RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~   作:元町湊

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 前回37両目として投稿したものは本来何話か後にくるべきお話でした。申し訳ありません。


37両目

 本部長の昔話を聞いてから数分、雨は弱まることなくむしろ強くなっていった。

 さっきまでは見えていた留置線の奥のほうにあったEF63も、今では見えない。

 スマホで天気アプリを起動して雨雲レーダーを見れば、数時間後には雨が止む予想が立っていた。

 

 

「今日中には帰れそうだし、あと数時間の辛抱だ」

 

 

 そう言った直後、すぐ横にあった電話が鳴り出す。

 やましいことがあるわけではないがビビッてしまう。

 

「はい、鉄道公安隊、軽井沢分室です」

 

『もしもし、こちら長野総合指令所、施設指令です』

 

「お疲れ様です。どうされました?」

 

『先ほど、信越本線の軽井沢、横川間の上り線36キロポスト付近で土砂崩れが起きてしまいまして、それに関連して新幹線の変電所もだめになってしまいまして……』

 

 

 36キロポスト付近という事は……丸山変電所と熊ノ平の間か。

 

 

「あらま……てことは、軽井沢から高崎方面に行く手段が無いって事ですか」

 

『そうなります。全面復旧には約4時間ほど掛かる見通しです』

 

 

 4時間もか。いやでも、土砂崩れと変電所損壊なら仕方がないか。

 

 

「分かりました、ありがとうございます」

 

『それでは失礼します』

 

 

 そこで電話は切れた。

 

 

「どうしたんだい?」

 

「長野の指令所からで、信越本線で土砂崩れ、北陸新幹線は変電所損壊でどちらも上下線共に不通になったそうです」

 

「それは……大変なことになったね」

 

「全面復旧には4時間ほど掛かる見通しと言っていましたが……この雨でどうなることやら」

 

 

 そう言いつつ受話器を元に戻す。

 あの区間で土砂崩れなら上下線のどちらかは生きてそうなものだが、この雨だ。下手に動かすより全面運休にしたほうがいいだろう。

 

 

「和歌山さんにも伝えときましょうか?」

 

「そのほうがいいかもしれないね」

 

「では、探しに行ってきます」

 

 

 そう言って公安室を出ようとした矢先、外で和歌山さんの声が聞こえた。

 それも、誰かと何かを言い争っているようだった。

 

 

「和歌山さん?」

 

 

 そう言って扉を開けると、女の看護師さんと言い争っている和歌山さんの姿が見えた。

 

 

「あ、臼井君。ちょっとですねぇ……」

 

「どうしたんですか?」

 

 

 そう言うと、看護師さんは俺のほうへ来て、

 

 

「時間が無いんです! お願いします、電車を動かしてください!」

 

 

 と詰め寄ってきた。

 

 

「申し訳ありません。信越本線と北陸新幹線は土砂崩れの影響で上下線共に運転見合わせで……」

 

「復旧はどれくらいかかるんですか!?」

 

「先ほど来た連絡では4時間ほどと……」

 

「そ、そんな……」

 

 

 看護師さんに現状を伝えると、そう、力なく言った。

 

 

「とりあえず、看護師さんの話を聞かせてください」

 

 

 そう言って一旦仕切りなおし、公安室で事情を聞くことにした。

 

 

「はい……。私は日本臓器輸送システムの大糸といいます。

 臓器移植用の肝臓を前橋まで輸送中だったんですが、この大雨で前橋に向かう道路は全て通行止め、途中から國鉄で向かっていたんですが、それも軽井沢で運休になってしまいまして……。

 あと2時間以内に肝臓を前橋に届けないと、臓器がだめになってしまうんです」

 

 

 看護師さん改め大糸さんは力なく語った。

 ……ん?前橋……?肝臓……?移植……?それってもしかして……。

 

 

「しかし、國鉄もこの豪雨ですから無理だとは説明したんですが……」

 

 

 申し訳なさそうに和歌山さんは言った。

 窓の外に目をやれば、確かに豪雨と言うに相応しいほどの雨が降っていて、外がよく見えない状態だった。

 

 

「電車でなくても、車でも、自転車でもいいんです。ここに横川まで移動できるような車両は無いんですか?」

 

 

 俺がそう聞くと、和歌山さんは少し悩んだ後に、

 

 

「……保線の車両は土砂災害の関係で全て出払ってまして、自転車もこの駅に自由に使えるものは……」

 

「そうですか……」

 

 

 あれば御の字だったが、ないなら仕方がない。

 新在ともに使用不可、自動車も自転車も無しとなれば……。

 

 

「走ってくしかないかなぁ……」

 

 

 しかし、俺は足が遅いわけではないが、速いわけでもない。

 その上にこの雨だ。今から走ったとしても横川到着はぎりぎり間に合わないかもしれない。

 

 

「お、なんだ? マラソンか? いいぜ、走ってやろうじゃねぇか」

 

 

 しかし、俺のその呟きに岩泉が反応した。

 そうか、体育会系の岩泉なら行ける……かも?

 

 

「岩泉……お前10kmどれくらいで走れる?」

 

「10kmなら……40分いくかいかないか位だぜ」

 

 

 40分……通常なら十分に間に合うがこの雨だ、どうするか。

 成功すればそれはそれで問題なしだ。だが、失敗したときのことを考えると……。

 

 

「岩泉だけじゃ心配なら、私も行くわよ」

 

 

 そう思い悩んでいると、桜井がそう言った。

 

 

「岩泉のペースが落ちたら私が交代して走るわ」

 

 

 それでも不満? とばかりに桜井は自信満々に言い切る。

 岩泉もそのやる気が伺える表情をしてる。

 

 

「2人ともいいのか? 持っていきたいってのは俺のエゴだぞ」

 

「俺は別に構わんぞ」

 

「私もよ」

 

 

 2人ともそう言うので、お願いすることにする。

 

 

「分かった、2人ともありがとう」

 

 

 そう決まったところで2人に作戦の内容を伝える。

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