絶対☆双王~オレとボクの恋乱、学園サーガ~【更新停止中】 作:黒鋼丸
魔力と神気をコントロールする為に三界の学園、トリニアス学園に転入した古暮達。
様々な種族と個性の揃うクラスで何とかやって行こうとした中、古暮兄弟が魔王・聖王の息子で
ある事を聞き付けた他クラスの面子がやって来た中、古暮達のクラスの扉が開いた。
「失礼するぞ」
古暮達のクラスの扉が開き、そこから現れたのは1人の男子学生だった。
背丈は180~190は在りそうな長身、白にやや茶色の掛かった色をしたショートヘアに白い肌。
他の学生とは違う白い制服に身を包んだその姿は何処か品のある純白の貴公子、そんな表現の
似合う男だ。
「…………ふっ」
「?」
その男は教室に入ると、他の生徒達には目もくれず1人の生徒、李雄に視線を向けるとほほ笑み
ながら進軍して行く。
その男の表情に李雄は首を傾げるが、そうしている内に男は李雄の前までやって来た。
「失礼だが、人間界からの転校生の、コグレ リオくんだね?」
「え、えぇ、そうですけど?」
その男の言葉に李雄が何事かと首を傾げる中、男は懐から1つの白いコンパクトを取り出した。
「えっ、それって!」
そのコンパクトを見た瞬間、李雄は顔色を変えて自分の上着やズボンのポケットを確認した。
そして気づいた。
無いのだ、自分にとってとても大切な思い出の詰まったコンパクトが。
「それをどこで」
「体育館 近くに落ちていたのさ。だが俺様には一目でこれが君のだと分かったさ。何故なら俺様
には君の全てが………」
「ちょっと李雄。アンタなにコンパクト落としてるのよ」
とそこへ、男の言葉を遮るように優希が割って入った。
「あう、ゴメン」
「大体アンタは普段キッチリしてる癖に妙な所でうっかして………」
「おい貴様! 彼は俺様と話してるんだ! 人の話に割り込むなと親に教わらなかったのか!!」
李雄が優希に注意されて落ち込む中、話に割って入られた事に男は怒りを感じたのか優希に
食ってかかる。
それに対し優希は男を見据え睨みつける。
「それが何だって言うの? 私は李雄の保護者なの。だから李雄への話は私も聞く権利があるの」
「ふん、それがどうした。貴様が彼と作った絆や思い出など俺様の愛の前では全くの無力。さぁ、
そこをどいて貰おうか」
優希の言い分はハッキリ言って横暴だが、男の言い分もそれに負けず劣らぬ自惚れ的なものだ。
そんな男の言葉に、優希は拳をわなわなと震わし出した。
「な、何よ! 李雄は男なのよ!? 男に向かって愛!? 変態に無力とか言われたくないわよ!!
アンタこそ少しは遠慮したらどうなの!!?」
そう言いキッと男を睨みつける優希。
優希は長年の経験でこの男が
古暮兄弟はその外見と美しい声故に良く女に間違われるのだが中には男と分かっても、
それでも良い! とか、むしろそこが良い!!と言う者が後を絶たず、特に李雄には三界に来る前か
らファンは多いのだ。
そしてこの男もまたその手の者である事を優希は気づいていたのだ。
「ふっ、高飛車な物言いだな。海を知らぬ
「め、雌蛙ですって!!?」
その男の言葉に優希は完全に怒りを覚えるが、男は全く気にせず前髪をフサッと揺らしながら
言い放つ。
「世の中の天才はほど変態なのだ! 故に変態とは最上級の褒め言葉なのだよ!!
そう、奇人と言われてこそ価値ある人生! 他者と同じ事をする程 退屈な事は無い!!」
そう言い自称変態の男はバレーダンサーの様にくるくると踊りながら怒りに燃える優希を避け、
机に座る李雄の前に立つ。
「さぁ、我が愛しのダーリンよ。この出会いを永遠に忘れれない日に………」
「いやあの、ダーリンって僕の事?」
「勿論 君の事さ。さぁダーリン、俺様と共に新たな世界の扉をひら………」
「はい、それまで」
今まさに李雄を新たなる世界へと導こうとする男に対し、止める存在があった。
それは優希ではなく、それを見守っていたクラスメイト達でもない、1人の見知らぬ男子生徒だ
った。
中性的な顔立ちをし、後ろで緩めに1つに結んだ金髪のセミロングに大きめの紫色の瞳。
何処か気品に溢れた雰囲気と佇まいは、貴公子の名が良く似合いそうな生徒だ。
「むっ、何だ“クリス”来ていたのか」
「来ていたのかじゃないよ“ユーロ”。君が転入生の教室に向かったからって聞いたから、もしや
と思って来てみれば……」
どうもこの会話を聞くに、変態の名はユーロ、貴公子はクリスと言う様だ。
クリスはユーロにツッコミをかますと、視線を李雄へと向ける。
「えーと、確か、“コグレ リオ”くん、だっけ?」
「あ、はいどうも。えっと………」
「あ、僕はクリス。“クリス・ディラルク”。こっちはユーロ。“ユーロ・ディアスタン”。付き
合いの長い、そう、悪友かな。
「迷惑など掛けていない。俺様はダーリンを新たなる世界へ導こうとだな……」
「だからそれが迷惑だつってんの!!!」
そのユーロの自信満々な態度に、今度は優希のツッコミが入った。
「あ、あはははは、ゴメンね。僕がユーロと付き合い始めた頃から既にこの性格が出来上ってたん
だ。根は良い人だから、あんまり嫌いにならないであげてね」
「あはははは、えっと、何て言うか、僕
れてたから、あまり気にしてませんよ」
そう言いクリスに対し優しいほほ笑みを向ける李雄。
そのほほ笑みは慈悲に溢れた女神の様だ。
「ふっ、君のそのほほ笑みだけで俺様の胸はズキュンの様だ」
「……ゴメン、君ホントに男?」
「僕は男です!」
「あぁそいつは男だ。兄貴として保証してやる」
そこへ声を割り込ませて来たのは、机に腰掛け状況を見守っていた真雄だった。
「ふむ、“コグレ マオ”。いずれは君の事を
「却下だな」
そのユーロの言葉をバッサリと切り裂く真雄。
「ふむ、ダーリン。君の兄上は少々気難しい様だ。挨拶はまたにしよう。では失礼、そろそろラン
チタイムの終了だ」
そう言いユーロは最後まで意味不明な態度で、教室を後にした。
「あー、それじゃ、お邪魔したした」
それに続きクリスも教室を後にするのだった。
「……何だったんだ、あの2人」
「さぁ?」
「変態よ変態!!」
「だがどっちもケンカ強そうな匂いがしたなぁ」
ユーロとクリスの存在に魁と李雄は首を傾げ、優希が怒りを燃やす中、真雄はあの2人にエヴァ
ンの時と同じ感覚を感じていた。
「おやおや、リオっちヤバい奴に目を付けられちゃったね」
「リオリオ、寝込み襲われたりしてね」
そこへ、ニヤニヤとほほ笑みながらアリッサとチマがやって来た。
「あれは変態紳士で有名なギガースのユーロっちと、その腐れ縁でヴァニルのクリスっち、この学
園じゃどっちも有名人だよ」
「ギガース」
そのアリッサの言葉に魁は即座に種族の名に反応した。
ギガースはギリシャ神話に登場する巨人族の事で英語では良く言う『ジャイアント(Giant)』、
ドイツ語では『ギガント(Gigant)』とされ世界でも有名な部類に入る種族であり、ゲームなどの影
響もあり巨大で野蛮なパワーファイターとされる事が多い。
だが、はるか古代の壁画などでは光り輝く鎧を着込み、槍や剣を持った人間の姿であり、それを
考えると先程のユーロの姿も納得がいく。
「クリスっちって、ファンクラブもある位人気なんだけど、ユーロっちも違った意味で有名だから
ねぇ~」
「有名って、やっぱりそう言う人って事で、ですか?」
そのアリッサの言葉に恐る恐る尋ねる李雄。
「まぁね♪ リオリオも厄介なのに狙われたねぇ〰〰」
「あ、あはははは………
そのチマの言葉に、ガックリとうな垂れる李雄。
「そんなこたぁどうでも良いんだよ」
そんな李雄を押しのけ、真雄はアリッサとチマに視線を向ける。
「問題は、あの2人が
「結局己はそこが重要なのね」
そんな真雄の言葉に呆れる優希だが、そんな事を気にする真雄ではなく、アリッサとチマに詰め
寄る。
「んで、奴らは強いのか? 俺の勘じゃ強いと見てんだがよ」
「さぁ?」
「でもクリクリは強いんじゃない?
「武道部、そんなのあるのか?」
「あ、はい。学園きっての武道家さん達の集まりで有名です」
「へぇ、そりゃ強そうだな♪」
「あの、それじゃあ、あのユーロって人は……」
真雄がクリスの強さを想像する中、李雄はどうしても先程のユーロの事が気がかりの様だ。
「おや~、リオっちあのユーロっちの事が気になるの?」
「ほほぅ、リオリオってやっぱりそっちの趣味が………」
「ちょっ! 李雄、アンタまさか本気で………」
「いや、あのね………」
そのアリッサ、チマ、優希の言葉に呆れる李雄。
今までにもよくこの手でからかわれて来たが、なれる事はできない。
「おうそうだ。ユーロって奴は強いのか?」
「あぁ、強いぞ」
その真雄の疑問に答えたのは、センシアだった。
「
「ほぉ、聖王か」
「うそ、あの変態が!?」
そのセンシアの言葉に真雄は勿論、近くで聞いていた優希までも驚いてしまった。
真雄はケンカの勘で強いとは読んでいたが、まさかあの変態紳士がエストと聖王を競えるほどの
存在とは流石に思わなかったのだ。
「何せ彼はギガース、
「
「何だ、その中二臭いというか、ケンカ心を刺激するネーミングは!」
そのセンシアの言葉に、魁は首を傾げ真雄に至ってはその中二臭さに目を輝かしている。
「傭兵四大種族は、かつてこの三界が誇った最強の種族……」
そう言いセンシアは説明を開始する。
◇◆◇◆◇◆◇
この三界には、かつて戦闘において最強最悪の異名を持った4種類の種族達がいた。
魔界のヴァンパイア、
天界のギガース。
獣人界の
この4体の事を、人々は畏敬の念を込めて傭兵四大種族と呼んだ。
だが、その繁栄も長くは続かなかった。
ヴァンパイアは魔界を守るべく戦い続けた末に全滅、元々三界に反感していた鬼人族は弾圧され
ギガースもまた弾圧を受けたが、辛うじて生き残っている。
唯一蟲人族だけが、他の傭兵種族が己の誇りを選んだのに対し彼らは種族の存続を選んだ事で、
傭兵種族の中では今でも生きる数少ない存在となっている。
◇◆◇◆◇◆◇
「だから今ではギガースと蟲人族だけが生き残っている」
「吸血鬼に鬼、巨人に虫という訳か………」
そのセンシアの言葉に魁はその種族の名前から即座にその特徴を理解した。
ヴァンパイアと鬼。
それぞれ西洋と東洋が世界に誇るモンスターであり、ヴァンパイアはドラキュラ伯爵により
世界的に有名、鬼は日本を代表する世界にも知る者が多い存在だ。
ヴァンパイアは別名バンパイア、ヴァンパイヤ、吸血鬼とも呼ばれ、
人間の血液を吸う他、特定の事以外では不死、蝙蝠などに変身できるなど東欧の伝承をもつ物が
強い。
それに対して鬼は日本で最もポピュラーなモンスター。
鬼と言われて一般的に連想する姿は、頭に角と巻き毛の頭髪を具え、口に牙を有し、指に鋭い爪
が生え、虎の毛皮の褌を腰に纏い、表面に突起のある金棒を持った大男である。
これは、丑の方と寅の方の間の方角である丑寅を鬼門と呼ぶことによるもので、牛の角と体、虎
の牙と爪を持ち、虎の皮を身に付けているとされた存在だ。
「しかし、吸血鬼と鬼は分かるが、蟲人族ってのはあんま聞かねぇな」
「無理もない、蟲人は古くからの伝承や文献もなく、ゲームや小説の中から生まれた比較的新しい
幻獣だからな。おそらく、体の一部が虫、或いは虫その物の姿をした人間なんだろう」
「ふむ、大体 当たっているな」
その魁の言葉に頷くセンシア。
「しっかし、傭兵種族か……そうか、かなり強いんだろうなぁ♪」
そう言い顔つきがニヤ付く真雄。
「おい真雄、お前の考えてる事、顔に出てるぞ」
「そうか、なら話が早い」
そう言い魁の言葉を気にも留めず、木刀を手に教室を出る真雄。
「さっそく探し出してケンカふっ掛けてくら」
「ふっ掛けるってお前な………」
「なぁに、俺に勝ったら李雄をやるとでも言えば乗ってる来るだろ」
「あれ、さり気に僕も巻き込まれてる!!?」
その真雄の言葉にツッコミをかます李雄だが、真雄はそれを無視し、教室を後にした。
「……兄さん……」
「ったくあのケンカバカは」
「放っておこう。触らぬ神に祟り無し」
そんな真雄の態度に李雄と優希は呆れ、魁はもはや関わることすら拒否した。
「あの、真雄様を放っておいて良いのでしょうか?」
「いいんじゃねぇの。あのボンクラ、ケンカの事しか頭に入っていねぇみたいだしな」
リュアナは真雄の後を追うべきか否か迷っているが、アンゴルモアに止められてしまう。
「ま、昼休憩くらいは静かに過ごそう」
そう言い魁は次の授業、数学の予習をしようと教科書を開く。
とその時だった。
不意にピンポンパンポーンという放送でお馴染みの音が教室に、いや学園中に響いた。
〈皆さんこんにちわ。トリニアス学園放送部がお送りするお昼の放送です〉
〈こんにちわ。穏やかなお昼の時間、皆様いかにお過ごしでしょうか〉
〈本日も特殊講義の案内やお天気など学園生活に役立つ情報をお伝えします〉
〈どうぞ最後までお付き合いください〉
「ん? この声は……」
そして黒板の上のスピーカーから聞こえてきた声に魁及び優希達転校生達は聞き憶えがあった。
「この声って、フィルちゃんとセシリーさん?」
「ウガ、ホントダ」
「そそっ! うちのクラスのセシリーとはうちんだよ」
そう言いスピーカーから聞こえる声に耳を傾ける優希達に説明するアリッサ。
「あの、はうちんって……」
「口癖がはう~だからはうちん。あたしが付けたの。可愛いでしょ?」
そう言い李雄の疑問に答えたのはチマだった。
「ウガ、そういやアイツの名前なげぇしナ。オラもはう子って呼ぶ事にするダ!」
「おいおい、本人の了解なしにそれは無いだろ」
そう言い勇の言葉に魁がツッコミを入れる中、放送は進んで行く。
〈――フェンスの改修の為、屋上へは立ち入り禁止となっています〉
〈改修工事は本日までの予定となっております。今しばらくお待ち下さい〉
〈本日のダンジョン授業の開放はありません〉
〈以上で生徒会執行部通達、学園施設の利用情報をお伝えしました〉
〈続きまして、占術部 調べによる明日のお天気です。セシリーお姉ちゃん、お願いします〉
〈はい。明日は午前から―――〉
「なんか型っ苦しいダ」
セシリーとフィルの放送に対し、そんな感想をぶつける勇。
まぁ、学校放送などこんなものだろうが。
「よっしゃ! 屋上工場やっと終わるっ!!」
そんな勇とは対照的に、チマはどこか嬉しそうだ。
〈――以上、お昼の放送でした〉
〈ではまた明日、同じ時間にお会いしましょう。ご聴取ありがとうございました〉
2人の挨拶と共に軽快な音楽が流れ、
それから少し時間をおいて、予鈴のチャイムが鳴り響いた。
「ウガ、もう予鈴ダ。所で魁、セシリーとはう子って姉妹なのか?」
「それは、フィルミリアさんがセシリーさんをお姉ちゃんと呼んでたからか?」
魁の言葉に、ウガ、と頷く勇。
「そんな訳無いだろ。あれはフィルミリアさんにとって姉の様な人だからお姉ちゃんと呼んでるん
だろ」
「そーダか」
「大体、御2人の種族はセイレーンとハーピー、全然違うだろ? 同じ親から違う種族が生まれる
なんて事は………」
「いや、そうでもないぞ」
そんな魁のゲームや物語の経験による推測に対し待ったをかけたのはセンシアだった。
「どういう事ですか?」
「確かに2人は姉妹ではないが両親がそれぞれ違う種族なら子供の種族もそれぞれ違って来るぞ」
そのセンシアの言葉に魁は驚きを隠せなかった。
てっきり違う種族同士の両親ならゲームなどで良くあるハーフが生まれるかと思っていたのだが
どうも違うようだ。
「どういう事なんですか?」
「ふむ、例えば父親がディアボロスで母親がヴァナディースの場合、普通ならディアボロスと
ヴァナディース、或いはヴァニルがそれぞれ半々の可能性で生れて来るものだ」
そこまで言いセンシアは、ただ、と言いながら教室内でエストの世話をするサーシャ、そして李
雄へと視線を向ける。
「極稀に両方の特徴を持ったハーフが生まれる場合がある」
「ウガ、オメェもハーフなのか?」
そう言いセンシアの言葉に首を傾げる勇。
勇は、センシアが李雄だけでなくサーシャに視線を向けた事を見逃さなかったのだ。
「なんにゃ! 貴様には関係……」
「サーシャはね、ねこまたとヴァニルのハーフなんだよ~」
「エスト様ぁ~……」
勇の言葉に毛を逆立てるサーシャだったが、エストの何気ない一言であっさりとハーフである事
がバレるのだった。
「へぇ、サーシャもハーフなんだ」
「そう言えば、他のクラスのねこまたの女子生徒は、もう少し猫っぽかったな」
「あぁ。ただハーフと言っても、やや別の血が入っている程度でコグレ達の様な完全なハーフは
さらに珍しい」
優希と魁がそれぞれサーシャと種族について分析する中センシアは李雄に視線を向けつつ
言い放った。
「え? 完璧って??」
「サーシャの場合は、ヴァニルの血がややあるとはいえねこまたの血の方が濃いいから種族は
ねこまたとされているが、
まさに完璧なハーフなのだ。その眼がその証だ」
そのセンシアの説明に、李雄は自分の目に手をやる。
幼い頃、癖のある両親と
「コグレ リオ、君の様な完璧なハーフは、両種族の能力を両方受け継いでいる。
ディアボロスの魔力とヴァナディースの神気、その両方が使える筈だ」
「え、でも僕は神気が使えるとしか……」
「最初の内はそうさ。いずれ使えるようになれる」
そのセンシアの説明の終わりと同時に、本格的な5時限目の始まりを告げるチャイムが鳴り響く
のだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「では、5時限目を始めます」
5時限目の時間、真雄達のクラスに1人の教師がやって来ていた。
若い男子教師で白銀のショートヘアと金色の瞳、褐色の肌とメガネが特徴のこの教師、
名を“ジャック・ラードルフ”、数学担当の教師である。
「……ふっ」
「?」
その時、ジャックが不意に自分に視線を向けた事に李雄が首を傾げた時、ジャックは李雄の座る
席にへと近づき、李雄を含めた人間界からの転校生全員に視線を向ける。
「人間界から来た君達には初めまして、だね。僕は“ジャック・ラードルフ”、数学を担当して
いるインキュバスです。どうぞよろしく」
「ほぉ、インキュバスか」
そう言いほほ笑みながらキランと歯を光らせるジャックに対し魁は即座に種族の名に反応した。
インキュバスはアリッサのサキュバスと対をなす夢魔でありラテン語で『のしかかる』を意味し
インクブスとも呼ばれる存在だが、ディアボロスと同様にこちらの世界の悪魔も種族の1つに過ぎ
ないようだ。
「皆よろしくね……おや?」
その時、ジャックはある事に気づいた。
人間界から来た転校生は全部で5人。
だが自分の目に見えるのは4人だった。
1人足りない、それも候補生が。
「コグレ、リオくんだったね?」
「あっ、はい。何でしょう?」
「君のお兄さんは何所だい?」
そう、李雄の兄である真雄そ姿が何処にもないのだ。
「あぁ……すみません、多分サボったんだと思います……」
そう言い言い辛そうに答える李雄。
実は知識欲豊富な真雄は、三界の歴史である魔界史や天界史、見た事もない生物を学ぶ生物史に
魔法の薬を使った化学などには興味を示したのだが人間界とさほど変わらない数学や国語には興味
が湧かず、教室を出たっきり帰って来ないのである。
「おや、そうですか」
だがそんな李雄の言葉に対し、ジャックは静かに、そして優しくほほ笑んだ。
「ならば仕方ありませんね。次からは出る様に、ちゃんと言っといてくださいね」
そう言い李雄に優しくほほ笑んだジャックは、教卓の前へと戻り教科書を開いた。
「では、前回の続きから………」
(よかった、ジャック先生って優しいんだなぁ)
そんなジャックの言葉に少しだけほっとする李雄だったが、そんな李雄とは対照的に、ジャック
に対して敵意を感じる者が1人いた。
優希である。
(あの先生、まさか!)
そんな優希の疑惑と敵意を、李雄は知る由もなく同時にこの優希の感じた疑惑が事実となる事を
今はまだ誰も知らない。
◇◆◇◆◇◆◇
「ほぉ、良いねぇこの空気」
学園が5時限目を迎えた頃、学園島市街地の裏通りに真雄は来ていた。
教室を後にした真雄は、ユーロを探そうとしたが時間切れとなり、かといってこのまま教室に戻
っても詰まらない数学と国語が待っているだけと判断した真雄は、暇つぶしに市街地にやって来た
のだ。
「良い匂いがしたから来てみりゃ、こりゃビンゴだぜ」
そして市街地の裏通りの方から良い匂いを感じた真雄は、裏路地に行って見るとそこには柄の悪
そうな生徒が数名、タバコやら酒やらを貪っていた。
そう、ここで真雄の言う良い匂いとは食い物などの匂いではない。
それはズバリ、“ケンカの匂い”である。
「あん、テメェなに見てんだコラ」
「知ってるぜ、コイツ人間界からの転校生だぜ」
「はっ、人間っていやぁ、魔力も神気もねぇ、パワーも低い下等種族だろ? そんな奴がここで何
してんだよ」
そう言い真雄を睨みつける不良達。
何分真雄はこの外見故にモテる事は多いが、同時になめられる事も多いのだ。
だが当の真雄はそんな不良達の態度にニヤリとほほ笑んでいた。
「ほぉ、なら試してみるか? 人間界の不良の力って奴を」
そう言いながら真雄は木刀を構える。
この時、真雄は気づかなかった。
木刀を構え、闘争心に燃える真雄の体から、オーラの様なものが経ち上っている事を。
そのオーラに、不良達が目を見開いている事を。
そして、自分の
「行くぜぇ!」
今、封印の解放が始まった。
『~第8話~転校日早々!?その5 《終》』
どうも、黒鋼丸です。
今回の話で新たなオリジナルキャラが3名登場。
李雄に恋する変態ギガースのユーロ、その腐れ縁にして聖王候補であるヴァニルのクリス、
そして数学担当のインキュバスのジャック。
ただでさえ多かった原作よりもさらにボリュームアップ(男が大半だけど)の今作、
ぜひとも今後ともよろしくお願いします。
ではでは~♪