RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~ 作:元町湊
『皆様、昨夜からのご旅行お疲れ様でした。後6分程で終着の札幌に到着いたします。5番線の到着、お出口は右側です。
途中、動物と衝撃しました関係で二時間半程遅れまして到着いたします。列車が大変遅れましたことをお詫び申し上げます。なお、我々國鉄は、また皆様とお会いできる日を、心からお待ち申し上げます。本日は北斗星3号をご利用いただき、誠にありがとうございました』
「いいね。僕は、またこの列車で皆と会いたいよ」
この放送を食堂車で聞いたベルニナが高山を見て言った。
「よかった。國鉄を嫌いにならないでいてくれて」
「どうしてだい?こんなに深い思い出が出来た鉄道は、國鉄が初めてだ。僕の中で國鉄は世界最高の鉄道だよ」
そういって、ベルニナは笑った。
そうしている間にも列車は進み、終着の札幌駅に到着した。
列車を降り、改札へ向かうと、そこには大量の黒服集団、もとい警察のSPの方々が大勢いた。
その人たちに囲まれ、ベルニナとは別れもいえないまま別れることになった。
俺達は俺達で、北海道鉄道管理局の人たちに連れられて、二日間みっちり拘束され、事情聴取を受けさせられた。
早く帰りたいと思ったのは言うまでもない。
◇◆◇◆◇
後日談というか何というか。
俺達は札幌に着いた日の次の日には帰れることになっていた。
しかもカシオペアで、だ。
俺達は人数が奇数なので、誰かが一室丸々使える。当然その席は俺が貰った。
といっても、夕食以降のほとんどの時間はラウンジにずっといたから、部屋に居ることはほとんど無かったが。
にしても、北斗星に乗ったのは久しぶりだったな。最初に乗ったのは……俺と千歳が初めて一緒に旅した時に乗ったときか。
本当はカシオペアに乗る予定だったが、切符が取れなくて、仕方なしに北斗星にした。
初めてのときは小学校の2~3年だったかな。千歳の親も同行していて、それはそれで楽しかった。
気付けば東の空が白み始めていて、夜明けが近づいてきた。
青函トンネルを、機関車付け替えを、起きていながら見過ごしたことに、多少の後悔を覚えながらも、俺はラウンジを後にして自分の部屋に戻った。
それからは自前のパソコンでただひたすら始末書を書いていた。
食堂車で戦闘して装飾物破損、犯人と取引して失敗、その上DF51を2台故障などなど、書く事は沢山ある。まあ、飯田さんと打ち合わせして、始末書は折半して書く、ということにしてあるが。
ということで、上野までに何とか終わらせた。
始末書のデータをUSBメモリにコピーし、下車の準備をする。といっても、かたすのはパソコンだけだが。
あ、そうそう。ベルニナの家族の安否だが、仕掛けた爆弾が不十分だったらしく、全員無事だということが判明した。
なんでも、車が落ちた地点へ行くのが難しく、安否確認に時間がかかったのだそうだ。
さてと、もうすぐ上野か。
なんだかんだで濃い三日間だったな。
俺達の処分はどうするんだろうかね。
まあ、その判断は上層部がするし、その上層部も世論で大きく意見を変えるだろうけどね。
ま、何とかなるか。
荷物を持って部屋を出、皆と合流する。
上野駅到着ホームは13番線。出発したときと同じホームだ。
そこから階段、エスカレーターを使い、山手線・京浜東北線のホームへと上がる。
どちらも同着だったので、迷わずに京浜東北線のほうに乗る。この時間は快速運転をしてるからな。
御徒町で山手線を追い抜き、東京には先着した。
そして、降りたその足で東京駅にある事務所に直行した。
事務所には1班から3班の人たちが立って待っていてくれた。もう勤務時間なのに。
そして、
「ウオオオオオオ!!」
という歓声と拍手で部屋は包まれた。時々、
「今年の警四はスゲェ!」だの「よくやった!」だのと、俺達を褒めてくれる言葉も聞こえた。
飯田さんも立って拍手をしてくれている。
俺達は飯田さんの前に整列し、
「高山班長代理以下5名、ベルニナ殿下のお世話を終え、無事帰還しました! 警護中は飯田さんや五能隊長、公安隊員の皆さん……そして國鉄職員の方々に多大なご迷惑をおかけしました。 しかも……、しかも……」
「しっかりしなさいよ、高山!」
言葉を詰まらせた高山に桜井が蹴りを軽く入れる。
「しかも、そんなご迷惑をかけても、皆さんが助けてくれたおかげで、こうして無事に帰ってくることが出来ました!本当に、本当にありがとうございました!」
部屋はまた拍手で包まれた。
そして、
「みんな、元気?」
「はい!」
飯田さんからの質問に元気よく答える高山。そして、そのまま公安室全員にお礼を言いに行った。
その間、俺と飯田さんは警四の部屋に戻り、始末書のデータが入ったUSBメモリを渡す。
「話し合いで決まった分はやってあります」
「ありがと~。無理しなくていいのよ?」
「いえ、好きでやってますから」
と、ここで桜井たちも入ってきた。
飯田さんはUSBメモリをポケットの中に入れた。
ここで俺は疑問に思ったことを飯田さんに聞いた。
「飯田さん、俺らは研修終了ですか?」
「今のところはそんな感じになってるわね。でも、」
といって、パソコンにとあるページを表示させた。
それはニコニコ動画の生放送用ページで、通称ニコ生と呼ばれるものが表示されていた。
それはどうやら記者会見場のようで、中央に映ってるテーブルの上には、マイクやらICレコーダーやらが置かれていた。
そして、この記者会見を開いた人物が登場すると、画面がコメントで埋め尽くされた。
まさに「お前らの愛で(ry」状態。
飯田さんが困ったように笑い、コメントを消すと、そこに映ってたのはベルニナだった。
「この会見次第で決定するわね。今頃上層部も見ているんじゃないかしら」
だろうな。世間体を気にする上層部だもの。
『今回の事件は大変でしたね。やはり國鉄の警護がよくなかったとお考えですか?』
記者会見が始まった。のっけからRJの手先と思われる記者が質問した。
『そんなことは思っていません。僕が助かったのは、國鉄の公安隊員のおかげです』
『そうでしょうか?警護を研修生に任せっきりにした、との噂がありますが』
『はい、そうでした』
『では、そんな雑な対応を國鉄はしたということですね?』
『それは違います。今回の事件は全て僕の国で起こった権力闘争が原因です。日本政府には何の関係も、責任もありません。しかし、彼らはそんなことは何も考えず、命を懸けて僕を守ってくれました。もし彼らがいなければ、僕は死んでいたでしょう。
……いや、僕だけではありません。北斗星に乗っていた300名あまりの乗客の方々も、かもしれません。それを東京中央公安室、第四警戒班の彼らが救ってくれたのです。ありがとう、警四の皆さん!
私は皆さんに心からの敬意を表すると共に、彼らのような青年のいる國鉄を、これからも応援したいと思っています。
あと、研修生に警護を依頼したのは、あくまで僕ですので、國鉄には何の責任もありません。寧ろ、僕の我侭を聞いてくださり、ありがとうございます』
ベルニナからの予想外の言葉で、記者会見場はシャッターの音しか聞こえなくなる。
丁度そのとき、警四の電話が鳴った。電話に出たのは飯田さんだ。
「はい、飯田です。………上層部の皆さんも会議室でご覧になりましたか。そうですか。……はい、彼らには引き続き研修を続けてもらいます。……はい、ありがとうございます」
飯田さんは受話器を置いた。どうやら研修は続行らしい。
ベルニナの名指しが効いたのかな。
パソコンに目をやると、記者が別の質問をしていたところだった。
『殿下は日本で色々な場所に行かれましたが、何処か気に入った場所はありますか?』
ベルニナは一瞬考えた後、
『日本の街はどこもきれいで、皆さん親切でした。でも……』
ベルニナはまた考えた後、真剣な表情で
『よかったのは高山です』
と答えた。
高山といえばうちの班長代理だが、場所としては飛騨高山で、世界遺産の白川郷のあるところだ。確か来日初日で行ってた気がする。
『高山って……あの白川郷のある?』
『高山はすごく素敵でした。僕は一生高山を忘れることは無いでしょう』
またの思わぬ回答に会場の記者達も今度は戸惑う。
「にしてもベルニナは渋いところが好きなのな」
「そうですね……。東京でもいろんなところに行ってたはずなのに?」
小海さんはあごに手を当て、不思議そうに考えていた。
と、ここで岩泉が警棒をしまいながらとんでもないことを言った。
「今、高山のことを好きって言わなかったか?」
俺含め、全員の視線が高山に集まる。
高山は呆けたような顔をしていて、それを見た岩泉以外の三人がため息を吐く。
「ないない。何言ってるのよ、岩泉」
「そうですよ。ベルニナは男の子じゃないですか」
「何をどう聞き間違えたらそうなるんだよ」
ましてや王子様だぞ?公の場でそんな事言うか?
岩泉は、「ぼやっとしか聞いてなかったからな。すまん」と言って、この話はおしまいになった。
ベルニナのほうも、別の質問になっていて、区切りは丁度いいだろう。
久しぶりにやることが無く、ぼうっとしていると、桜井が何かを思い出したように立ち上がった。
「あ、そうだ高山! 約束! ちゃんと覚えているわよね!?」
「な、なんだよ」
「銃弾5発じゃ足りないって報告書!ちゃんと書いてよね!」
「わーったよ、やっとくよ」
「やる気なさそうね。ちゃんと書きなさいよ?」
「へいへい」
相変わらず警四は騒がしい。
こん○○は。
2章の後半は気に入らなかったので直しました。
誤字脱字などがありましたらご報告下さいますようお願いします。
それでは。