絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~【更新停止中】   作:黒鋼丸

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 前回までのあらすじ
 三界と呼ばれる異界の学園に通う事となった真雄と李雄の古暮兄弟と腐れ縁の幼馴染と悪友は、
転校日早々女と間違われ、更にはワイバーンに襲われるが、生徒会長であるセンシアに助けられ、
体育館で紹介されようとしていた。


~第5話~転校日早々!?その2

 神立トリニアス学園、体育館。

 その場には、この学園に勤める全教師と、学園に通う全学生達が揃っていた。

 体育館の壇上に立ったディーネによる朝礼のあいさつに続き転校生紹介が始まりだす。

 

〈では~、ここで人間界よりの新しいお友達を紹介しま~す♪〉

 

 そのディーネの言葉と共に、壇上裏で待っていた古暮達が階段を上り壇上に上がる。

 総勢5人もの、それも異界からの転校生に、トリニアス学生達の視線が向く。

 その中には、先程のセンシアとユーメリア、更には途中で別れたリュアナの姿もある。

 何故か、アンゴルモアの姿はなかったが。

 

〈では~、1人ずつ軽い自己紹介をお願いします~♪〉

 

 そう言い自分のいたマイクのある机を離れるディーネ。

 そのマイクに反応し、真っ先に動いたのは魁だった。

 

〈人間界より来ました、“篠原(しのはら) (かい)”です。三界(こちらの世界)の事は殆どよく分からない身ですが、どうぞよろ

しくお願いします〉

 

 そう言いペコリと頭を下げながら、優しくほほ笑む魁。

 その魁の挨拶に、体育館に集まった生徒達、主に女子から小さなざわめきが起こる。

 

「ねぇねぇ、あの“シノハラ カイ”君って、結構イケてない?」

「うんうん! すっごいカッコイイ!」

「モデルみたい……彼女とかいるのかな?」

 

 魁の礼儀のある言葉使いと態度、そしてその魁の美貌に大半の女子生徒が酔いしれてしまった。

 

「こら! まだ紹介は終わってないわよ、静かにしなさい!」

 

 そんな女子生徒に対しザビエラが大声で注意をし、それにより女子生徒達はやや不本意ながらも

声をひそめた。

 それを確認したザビエラは、壇上にいる古暮達に視線を向け、続けなさい、と声を掛け、その言

葉に今度は勇がマイクをとる。

 

〈ウガ、“篠原(しのはら) (いさむ)”ダ! よろしくナー!!!〉

 

 勇は持ち前の明るさで、シンプルな挨拶を放つ。

 その挨拶に対する学生達の勇への第一印象は、なんかガキっぽい、であったが当の勇は知る由も

ない。

 と言うか知ったとしても気にも止めないだろう。

 そんな勇に続き、今度は優希がマイクに向かう。

 

〈人間界から来ました、“佐倉(さくら) 優希(ゆうき)”です。よろしくお願いしまーす♪〉

 

 優希は勇とは違った元気良さで挨拶を放つ。

 その優希の笑顔に男子生徒の幾人かは、あの子結構可愛いな、と感じたのだが当の優希が知る由

もない。

 それに続くは、我らが真雄だった。

 真雄はこんな時でも木刀を手離さず、木刀を片手にマイクに手を伸ばす。

 

〈人間界から来た“古暮(こぐれ) 真雄(まお)”だ。よろしく頼むぜ〉

 

 そう言いさっさとマイクを李雄に渡す真雄だが、この時真雄は学生達から来る奇妙な視線を感じ

ていた。

 

(チッ、またこの視線か……)

 

 その視線を、これまでの経験と自分のコンプレックスから知っている真雄は忌々しそうに歯ぎし

りを立てながら、マイクを李雄に渡した。

 

〈ただいま紹介なさいました、“古暮 真雄”の弟の“古暮(こぐれ) 李雄(りお)”と申します。人間界から来たば

かりで、三界(ここ)の事は何も分からない身ですが、どうぞよろしくお願いします〉

 

 そう言いペコリと頭を下げた李雄は、マイクの相手ある机を後にし、隣にいる真雄達の下へと

並ぶ。

 

〈以上、お友達紹介でした~♪では転校生の皆さん、降壇してください~♪〉

 

 その声に、古暮達は階段で降壇し、そこで待っていた1人の教師に連れられ生徒達の横を通り体

育館を出ようとする。

 が、この時古暮達は、正確には真雄と李雄の古暮兄弟は、生徒達から色んな意味の籠った視線の

集中砲火を受けていた。

 

(何だろ、この視線……)

(チッ、気に入らねぇ………)

 

 その視線に、古暮兄弟がそれぞれ気づいた時だった。

 不意にドサッと何の前触れもなく、1人の男子生徒が倒れたのだ。

 

「先生ー! ロディル君が貧血起こしましたー!!」

「嘘だ……あの声と外見で男なんて……嘘だと言ってくれ……俺の、俺の一目惚れが、男相手なん

て……」

 

 その倒れた生徒、ロディルの言葉を皮切りに、魁の時とは比べ物にならないほどのザワめきが起

こった。

 

「コグレ君達って、男装した女の子なんじゃないの? あの外見と声で男って事はないわよね?」

「でも、マオ君は背が高いし、リオ君は弟って言ってたんだし男子なんでしょ。女の子な訳……」

 

 そう言い1人の女子生徒が視線を歩く古暮兄弟に向ける。

 が、すぐに顔を赤くし視線をそらしてしまう。

 

「う~ん…難しいな。あたしからは何とも言えない……」

「マオ君は綺麗だし、リオ君はあり得ない位かわいい……どっちも女子に見えたわ、私には」

 

 あちこちからそんな声が上がり、ザワめきが更に広がって行く。

 

〈あーん、皆さ~んまだ朝会は終わってませんよ~。学級崩壊はダメですぅ~!!〉

 

 そんなザワめきに対し、学園長であるディーネがマイク越しに声を上げるが、ディーネの覇気の

ない声では、一向に収まる気配がなかった。

 

「こらっ! いい加減にしない!! まだ朝会の途中よ!!!」

 

 そこに、今度はザビエラの怒鳴り声が響き、さすがにこれは効いたのか生徒達は渋々と声を静め

て行くのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「………………(イライライラ)」

「はぁ………」

 

 学園内の職員室前の廊下。

 そこに、人間界より転校して来た古暮達の姿があったが、その中にあって古暮兄弟は、真雄は不

機嫌そうにイラ付き、李雄はしょんぼりとした表情でため息をついていた。

 その理由は、言わずも知れた先程の体育館での出来事だ。

 古暮兄弟は、自分の外見と声に自覚はある。

 自覚があるが故にコンプレックスなのだ。

 特にプライドの高い所のある真雄は、そのコンプレックスが原因でこの性格になったと言っても

いい。

 

「おい真雄、李雄」

「アンタ達、気持ちは分かるけどいい加減 慣れなさいよ」

「あぁっ!?」

 

 その魁と優希の、正確には優希の言葉に真雄は不機嫌そうな声を張り上げた。

 

「真雄、気持ちは分かるが落ち着こうぜ。俺らに当たったて、何も解決しないぜ?」

「ちっ、んなこたぁ分かってんだよ………」

 

 そう言い視線をそらす真雄だが、表情は相変わらず不機嫌そうだ。

 その時、職員室の戸が開きそこから2人の女性が姿をあらわした。

 

「皆さ~ん、ちゃんといますか~?」

「全員揃ってますね?」

 

 その2人の女性は、1人はディーネだった。

 そしてもう1人は、ジーナではなかった。

 シスター服にウェーブの掛かった白銀のロングヘア。

 顔も中々美人で、スタイルも良さそうだ。

 

「ディーネ先生。それと……」

「始めまして私は“シリア・スフィリンドール”と申します。アナタ達の入るクラスの副担任をし

ています。種族はウィンディーネで教科は天界史、よろしくお願いします。」

 

 そう言い名前を聞いて来た魁、そして古暮達に視線を向け丁寧に挨拶を行うシリア。

 

「ウィンディーネ……」

 

 だがこの時、魁はシリアに視線を向けながら全く別の事を考えていた。

 ウィンディーネは高名な錬金術師・パラケルススが名付けた自然界の四大元素、土・水・火・風

の内の1つ“水”を司る精霊である。

 湖や泉などに住んでおり、性別はないが、美しい女性の姿が一般的。

 パラケルススによると、ウンディーネには本来魂がないが、人間の男性と結婚すると大きな禁忌

が付くが魂を得る事ができると言われ、この事から人間との悲恋物語が多く伝えられている。

 

「副担任、ですか?」

 

 魁がそんな事を考えていたその一方、シリアの言葉に李雄は首を傾げていた。

 確かに、普通ここに来るのは副担任と担任の教師の筈。

 だが目の前にいるのは副担任を名乗るシリアと学園長たるディーネのみだ。

 その事に、李雄は直感した。

 

「もしかして、担任はディーネ先生ですか?」

「おやや、魁くん良く分かりましたねぇ~」

 

 そう言いニコッとほほ笑むディーネ。

 

「では改めましてアナタ達のクラスの担任の“ディーネ・アジャーニ”です。教科は魔界史です。

よろしくお願いします~♪」

 

 そう言い改めて自己紹介をするディーネ。

 

「学園長直々に授業たぁ、この学園は人手不足なのか?」

 

 そんなディーネの言葉に対し真雄が発した言葉はどこか小馬鹿にした様な発言だった。

 

「ちょ、兄さん!」

「お前なぁ、これからお世話になる先生方にそれは無いだろ」

 

 そんな真雄の発言に、李雄はあわわと宥める様に魁は呆れ果てる様な口調で返す。

 

「俺は思った事は何でも言う主義だ」

「むむっ。マオくん、そういった発言は感心しませんねぇ。そういう言葉が、学級崩壊の始まりな

んですよ~」

「マオさん、先生に向かってその様ないい方はおやめなさい」

 

 李雄と魁の注意に対し全く反省の色を示さない真雄に対しのほほんとしたディーネと、真面目そ

うなシリアから真雄を指導する様な言葉が飛ぶが、当の本人である真雄はどこ吹く風だった。

 

「知るか。さっさと教室に案内してくれや、時間ねぇんじゃねぇの?」

 

 そう言いチラッと視線を、開けっぱなしの職員室にある時計に向ける真雄。

 その視線に気づいたディーネ達が時計に視線を向けると同時に、ディーネは慌てたように目を丸

くする。

 

「あわわ、大変です~。もう時間が来ちゃいます~!」

 

 そう言いディーネは慌てて教室へ向かうべく歩き出した。

 

「ほら、俺らも行こうぜ」

「………お前、ホントこう言う時の咄嗟の判断力はあるよな………」

 

 ニカッとほほ笑む真雄を呆れる魁の言葉に対し真雄は、してやったり、といった満面の微笑みを

浮かべるのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 その後、ディーネとシリアに案内された古暮達は、今日から通う事となる教室の扉の前で待たさ

れていた。

 どうも朝礼と同時に、古暮達を入れるらしいのだ。

 

「にしても、まさか全員同じクラスとはな」

 

 不意に魁はそう呟いた。

 そう、扉の前には魁と真雄、李雄、勇に優希と人間界からの転校生全員が揃っているのだ。

 つまりは、5人全員が同じクラスになる事を指さしている。

 普通、多数の転校生、それも同じ学年の者が多数 来たならば他のクラスに分けられるものだ。

 魁やほかの皆も(約1名例外として)そう考えていたのだが、以外にも全員が同じクラスとなった

のだ。

 

「あれじゃねぇか? このクラスだけ妙に人数が少ないからとか」

「何でも良いダ、皆一緒が良いダ」

 

 そんな魁の疑問に対し、真雄は楽天的な予想を答え勇はどうでも良さそうに返すのだった。

 

「それでは転校生の皆さ~ん、入って下さ~い」

 

 そこへ狙ったかの様にディーネの呼ぶ声が聞こえ、その声に真っ先に反応した真雄が扉に手を掛

け、戸を開ける。

 その真雄に釣られ、他の面々も教室に入って行く。

 そして同時に古暮達は、先程の真雄の何気ない予想が半分当たりである事を確信してしまう。

 

(こりゃぁ…………)

 

 教室に入った古暮達は、教卓の前までやって来るとこちらに視線を向けて来るクラスメイト達に

視線を向ける。

 クラス人数は、全員で14人と多いとは言えない。

 つまり真雄の、このクラスだけ妙に人数が少ないからとか、と言う何気ない予想は強ち外れでは

なかったのだ。

 しかも、そのクラスの中にはリュアナとアンゴルモア、それに今朝校門で会ったユーメリアとセ

ンシアの姿があった。

 そして、何よりこのクラスの妙な部分は、このクラス、クラスメイトがアンゴルモアを除いて、

全員が女子の様なのだ。

 

(これが俺ら全員をこのクラスにした理由か?)

(何だか、女の子ばかりの様な気が………)

(あ、リュアナやアンちゃんもいる)

(成程、あながち真雄の予想も外れではなかった訳か)

(ウガ~、腹減ったなぁ~)

「ではでは、転校生の皆さんには改めて自己紹介をしてもらいま~す」

 

 クラスの状況にそれぞれが思い思いの考えを巡らす中、ディーネの言葉により、再びそれぞれの

自己紹介が始まった。

 先方は、朝会の時と同じ魁だ。

 

「人間界より来ました、“篠原 魁”です。趣味は絵を描く事と読書です。皆さん、改めてよろし

くお願いします」

 

 そう言いペコリと頭を下げる魁。

 それに続き、今度は勇が口を開く。

 

「オラ、“篠原 勇”ダ! 好きな事は運動と飯食う事ダ! よろしくダ!!」

 

 そう言いニカッとほほ笑む勇に続き、朝会と同じ様に今度は優希が口を開く。

 

「人間界から来ました、“佐倉 優希”です。趣味は占いとミニカー集め、特技は料理です。よろ

しくお願いしまーす♪」

 

 それに続き、今度は古暮兄弟がそれぞれ口を開きだす。

 

「“古暮 李雄”と申します。趣味は料理、特にお菓子作りが好きです。どうぞよろしくお願いし

ます」

「“古暮 真雄”だ。趣味は、まぁ色々あるが代表的なのはケンカと読書、よろしく頼むぜ」

 

 そう言いペコリと頭を下げる李雄とクラス全員に視線を向ける真雄。

 

「では、クラスの皆さんも、転校生の皆さんに軽くで良いですから自己紹介をしてください~♪」

 

 するとそこへ、ディーネが今度はクラスメイト達に自己紹介をするように良い放ち、その言葉に

真っ先に反応した1人の生徒が立ち上がる。

 それは、古暮達も知る人物、ユーメリアだった。

 

「このクラスの委員長を務めています“ユーメリア・アルマンダイン”。種族はハイエルフです。

改めてよろしくお願いします」

「ほぉ、ハイエルフ」

 

 そう言いクイッと片手でメガネを上げるその様は、まさに堅物の委員長だったが、そんな事より

も魁が反応したのはハイエルフという種族の名だった。

 エルフ、それはゲームやマンガなどのファンタジー世界で度々目にする知名度の高い種族。

 元々エルフとはゲルマン神話に起源を持つ、北ヨーロッパの民間伝承に登場する種族であり、

ヨーロッパに広く伝わる妖精の様な存在だったのだが、J・R・R・トールキンの『指輪物語』など

では人間ほどの大きさで尖がった耳と美しい容姿の半神的な種族として登場し、このトールキン風

のエルフが今では一般的となっている。

 そのエルフには多数の亜種が存在し、その1つがハイエルフだ。

 ハイエルフはエルフの中でも賢明で誇り高く長寿であると同時に、それ故に高慢な者が多い事で

有名だ。

 最も、目の前のユーメリアからはお堅い感じはするが、高慢という感じはしない。

 

「あ、今朝はどうも」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 そのユーメリアに対し李雄と魁は言葉で返し、優希はペコリと頭を下げる事で、勇は、オッス、

と手を振る事で返したが、真雄だけは何もせずにただユーメリアを睨みつけていた。

 

「……あの、兄さん?」

「アンタまだ今朝の事 根に持ってんの?」

 

 その優希の言葉に対しても、真雄は沈黙のままだった。

 そう、真雄は今朝の校門での出来事、ユーメリアに思いっきり女と間違われた事を未だに根に持

っているらしい。

 

「あ~、朝の一件でしたら、その、申し訳ありませんでしたわ」

 

 その真雄の視線に気づいたのか、ユーメリアは古暮兄弟に謝罪して来た。

 

「何々? ユメりん、コグレっち達と何かあったの?」

「へぇ、ユメりんてば何やったの?」

 

 そんなユーメリアの言葉に、2人の生徒が反応してくる。

 その内の1人は、肩まであるやや濃い目のピンク色のセミロングヘアーに褐色の肌、リュアナや

ユーメリアと同様に尖がった耳が特徴でミニスカに白いシャツ、袖なしのセーターを着た姿はどこ

かコギャルっぽい。

 もう1人は、服装はミニスカである事以外は普通でだが、髪は腰近くまである薄紫色で、♪の形

をした髪飾りとその活発そうな雰囲気が好印象を受ける少女だった。

 

「アナタ達には関係ありません。それと私はユメりんではありません!」

「え~、ユメりん堅いよぉ~」

「うんうん、何か家のママみたい」

 

 自分の事をユメりんと呼ぶ2人に対し嫌そうに怒るユーメリアだったが当の2人はどこ吹く風、全

く気にしていない。

 

「アリッサさん、チマさん、いい加減にしなさい。それ以上騒ぐと指導室に来て貰いますよ?」

 

 そこへ、副担任のシリアの声が響き、この声にシリアにそれぞれアリッサ、チマと呼ばれた2人

は不服そうな表情になりながらも口を閉じた。

 

「さて、御2人にはよほど元気がある様ですから、御2人に自己紹介も元気にして貰いましょうか」

「んじゃあたしが行きま~す」

 

 が、そのシリアの言葉に、再び口を開くピンク髪のコギャル。

 

「あたしは“アリッサ・ビアズリー”。種族はサキュバスだよ、よろしくねー!」

「今度はサキュバスかよ」

 

 そう言いニッコリと今時の女子学生らしい笑顔を見せるアリッサに今度は真雄が反応する。

 サキュバスは通称を夢魔、つまりは夢に現れて人を堕落させる悪魔の一種であり、その女性の者

をサキュバスと呼び、ラテン語で『下に寝る』を意味し、スクブスとも呼ばれる存在だが、ディア

ボロスと同様にこちらの世界の悪魔も種族の1つに過ぎないようだ。

 

「えへへ、よろしくね☆」

 

 そう言い真雄、魁、李雄、勇にウインクしてくるアリッサ。

 種族の1つと言っても、そのウインク1つにどこか悪魔的な色気があり、花より団子の真雄と勇は

特に気にせず、この手の女に慣れのある魁は軽く受け止めたが、女に対し赤面症のある李雄だけは

そうはいかず俯く事で視線をそらし軽く赤面してしまった。

 

「ん~、どうしたのリオっち? アタシに惚れちゃった?」

 

 そんな李雄の状況に気づいたアリッサが席を離れ俯いた李雄の顔を見ようとする。

 

「ふぇ!? あ、あの、アリッサ、さん? と言うかリオっちて………」

「ちょっとアリッサさん、今はまだ自己紹介の途中でしてよ! 席を立ってはいけません!」

「アリッサさん、他の者の自己紹介もあるのですからその辺にしてください?」

 

 そのアリッサの行動にあわあわする李雄に対しユーメリアは怒鳴り声の様な注意を言い放ち、

シリアはやや強気な視線を向けて来る。

 

「あん、2人共かた~い」

 

 そう言いながらアリッサは席へと戻り、それと同時に今度は、先程アリッサと共に立ち上がった

女子生徒が立ち上がる。

 

「そんじゃ、アリッサに続いて私のターンって訳ね! 私は“チマ・ララサバル”! バンシー史

上最強で最高に可愛いナンバー1歌姫のチマちゃんとは私の事よ!!」

 

 そう言いバシッとポーズを決めるチマ。

 そのハイテンションに古暮達は付いていけず、ただただ唖然となった。

 

(何かバカっぽい奴だな……)

(えっと……元気いい人だな……)

(何かハイテンションな子)

(ウガ、元気いい奴)

(バンシー史上……バンシーが種族か?)

 

 皆が唖然となる中、魁はただ1人冷静にバンシーの事について分析していた。

 バンシーはアイルランドおよびスコットランドに伝わる女の妖精でありケルト語で『女の妖精』

を意味している。

 家に憑き、その家の者の死ぬ前触れとして現れ、泣き声や悲鳴の様な声を上げてその死を伝える

と言われているが、どこの家にでも現れる訳ではなく、純粋なケルトやゲール系の家族のもとにし

か来ないとも言われる。

 また、川の辺で死にゆく者達の服を洗うと言われており『浅瀬の洗い手』と呼ばれる事もある。

 その正体はお産で死んだ女の幽霊と言われており、その容姿は長い黒髪で緑色の服に灰色のマン

トを着用し、目からはこれから死ぬ者の為に泣くので燃える様な赤色をしていると言われている。

 だが、目の前の活発そうなチマからはそんな雰囲気は感じられず、はやりディアボロスやサキュ

バスと同様に、種族の1つにすぎない様だ。

 

「今なら転校生へのプレゼントとしてチマちゃんサインあげるけど、どう?」

「別にいらねぇ」

 

 自分のサインを突き出すチマだが、真雄はサラリと要らないと言い放った。

 

「なっ! このチマちゃんのサインが要らないって言うの!!?」

「別に興味もねぇしな」

「ちょ、兄さん!」

 

 信じられないといった表情のチマに対し、真雄はウザそうに言い返すが、その真雄の言葉に李雄

が注意する様に真雄を止めようとする。

 

「いくらなんでもそんな言い方ないでしょ」

「お前な、女性に対しての礼儀を少しは学べよ」

「けっ」

 

 真雄を注意する李雄に続き魁も言葉を上げるが当の真雄はどこ吹く風、全然こたえてない様だ。

 と、その時。

 

「はい、そこまでです。それ以上騒ぐと本当に指導室へ行って貰いますよ?」

 

 シリアがキッと睨みを利かせて来たのだ。

 正し、顔が優しいのでイマイチ迫力に欠けるが。

 

「ちぇ」

「けっ」

 

 だがそのシリアの言葉に、チマは不服ながらも渋々イスに座り、真雄もまた舌打ちするだけで終

わるのだった。

 

「では、次は誰だ?」

「は~い、ボクが行きま~す」

 

 そのシリアの言葉に、1人の少女が手を上げ立ち上がる。

 その子は、小柄で薄らとピンク色のかかった白い短髪、クリっとした瞳にスカートに付けたウサ

ギのバッチなどどこか幼さを感じる少女だった。

 だが、なによりその少女の姿で人の目を引くのは、背中から生えた白鳥の様な白い鳥の翼だ。

 

(鳥人間?)

(天使?)

(あ、かわいい)

(天使の種族か……はたまた鳥人系か?)

(鳥……焼き鳥食いてぇダ………)

 

 その生徒の存在に古暮達が色々と思案する中、少女は口を開きだす。

 

「ボクの名前は“フィルミリア・ハウル・オーキュペテー・パパサナスィウ……”あうちっ!」

 

 少女、フィルミリアは自分の名前の途中で噛んでしまった。

 

「あ、噛んだ」

「噛んだ」

「噛んだダ」

「ずいぶん長いんですね、名前」

「めんどくせぇな、略して“フィル”で良いだろ」

 

 そのフィルミリアが噛んだ事にそれぞれ口をはさむ古暮達。

 真雄に至っては勝手にフィルとあだ名を付けてしまっている。

 

「はうぅ~、また噛んじゃいました~……」

「フィルちゃん、大丈夫?」

 

 噛んでしまい落ち込むフィルミリア……長いのでフィルと省略。

 噛んでしまったフィルを、心配そうに隣の生徒が見詰めて来る。

 いや、その者は本当に生徒、と言うか学生なのだろうか。

 スラッと伸びた高めの身長に、腰近くまである穏やかな波の様なウェーブのかかった水色のロン

グヘア。

 ディーネにも勝る豊満な胸に、水滴の様な青い宝石の額飾りをしたその姿と雰囲気はどう見ても

同い年には見えない。

 年上のお姉さん、と言うか人妻の様にすら見えてしまう。

 

「えっと、アナタは?」

 

 そんな学生とは思えない雰囲気に戸惑いを感じつつも女性に対して免疫の強い魁が聞いてみた。

 

「あ、私このフィルちゃんと放送部をしています“セシリー・ブルムクヴィスト”と言います。

よろしくお願いします」

 

 そう言いほほ笑みながらペコリと頭を下げるセシリー。

 その際、豊満な胸が揺れ動く。

 

(こいつ、ホントに俺らと同い年か?)

(あ、あうぅ……)

(年上のお姉さん見たい。それにあの胸、羨ましい……)

(なんかコイツからウマそうな菓子の匂いがするダ……)

「失礼ですが、セシリーさんとフィミリアさんでしたか? よろしければ、御2人の種族を聞いて

もよろしいですか?」

 

 セシリーの雰囲気にそれぞれの事を考える中、魁はそう言いながらセシリーとフィル向ける。

 

「……えぇ、良いですよ」

「はい。ボクも良いですよ」

 

 その言葉に、セシリーはやや間を開けて、フィルは別に良さそうに言い放った。

 

「私は獣人界の種族、セイレーンです」

「ボクは天界のパーピーです」

「ほぉ」

 

 その2人の種族名に目を細める魁。

 セイレーンは、ギリシャ神話に登場する上半身が人間の女性、下半身が水鳥と言う海の怪物だが

まれに人魚の様な姿、或いは単に人間の女性の姿として描かれる事もある。

 その美しい歌声で自分達の縄張りである島の付近を通る船の船員たちを惑わせ船を難破させてし

まうとも、そのまま食ってしまうとも言われているが、目の前のセシリーはそんな凶暴な怪物には

見えず海の怪物と言うより水の妖精の様に見える。

 ハーピーはセイレーンと同じく、ギリシャ神話に登場する上半身が翼をもった人間の女性、下半

身はハゲタカの姿をした怪物でその名は『掠める女』を意味している。

 性格は食欲が旺盛で、食糧を見ると意地汚く貪り食う上、食い散らかした残飯や残った食糧の上

に汚物を撒き散らかして去っていくという、この上なく不潔で下品な怪物であり、ダンテの叙事詩

『神曲』地獄篇の中では、地獄第七圏第二の環・『自殺者の森』において自ら命を絶った者が変容

した樹木を啄ばむ怪鳥として描写されている。

 が、もちろん三界におけるハーピーは、天界に存在する有翼種族にすぎない様だ。

 

「わざわざありがとうございます。」

「いいえ、どういたしまして。」

「知りたい事があったらいつでも聞いてくださいね」

 

 魁のお礼にそう答え、2人は着席した。

 

「それでは次は……あら?」

 

 着席した2人に続き誰か自己紹介させようとするシリアだったがここである事に気づく。

 ある3つの席が1つにまとまり、その席の3人が何やらノートに何かを書き込んでいる事に。

 

「やっぱり、次の錬成にはこれをこうやって……」

「ね、ねぇお姉ちゃん、ネム、やっぱり自己紹介中にやるのは……」

「……わたしは、べつにきにしない……」

「グーデンベルクさん、何をしてるんですか?」

 

 ノートを書き込みながら小声でしゃべる3人に、シリアが睨みつけて来た。

 

「げっ、やば……」

「あわわわ、ごめんなさい!」

「……ばれちゃった………」

 

 そう言いパッと身をはなす3人。

 そしてその3人の姿を見た時、古暮達は軽く驚いてしまった。

 その3人は、背丈はほぼ同じで、髪の色と長さ、そして着ている袖の長い制服と被っている帽子

のデザインまでもが同じなのだ。

 ただ数少ない違いと言えば、それぞれ被っている帽子にある動物の顔の様なマークの模様と色、

そしてそれぞれの持つ雰囲気ぐらいだった。

 

「あなた達姉妹が研究熱心なのは知っていますが、時と場合は考えなければいけませんよ」

「ちょっと位いいじゃない。堅いわね」

 

 シリアの言葉に真っ向から反論したのは、他の2人に比べると若干(本当に若干、1㎝位)背が高く

被っている帽子についている動物の様なマークは赤い。

 雰囲気としてはややわがままそうで、先程の会話からして彼女が場を仕切る3人のリーダー格の

様だ。

 残りの2人は、どこかおどおどした態度をとっているのは被っている帽子についている動物の様

なマークは黄色くどこか頼りなさそうな雰囲気のする少女と、その隣では最後の1人であり、3人の

中で唯一メガネを掛け被っている帽子についている動物の様なマークが蒼い、どこか無口そうな雰

囲気の少女が、無言で先程開いていた本を黙々と読んでいた。

 シリアの話からすると3人は姉妹で、先程のわがままそうなのが長女、おどおどしているのが次

女、無言のメガネが三女の様だ。

 

「ほぉ、3姉妹か」

「三つ子なのかな?」

「かわいい~♪」

「ウ、ウガ? 誰が誰ダ?」

(……悠馬(ゆうま)が見たら姉妹丼とか言いそうだな………)

 

 そんな3姉妹の存在にそれぞれ思い思いの考えを述べる、或いは思う古暮達面々。

 

「では自己紹介をしてください」

「面倒くさいわね」

「お姉ちゃん、そんなこと言っちゃダメだよ~」

「………………」

 

 そんな中シリアの放った言葉にそれぞれの反応を示しつつ、3姉妹達は視線を古暮達に向ける。

 

「まぁいいわ。特別に自己紹介してあげるから、耳をかっぽじって聞きなさい! あたしは“ノム

・グーデンベルク”!! トリニアス学園始まって以来の天才錬金術師よ!!」

 

 そう言いながらビシッと決める赤のノム。

 

「お姉ちゃん、尾ひれ付け過ぎだよ」

 

 そんなノムの態度に、黄色いのがおどおどとしながらノムを宥める。

 

「うっさいわね。アンタ達もついでに自己紹介なさい!」

「え、えっと、“ニム・グーデンベルク”です。しゅ、種族はノームです! よろしくお願いしま

す!」

 

 そう言いニムはペコリと申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「………“ネム・グーデンベルク”……以上………」

 

 それに続く様に最後の1人、ネムも自己紹介をかなり簡単に行った。

 

「ノームですか……」

 

 それと同時に、魁はやっぱりと言うか当たり前の様に種族の事に考え込んだ。

 ノームは高名な錬金術師・パラケルススが名付けた、自然界の四大元素、土・水・火・風の内の

1つ土を司る精霊であり、主に地中で生活しており、老人のような容貌をした小人。

 手先が器用で知性も高く、優れた細工品を作ると言われている。

 また、一説ではノームは女でもヒゲが生えてると言われているが、この姉妹を見る限りこちらの

世界ではそんな事はなさそうだ。

 

「う、ウガガ???」

「ん? どうした勇?」

 

 その時、何故か頭を抱える勇の姿が目に映った魁は不思議に思い勇の顔に視線を向ける。

 

「え、えぇと、ノーム、ニネム、ヌム?」

「ん? あぁ、そう言う事か」

 

 その勇の呟いた言葉に魁は即座に感ずいた。

 勇はハッキリ言って頭は悪い。

 故にそっくりな3姉妹の名前を覚えきれないらしい。

 

「よし、決めたダ!」

 

 そして不意に何か思いついた様に3姉妹に視線を向ける勇。

 

「なぁ」

 

 そして――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、覚えんのメンドくせぇからチビ1、2、3でいいダか?」

 

 

 

 

 

 

 

 と、とんでもない事を言い出した。

 

『いいわけあるか!!!』

 

 そしてその勇の言葉に、女性に優しい魁と3姉妹の筆頭であるノムが、思いっきりツッコミを入

れるのだった。

 

 

                        『~第5話~転校日早々!?その2 《終》』

 

 




 どうも、黒鋼丸です。
 今回の話でクラスの面子の大半と顔を会わせます。
 小悪魔的なサキュバスのアリッサ、三界の歌姫を名のるバンシーのチマ、ボクっ娘エロ脳ハーピ
ーのフィルミア、大人びたセイレーンのセシリー、実験大好きなノームであるノム、ニム、ネムの
3姉妹。
 そしてオリジナルキャラクターであるシルフのシスター教師、シリアが登場。
 そして次回はいよいよ残りの候補生やオリジナルキャラがばしばし登場の予定です。
 乞うご期待下さい。
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