絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~【更新停止中】 作:黒鋼丸
~第4話~転校日早々!?その1
学園島。
三界の境界線の上空に位置する浮遊島。
そこには、次世代の三王を、そしてそれを支える者達を育てる学園、神立トリニアス学園及び学
園に住まう者達 用の市街地が存在する。
トリニアス学園に通う生徒達はその殆どが寮生活だ。
中には騎竜に乗って実家から通う者もいるが、そんな者はほんの少数だ。
だが、この学園島には、学園校舎よりやや離れた空地にポツンと立つ、オンボロのアパートの様
な建築物がある。
そこに今日から通う生徒が住んでいる事など、何人が知っている事だろうか?
「ふあぁ~あ………、あぐ」
アパートの一室。
まだ日も昇り切っていない時間帯に、ベットで寝ていた男は目を覚ました。
寝相の悪さでボサボサになった白銀のロングヘアーに、右が紅で左が紫の
長身ながらも華奢な体格と女の様にトーンの高い声。
一見すると女にも見えるこの男こそ、この度トリニアス学園へ転入する人間界よりの転校生の
1人、
真雄には日課があった。
朝早くに起きると髪を軽く結び、ジャージに着替えると朝のランニングに出るのだ。
また、今回のランニングにはこの学園島の地理を知る目的もあるのだ。
「さて、行くか」
そう呟き、ジャージに着替えた真雄は外へと飛び出して行った。
◇◆◇◆◇◆◇
「ふぅ」
それから数時間後、太陽も昇り明るくなった頃になると、真雄はアパートの前まで戻って来てい
た。
「にしても、ここマジで異世界なのかよ……」
不意にそう呟く真雄。
と言うのも、ランニングの際に市街地や公園、森や水辺などを見て来たのだが、公園や森、水辺
などはともかくとして、真雄は市街地を見た時「ここってマジで異世界なのか?」と疑問に思いた
くなった。
普通、異世界と聞いたら自分達のいた世界と違い魔法は発達してるけどその分科学力が進んでい
なかったり逆に進んでいたりするものなのだが、市街地には自分達の世界にも普通にあるコンクリ
ート製の建築物はもちろん、様々な店にはゲーセンやカラオケBOXまであるのだ。
あまりにも想像とかけ離れすぎているので、……と言うよりゲーム脳な真雄には残念な世界観に
ここが異世界なのか再び疑問に思いたくなったのだ。
「ま、そんな世界もあるか」
だが悩むだけ無駄と判断した真雄はすぐさまどうでも良くなりアパートの中へと入って行った。
「おっ」
それと同時にすぐに、真雄は鼻をくすぐる良い匂いを感じ取った。
「くんくん、ソーセージにトースト、それに目玉焼きにコーンスープの匂い……こりゃあ今日の朝
飯は洋風だな」
その匂いに今日の朝の献立を感じ取った真雄は鼻をヒクヒクさせながら匂いのする食堂の方へと
歩き出した。
食堂へ続く扉を開けると、そこには3人の人影があった。
1人は真雄と同じ白銀に輝く髪。
だが真雄と違い、その髪は綺麗に整っているショートヘア。
背も低く、華奢な体格と女にも子供にも見える童顔に加え右が蒼で左が緑の
も人目につきそうだ。
「あ、兄さんお早う」
そのエプロンをした少年、
「あ、真雄様、おはようございます」
「真雄、アンタもうジョギングに行ってきたの?」
李雄に続き、残りの2人も真雄の存在に気づき視線を向けて来た。
褐色の肌にとんがった耳が特徴のダークエルフのメイドにして古暮兄弟に身も心も捧げると誓っ
た少女、リュアナ・ドロワーズと腐れ縁の幼馴染、
「おっ、匂い通り朝飯は洋風だな」
「ダな!」
そう言い朝食の並ぶテーブルに視線を向ける真雄の隣には、何時の間にやら昨日風呂が嫌で逃げ
出したボサボサした金髪野生児にして古暮兄弟とは腐れ縁の悪友の
「あ、勇お帰り」
「ウガ、ただいまダー!」
「何がただいまだ、このバカ」
勇が帰った事にほほ笑みを浮かべる李雄とは逆に勇の帰還に不機嫌そうな表情を浮かべる、紫色
のロングヘアーを後ろで緩く結んだ色男、
「あれ魁、どったの?」
「どったのじゃねぇ。飯の時に帰って来やがって。メシの前に風呂に入れ、風呂に」
「ヤダ!」
魁の言葉に対し、即座に拒否を露わにする勇。
この男の風呂嫌いは筋金入りである。
「お前まぁ、今日はトリニアス学園への初登校だぞ! 今日ぐらいちゃんと風呂に入って清潔にな
れ!!」
「んなもん、川で水浴びで十分ダ!」
「川の水と風呂じゃ全然違うわ!!!」
「うるせぇっ! ともかくオラ風呂はヤダ!!!」
互いに1歩も譲らない魁と勇。
「まあまあ、2人共」
「はいはい、それまで」
そんな状況を見かねて、李雄と優希が止めに入った。
「李雄、優希さん」
「魁、バカに付ける薬は無いって言うでしょ?」
「しかし……」
「気持ちは分かるけど、もうしょうがないじゃない。」
「と言うより、早くしないと朝食が全部兄さんの胃袋に………」
優希が魁を説得する中、視線を横に向ける李雄の目に飛び込んできたのは用意された朝食に速攻
で手を付ける真雄の姿だった。
「リュアナ、トーストお代わり」
「はい、ただいま♪」
そう言い嬉しそうに新たなトーストを差し出すリュアナ。
「あ、オラも食べるダ!!!」
その様子を見た勇は、魁や優希の間をすり抜けテーブルに座り、朝食に手を伸ばし頬張りだす。
「……………」
「魁、もう諦めようよ」
その勇の行動に呆れ果てる魁の肩をポンと叩く李雄であった。
◇◆◇◆◇◆◇
「あー、ダメだ。まだ腹が減る」
「ウガァ〰〰〰〰〰」
トリニアス学園に続く通学路。
そこを歩く学生達の中に、自らの腹に手をやる真雄と勇の姿があった。
腹からは微かにギュゥ〰〰〰と腹の虫の音が聞こえる。
「お前らな、あれだけ食ってまだ足りないのか?」
「アンタ達ねぇ、少しは遠慮ってものをしなさいよ」
そんな真雄と勇の言葉に不機嫌そうに答える魁と優希。
「うっせえなぁ。朝飯は健康の基本だぜ?」
「そうダ! あれっぽっちじゃ力入んねぇダ!!」
そう言い言い返す真雄と勇。
はっきり言って、真雄と勇の食べる食事の量は尋常ではない。
常人の数倍以上は軽く食べてしまう鉄の胃袋を誇る2人は、今日の朝食だけでは物足りないらし
い。
「あの、でしたら次からはもっと多めにご用意を………」
「いいのいいの。この2人のせいで食費がバカにならないんだから」
真雄の言葉にメイドのリュアナは今後の朝食の事を考えるが、優希が止めに入る。
「そうですよ。この2人はちょっと元気がない位がちょうど良いんです」
「でも………」
「リュアナ、バカを甘やかすんじゃねぇよ」
優希に続く様に言い放つ魁と、何時の間にやらやって来たアンゴルモアが追撃を放つ。
「おっ、カボチャ!」
「だから誰がカボチャだ!!!」
アンゴルモアの登場に、勇は目を輝かして近づいてくるが当のアンゴルモアは相変わらずカボチ
ャ呼ばわりされる事に不機嫌そうだ。
「はっ! テメェの顔を見たら誰だってカボチャと認識するぜアンゴ?」
「誰がカボチャだ! ってか何だよアンゴって!?」
真雄の言葉にそう言い放つアンゴルモア。
「るせぇ。アンゴルモアなんて長ったらしいからアンゴって略したんだよ。カボチャよりゃマシだ
ろ?」
「んな訳あるか! 勝手に略すんじゃねぇ!!」
「なんだ? じゃあ優希やリュアナみたいにアンちゃんとでも呼んでほしいのか?」
「誰がテメェなんぞに………」
言われたくねぇ、と言いそうになったアンゴルモアだが、ふと何かを思いついたのか、ニヤリと
ほほ笑みだす。
「ケケケ、そうだな。お前みたいな女にならアンちゃんと呼ばれても…………」
アンゴルモアがそこまで言った時だった。
ヒュンッ!と一陣の風がアンゴルモアの顔の横をかすめた。
見ると、それは真雄の振った木刀だった。
「死にてぇならそう言えやカボチャが」
声のトーンが高くも迫力のあるドスの利いた声と殺気を放つ真雄。
よほど女と言われたのが気に入らなかったらしい。
「に、兄さん、気持ちは分かるけど落ち着いて!」
「アンちゃんも真雄様をからかわないの!」
そんな2人の状況に、李雄は真雄を止めに入りリュアナはアンゴルモアを諌めに入った。
「どけ李雄! このカボチャをミンチにしてカボチャスープの具材にしてやる!!」
「無理だから! アンゴルモアさんはカボチャみたいな顔してるだけで本物のカボチャじゃないか
ら!!」
「アンちゃん、真雄様に謝りなさい!」
「ケッ、先に俺をからかったのは向こうだろ?」
そう言い全く反省の色の見えないアンゴルモアだったが、この時実を言うと心の中では冷や汗を
かいていた。
(しっかし、今の攻撃 全然 見えなかったぜ……危ね)
「転入日早々、波乱万丈になりそうだな」
真雄達の状況を見つめていた魁はそう呟き、この日起こるであろう嵐を予感するのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
早朝より様々な事のあった古暮達だが、今ようやくトリニアス学園の校門の前までやって来てい
た。
「しっかし、何度見ても異世界って感じのしない学校だなおい」
校門前で不意にそう呟く真雄。
「まぁ、確かに私達の通ってた学校と大して違わないわよねぇ~」
「だが周りを見れば異世界だという事を実感するぞ」
真雄の言葉に同意する優希にそう呟く魁。
校舎の前ともなると様々な生徒達の姿が見える。
角を生やした魔族や獣の耳を生やした獣人、耳のとんがったエルフらしき生徒など、校舎はとも
かく生徒達は間違いなく異世界の住人と言う感じがする。
「あの、真雄様、皆さん。そろそろ急ぎませんと」
そこへ辺りを物珍しそうに見つめる真雄達にリュアナが声を掛けて来る。
「ディーネ先生が、皆様を人間界から来た転入生として体育館での朝会で発表するそうですので急
いだ方がよろしいのでは……」
「あー、そういやそんな面倒なこと言ってたな」
リュアナの言葉にそう呟く真雄。
アニメや漫画などである教室だけでの転校生の紹介とは違い、古暮達は人間界と言う異世界から
来た転入生達だ。
普通の教室での紹介ではなく朝会での紹介となるらしい。
「それなら急ごうよ」
その李雄の言葉に古暮達は校舎に向かって歩き出したが……
「ちょっと、そこの方々!」
不意に背後から呼び止められ古暮達が後ろを振り向くとそこにはこの学園の生徒と思われる1人
の女子生徒が居た。
その生徒、はっきり言ってスタイルは良さそうだ。
服を着ている上からでもわかる様に、まず胸が中々大きそうだ。
普通の男子なら即座に視線がそこに行き、その女子生徒を口説いたりしそうなものだろう。
だが、そんな事はまずあり得ない。
それは、その女子生徒が高嶺の花とも言える美人だからとかではなく、あまり関わりたくないオ
ーラがまとっているからだ。
女子生徒は耳が横にとんがっており、肌は白いがリュアナと同じエルフの様にも見える。
白い髪を後ろで2つに分けて三つ編みにし、メガネを掛けているその姿は、お堅い委員長と言う
言葉がぴったりだった。
そして実際、その生徒の腕には委員長と書かれた腕章があった。
「んだテメェは?」
その委員長らしき生徒の放つオーラに、明らかに苦手意識、と言うかウザそうな表情を顕わにす
る真雄。
「おい真雄、女性に向かってテメェはないだろ」
その真雄の口の悪さを注意する魁だが、当の真雄は知らん顔の様だ。
「ユーメリアさん」
「あら、リュアナさん」
そこへ、リュアナはその生徒の事をユーメリアと呼び、そう呼ばれた生徒はリュアナの事を知っ
てるらしき反応を見せた。
「リュアナさん、お知り合いですか?」
「あ、はい。私のいるクラスでクラス委員長をなさってる“ユーメリア・アルマンダイン”さんで
す」
李雄の質問にそう答えるリュアナ。
「マジで堅そうな委員長キャラだな」
「だからお前は………」
「そんな事はどうでもいいのです」
真雄の言葉に注意しようとした魁だが、それを阻むように声を上げた女子生徒ことユーメリアは
古暮達に近づいて行く。
「アナタ方が転入生ですわね?」
「だったら何だ?」
ユーメリアの質問に不機嫌そうに答える真雄だが当のユーメリアはそんな事を全く気にせず、い
きなり古暮達の周りを回りながらジロジロを視線を向けて来る。
「あ、あの?」
「なんダなんダ?」
ジロジロ見て来るユーメリアに困惑する古暮達に対しユーメリアは視線を向けるのをやめ、魁と
優希に視線を向ける。
「そこのお2人はよろしいです」
「え?」
「?」
不意にそう言われ首を傾げる優希と魁だが、ユーメリアはそんな事 気にしてない様に視線を古
暮兄弟と勇に向ける。
「アナタ達、何なんですかその服装は!」
「あん?」
「え? え??」
「ウガ???」
『あー、成程』
ユーメリアの言葉に意味が分からず首を傾げる3人だが、魁と優希はその意味を察して納得を覚
えた。
どうやらユーメリアは3人の服装に文句があったらしい。
「まずアナタ!」
「オラ アナタって名前 違う! 勇ダ!」
「そんな事はどうでもよろしい! 何なんですかその服装は! ボロボロの上に前は全開! しか
も中にシャツも来てないじゃないですか!!」
そう言いビシッと勇の服を指さすユーメリア。
「知らねぇダ。お前 邪魔ダ」
「お黙りなさい! それにあなた方2人!!!」
勇の言葉を無視し、今度は古暮兄弟に視線を向けるユーメリアだったが、このユーメリアの行動
に、魁達は疑問を抱いていた。
「しかし、真雄は分かるが李雄の服装どこか不味いか?」
「そういや、別に李雄は問題なさそうだけど………」
そう考え首を傾げる魁と優希。
実際、確かに真雄は制服の前を全開し、シャツをズボンに挟んでおらず手には木刀を持っている
という、どこぞの不良の様な服装だが、李雄は全く問題は無く、完璧に制服を着こなしている。
そんな疑問を浮かべ、リュアナとアンゴルモアが頭上に?マークを浮かべている中、ユーメリア
は古暮兄弟をビシッと指さし口を開く。
「アナタ達2人! 女性でありながら男性用の制服を着るとは何事ですかっ!!!!」
『…………………』
「……………ぷっ」
そのユーメリアの言葉に古暮兄弟が唖然となる中、魁は声を殺した笑い声を上げてしまった。
「ぷっくくくくくく、成程な………」
「………ぷ、ぷははははははははは成程ねぇー!
アンタ達2人、初対面の人にはそう見えちゃうもんねぇ!!!」
「ケケケケケケケケケケ! オメェら兄弟 揃いも揃って女扱いかよ!!!!」
笑いを堪え切れず笑い声を上げる魁と優希とアンゴルモア。
その隣で、一体何がおかしいのか分からず首を傾げるユーメリアの姿があった。
「一体 何がおかしいんですの?」
「あ、あの、ユーメリアさん………」
そんなユーメリアに話し掛けて来たのは、リュアナだった。
「あの、こちらの真雄様と李雄様はれっきとした男性ですよ」
「………………は????」
そのリュアナの言葉に唖然となるユーメリア。
「え、えぇと、冗談……ではなくて?」
「…………はい」
「えぇ、こいつらと長い付き合いの俺達が保障しますよ」
唖然となるユーメリアにそう言い放つリュアナと魁の言葉に、ユーメリアは改めて視線を古暮兄
弟に向ける。
「どうせ僕なんて………」
ユーメリアの女性発言に、李雄の方は両手を膝を地に付け完璧に落ち込んでいた。
「おいこのデコメガネ………」
方や真雄は、怒りに燃え木刀を構えだしていた。
「誰が、女だあぁぁぁっ!!!!!」
そしてそのまま木刀を振り上げ、ユーメリアに向かって攻撃しだした。
「ま、まずい!」
その真雄の行動に、魁は咄嗟にユーメリアの前に出ると、真雄の振り上げて来る木刀に向かって
蹴りをかます。
世にも珍しい(?)木刀と蹴りの鍔迫り合いが起こった。
「ま、待て真雄! 気持ちは分かるが、転校日早々問題 起こす気か!!?」
「黙れ魁! テメェにこの気持ちが分かるか!? 俺らだって好きでこんな容姿や声してんじゃねぇ
んだよっ!!!!!!!」
宥め様とする魁に対し、怒りを納める気0の真雄は構えていた木刀を振り上げだした。
「死ねデコメガネ!!!!」
「待てよせ! 勇、止めるの手伝え!!!」
「ウガ!」
木刀を振り上げる真雄を止めようとユーメリアとの間に割って入る魁と、魁に言われてそれに続
く勇。
それでも真雄は木刀をそのまま振り下げようとした、その時だった。
「!!!??」
不意に真雄は、いやそこにいた全生徒達は感じた。
不意に自分達の上に大きな影が現れ、それにより辺りがやや薄暗くなった事を。
その影の存在に気づき、一同が上へと視線を向けた瞬間。
「…………う、そ……………」
その存在に李雄が発した言葉はそれだった。
そこにいた物、それは前足に蝙蝠の羽を生やし、頭には角を生やした巨大なトカゲか恐竜。
そう、それはいわゆる。
「ワイバーン?」
世界最強のモンスター、ドラゴンの亜種、ワイバーンだった。
ワイバーン、それは知る人ぞ知るドラゴンの一種。
人間界においては、ドラゴンと違い神話は伝承 生まれではなく、イギリスの騎士や貴族の使う
紋章として生まれた。
ドラゴンは絶対的な強さや守護者として、王族など一部の者しか紋章にすることを許されなかっ
た為、その代用とした生み出されたのが、ドラゴンよりやや小柄なワイバーンだったと言う。
そしてワイバーンは、本家のドラゴンには体格や破壊力では劣るが
る様に、飛行能力に関してはドラゴンより上とされている存在だ。
そのワイバーンが、今まさに古暮達の、いやトリニアス学園の校庭の上空に現れたのだ。
「グオオオオオォォォォォォォッ!!!!」
「う、うわああああぁぁぁぁぁっ!!!!!」
ワイバーンの咆哮に驚いた1人の生徒の叫び声により、校庭は驚きと恐怖に包まれた。
誰もが動揺し、辺りを逃げまどう。
「う、嘘でしょ!!? 何よあれ!!?」
「いわゆるワイバーンだな!」
「うぅっ、転校日早々ついてない!」
「チッ、逃げるぞリュアナ!」
「あ、アンちゃん!!」
ワイバーンの出現に、優希や魁達も動揺し、逃げようと走り出した。
「ん?」
「真雄様!?」
だがその時、魁とリュアナはある事に気づく。
約2名、真雄と勇だけはそこから動かず、上空を舞い、口より火を放つワイバーンをただただ見
つめていた事に。
「お、おい真雄! 勇!!?」
「ちょっと何やってんのよあのバカ!!!」
「兄さん!! 勇!!!」
「真雄様! 勇さん!!!」
「チッ、何やってんだアイツら…………」
真雄と勇の様子に口々に2人に呼びかけをする面々だが真雄も勇も全く反応がない。
「…………す……」
「………で………」
『???』
その時、不意に2人の口から零れた言葉にメンバーが首を傾げた時だった――――――――――
「すげええぇぇっ! 本物のドラゴン! ワイバーンだ!!!!!」
「でっけえええぇぇぇぇっ!! オラあれに乗りたいダ!!!!!!」
その真雄と勇の言葉に、一同はズッコケた。
「お前ら2人は本物のバカかぁーっ!!!!!!」
「アンタ達、他に言う事あるでしょ! 逃げるとかあるでしょ!!!」
「しまった! 兄さんと勇がこの手の物が好きな事を忘れてた!!!!!」
「真雄様! お願いですから逃げてください!!!」
「おい、あの2人 1度手術を受けた方が良いんじゃねぇか? 主に頭の」
真雄と勇の言葉に魁達は怒鳴り声を上げ、アンゴルモアに至っては完全に呆れ果てていた。
「真雄様お逃げください!」
「勇! 速く来い!!!」
「却下だ!」
「ヤダ!!」
ともかく2人を避難させようと声を上げるリュアナと魁だったが、真雄と勇から返って来たのは
拒否の言葉だった。
そして、真雄は木刀を、勇は指をポキポキと鳴らし始める。
「はっ、転校日早々ドラゴンと
「オラ、アイツに乗るダ!!!」
「待て待て待て待て! 何考えてんだお前ら!!!??」
真雄と勇の発言に、魁は我が耳を疑った。
だってワイバーンとはいえドラゴンに戦いを挑もうと言うのだ。
ドラゴンと言えば知らぬ者はいない知名度も強さも最強を誇るモンスターの王。
数々の神話、童話、ゲーム、物語に登場しその圧倒的な力で人間達に恐れられる存在だ。
そのドラゴンの亜種であるワイバーンに、真雄は戦いを挑もうとし、勇に至っては乗ってみたい
と言うのだ。
「バカバカバカバカ! 無理に決まってんだろ!! 戻れ!!!」
2人を戻そうと叫ぶ魁だが、真雄と勇は聞く耳を持たない。
「ウガ! 昔、山でやっつけた熊みたいに攻めるダか?」
「問題は相手が空を飛び、火を吹くって事だな」
「違うよ兄さん、問題はそこじゃない! それ以前の問題だから!! 相手は熊より凶暴だから!!」
どう攻めるか迷う2人に対しツッコミを言い放つ李雄。
「お願い兄さん、勇! 今晩のおかず2人の好きな物作るから!!!」
「だってよ勇、どうする?」
「う~ん、悩むダァ~……」
『悩むなぁ――――――――っ!!!!!!!』
李雄の言葉に対し思い悩む真雄と勇に、今度は魁と優希がツッコミを放った。
「ま、真雄様! 勇さん! 危ない!!!!」
とその時、リュアナの叫び声にも聞こえる声が響き真雄はハッと視線を上に向けた。
そこには、ヨダレを垂らし、こちらを睨むワイバーンの姿があった。
「……どうやら俺らは既に
「ウガ! だったら逆に食ってやるダ!!!!!!」
だが、普通の者なら竜に睨まれれば恐怖心や怖れが生まれる物だが、この2人の場合は違ってい
た。
真雄は恐怖以上に目の前のワイバーンと戦いたいと言う闘争心が勝り、勇に至っては恐怖心も恐
れも感じず、おもちゃを貰ってはしゃぐ子供の様な瞳でワイバーンを見ていた。
「いくぞ!!」
「ウガ!!!」
「いやだから行くなぁーっ!!!」
「真雄様!!!!」
戦る気満々の真雄と勇を止めようと、魁とリュアナが2人のもとに駆け寄ろうとした、その時だ
った。
不意にピカッ!とあたりが輝いたかと思うと、一筋の光がワイバーンに向かって放たれていた。
「グギャオオォォォッ!!!??」
その光がワイバーンを直撃し、ワイバーンは悲鳴の様な鳴き声を上げると同時に光の放たれた方
へと視線を向け、そのワイバーンに釣られる様に古暮達は、いや、そこにいた全員が光の放たれた
方へと視線を向けた。
「そこの暴れ竜、その辺にしておくんだな」
そこにはもう1頭のワイバーンがいた。
だが、そのワイバーンには校庭を襲撃して来たワイバーンとの決定的な違いがあった。
それは手綱だ。
騎馬などの馬に使われる手綱があり、そのワイバーンの手綱を握り、校庭を襲撃したワイバーン
に視線を向ける1人の騎乗する1人の女性がいた。
未の様にやや曲がった角を生やしている所をみると魔族か獣人族あたりだろうか。
身長はやや高く、この学園の制服、らしき物を着用している。
らしきというのが、確かにその服にはほかの生徒達の来ている制服と似ているのだが明らかに服
装のデザインが違っていた。
制服というには明らかに露出が多く、その女性の豊満な胸が丸見えだ。
加えてハイヒールを履き、赤いマントを羽織り、腰まである黒髪をスラッと伸ばしたその姿は、
生徒と言うには大人びた雰囲気を携えた、女王様の様な雰囲気だった。
「誰だありゃ?」
「すげー! アイツ ドラゴンに乗ってるダッ!!」
その姿を見た真雄は自分が攻撃しようとしたのを邪魔された気分になり、やや不機嫌そうに、勇
はワイバーンに乗っているその姿に憧れの眼差しを向ける中その姿に辺りから声が上がりだす。
「センシアさんだ」
「センシア様よ!」
「もう大丈夫だわ!!」
「センシアさん!」
周りの生徒達の口ぶりからどうやらあの女性はセンシアと言うらしく、それもかなりの有名人の
様だ。
「グオオオオオォォォォォォッ!!!!!!」
そんな中、ワイバーンは咆哮を猛々しく放つと、センシアの乗るワイバーンへ向かって飛び出し
た。
「どうやら、やるしかない様だな」
そのワイバーンの行動にそう呟いたセンシアは不意に手を前に出し、小声で何やらブツブツと呟
きだした。
するとどうだろう。
センシアが前に出した手から巨大な光り輝く陣、いわゆる魔法陣が現れた。
「鳴り響くは招雷の轟き……我が下に来りてかの者を裁け」
センシアがそう呟き……呪文を唱えた瞬間。
「“
ワイバーンのほぼ頭上に巨大な魔法陣が発生し
そこより巨大な落雷がワイバーンに向けて落ちて行く。
「グギャオオォォォォォォォォォォォォッ!!!??」
その落雷を受けたワイバーンは、身体を焦げさせ校庭に落下した。
その様に辺りからワアアアァァァと歓声が上がる。
「………すげぇ……」
「真雄様?」
そんな中、不意に小声で呟きだした真雄に首を傾げるリュアナ。
「おいリュアナ。あれってアレか? 魔法か!?」
「え? あ、はい。“
「攻撃魔法……」
そのリュアナの言葉に、先程までの戦いを邪魔された不機嫌はどこへやら、視線をセンシアに向
け、おもちゃを眺める子供の様に目を輝かす真雄。
「おい、魔法ってのは俺でも使えるのか!?」
「はい、勿論です。真雄様には魔族であるベルトラス様の血が流れていらっしゃいますからきっと
使えますよ」
そのベルトラスの血、つまりは父親の血というはが気に入らなかったが魔法が使えると言う可能
性は、ここに来て良かったと真雄に再認識させた。
「ま、オメェみてぇなボンクラがあんな上級魔法使えるようになるにゃ、何年かかるか分かったも
んじゃねぇがな。ケケケケケ!」
「あ、アンちゃん!」
「当然だ。古今東西異世界にしろ、武術にしろ何にしろ、まずは基礎からだぜ!」
その真雄の言葉に、以外にも怒らなかった態度にアンゴルモアは軽く驚いてしまった。
「……こいつ、短気なのかバカなのか?」
「当たらずも遠からず。ちゃんと見てる所は見てるって所かな?」
アンゴルモアの言葉にそう言い放った魁であった。
◇◆◇◆◇◆◇
「センシアさん、ご苦労さまでした~」
その後、古暮達が職員室を訪れると校長のディーネと先程いたセンシアという女子生徒がいた。
「いえ、当然の責務を果たしたまでです」
会話の内容から、先程の一件で校長であるディーネと話している様だった。
「あら? あらら、リュアナさんに古暮君達も来たんですねぇ~」
とそこへ、ディーネがやって来た古暮達に気づき視線を向け、そのディーネの言葉にセンシアも
古暮達に視線を向けた。
「お早うございます、ディーネ先生、センシアさん」
「うぃす先生」
「お早うございます」
「お早うございまーす!」
「お早うございます。そして初めまして」
「おっす!」
そのディーネとセンシアの視線に対し、古暮達もそれぞれ挨拶を交わした。
「君達が、人間界からの転校生か?」
古暮達の存在にセンシアがそうたずねて来た。
「おうまぁな。んでアンタは……」
「私は“センシア・リンドルフ”。ここの生徒会長を務めている」
真雄の言葉にそう答えたセンシアは不意に視線を真雄に、というよりその隣にいる李雄を含めた
古暮兄弟に向けた。
「?」
「あ、あの?」
「………君達が、ベルトラス様とマリア様のご子息か?」
そのセンシアの言葉に、李雄は軽く驚き、真雄はどこか不機嫌そうな表情になった。
「えっと、どうしてそれを?」
「いやなに、人間界から来る転校生2名がベルトラス様とマリア様のご子息と聞いていたのでな。
それを確かめたかっただけだ」
「へぇ~、やっぱりこっちの世界じゃオジさんオバさん有名なんだぁ~」
センシアの言葉に改めて古暮兄弟の両親が、
「けっ、あんなのが親とは思いたくもねぇぜ」
「真雄様?」
「おいそう言うなよ真雄。親無くして子たるお前はありえないんだぜ?」
不機嫌そうな真雄に首を傾げるリュアナ。
それに続き魁は真雄を窘める言葉を吐くが当の真雄には馬の耳に念仏、全くの効果がなかった。
「あら、ディーネ先生。それにセンシアさん。ここにいたのね」
そこへ不意に職員室の戸が開き、そこから白い十字マークの入った紫色の宗教服と白いマントを
着用した1人の男が入って来た。
その男を視界にとらえた時、古暮達 転校生達は男のある一点に視線が行ってしまう。
それは、男の頭だった。
男の髪はさらさらの美しい金髪なのだが、頭上の部分が某有名宣教師のように光っている、つま
りハゲているのだ。
どこぞの宗教上の戒律だろうか?
不意に真雄や魁はそんな事も考えた。
この異世界、神が当たり前の様な存在の
「すげぇ、
が、そんな皆の考えは、勇の何気ない一言により崩壊した。
主に爆笑で。
「ぷ、ぷはははははははははっ!!!!! 成程、確かに見える!!!!」
「ケケケケケケケッ!! 確かに河童に見えると言やあ見えるぜこりゃ!!」
「ちょ、ちょっと兄さん、アンゴルモアさん……クスクス、わ、笑いすぎだよ……クスクス……」
『………………』
その勇の言葉に、真雄とアンゴルモアは爆笑し、李雄は2人を注意しつつも笑い声がこぼれ、優
希と魁は声を抑えて笑っていた。
「ちょっと! 誰が河童よ誰が!! それが初対面の人に言うセリフ!!?」
「すげぇ、この河童オカマ ダァッ!!」
「誰がオカマよっ!!!!! 私はれっきとした男よ!!!!!」
勇の言葉に怒り心頭のハゲオカマ。
「誰がハゲオカマよ!!!」
「あ、あの、ザビエラ先生。誰もそんなこと言ってませんよ?」
ハゲ男、もといザビエラの言葉にツッコミを入れるリュアナ。
「なに? ザビエル??」
「ウガ、ザビー?ザビーってあのバ●ラの????」
「やめろそこの2人! それ以上ネタになる様なセリフは禁句だっ!!!!!」
真雄と勇の言葉にツッコミをかます魁。
「んでリュアナ。誰なんだ、この河童は?」
「ま、真雄様、この人は河童ではありません。この学園の教頭先生“ザビエラ・ソラ”先生です」
「河童が先生なれるダか?」
「……アナタ、もしかしてわざと言ってるのかしら?」
勇の言葉に、ザビエラは眉間にしわを寄せ、怒りマークを浮かべだした。
「あ、あの、ザビエラ先生は河童ではなく、李雄様と同じ“ヴァニル”なんです」
「ほぉ、“ヴァナディース”に続き“ヴァニル”と来たか」
ヴァニル、それは人間界の北欧神話においてヴァン神族の一角、神々の中で最も美しい眉目秀麗
な豊穣の神にして主神オーディンの妻であるフレイアの双子の兄フレイの事であり、こちらの世界
では、ヴァニルはヴァナディースの男呼びの事らしい。
「ウガ、んじゃあ李雄も将来こんなハゲになるダか?」
「はいはい、ボケもそこまでにしろ勇」
「ムガッ!?」
あまりにも口の悪い勇に流石にまずいと判断した魁がどこから持って来たのか、勇の口に鉄球を
詰め込み声を封じた。
「失礼、こいつの口の悪さは天然なんです。悪気は無く、わざとでもないのです」
「それはそれで尚更悪い気がするわね……」
「申し訳ありません。今後このような事が無い様に何とか頑張る所存です」
「……その言葉、できれば彼自身から聞きたいわね」
魁の言葉に優しさを感じつつも、視線を勇に向けるザビエラ。
「ガジガジ……」
「ちょ、勇! 鉄球は食えないよ……」
「ンガ、ヤッハリ?(ンガ、やっぱり?)」
そこには、口に突っ込まれた鉄球をかじる勇と、それにツッコミを入れる李雄の姿があった。
「………すみません、無理です」
「アナタ、苦労してるのね………」
魁の言葉に、ザビエラは魁の苦労を察したのか、目を細め、同情の眼差しで魁に視線を向けるの
だった。
とその時、キーンコーンカーンコーンとタイミングを見計らった様にチャイムの音が、学園中に
響いた。
「あらら~、そろそろ朝会の為に体育館に行きませんとね~」
「あら、もうそんな時間?」
「うむ、そろそろ急ぎましょう」
そのチャイムに、ディーネ、ザビエラ、センシアはそれぞれ体育館に向かおうとする。
その際、ディーネが視線を古暮達に向ける。
「では、皆さんを朝会で紹介しますので、一緒について来てください~♪」
「おう、頼むぜ先生」
そのディーネの言葉に、真雄がそう言い返して付いて行く姿に、リュアナや李雄達人間界よりの
転校生達は、その後を追う様に付いて行くのだった。
『~第4話~転校日早々!?その1 《終》』
どうも、黒鋼丸です。
『絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~』、古暮達は転校日早々ワイバーンに襲われ、
真雄と勇に至っては戦いを挑んだ。
更には原作キャラより頭の固い委員長ユーメリア、最強の魔王候補生センシア、そしてオカマ疑
惑のあるハゲ男、ザビエラが登場。
今後は更なる原作キャラ敷いてはオリジナルキャラを出して行くのでどうぞ、お楽しみに~♪