~第13話~武道部とのいざこざ 《終》』
どうも、黒鋼丸です。
今回の話でオリキャラの1人、武道部副部長のソフィアが登場。
加えて真雄の部活動作りが始動します。
更にセンシア、アンゴルモアの心境が書かれ、真雄の言うあの人なる複線も登場。
今後その複線とフラグを、何時、誰が回収するのか、どうぞ楽しみにしていてください。
では、次回もお楽しみに~♪