絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~【更新停止中】 作:黒鋼丸
やや非常識ながらも平穏な生活をしていた真雄と李雄の古暮兄弟は、幼馴染と悪友2人との学校
からの帰宅途中で不思議な渦に巻き込まれる。
そして気が付くと、見たことも無い異世界に2人はいた。
そしてそこで、自分達を魔王様、聖王様と呼ぶ1人の少女、リュアナと出会うのだった。
「
「
木々の生い茂る林の中で、真雄と李雄の古暮兄弟は目の前のメイド服の少女、リュアナの言葉に
首を傾げた。
魔王と聖王。
魔王の方は物語などでよく聞くが、もう一方の聖王という言葉は魔王ほどあまり聞かない言葉だ
った。
ただ、よく邪悪な魔王と対を成す聖なる王として物語などで聞いたりはするが、古暮兄弟が首を
傾げたのはその単語そのものではなく、なぜ自分達の事をそう呼んだのかが謎なのだ。
「おいリュアナ、こいつら意味分かってねぇみたいだぜ。」
そんな古暮兄弟の心中を察したのか、カボチャの人形ことアンゴルモアがリュアナに言い放つ。
その言葉にリュアナは一瞬どこか寂しそうな表情になったが、すぐに元の表情になると、古暮兄
弟に再び視線を向ける。
「えっと、魔王様と聖王様はどうやってこちらに?」
「いやあのよ、魔王と聖王って……」
「待って兄さん」
魔王と聖王の事をリュアナから聞こうとする真雄を静止し李雄は耳元でささやく。
「何だよ?」
「この際、魔王とかの件はおいといて、兎も角ここが何処なのかを聞いた方がいい」
「そういうもんか?」
李雄の言葉に若干 首を傾げながらも真雄は納得し、改めてリュアナに視線を向ける。
「あの……魔王様?」
「あ〰〰〰この際 魔王とかの件はおいとく。まずはお前の質問だが………」
そう言い真雄は、自分達が高校からの帰宅途中、不思議な渦に巻き込まれ、気が付いたらここに
いた事を説明する。
「……それは、“
『次元の歪?』
リュアナの言葉に李雄は首を傾げ、真雄は呆れたかの様な表情となる。
「次元の歪は、
の歪みによって生まれる物なんです」
「なんつーか、マジでどこかで聞いた事ある設定だな」
リュアナの説明に、大方の設定を予測していた真雄は益々 呆れた。
「兄さん、説明してもらってんのにそんな事言わないの。それで、僕らの他にも友達がこっちに着
てると思うんだけど」
「あ、はい聖王様。それでしたら何とかなるかもしれません」
そう言いリュアナは「こちらへ」と古暮兄弟を導く様に歩き出し、古暮達はその後を追う様に歩
き始めるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「なんじゃ、そりゃ?」
「これって………」
リュアナの後を追って林から出て、整備された道を歩いて行った古暮達の目の前に映った物。
それは古暮兄弟にも結構見慣れた建物だった。
オーソドックスなコンクリート造りの4階建て、そして目の前の門の横に設置されたプレートに
書かれている文字。
「
看板にはそう書かれている。
つまりこの見慣れた建物は校舎、学園なのだ。
「……おい、ここって本当に異世界なのか?」
「さ、さぁ?」
真雄の言葉に苦笑いをする李雄。
異世界と言う位なのだから、もっとファンタジックな物を想像していた古暮兄弟にとって、学園
校舎はさすがに予想外だった様だ。
「えっと、いずれ分かると思いますけど、取り合えずこちらへ」
苦笑するリュアナの案内により、古暮兄弟はその後を追い校舎にへと入って行く。
下駄箱付近でスリッパに履き替え、階段を上って行く。
「………おい李雄、見ろよあれ」
「え?」
不意に真雄に声を掛けられた李雄は、真雄の指差す方へと視線を向け目を丸くした。
そこには、全身毛むくじゃらの犬の様な人、ゲームなどで俗に獣人と呼ばれる様な者や、頭から
角を生やしている者、さらには背中から翼を生やしている者まで見える。
コスプレにしてはリアルであり、2人は改めてここが異世界である事を理解する。
「どうやらマジでここ異世界みたいだな」
「そういえば、リュアナさんは三界って呼んでたけど……」
「つきました」
古暮兄弟がここが異世界である事を改めて意識すると同時に、この世界について色々知りたがっ
ていると、目的地に到着したのかリュアナが1つのドアの前で足を止める。
そのドアの上には「
「成る程な、ここの学園長さんに事情を説明するって訳か」
「はい、魔王様」
真雄の言葉に笑顔で頷いたリュアナは、ドアをコンコンとノックする。
するとドアの向こうから「どうぞ~」という声が聞こえ、リュアナはドアノブに手を掛けドアを
開ける。
そこには中世の屋敷の個室の様な空間だった。
立派な机があり、暖炉の様な物も見ある。
だが、古暮兄弟の目はその校長室よりも、校長室の来客用のイスに座る、見覚えのある一団に向
けられていた。
「魁! 勇!」
「優希、無事だったんだ!」
それは、自分達と共に歪に巻き込まれた幼馴染&悪友達の姿だった。
「真雄! 李雄!」
「良かった、無事だったんだな!」
「ウガ!」
一方、古暮兄弟の姿を見た優希、魁、勇も喜びの表情となり、特に勇に関してはイスから飛び出
し2人に飛び付こうとする。
「やめい」
「グゴッ!?」
が、真雄の拒絶の蹴りが顔面を直撃し、勇はイスに押し戻される。
古暮 真雄、女っぽい外見とは裏腹に男と抱き合う趣味は無いらしい。
「誰が女っぽいだこらあぁっ!!!」
「兄さん、誰に怒ってるの?」
「そこはツッコミはなしだ」
李雄のツッコミに対しそう言うと、真雄は再び視線を魁達に向ける。
「ま、何はともあれ無事だったみてぇだな」
「まぁこの通り無事ではあるさ。色々と大変だったけどな」
真雄の言葉に苦笑いする魁。
その表情に、古暮兄弟は軽い安堵を覚えた。
「あの~、そろそろ良いですか~?」
そんな感傷に浸っていると、不意にのんびりとした声が聞こえ、古暮達は視線を声のした方、
机の方へと向ける。
そこには、古暮達は気づかなかったが机のイスに腰掛ける1人の女性がいた。
歳は自分達より上の様で、青白い癖のあるショートヘアをし、メガネを掛けどこかのんびりそう
な雰囲気の漂う女性だったが、真雄が何より目を引き、李雄が視線を逸らそうとする物があった。
それは、ズバリ胸だ。
スイカほどもありそうな豊満な胸がぶら下がっていたのだ。
(巨大な饅頭みてぇに柔らかそう……うまそう………)
(あ、あうぅ………)
「御2人が、この子達の言っていたお友達なんですね~」
古暮兄弟のそれぞれの反応に気づかないのか、女性はのほほ~んとした表情で微笑みながらイス
を立つと、ゆっくりと近づいて来た。
「私は~、この学園で学園長を務めている“ディーネ・アジャーニ”と言います~。よろしくお願
いしますね~」
そう言いディーネと名乗った女性は、ニッコリと微笑みながら、やって来た古暮兄弟の姿をじっ
と見つめる。
「? 何だよ。」
「あの、何か?」
「ふむふむ~、よ~く見ると面影がありますねぇ~」
古暮兄弟は、そして魁達がディーネの言葉に首を傾げる中、ディーネは視線を古暮兄弟に向けつ
つ言い放つ。
「つかぬ事をお伺いしますけど~、御2人のご両親のお名前は言えますか~?」
「は?」
「え?」
その言葉に古暮兄弟はもちろん魁達も益々 首を傾げた。
何故に親の名を聞くのか、何の意味があるのか、それが理解できなかった。
「おい、何で親の名前なんか聞くんだよ?」
我慢というものを碌にしない真雄が聞いてみる。
「むっ! ダメですよ~、人の質問にはちゃんと答えないと~。それは学級崩壊の始まりなんです
よ~」
だが、それに対してディーネはまるで子供を叱り付けるかの様な対応をする。
「おいテメェ……」
だがそれは、真雄の苛立ちの炎に油を注ぐ結果となった。
元来、我慢やら冷静とは無頓着な真雄は、子供扱いされた様な感覚に苛立ちが募りつつあった。
そして、手に持つ木刀にも自然と力が入る。
今にもディーネに斬り掛かりそうな雰囲気だ。
「あの、ちょっと良いですか?」
が、ここで真雄の苛立ちを素早く察した李雄が前に出て、ディーネに話しかける。
「どうかしました~?」
「いえその、別に……ディーネ、さんを疑う訳ではないんですけど、いきなり身しらずの人に親の
名前はと聞かれましても………」
「あぁ、成る程~」
李雄の言葉に、ディーネは納得がいったらしく微笑みながら返してくる。
「では皆さんは、ここが何処なのか分かってますか~?」
「ここが何処って………」
その言葉に古暮達は若干 戸惑う。
ここが何処と言われても、その答えを答えるのは難しい。
何故ならここは、少なくとも自分達がいた世界とは全く違う世界なのだから。
「そうだな、少なくともここが俺らいた世界とは別世界ってのは分かるぜ?」
だが、真雄はさらりと簡潔に答える。
「別世界か……」
「意外な答えか魁?」
「……まぁ、先程の俺達の見た物を見れば納得もするな」
そう言い魁は、自分達の身に起こった事を説明しだした。
あの光に包まれた後、3人はこの学園のグランドに倒れていたらしく、それを見つけたこの学園
の生徒に保健室に運ばれ、目が覚めた時には保健室のベットの上だったらしい。
その後、混乱する魁達に保健室の先生がここが何処なのかを教えてくれたとの事なのだが……
「はっきり言って、未だに半信半疑だな」
「私も。確かにここに来るまでに見た人達は不思議な外見してたけど……」
「かっこいい角生やしてたなぁ~」
異世界の事を未だに半信半疑な魁と優希に対し、勇は相変わらずのマイペースで先ほどの事を思
い出していた。
「う~ん……仕方ないですね~」
古暮達の反応に、ディーネは視線をリュアナへと向ける。
「リュアナさん、皆さんにアレを見せてあげてください」
「あ、はい!」
いきなり指名されやや驚きながらも、リュアナは古暮達の方を向く。
「あの、皆様に見せたい物があるんです。それを見れば、この世界の事をもう少し分かって頂ける
と思うんです」
リュアナの言葉に魁と優希はやや迷ったが、単純な勇と先程ここまで案内された古暮兄弟はリュ
アナに着いて行く姿勢を見せた。
「オメェは信用できそうだから着いて行くぜ」
「お願いします、リュアナさん」
「はい、魔王様、聖王様」
「魔王様?」
「聖王様?」
「おい違うぞ、この2人の名前は真雄と李雄。まおうさまとせいおうさまって名前じゃない」
リュアナの魔王様、聖王様 発言に魁達は首を傾げる。
「知らん、コイツ先から俺らの事をそう呼ぶんだよ」
「あの兄さん、幾らなんでも女の子にコイツは無いだろ」
「い、いえあの、私は魔王様になら何と言われても構いません」
李雄の注意に対し、リュアナは申し訳無さそうに言い放つ。
「おいおい真雄、李雄。女性を困らせるなよ」
「知るか」
魁の注意に対し真雄は知らん顔だった。
「えっと、取り合えずこちらへどうぞ」
そう言いリュアナんの案内により、古暮達は学園長室を後にした。
「………さてと~」
そして、古暮達が去った事を確認したディーネは、引出しから1つのメモを取り出すと、
そのメモを見ながら電話を手に取りボタンを押し出すのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「ここは……」
リュアナの案内で古暮達がやって来た場所は、校舎の屋上だった。
もう日が沈みかけており、夕日がとても綺麗だった。
「ここに、何かあるんですか?」
「はい、是非 見て欲しい物があるんです」
李雄の言葉にリュアナは皆をフェンス際まで案内して行く。
そしてフェンスから遥か向こうの景色に目をやった時、古暮達は我が目を疑った。
「…おいおい……」
「これって……」
「嘘……」
「これは……」
「すっげーっ!!!」
その景色に古暮達は信じられないという思いが込み上げて来る。
何故なら、夕焼けに染まる雲海の上に、この学園が、いやこの学園を含む島全体が浮かんでいた
のである。
よく物語である、いわゆる浮遊島である。
「すっげーだ。ラ●ュタみてーだ」
「おい、それを言うなよ」
「おー見ろよ、人がゴミの様だ」
「ム●カかよ」
勇の言葉に魁がツッコミを入れる中、リュアナは古暮兄弟の方を向く。
「私…この景色が……魔王様と聖王様と出会えたこの世界が大好きなんです。
それを是非、魔王様と聖王様に見て頂きたくて………」
「リュアナさん……」
「オメェ………」
リュアナの言葉に、そしてリュアナのこちらを向いた際の表情に、古暮兄弟は息を呑んだ。
リュアナが見せる笑顔は、夕日でより輝いている様に見え、まさに黄昏時の夕日の様にはかなく
美しい笑顔だった。
「……ここが異世界なんだって事はよ~く理解できたぜ。なぁオメェら」
不意に言い放った真雄の言葉に、皆はそれぞれの反応を見せる。
「まぁね」
「いくら何でも、こんなの見せられちゃね……」
「確かに、先程まで半信半疑だったが、今は信じれるな」
「ウガッ!」
真雄の言葉に皆が頷くのを見ると、真雄はリュアナに視線を向ける。
「ただな、先から気になってる事があるんだが……」
「はい?」
真雄の言葉にリュアナが首を傾げる中、李雄は真雄が気になっている事を察していた。
「何で俺らの事を魔王様だの聖王様だの呼ぶんだ?」
(やっぱりそれか)
真雄の言葉に、李雄は心中でそう思った。
「そう言えば、それは俺も気になってたな」
「私も。何でこんな2人にそんな呼び方なの?」
「オメェ話聞いてなかったのか?
こいつらは真雄と李雄、まおうさまとせいおうさまなんて名前じゃないだ!」
約1名 変な事 言ってる輩もいるがそれはさておき、古暮達の言葉にリュアナはやや困った様な
表情になりながらも、やがて口をゆっくりと開く。
「……それを説明するには、まずこの世界の事から語る事になりますけど……」
「ほぉ、そいつは面白そうだ」
リュアナの言葉に真雄は興味津々になる。
元々ゲームやらマンガやらでこういった異世界の事を知りまくっている真雄は、この世界の事、
マンガなどで言う所の設定そのものにも興味があった。
「聞かせてもらおうじゃん、この世界の事」
「はい」
真雄の言葉にリュアナは静かに語りだした。
◇◆◇◆◇◆◇
今を遡る事5500年前、神の作りしこの世界には3つの国家が存在した。
魔力に満ちた暗き地『
この3つの国家を『
始めの内はお互いの存在を知らなかった三界の住人達だったが、神が世界を創造してから500年
の時が経った時、三界の伸ばされた腕が互いの頬に触れるようになった。
お互いをよく知らなかった三界は、すれ違いから戦火を生み出した。
三界の狭間で行われた小さな戦火が、いつしか三界を巻き込む大きな戦渦となった。
これにより、戦いは幾度となく繰り返され、500年続く戦乱の世が幕を上げた。
しかし何れの戦いも決着を見る事はなかった。
勝者は無く、全ての者が敗者となった。
争いのために力を蓄えては、争いによってそれを浪費した。
三界の民には互いを貫く剣はあっても、互いを理解するための言葉がなかったのである。
これを見て神はおおいに嘆いた。
しかし神々は三界の民の内に正しき者たちの在ることも知っていた。
彼らは心清く、知恵と勇気に優れた者たちであった。
神々の王は彼らを深く愛した。
神は彼らのもとに空色の髪をした美しい女の姿をした御使いを遣わした。
御使いは、智謀に長けた魔界の青年、気高い徳を備えた天界の少女、何事にも屈する事のない勇
気を持つ獣人界の男に、それぞれ神の言葉と魔法の道具と力を与え、誓いを立てた。
やがて3人は三界の王となり、戦乱を鎮めると戦場となっていた平原平原の中央に歩み出て手を
取り合った。
するとそこに再び御使いが現れて彼らを祝福した。
彼らはお互いの言葉を理解出来るようになった。
やがて軍勢はそれぞれの世界へと退いた。
三界の民は喜び、彼らを王として迎え入れた。
王は民に言葉を伝え、三界に争いは無くなった。
これを見て神はおおいに満足したが、さらにもう1度御使いを地上へと遣わした。
御使いはトリニアス平原の上空に学び舎を建て、三界の王にこれから王は、この学び舎での試練
を潜り抜けた者を選ぶようにと伝えた。
◇◆◇◆◇◆◇
「これが『神立トリニアス学園』の起源と言われています」
そのリュアナの説明に、古暮達は唖然となっていた。
そりゃそうである。
異世界とは思っていたが、まさかそんな壮絶な歴史があり、しかも神まで出てくるとは思いもし
なかったのだろう。
「……おい、それっておとぎ話とかじゃないよな?」
「はい、実話です」
真雄の言葉に対し笑顔で答えるリュアナの反応に、これが冗談でも何でもない事を理解する古暮
達。
「ウガ? つまり、どういうこった?」
正し、約1名、勇を除いては。
「おい、今の話 聞いてなかったのか?」
「聞いてたよ。でも全然 意味が分かんなかったダ」
その勇の言葉に、古暮達は呆れ果てた。
この男がバカなのは知っていたが、ここまで果てしないバカとは思わなかったのだ。
「ったくしゃーない」
ここで動いたのは魁だった。
家族として長い付き合いの魁は、勇への攻略法も熟知していた。
「良いか、これから俺が分かりやすく説明してやるから、ちゃんと聞けよ?」
「はーい」
「よし。ではまず、むかしむかしな………」
魁は勇に対し、おとぎ話風に説明し出した。
これなら、いくらバカな勇でも理解 出来る筈だ。
「……こうして、神様に従った人々により、この学園は造られましたとさ、めでたしめでたし」
「ウガ、んじゃこの学校ずーと昔っからあるのか」
何とか理解できた勇が、不意にそんな事を聞いて来る。
言われて見れば、確かにこの校舎はとても5000年も経っている様な古いものには到底見えない。
疑問に思うのも最もだ。
「あ、いえ、この学園は私達が入る前に建てなおされたものなんです」
「何だそうなのか」
なぜか申し分けなさそうに答えるリュアナの回答に真雄はつまらなそうな表情になった。
真雄はてっきり、この校舎はそれ程の時を生きて来た遺跡っぽい物を想像していたのだが。
「ケッ、校舎が5000年ももつ訳ねぇーだろうが」
とそこへ、不意に背後から声が掛かり一同は声のした方を振り向く。
そこには、声の主であり先程 林の中で分かれたアンゴルモアがフワフワ浮いていた。
「あっ、カボチャ野郎」
「アンゴルモアさん」
「アンちゃん」
その存在に気づいた真雄、李雄、リュアナはそれぞれの反応を見せる中、残りの3人は目を丸く
した。
「うわ、何この子、かわいい~♪」
「これは……」
「すっげーっ! カボチャが喋ったダ!」
アンゴルモアを見て真っ先に動いたのは勇だった。
勇はアンゴルモアに近づくと首根っこを掴みだす。
「イテッ! テメ何しやがる!!」
「すっげー! ホントにカボチャが喋ってるダ!!」
勇は嫌がるアンゴルモアを見ながらヨダレを流しだした。
「コイツ食えるかな?」
「っておい! オレを食う気かよっ!?」
「よせ勇!」
今にもアンゴルモアを食いそうな勢いの勇を抑え付け様とする魁。
「いくら何でも人語を理解する者を食うのはマズイって!」
「ウガ? それだとオウムも食っちゃいけないって事か?」
「あのな、オウムは喋ってる訳じゃなくて人の言ってる事をマネして鳴き声にしているだけなの」
「そうだっけ?」
「てか話がズレてるぞこらぁっ!!!」
2人の会話にいい加減呆れて来たアンゴルモアは隙を見て勇の腕からスルリと抜け出す。
「ったく、なんて奴等だ………ぐえっ!?」
だが、勇から逃れたアンゴルモアを待ち構えていたのは優希だった。
「かわいぃ~、何なのこの子?」
「可愛いか、これ?」
「えっと……リュアナさんの知り合い何ですよね?」
李雄は視線をリュアナに向けながら尋ねる。
「あ、はい。聖王様達はホムンクルスをご存知ですか?」
『ホムンクルス!?』
そのリュアナの言葉に真雄達は思わず声を上げずに入られなかった。
ホムンクルス。
ゲームや小説、さらには有名な某錬金術マンガにも出てきた存在。
錬金術によって生み出された人工生命体である。
歴史では稀代の錬金術師パラケルススがフラスコの中から生み出した事から、“フラスコの中の
小人”とも呼ばれる存在だ。
またあるゲームでは魔法生物の事をホムンクルスと呼ぶ様に、主にマンガなどでは魔術的な物で
作られた人工の生命体の事を指す。
「このカボチャがそのホムンクルスなのか?」
「だから誰がカボチャだぁっ!!」
優希に掴まれたままのアンゴルモアは真雄の言葉に優希の腕の中から唸る。
「あ~ん可愛い! よろしくねカボちゃん!」
「だから誰がカボちゃんだ! オレの名前はアンゴルモアだ!!」
「アンゴルモア………じゃあ、アンちゃんだね! よろしくね、アンちゃん!!」
「誰がアンちゃ…………」
誰がアンちゃんだ、と言おうとするアンゴルモアだったが、優希の抱きしめる腕の力が強すぎ、
呼吸困難から声が詰まる。
「……あ、アンちゃんで、いい…アンちゃんで………」
「うんうん! よえろしくねアンちゃん!!」
そう言いながら優希のアンゴルモアを抱きしめる腕の力はさらに強くなり、アンゴルモアの顔は
真っ青になって行く。
「ゆ、優希? さすがにそろそろ放して上げないと、アンゴルモアさん死にそうだよ?」
「え? あ、ゴメン アンちゃん」
李雄の言葉にハッとなった優希は手を放し、ようやくアンゴルモアは開放された。
「ぜぇ……ぜぇ……ったく、死ぬかと思ったぜ……」
「アンちゃん大丈夫?」
荒い息継ぎをするアンゴルモアを心配そうに見つめるリュアナは、アンゴルモアの頭を優しく撫
でた。
「……ここって、マジで異世界なんだなぁ~って、実感したな」
「だろ?」
その魁の言葉に対しそう返した真雄は、リュアナの方を向くと駆け寄って行く。
「んで、リュアナ。結局 俺らを魔王と聖王って呼ぶ理由は何だ?」
「あ、それは………」
「おや、こんな所に居たのかい」
真雄が根本的な理由を聞こうとした時リュアナの声を遮る様に、屋上への出入り口の方から声が
し一同はその声のした方へと視線を向ける。
そこには、1人の女性がいた。
歳は先程のディーネという人よりもやや年上に見え、大人の雰囲気と言うか色気が漂っている。
髪飾りで束ねた紫のツインテールに、赤いメガネを掛け、服は赤いチャイナドレスの様な服の上
に、白衣の医者のコートを羽織っている。
さらにその豊満な胸は、ディーネにも引けを取らない。
だが、それ以上に目立ったのは、彼女の体に取り巻く、濃い紫色の大蛇だった。
その蛇は、今にも牙をむきこちらを襲ってきそうな雰囲気だ。
「あ、保健室の先生だ」
「ジーナさん」
「ジーナ先生」
その女性の存在に、勇、魁、リュアナはそれぞれの反応を見せる。
「誰だ?」
そう言い真雄はそれぞれの反応を見せた魁達に視線を向ける。
「“ジーナ・ミラン”さん。俺達を介抱してくれた保健室の先生さ」
「保健医か」
魁の説明に真雄が納得する中、リュアナはジーナに接近する。
「あの、何かご用でしょうか?」
「あぁ。ディーネがアンタ達を呼んでたよ。人間界の事とかで話があるんだとさ」
そのジーナの言葉の意味を察したリュアナは
「わかりました」と頭を下げると真雄達の方を向く。
「皆様、まことにお手数ですが今一度 学園長室に来ていただけませんか?」
「あん? 何だ、何かあったのか?」
リュアナの言葉に首を傾げる真雄。
「えっと………ディーネ先生が、皆様にお話があるそうで」
真雄の質問に対し、リュアナはただそれだけ言った。
「……真雄、ここは行くしかないぜ。それに女性の言葉を疑うのは良くない事だ」
「へいへい。ま、とりあえず行ってみっか」
そう言い古暮達は、リュアナとジーナに導かれ学園長室へと向かうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「んで、戻ってきた訳だが………っ!?」
学園長室前までやって来た古暮達だが、真雄は不意に、扉の向こうから妙な気配を………否、
嫌な予感を感じ取った。
(………何だ?)
「兄さん、どうかした?」
「……いや、何でもねぇ……」
心配そうに聞いて来る李雄に対し、真雄は無理してそう返した。
そんな中、リュアナはドアをコンコンとノックする。
するとドアの向こうから「どうぞ~」という声が聞こえ、リュアナはドアノブに手を掛け、
ドアを開ける。
そこには、予想通り声の主のディーネが、そして予想外の人物が2人 椅子に座っていた。
その2人の内、1人は中年の男であり、灰色のロングヘアーを後ろで1つに結び、メガネを掛けて
いる。
運動不足か何かなのか、腹がやや出ている。
そしてもう1人は、ディーネと同じ位の女性だった。
腰まであるウェーブの掛かった茶髪に赤いリボンを結び、ピンクのエプロンをしているその姿は
まるで若奥様の様だ。
そしてその姿を見た瞬間、人間界よりやって来た古暮達5人は驚きの表情となった。
「なっ!!!?」
「ウガ?」
「えぇっ!!?」
「く、クソオヤジ……」
「母さん!?」
5人の、特に古暮兄弟の驚きは計り知れなかった。
それもその筈で、この2人は古暮兄弟の両親、“
「よぉマイサン! 無事で何よりだな!」
「真雄、李雄、それに優希ちゃん達も良かったわ」
そんな古暮達の心中を察する事無く、2人は皆の無事を喜び、彦左衛門にいたっては、今にも
「………そうだな、何でここにいるかはともかく………」
ハイテンションの彦左衛門に対して、真雄は低い声でそう言い手の木刀に力を込める。
「取り合えず死ねやクソオヤジ!!!!」
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!??」
真雄の上段斬りに対し彦左衛門は即座に動き、振り下ろされて来た木刀を両手で挟み攻撃を止め
る。
見事な真剣白刃取りであった。
「おいおいマイサン、いきなり攻撃するか普通?」
「黙れクソオヤジ。テメェが何故ここにいるかは知らんが、テメェのそのチャラチャラした笑顔見
てると虫唾が走るんだよ……よって死ね!」
そう一方的なことを言い放つと、真雄はさらに木刀のを握る両手に力を込める。
「おいぃぃマイサン! 待てよ! ストップ! マジで!!」
「兄さん! マジでちょっとやめようよ!」
「はいはい、真雄も彦くんもそこまで」
マジでやばそうになり、李雄とまりあが2人を止めに入る。
「ほら兄さん! 俺の手作りクッキーあげるから!」
「俺はガキか!」
「と言いつつ木刀 離して ちゃっかり食べてるじゃない」
李雄を怒鳴りつつも一心不乱にクッキーを食べる真雄に優希はあきれ果てる。
「……何と言うか、息子に嫌われてるね、ベルトラス」
「おいおい、相変わらずキツイなジーナ」
「ん?」
とここで真雄は、今の会話に妙な事を感じた。
何だか見た所、彦左衛門とジーナは知り合いの様に見える。
さらにジーナは今、彦左衛門の事を“ベルトラス”と呼んだ。
しかも視線をそらすと、リュアナが彦左衛門に向かって頭を下げている。
どういう事だ?
「あ、あの、ベルトラス様……ですよね?」
「おうリュアナちゃん! 久しぶりだな!」
リュアナの言葉に彦左衛門は笑顔で答え、この事に真雄はもちろん他の面々も首を傾げた。
なぜ彦左衛門はリュアナを知っているのか。
しかもリュアナまでもが彦左衛門の事を“ベルトラス”と呼んだ。
真雄は益々意味が分からなくなった。
「どういう事だクソオヤジ」
「何がだマイサン」
「とぼけんな! ベルトラスだの何だのも気になるし、そもそも何でここにいんだよ! 全てを判
りやすく答えやがれ!!」
「ちょ、兄さん落ち着いて」
彦左衛門に一方的に迫る真雄を李雄は止めに入る。
「まぁ落ち着けマイサン。説明するとちと長くなるんだが俺は回りくどいのは好かん。単刀直入に
言おう」
そう言い彦左衛門は言葉を一旦区切ると、改めて口を開き言葉を発した。
「実は父さん、魔王だったんだよ」
・
・
・
『はい?』
一瞬、古暮達は彦左衛門の言っている意味が理解できなかった。
さらに――――
「母さんも実は聖王だったんだ~♪」
『はぁっ!?』
続けて発せられたまりあの言葉に、古暮達はさらに唖然となるのだった。
『~第1話~神立トリニアス学園 《終》』
どうも、黒鋼丸です。
『絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~』、ついに原作においてもハチャメチャな主人
公のご両親、元魔王・彦左衛門と元聖王・まりあが登場!
更には仲間との再会に加え、ディーネとジーナも登場し、次回遂に古暮兄弟は自分達の正体を知
る事に!?
次回もどうぞお楽しみに~。