装者がひたすら曇る御話(当社比)   作:作者B

11 / 23
ウェル博士による"英雄作成"実況プレイ、はーじまーるよー。


独ソウ 第一楽章

 日も暮れてから時が経ち、皆が寝静まった深夜。

 緒川さんからの情報で、私・翼さん・クリスちゃんの3人は『フィーネ』の潜伏場所と思しき廃病院へ潜入した。そしてそこには、私たちを待っていたかの様にノイズの集団、そしてギアを叩きつけても炭化しない謎の化物が待ち構えていた。

 

「くそッ! 身体が重い! 何なんだよ、これ!」

「ギアの出力が落ちているのか――ッ」

 

 原因不明の適合係数低下によって苦戦しながらも向かってくるノイズを迎撃する。でも、数が多くて、このままだと捌ききれない!

 その一瞬の思考の乱れを突かれたのか、ノイズの1体が持つ長い触手に左脚が捉えられてしまった。

 

「しま――――うわぁッ!」

「立花ッ!」

 

 そのままノイズに左脚を勢いよく手繰り寄せられ、そのまま逆さ釣りにされてしまった。

 早く脱出したいけど、力が出なくて上手くいかない……!

 

「はい、少し大人しくしてくださいね。すぐ終わりますから」

「……え?」

 

 突然男性の声が聞こえたかと思いきや、吊り上げられている私の左脚にチクリと針に刺されたような痛みが走った。

 

「――ッ、だ、誰!?」

「お久しぶりですね、シンフォギア装者の皆さん」

「貴方は……ウェル博士! 何故ここに!? 貴方は確か!」

 

 翼さんの荒い声を聴き、すぐさま私の横に立っている人へ視線を向ける。するとそこには、以前護衛任務で一緒だったウェル博士が居た。

 そんな馬鹿な! だって博士は、私たちと別れた後にノイズの襲撃に遭ってそのまま……。

 

「簡単な話ですよ。貴女方の目を盗んで隠し持っていた『ソロモンの杖』を使い、自分自身を襲わせ、そのまま姿を晦ました。それだけの事です」

 

 そう言って私たちに見せつける様に、その手に持つ杖を掲げる。その形状は見間違えるはずもなく、フィーネ(了子さん)が持っていたソロモンの杖に間違いなかった。

 

「くそっ! すべてはてめぇの掌の上だったってわけかよ!」

「兎も角、立花は返してもらうぞ!」

 

 言うや否や、翼さんは目の前に立ちふさがるノイズを切り伏せながら此方へ向かってくる。対するウェル博士は私に何をするでもなく、ソロモンの杖で新たにノイズを召喚しながらその場を後退した。

 そして瞬く間に私の前へ現れた翼さんは、そのまま私を拘束していたノイズを瞬時に一薙ぎして消滅させた。

 

「無事か、立花?」

「はい。ただ、脚に何か刺されたような痛みが」

「刺すような痛み……?」

 

 翼さんの手を借りてその場に立ち上がる。身体が重い以外は特に体調の変化はない。

 さっきの痛みはいったい……。

 

「なに、毒の類ではないですから心配いりません。ともすれば、貴女にとって益になるかもしれません」

「何を訳分かんねぇことを!」

 

 ウェル博士の言葉を一蹴するように放たれたクリスちゃんの弾丸は周囲の壁や天井を破壊しながら、しかし彼を守るように立ちはだかるノイズを一掃するだけに留まった。

 おかしい。クリスちゃんのイチイバルの火力も明らかに落ちてる。いったい何が……。

 

「が、ぁ……」

「クリスちゃん!?」

 

 ミサイルを連射したクリスちゃんがその場に膝をついた。その姿は間違いなく、ギアからのバックファイアによるものだった。

 

「あまり負荷の高い技を打たない方が身のためですよ」

 

 ノイズの壁によって守られたウェル博士は私たちを一瞥すると、後方の上空へと視線を向けた。その視線の先には、気球のような形の飛行型ノイズが檻に入れられたさっきの化物を掴み、どこか遠くへと輸送している姿だった。

 

「あの怪物! このままだと海の方に!」

「立花! その男の確保と雪音を頼む!」

「――ッ、はい!」

 

 ソロモンの杖を携えるウェル博士と、未だ苦しそうな表情でその場に膝をつくクリスちゃんを私に託し、翼さんは天羽々斬の機動力を最大限に発揮させながら飛行型ノイズの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マムの付き添いで軍用ヘリに乗って視察に行った帰り道、私たちが拠点にしていた廃病院が日本政府に見つかってしまった、とドクターから連絡が入った。

 なーにやってんだ、あの人。宣戦布告から1週間足らずで見つかるとか、セキュリティ意識ガバガバにもほどがあるぞ。

 

 その知らせを聞いて大慌てで戻っていると、ドクターが逃がしたと思しき、飛行型ノイズに抱えられたネフィリム入りの檻を発見。

 それを追いかけてきたのか、檻を奪取しようとする日本政府所属の装者に対し、ヘリから飛び出した姉さんが先手を打って逆に奪い返す。そして、切歌ちゃんと調ちゃんも出撃し、色々あってドクター共々無事に回収できたのでした。

 ちゃんちゃん。

 

「全然無事じゃねーのデス! コイツのせいで、身を潜めるアジトが無くなったんデスよ!?」

 

 日本政府から無事に逃げ切り、操縦者であるマム以外が全員揃っているヘリの格納庫で切歌ちゃんの絶叫が木霊した。

 

「よしなさい、切歌。ソフィアに当たっても仕方ないでしょう」

「あ……っ、ごめんなさい、デス……」

 

 姉さんに注意されて、あからさまに落ち込む切歌ちゃん。

 そんなに落ち込まないで。全然気にしてないからさ。そうだ、飴ちゃんでも舐める? 甘いもの舐めると落ち着くよ?

 

「やれやれ。これでも装者の足止めにネフィリムの回収と出来る限りのことはしたのですから、そう邪険にしないでいただきたいものです」

「こいつ……いけしゃあしゃあと!」

「でも、ネフィリムに与える餌が無い。今は大人しくしてるけど、それがいつまで続くか」

 

 まったく反省の色を見せないドクターに、切歌ちゃんの怒りボルテージが再び上昇していく。

 駄目だって、切歌ちゃん。ドクターの辞書に反省の文字はないんだから、何を言っても無駄無駄。それに餌なら大丈夫だよ、調ちゃん。現状、そこまで切羽詰まっているわけじゃないからね。

 

「それなら問題ない」

「え?」

 

 私が格納庫の奥に視線を向ける。その先には何やら布に覆われた大きな荷物が鎮座していた。

 その行為を不審に思った姉さんが、視線の先にある布を捲る。

 

「これは、ネフィリムの餌!? いつの間に!」

 

 その下に隠されていたのは、山積になっている聖遺物の残りカス(ネフィリムの餌)だった。

 そう、こんなこともあろうかと、餌の在庫の1/3程度を予め積んでおいたのだ! いやー、餌の収納場所から一々運ぶのが面倒だったから、そこよりも近場だったヘリの格納庫にコッソリ置いておいたんだけど、まさかそれが功を奏するとは。

 

「なるほど、リスク分散というわけですか。アジトの襲撃に備え、すぐに持ち出せるように一定量確保していた、と。いやはや、素晴らしい慧眼ですね」

「流石はソフィアです! どこぞの博士とは大違いデスね!」

 

 え? いやそんなつもりは…………そうだよ(便乗)! このソフィアは何から何まで計算ずくだったのさ! あっはっはっはっはー!

 ……本当は違うけど、そういうことにしておこう。

 

『拠点を奪われたのは手痛いですが、最悪の事態は免れました。ですが、目下の問題は別のところにあります』

 

 すると備え付けのモニタから、運転席にいるマムの姿が表示された。

 

「問題、というと件の視察の結果ですか?」

『ええ。結論から言えば、現時点で『フロンティア』の封印解除は不可能です』

 

 【フロンティア】

 それは、今回の人類救済計画の要である古代遺跡。現在は封印されているそうで、それを解除できるか確認するのが視察の目的だった、らしい。詳しいことはよくわからん。

 

「原因は神獣鏡の出力不足、と言ったところでしょうか?」

『その通りです。増幅装置をもってしても、起動には至らないでしょう』

 

 そして私たちが確保しているシンフォギア『神獣鏡』は術式や呪いを中和する力を持っているらしく、F.I.S.が持っていた技術を利用して、装者無しの神獣鏡によるフロンティアの封印解除を行おうとしていた。

 まあ、結果としては駄目だったみたいだけど。

 

「なるほど。そうなると、次に打つべき手は一つですね」

「次の手? 現状、我々に残された手段は無い筈だけれど」

「簡単な話ですよ、マリアさん。機械による増幅が無理なら、人の手で増幅させればいい」

「……それは、神獣鏡の装者を探すということ?」

 

 装者かー。まあ、そうなるよね。私が神獣鏡を纏えればよかったんだけど、ドクター曰く適性が全くないとのことだ。そうでなきゃ、3人が前線で切った張ったしてるのを後ろで見てる必要ないんだけどなー。

 

「そんなの、簡単に見つかるはず――」

「あるじゃないですか。日本政府、いえ、フィーネが残した御誂え向きの場所が!」

『リディアン音楽院。かつて、シンフォギアの装者候補を選出するために設立された学院ですね?』

「その通り。あそこなら、神獣鏡の装者が見つかる可能性が高い」

 

 へぇ、そんな場所があったんだ。日本政府もそんなことやってたのか。まあ、政府だって慈善事業じゃないんだから、これくらいは当然か。聞く限りだと幾分か人道的っぽいし。

 

「さて、問題は誰が潜入するか、ですが……」

「それなら私が――」

「ワタシと調で行くデス!」

「――切歌?」

 

 姉さんの言葉を遮るように切歌ちゃんが右手を勢いよく挙げて自己主張する。調ちゃんも寡黙ながらふんすっ、とやる気のこもった眼をして姉さんを見ていた。どうでもいいけど、反応が一々可愛いな、この二人。

 

「マリアはあまり力を使っては駄目。マリアを守るのも私たちの役目」

「調……」

 

 え? 何? 力を使っちゃダメって……姉さんにそんな設定があったの? 右手の暗黒龍が疼く的な?

 表情筋が動かないのをいいことに会議中ちょくちょくぽけ~としてたせいで、作戦について所々聞きそびれてるんだよね。でも、今のところフィーリングでどうにかなってるし、まっいっか。

 

「そういうわけで、潜入捜査はワタシたちで行きます! 博士もいいデスね?」

「……まあ、私としては特別反対する理由はありませんが」

「それじゃあ決まりデス! 行きますよ、調!」

「うん」

 

 ドクターから言質を取った二人はそのまま格納庫備え付けの椅子に座りなおす。

 大丈夫かな? やる気は買うけど、なんか空回りしそうなんだよねぇ。ドクターもドクターで、二人には見えない角度でクックックと怪しく笑ってるし。

 ……これ、私もコッソリついて行った方がいいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 




マリア姉さんに中二病属性が加わった11話。
ウェル博士は思惑が変化したことで原作よりも理性的に見えますが、本質はあんまり変わってないです。


ある程度書き溜めができたので、しばらくは定期更新する予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。