絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~【更新停止中】   作:黒鋼丸

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 前回までのあらすじ
 センシアとの約束により武道部にやって来た真雄だったが、副部長のソフィアとのいざこざと
武道部の余りのレベルの低さに愕然し、公安執行委員とは違った治安維持部の設立を考え出すのだ
った。


~第14話~ 誇りに思いやがれっ!!!!!!

「つー訳よ先生」

 

 武道部といざこざを起こした翌朝のトリニアス学園、職員室。

 真雄はそこでザビエラを相手に呆れ面をしていた。

 学園について早々ザビエラに呼び出され職員室に来て見れば、案の定 昨日の武道部との

いざこざについて聞かれ、特に言い訳をする事もなくありのままを話した所だ。

 

「ふむ、まぁ大体の事情は判ったわ。ソフィアさんも相変わらずね」

「相変わらず?」

 

 そのザビエラの言葉に真雄は首を傾げた。

 今のザビエラの言葉からするとソフィア(あの女)はこの手の問題を他にも起こした事があるのか?

 

ソフィア(アイツ)、他にも問題起こしてんのか?」

「えぇ、まぁね………」

 

 その真雄の言葉にザビエラはやや言い難くげそうな表情だったが、やがてその口を開いた。

 

「武道部のイズミという子は知ってる?」

「話では聞いてるが会った事はねぇ」

「彼女はね、アナタと同じクラスの子なのよ」

「あぁ、そういやセンシアがそんな事言ってたな」

 

 ザビエラの言葉に、真雄は生徒会室でのセンシアの言葉を思い出していた。

 確かにあの時、センシアは武道部主将のイズミが、現在休学しているクラスメイトだと言ってい

た。

 

「ソフィアさんは元々センシアさんやイズミさんを敬愛し、その手の事で揉め事を起こしてたけど

イズミさんが実家の都合で休んでソフィアさんが武道部を任されてから更に過激になったわ」

「過激?」

「武道部にセンシアさんとイズミさんを敬愛する事を入部条件にし、態度の悪い者などは即退部さ

せ、武道部を実質センシアさんとイズミさんのファンクラブにしたような物ね」

「何だそりゃ。道理で武道部と言うにはどいつもこいつも腑抜けた奴ばっかだと思ったぜ」

 

 そのザビエラの言葉に真雄は武道部で怒り狂った時、誰1人動けなかった事に納得を感じた。

 態度が良くとも殆どの者が戦闘経験の少ないひよっこ軍団では話にならない。

 

「昨日いたのが全員ではないけどね」

「だがそれでも、ソフィア(あんなの)が代理じゃ武道部も長くねぇな」

「それは言いすぎよコグレくん。それに確かに彼女に原因があるとは言えアナタの行動もあまり

良いものとは言えないわよ」

 

 その言葉と共に、普段からお堅いザビエラの表情が更に硬くなった様に見えた。

 

「ベルとマリアの子ならさぞかし苦労したでしょ。でもね、あんなのでもアナタの親なの。

あまり悪く言ってはダメよ」

「察してくれるならそれだけは言ってくれんなって。てかアンタも何気に言うね」

 

 その手の言葉を聞きなれている真雄は反省の色も無くあっけからんと答える。

 真雄としては彦左衛門とまりあの息子と言う理由だけでイジメに合った事もあるくらい、

ベルトラスとマリア(あの2人)のハチャメチャ振りには苦労しているのだ。

 故に2人の息子として見られれば不機嫌にもなるものだ。

 

「そうは言うが、お前どうするつもりだ?」

「あん?」

「あら、ヴァン先生いらしゃったの?」

 

 不意に後ろから声がし振り向いてみると、そこにはヴァンの姿があった。

 

「どうするってのは?」

「お前、公安執行委員になりたいんだろ? いざこざ起こしてどうするんだ?」

「あぁ、その事なんだけどよ」

 

 そのヴァンの言葉に、渡りに舟とはこの事だ!と言わんばかりにニヤリと微笑む。

 

「ハッキリ言ってさ、武道部の奴らだけじゃ執行委員なんて無理だと思うわけよ」

「どういう事かしら?」

「数的にも経験力的にもあらゆる物が足りてねぇって言いてぇの。そこで物は相談なんだけどよ」

 

 そう言い真雄は一晩掛けて考え出した案と共に公安執行部の事を話し出した。

 そう、真雄は公安執行部を作る理由に武道部を利用する事を思いついたのだ。

 武道部はソフィアの強攻策により数を減らし、いる者達には戦闘での計権力も低い者ばかりで

大半がセンシアとイズミのファンの様な面子ばかりだ。

 そこに付け込み真雄は学園島治安維持部の立ち上げを提案したのだ。

 

「成程な、悪くは無い」

 

 その真雄の提案に対し、ヴァンは関心気に頷く。

 

「確かに悪くはないけど、部員はどうするのかしら? モンスターを相手にした公安執行を行うと

なると相当の数が必要よ?」

「それは試しに集めてみてからだ」

(俺と野郎共で何とかなるだろうがな)

 

 そんな真雄の思惑に気付かないザビエラはなにやらやや考え込み。

 

「ならまずは部員を集めなさい。話はそこからよ」

 

 と言い放つ。

 

「あいよ♪」

 

 そのザビエラの言葉に真雄は心の中で、してやったり!と嬉しそうに微笑むのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 そしてザビエラから一様の許可を貰った真雄は早速行動を開始した。

 

「あっ、真雄様お待ちして………」

「おいセシリー、フィル、今良いか?」

「はい?」

「はう?」

 

 教室にやって来た真雄は待っていたリュアナや魁達には目もくれず、席に座るセシリーとフィル

放送部の2人に接近した。

 

「あらマオさん、おはようございます」

「マオさん、ボク達に何かご用ですか?」

「あぁ用がある。大事な様がな」

 

 そう言い真雄は近くの空いている席に適当に座り2人に視線を向ける。

 

「オメェらの放送部って今日も放送するのか?」

「え? えぇ、そうですけど?」

「放送内容はもう決まってるのか?」

「はい、大体決まってますけど何か?」

「無理でないなら放送内容にこいつを追加して欲しいのよ」

 

 そう言い真雄は1枚の紙を2人に渡す。

 その紙をセシリーとフィルはやや眺めていたが、やがて驚いた様な表情になった。

 

「これは……」

「マオさん、こんなすごい部を作るんですか!?」

「まぁな。放送してくれねぇか?」

 

 2人が驚くであろう事は予想していた真雄は特に気にもせずに話を進める。

 これに対しセシリーとフィルは顔を見合いやや考えていたが、やがて答えが出たのか真雄に視線

を向ける。

 

「判りました、今日の放送内容に追加しておきますね」

「任せてくださいね、マオさん!」

「すまねぇな、恩に着る」

 

 そのセシリーとフィルの言葉に満足した真雄は席を立ち、自分本来の席へと戻った。

 

「お前、何してきたんだ?」

「真雄様?」

「兄さん?」

 

 席に戻ると魁達が2人との会話に質問をして来たがそれに対して真雄は。

 

「昼休憩になりゃ判る」

 

 とだけ言い、それと同時にチャイムが鳴り響くのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

〈皆さんこんにちわ。トリニアス学園放送部がお送りするお昼の放送です〉

〈こんにちわ。穏やかなお昼の時間、皆様いかにお過ごしでしょうか〉

〈本日も特殊講義の案内やお天気など学園生活に役立つ情報をお伝えします〉

〈どうぞ最後までお付き合いください〉

(来たか)

 

 そして時は過ぎて、あっという間に昼休憩。

 真雄がもぐもぐと弁当を食べる中、放送は開始された。

 

〈本日のダンジョン授業の開放はありません〉

〈以上で生徒会執行部通達、学園施設の利用情報をお伝えしました〉

〈続きまして、占術部 調べによる明日のお天気です。セシリーお姉ちゃん、お願いします〉

〈はい。明日は午前から―――〉

「なげぇな………」

 

 頼んだこと故に2人に余り悪くは言えないが、真雄としては早く放送して欲しかった。

 自分が今朝方2人に頼んだ内容を。

 

「あの、真雄様?」

「兄さん?」

「ちょっと真雄、何そわそわしてんのよ?」

「そわそわと言うか、イライラ?」

「ウガ?」

 

 そんな真雄のイライラに気付いたリュアナ達が声を掛けて来るが真雄の耳には全く入らない。

 

〈それでは最後に追加報告です〉

「!!」

(来たか!)

 

 その時だった、終わり頃になりフィルの声が響き、その内容に真雄は耳を集中させた。

 

〈いつもならここで終わるのでが、今日はちょっとした追加報告があります〉

〈それは新たな部活を立ち上げるクラスメイトからの頼みにより追加いたしました〉

〈その名は、学園島治安維持部です〉

〈いえ~い♪〉

「えぇっ!!?」

「真雄、お前!?」

「へへ♪」

 

 その放送内容にクラス中、いや学園中が驚いているであろう中、真雄だけは嬉しそうにニヤ付い

ていた。

 そう、これこそが真雄の狙いだ。

 ポスターやら適当に勧誘するよりも放送して貰った方が幾分かアピールできると考えたのだ。

 

〈この学園島治安維持部は、先日決定いたしました公安執行委員の増加が目的です〉

〈公安執行委員を任された武道部だけでは人手不足という事で、モンスターを相手とした公安執行

その物を目的とした部の設立を考案なされました〉

〈この学園島をモンスターから守りたい、腕に自信のある、そんな方々は是非、学園島治安維持部

に!〉

〈詳しい事及び入部をご希望の方は治安維持部考案者、3年A組のコグレ マオさんの所までお願い

します〉

〈以上、お昼の放送でした〉

〈ではまた明日、同じ時間にお会いしましょう。ご聴取ありがとうございました〉

 

 2人の挨拶と共に軽快な音楽が鳴り響いた。

 

「よし種は蒔いた。後は部員確保(兵力拡大)だな」

「お前これを狙ってたのか」

 

 放送終了と共に意気込む真雄に対し、魁が呆れ気味に話しかけて来た。

 

「相変わらずやる事が大胆と言うか……」

「ポスター貼ったりするよりこっちの方が効率良いだろーが」

「アンタらしいわ」

 

 そんな真雄の言葉に魁と同様に優希も呆れ気味だ。

 

「でも兄さん、良いの勝手に放送内容増やして」

「良いんだよ、今朝ザビ公に呼ばれた際にヴァンとかにも言っといたし。部員集めれたら考えてや

るって言ってたし」

 

 そう言い真雄は意気揚々だ。

 ぶっちゃけ人間界で公安執行委員作る際は配下の不良達を動員させて、あっという間に委員会を

創り上げた。

 それと同じ様に三界(こちら)で得た不良達を動員させればあっという間だ。

 ついでにこの放送を聞いて、腕に自信のある者や、武道部を追い出された面子がやって来れば

一石二鳥だ。

 

「ねぇねぇ、マオっち」

「あん?」

 

 そんな事を考えていると後ろから声を掛けられ振り返ってみると、そこには声の主であるアリッ

サとチマの姿があった。

 

「マオっちってば転校早々部活立ち上げるの?」

「マオマオって意外と大胆ね」

「別に作る気なんてなかったさ。武道部の連中のレベルの低さを見なけりゃな」

 

 そう言った真雄の脳裏に浮かぶのは自分の魔力に動けない武道部の部員達と、券を握られただけ

で動揺するソフィアの姿。

 はっきり言ってファンタジー世界ならば少しは期待できると思っていた真雄は失望した。

 アレは武道部などではない、唯のセンシアとイズミという奴のファンクラブだ。

 

「あんな連中に公安執行委員なんざ無理だな」

「どうかな」

 

 そう考えていた真雄を否定したのは、センシアだった。

 

「どういう事だセンシア?」

「先日いたのは大半が、そう、君の言うファンクラブの様な者達だ。だが主将であるイズミを含め

た4名はかなりの強者(つわもの)だぞ」

「ほぉ、センシアがそれだけ言うなら相当の様だな」

 

 そのセンシアの言葉に関心気に微笑む真雄。

 どうやらファンクラブと化した武道部にも少しはまともな奴がいるらしい。

 

「とは言え、弱兵(尾張兵)の中に数人の強兵(甲斐兵)がいる位じゃどの道執行委員は無理だ。甲斐兵(かいへい)が何千いる方が良いに決まってる」

尾張兵(おわりへい)? 何だそれは?」

海兵(かいへい)?」

開閉(かいへい)??」

「出たよ真雄の歴史風例え話」

 

 その真雄の言葉にセンシア達は意味が判らず首を傾げる中、付き合いの長い魁は察した様だ。

 戦国時代、織田 信長率いる尾張(現在の愛知県)の兵は「尾張の弱兵」、「日の本一の弱兵」と

呼ばれ、それとは対照的に最強と名高かったのが武田 信玄の甲斐(現在の山梨県)の兵、上杉 謙信

の越後(現在の新潟県)兵、更には島津率いる薩摩(現在の鹿児島県)兵と呼ばれていた。

 つまり真雄は武道部(尾張兵団)の中に数名の強兵(甲斐、越後兵)がいても所詮焼き石に水、軍隊としては機能しないと言い

たいのだ。

 

「歴史の例え話か。コグレはホントに歴史が好きなのだな」

「大体コイツの歴史話の意味が判るのは俺ぐらいですけどね」

「バカは判らなくても良いさ。んな事より、さっさと入部希望者、来ねぇかなぁ~」

 

 センシアと魁の会話を耳にしながら、真雄は席で胡坐をかきながら入部希望者を待つのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「先生! 一体どういう事です!!」

 

 真雄が入部希望者を待っていた頃、職員室にソフィアの怒鳴り声が響き渡っていた。

 

「まぁまぁ、落ち着いてください~」

「ソフィアさん、アナタの気持ちは判るけど職員室で大声を出すのは感心しないわよ」

「う……」

 

 弱気なディーネとは対照的に強気に迫るザビエラにソフィアは己が非を認めおとなしくなった。

 

「大声を出したのは、申し訳ありませんでした。ですが先生、先程の放送は一体どういう事なんで

すか!?」

 

 ソフィアが怒りをあらわにする理由、それは先程の放送内容にあった。

 学園島治安維持部の設立。

 島に頻繁に出現する様になったモンスターを討伐しこの学園島を守る部活?

 我が武道部の任された公安執行委員のお株を奪う様な部活内容だ。

 そして何よりその発案者が古暮 真雄だと知った時、その怒りは頂点に達した。

 

「ソフィアさん。武道部の主将の代理であるアナタに説明しなかったのは悪かったわ。でもね、正

直な所アナタ達武道部だけに公安執行委員を任すのを不安に思う人達もいるのよ」

「何故です!? 私達武道部は学園最強の武力を誇っています!!」

「それはこの前までの話だろ」

 

 ザビエラの言葉に納得に行かないソフィアに対し待ったを掛ける声がし、声のした方へと視線を

向けると、そこにはヴァンの姿があった。

 

「ソフィア、お前のいる武道部は確かに優秀だ。だがな、優秀なだけじゃダメなんだよ」

「どういう意味です!?」

「武道部は確かに優秀且つ実力もあった。だがお前は、主将であるイズミや武道部に全く関係ない

センシアへの忠誠心の無い奴らとかを勝手に追い出しただろ? その結果武道部はどうなった?

確かに礼儀良さはあるが実戦経験皆無のひよっこ揃いになっちまった」

「そんな事ありません! 彼らは優秀です!! ダンジョンでの経験だってあります!!」

 

 そう言いソフィアは引こうとしない。

 事実武道部にはダンジョン授業に出る事が義務付けられており、モンスターとの実戦経験はある

のだ。

 

「確かにお前らはダンジョン授業には出てる。だがそのレベルは高いのか? センシアやエストレ

イア、エヴァン達候補生並のレベルに達してるのか? 島に来るモンスターはこの間のワイバーン

みたくダンジョンで出て来る様な生易しい相手じゃないぞ?」

「それは……」

 

 「平気です!」とは言えなかった。

 ヴァンの言うとおり候補生達に比べて今の武道部の面子は経験不足だ。

 経験力のある部員達は大半がケンカなどで得た経験者であり、ソフィアはその大半を素性が悪く

武道部の品を落とす者として退部させてしまい、そんな経験者はほんの一握りだ。

 

「し、しかし、経験力の無さならばコグレ マオとて同じでは!!」

「確かに奴の経験力は無い。だが奴には潜在能力がある。それはお前が良く知っている筈だ」

 

 そのヴァンの言葉にソフィアの脳裏に浮かぶのは昨日の出来事。

 真雄がブチキレを起こし、その際に放たれた膨大なまでの魔力だった。

 その様はまさに魔王。

 魔王と聖王の血筋に偽りなしの潜在能力だった。

 だがそれ以上にソフィアの脳裏に浮かんだのは、三界の者達が憧れるベルトラスとマリアへ対す

る真雄の軽蔑した態度、そして何より自分に放たれた言葉だった。

 「へぇ、良い突きしてんじゃねぇか。10点満点中3点やるよ、自身をもって散りな」

 「型通りの突きにとらわれ、剣を引く事しか頭にない、か。訂正だ、10点中2点だ」

 

「っ!!!!」

 

 そして何より、その時自分に向けてきた失望と期待ハズレと言いたげなの眼差しが、ソフィアは

どうしても許せなかった。

 

「とにかく! 私は認めません!!!」

 

 そう言いソフィアはイラ立ちを隠す事無く職員室を後にした。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「やれやれだな」

 

 ソフィアが去った職員室にて、ヴァンはため息をついた。

 

「あの子素直で良い子なんだけど、ちょっと頑固で融通が利かないわね」

「お前が言うな、お前が」

 

 そう言いながらヴァンは自分の席にドカッと座り、缶ジュースを開けて口に流し込んだ。

 

「しかしどうするの?」

「学園島治安維持部か? それとも武道部か?」

「両方よ。コグレくんが部員を集めて治安維持部を結成しても、ソフィアさんが必ず突っ掛かって

来るわ」

「だよなぁー」

 

 そう言いながらヴァンは考え込んだ。

 確かに古暮 真雄の潜在能力は高い。

 だがそれ以上に奴には人を引き付ける何かがあるのを、ヴァンは初対面の時から見抜いていた。

 恐らく40か50、少なくとも10名は部員を連れて来るだろう。

 

(親譲りのカリスマ性か)

「まっ、その時になってみりゃ判るだろ。いざとなりゃ俺が全力で止める」

「頼りにしてるわよ、()()()()()さん」

 

 そう言い意味ありげにこちらを見て来るザビエラに、ヴァンはため息を付きながら口を開く。

 

「俺1人に全部押し付ける気か? ()()()()()()()()さんよ」

「それは嫌味?」

「さぁな。所で、それはほっといて良いのか?」

 

 そう言いながらヴァンの指差す方には、会話から外れ1人の寝息を立てるディーネの姿があるの

だった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「へへへ、大分集まったな」

 

 放課後、真雄は自分の席に座りながら意気揚々と1枚の紙を見ていた。

 それは休憩時間などの間にやって来た入部希望者の一覧だ。

 その大半はやはり真雄の配下に付いた不良達であり、それに加え武道部を追い出された者達や

興味本位で入った者など様々だ。

 

「とりあえず数だけは集まったな。後はこっからマジでやる気のある面子そろえりゃOKだろ」

「あのー、所で兄さん?」

 

 そう呟いていると、弟の李雄がおずおずと話しかけて来た。

 

「あん? なんだ」

 

 真雄は李雄が来た理由を大方予想しつつ返事をする。

 

「あのさ、何で僕の名前まで入ってるの? 僕入部届け出した覚えないんだけど……」

「俺が入れたからだ」

 

 その李雄の疑問に対し真雄は予想通りと思いながらあっさりと答える。

 そう、リストの中には李雄の名前も入っているのだ。

 これは真雄が勝手に李雄を部員にする為に書いたのだ。

 

「お前は学園島治安維持部のマネージャーだ。そういった奴が俺には心当たりがお前しかおらん」

「やれやれ、どうせ拒否はダメなんでしょ」

「当然だ」

 

 そう言いながら真雄は席を立つ。

 

「さてと、とりあえず入部希望者共には体育館裏に集まる様言ってるし行くとすっか」

「真雄様、何をなさるんですか?」

「治安維持に必要なのは2つの強さだ。1つは力量、もう1つは心のな。それを軽く見極めて入部さ

せるか否か決める、いわば入部テストだ」

 

 リュアナの疑問に対しそう答える真雄。

 そう、治安維持をする上において興味本位で入部されては困る。

 不良達の様なケンカなどで得た強さと、苦境に立たされても折れない心の強さが必要なのだ。

 

(とは言え、肉体的強さはともかく精神的強さなんぞ実際に戦わせてみねぇと判りゃしねぇ。入部

テストの際は軽い方法で試してみっか)

「あ、あの、真雄様………」

「ん?」

 

 入部テストの内容を考えていると再びリュアナが声を掛けて来たので振り向く。

 

「何だ?」

「あ、あの、その………」

 

 リュアナはどこかそわそわし、何かい言いた気な表情をしている。

 

「どうした? なんか用があるならさっさと言ってみ」

『アホか』

 

 中々言い出さないリュアナにそう言った瞬間、すぐ近くにいた魁、優希、アンゴルモアから

ツッコミが入った。

 

「誰がアホだ誰が」

「アンタの他に誰がいんのよ」

「お前な女性に対してはもう少し優しく対応しろ」

「テメェ仕舞いにはしばくぞコラ!」

「あ゛ぁっ?」

 

 真雄に言いたい放題の3人の言葉に、真雄はやや声のトーンを下げた。

 同時に全身に力を入れ魔力を溜め込みだす。

 ここ数日で真雄は魔力が気合道の感覚で発動する事が出来る事に気づき、その量もある程度コン

トロール出来る様になった。

 武道部では怒りで爆発してしまったが。

 

「テメェらくだらねぇことぬかすと仕舞いにゃキレるぞこら、あぁっ?」

「!!」

「ちょ、ちょっと! 魔力は反則よ反則!!」

「チッ、こいつ魔力による気当りもう覚えやがった」

 

 その魔力を込めた気当りに3人もそれぞれ顔色を変えた。

 魔力の事も良く判らない魁や優希でも真雄の覇気の凄まじさは感じている様だ。

 

「あ、あの、真雄様………」

「あん?」

 

 そこへ再びリュアナが声を掛けて来たので真雄は視線をリュアナに向ける。

 相変わらず何処か言い難そうに、それでも何かを伝えようとしている様にも見える。

 

(こいつ俺の気当りにビビりつつも俺に近づくか……意外と肝が据わってんのか?)

「何だ、言いてぇ事があんなら遠慮なく言ってみろ」

「は、はい、あの……」

 

 その真雄の言葉に頷いたリュアナは、少し深呼吸をし、ゆっくりと口を開けた。

 

「わ、私も、治安維持部に入れてください!!!!」

「あぁ、いいぞ」

『即答(かよ)!!?』

 

 そのリュアナの言葉に真雄は別に悩む事無くOKを出した。

 これに対し見守っていた魁達からまたしてもツッコミが炸裂。

 

「よ、よろしいのですか?」

「自分から聞いといて確認するか?」

「あ、す、すみません……」

「一々謝んな。テメェ何も悪い事してねぇだろうが」

「お前は一々そういう言い方しかできんのか」

 

 その言葉に魁が呆れるが真雄は気にも止めず話を進める。

 

「リュアナ、オメェは俺のなんだ?」

「え? あ、わ、私は、真雄様と李雄様のメイドです!!」

「じゃあ何の問題もねぇ、掛け持ちでも良いから治安維持部に入れ」

「は、はい!」

 

 そう言いリュアナは嬉しげな表情で頷く。

 

(こいつホント犬みてぇな忠誠心だな)

「よし、リュアナも部員に追加で早速入部テストと行くか」

 

 そう言いながら真雄はリュアナの名を書き加えた入部希望者リスト表を手にしながら教室を後に

するのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「ほぉ、随分集まってんな」

 

 トリニアス学園、体育館裏。

 体育館裏には林があり、その中に妙にポッカリと開いた空間がある。

 そこに入部希望者50名近くが揃っていた。

 真雄の配下となった不良達は無論、武道部を退部された者、中には見るからに貧弱そうな興味本

位で来ていそうな者までその様は色々だ。

 

「あの真雄様」

「兄さん、僕達はどうすれば良い?」

 

 そこへ一緒にやって来たリュアナと李雄が聞いて来た。

 

「オメェらはそこにいろ。2人は問答無用で入れるからテストの必要はねぇ」

 

 そう言い真雄は李雄とリュアナを近くに残し、入部希望者達の前に立った。

 

「聞けテメェら!! 俺が学園島治安維持部考案者の古暮 真雄だ!!!」

 

 その真雄の大声に、先程までぺちゃくちゃ話していた者やその場に座り込んでいた者達は、入部

テスト開始に気付きピシッと整列した。

 

「いいか! もしこん中に興味本位の者や何となくで来た奴!! あとワイバーンやドラゴンとかの

凶悪なモンスターとの戦いに覚悟のねぇ奴は今すぐ失せろ!!!」

 

 そう言いながら真雄は先程からこっそりと溜め込んでいた魔力を開放。

 魔力はオーラとなって気当りとなり、入部希望者達を圧倒しているのが真雄自身よく判った。

 

「この部活は青春して良い汗かくなんてスポーツの部活じゃねぇ!! まして好き勝手暴れる不良の

巣窟でもねぇっ!! テメェの命掛けてモンスターから学園守る為の云わば自警団の部だっ!!!

そこに必要なのは肉体的強さ、そして精神的強さだ!! テメェらに30分の猶予をくれてやる!!

その間に決めろ!! 覚悟決めて部活に入るか、命恋しさに止めるか!! 今ここで選びやがれっ!!」

 

 それだけ言い真雄は魔力を抑え、その場に木刀を突き刺しながらドカッと座った。

 

「先も言った通りだ、30分以内に決めろ。嫌なら失せろ、止めやしねぇ」

 

 そう言い真雄は皆の反応を見た。

 予想はしていたが入部希望者達はざわめいていた。

 だがそれで良い。

 もし先程の気当り位で怖気づく様なら所詮それまでだ、今後やって行けるとは思えない。

 

(さぁ、どう出る?)

 

 そう思いながら真雄は皆の反応を見ながら待った。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 そして時は流れ、30分後。

 

「これだけ残ったか……」

 

 そう言い入部希望者達を見渡す真雄。

 30分待った結果、50名近くいた面子は半分ほどにまで落ちていた。

 その大半ははやり真雄の配下となった不良達であり、それに加え元武道部の面子が数名だった。

 

「随分減っちゃったね」

「真雄様……」

 

 その様に李雄はやや不安げに入部希望者達を見渡し、リュアナは心配げにこちらを見て来る。

 だが真雄はこの結果に満足していた。

 

「よっしゃ、25人もいりゃ十分だ!」

『え?』

『!!!??』

 

 その真雄の放った言葉に李雄やリュアナは勿論、入部希望者達も驚いている。

 しかしそう思うのが普通だろう。

 先程の真雄の気当りで半数近くが入部を止めてしまったのだから。

 残ったたった25名ほどで大丈夫なのか不安にはなるだろう。

 だが、真雄はそうは思わない。

 信長は桶狭間の戦いの際、少数精鋭の部隊を組織し今川義元の本陣を破ったと言われている。

 特に信長自らが見出した精鋭「馬廻(うままわ)(しゅう)」の奮戦は、義元の予想以上の力だったといわれる。

 

「いいかテメェら、よく聞け!」

 

 真雄は再び大声で、但し先程の様に怒鳴る様にではなく元気に生き生きと言い放つ。

 

「テメェらは数が減って不安に思ってるだろうが、俺は思わねぇ。何故ならやる気のねぇ奴が例え

100人いた所で精鋭50人には勝てやしねぇからだ! 先の連中は己の命欲しさに逃げ帰った、だが

オメェらは残った! それが精神力の強さだ、心の強さだ!! 恐れんじゃねぇ! 不安になるん

じゃねぇ! テメェらは強い!! 学園島治安維持部に入れた事を誇りに思いやがれっ!!!!!!」

『!!!!!!!!!!!!!』

 

 その言葉に、入部希望者達の表情が明らかに変わった。

 ある者は驚き、ある者は戸惑いつつも嬉しげに、そしてある者は手に持つ武器を握り締めて。

 

「強い?」

「俺達が?」

「強い……」

「そうだ、俺はアニキに付いてくぜ!!」

「そうだぜ部長……いやアニキ!!」

『アニキ! アニキ!! アニキィッ!!!!』

 

 気付けば皆が真雄の言葉に奮起しアニキコールが始まっていた。

 

「よーし! 先まで死んでた目が今じゃ勇猛な戦士の様だぜ!! オメェら今後詳しい事はおって説

明する!! 今日はこれまで、解散だぁっ!!!!!」

 

 その真雄の言葉と共に、学園島治安維持部の入部テストはお開きとなるのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「と言う事があったんだ先」

 

 部員報告をしに行った真雄と別れた李雄はリュアナと共に教室に戻った。

 そこで待っていたのは、李雄達を待っていた魁と優希に勇、暇を持て余していたアリッサとチマ

とアンゴルモアにエストにサーシャ、委員会を終え教室に戻っていたセンシアやユーメリア、部活

を終えたセシリーとフィルにエヴァン、更には何となくで教室に来ていたノム達、要するにクラス

全員だった。

 そして戻って来た李雄はリュアナと共にある質問攻めにあった。

 それは体育館裏から聞こえて来た声だ。

 何かが響く様な声がするだの、真雄の大声が聞こえただのの質問攻めに合い、それに対し李雄は

リュアナと共にありのままの事を報告した。

 

「成程、アイツらしい確かめ方だ」

 

 その説明に真っ先に口を開いたのは魁だった。

 その表情は何処か呆れつつも微笑ましく見える。

 

「全く、もう少し静かに出来ないの?」

「ウガガガガガ、真雄らしいダ!」

「まぁね」

 

 勇の言葉に李雄は苦笑する。

 確かにやり方は少々古臭い感じがするが、それが真雄らしいと言えば真雄らしかった。

 事実その古臭いやり方で、僅かに残った入部希望者達の士気を上げたのだから問題なしだ。

 

「あはは、マオっちて意外と硬派な不良だったりするんだね」

「でもかなりうるさくて迷惑だった気がすんだけどー」

「マオさん、まるで昔気質(むかしかたぎ)のヤクザさんみたいです」

「うふふ、マオさんは皆を励ますのが得意方なのですね」

「顔と声に似合わない性格ね」

「でも、そういう所、ちょっとカッコイイ、かも……」

「……それは、そこしだけ、わかる……」

「ねぇねぇサーシャ、マオ君ってヤクザだったの? ベルトラス様とマリア様の子供じゃなかった

の?」

「エスト様、確かにあの様な者がベルトラス様とマリア様の子息など信じられませんが事実です。

ただコグレ兄が少しヤクザっぽいだけです」

「コグレって、皆の前に立つ戦士みたいだね……」

「まさかコグレの入部テストが気当りによる覚悟の確かめだったとは。あの大声は少々問題があっ

たが、声だけで部員達を奮起させるとは、候補生を名乗るのも伊達ではない様だな。ふふ」

「まさかコグレさんに、昔気質な所があるだなんて以外ですね」

「にしてもんな古臭い奴がいまだにいたとは、オレはそっちの方が驚きだぜ」

 

 他のクラスの皆からも様々な反応が返るが、その殆どは真雄への好印象的なものばかりだ。

 

「まぁ、兄さん昔から堅気な所と持ち前の行動力で切り開く人だったから」

「確かにな。小学校時代はガキ大将、中学時代は不良の首領、高校じゃ公安執行委員の会長と、

どこでも不良達を率いてたからな。大方三界(こっち)でもそれでやって行くんだろ」

 

 その李雄の言葉に魁も同意した。

 昔から真雄は自分の外見などへのコンプレックスから誰よりも男らしくあろうと体を鍛え、ケン

カをやり、人の率いる術を独自で学んだ。

 その結果、人を率いるのが得意になり不良達を率いてそれを利用した組織作りなども得意になっ

た。

 

「おい、李雄、リュアナいるか?」

 

 そこへ不意に教室の戸が開き、そこから真雄が教室内に入って来た。

 

「兄さん」

「真雄様」

「噂をすればか」

 

 その存在に皆が反応する中、真雄に呼ばれた李雄はリュアナと共に真雄に近づく。

 

「どうしたの兄さん」

「ザビ公とヴァンに報告したらヴァンが顧問を請け負う形でOKが出た。明日詳しい説明をする。

放課後になったらまた体育館裏に来い」

 

 それだけ言い真雄はカバンを手に教室を出ようとしだした。

 

「さっさと帰るぞ。帰って夕飯(部活結成の宴会)だ」

「いや普通の夕飯だからね」

「気分だよ気分、乗り(わり)ぃな」

 

 そう言い真雄は上機嫌で教室を去って行った。

 

「ケッ、相変わらず騒がしい奴だぜ」

「まぁ、兄さんだからね。さ、帰って夕飯作ろ優希、リュアナさん」

「はいはい」

「はい。腕を振るいます」

 

 そう言い李雄もまた同居人達と共に教室を後にするのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「バカな……バカな!!」

 

 李雄達が意気揚々と教室を後にしていた頃、学園女子寮の片隅で黒い羽をわなわなさせるソフィ

アの姿があった。

 ソフィアがこれ程にイラ立つのには理由があった。

 つい先程、校舎内の廊下を歩いていた際に職員室に入る真雄の姿を見かけ、気になって職員室内

を覗き見してみると、ザビエラとヴァンが真雄の渡した1枚の紙に目を通している姿があった。

 そして次の瞬間、「成程、25名もいれば十分ね。いいでしょ、学園島治安維持部の設立を許可す

るわ」とザビエラは言い放ち、「お前らを鍛える意味で顧問には俺がなろう。ディーネには俺から

言っておく」とヴァンも続く様に言い放った。

 その言葉にソフィアは耳を疑った。

 学園島治安維持部の設立を認める?

 真雄(あの男)が設立した部が許可された?

 

「……認めない……認めるものかっ!!!」

 

 認める訳にはいかない。

 センシアに悲しい顔をさせ、武道部を、そして敬愛するベルトラスとマリアを侮辱した真雄(あの男)

真雄()が作った部など認める訳にはいかない。

 ましてや部活内容が武道部が任された公安委員とかぶるならば尚更だ。

 

「おのれ……おのれコグレ マオッ!!!!!」

「先程から何を叫んでいるのですか、ソフィア」

「っ!!!??」

 

 その時、ソフィアは背後からする声に驚きハッと後ろを振り返る。

 そこには1人の女子がいた。

 腰まである翠色の髪。

 白いリボンに翡翠の髪飾り、紫色の瞳をした顔はなかなかの美人であり、白い和服を加工した制

服を着こみ、手には袋に包まれた長い棒の様な物を持っている。

 そしてその姿を見た時、ソフィアは我が目を疑った。

 

「い、いつ、お戻りに!!?」

「一様、一昨日に戻ったのですが、別件でまた実家に行きこの度改めて戻って来たのです」

 

 驚くソフィアに対し女子生徒はそう言い微笑み返す。

 その笑顔に、ソフィアは感激のあまり涙が流れた。

 

「い、イズミ、様……!!」

「その呼び方は止める様にと言ってますよね? ソフィア」

 

 涙を流すソフィアに対し、イズミことイズミ・ガドクリアスはニッコリと微笑むのだった。

 

 

 

                     『~第14話~ 誇りに思いやがれっ!!!!!!《終》』

 

 




 どうも、黒鋼丸です。
 今回の話により学園島治安維持部の設立が確定。
 だがその裏でソフィアのイラ立ちと新たなるオリキャラ、イズミが登場。
 果たして真雄は、治安維持部はどうなるのだろうか?
 今回の話により真雄の意外な一面が出ました。
 昔気質なヤクザ。
 侍、忍者、武士道をこよなく愛する真雄には現代的な不良っぽい一面と、昔気質なヤクザ的な仁
義を通し集団の先頭に立って指揮を取る切り込み隊長的な一面があり、今回はそれを出す為の話で
もありました。
 さてさて、新キャラの登場で今後どう動いていくのか、次回もお楽しみに~♪
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