装者がひたすら曇る御話(当社比)   作:作者B

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鏡花水月

「アウフヴァッヘン波形を確認! これは……武装組織フィーネとの交戦中に観測された微弱な反応と一致しています!」

 

 首都のノイズ襲撃から数日が経った頃、潜水艦のブリッジに突如としてアラートが鳴り響いた。

 

「大方、フィーネが持ち出し第三勢力に奪われた聖遺物ってところか。場所は?」

「ここから左程遠くはありません。距離は――なッ、これは!?」

「どうした、藤尭!」

「は、聖遺物反応の付近に艦艇を確認! この識別番号は……米国の航空母艦です!」

 

 その言葉を聞いて苦虫を噛み潰したように顔が歪む。

 まさかとは思っていたが、第三勢力の正体は米国だったか……。これはいよいよ、ウェル博士が言っていた『一部の人間は月の落下を隠蔽し自分達だけ助かろうとしている』という主張が真実味を帯びてきたな。

 

「ッ!? 待ってください! 新たに別のアウフヴァッヘン波形を確認! 照合結果、出ます!」

 

 友里の言葉と共に、指令室の正面に称号結果を示すモニタが表示される。そこに映し出されたのは――

 

 

【GUNGNIR】

 

 

「ガングニールだとぉッ!?」

 

 それは、響君の体内から消え去ったはずの聖遺物の名前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


時は数刻前に遡る。

 

『[神獣鏡 - 装者]間の適合率、安定領域に入りました』

『フォニックゲイン増幅装置、配置完了』

 

 私の背後でけたたましい声が鳴り響いている。フロンティア封印解除の最終工程に入り、司令室ではスタッフたちが慌ただしく走り回っていた。

 その様子を背に、屋外でスタンバイしている小日向未来の様子をモニター越しに横目で確認しながら、目前のベッドに眠る小さな英雄に向き合っていた。

 

「素晴らしいでしょう、ソフィアさん。あれぞ、貴女への愛が生んだ奇跡。(ソフィア)さんを戦わせたくないという強い思いが、彼女をシンフォギア装者へと昇華させた」

 

 意識が闇に呑まれているソフィアさんからは当然返答などない。だが、そんなことお構いなしに私は話を続ける。

 

「ですが残念です。如何せん急ごしらえなもので、いつ不具合が起きるか分かったものじゃない。それなのに、米軍はフロンティア起動だけに飽き足らず、露払いとして未来さんを酷使するかもしれません」

 

 無論、米国は彼女を解放するつもりはない。小日向未来への説得時には『フロンティア復活後には解放される』などと言ったが、米国政府がそんな甘ったれたことを考えているなど、希望的観測もいいところだ。

 まあ、私としても囚われの姫に脱走されては元も子もない故、好都合ではあるが。

 

特異災害対策機動部二課(彼女のお仲間)もそのうち駆けつけるでしょうが、彼らとて軍人。敵対する未来さんにどんな残酷な判断を下すか、考えるだけで恐ろしい」

 

 私がわざとらしく悲しむ素振りをしていると、他の科学者たちの声がいっそう騒がしくなる。どうやら、作戦が最終段階に入ったようだ。

 

『神獣鏡より30個のミラーデバイス、全機展開を確認。エネルギー充填率、30……65……100%。充填完了しました』

『よし、デバイスから放たれる光を指定した座標1点に集中させろ。照射開始!』

『了解。神獣鏡、エネルギー照射を開始します』

 

 米国指揮官の命令に従い、小日向未来の周囲に展開する無数のデバイスから一斉に極光が放たれる。その光は米軍が配置した増幅装置を経由し、1本の巨大な光の束となって海中へと降り注いだ。その光景を見て、私は満足げにほくそ笑む。

 そうして、しばらくすると――

 

  ――ドクン

  ――ドクン

  ――ドクン

 

 突如、激しい鼓動のような音が艦内中に響き渡った。

 まるで心臓の鼓動のように一定のリズムを刻み続けるソレは、次第にこちらへ近づいてきているように思えた。やがて――

 

  ――バリィィィンッ!!

 

 硝子が割れるような甲高い破砕音を轟かせながら、突如、光を照射させていた海面が爆ぜた。

 その衝撃で巻き起こった水飛沫がカメラの視界を遮る。だが、映像が再び鮮明に映し出されると、その先に映っていたのは天に向かって聳え立つ巨大な建造物だった。

 

「素晴らしい……あれがフロンティアですか」

 

 想像していたよりも遥かに大きいその巨体に感嘆の声を上げる。流石は世界を救済しうる力を持つ聖遺物といったところだが、この程度のことで満足するような感性は疾うの昔に通り過ぎた。

 

「フロンティアは無事顕現した。あとはエネルギーコアに組み込むネフィリムですが、今のままだと少ぉし出力が足りないかもしれません。あれに与える餌などそこらへんに転がっているわけも……」

 

 さてさてどうしたものか、と大げさに悩む素振りを見せ、何かを思いついたかのようにポンッと手を叩く。

 

「ああ、そういえば居ましたね! 御誂え向きに、用済みとなった聖遺物が!」

 

 私の視線の先にあるのは、神獣鏡を身に纏う小日向未来。彼女はまだ虚ろな目をしながらその場に立ち尽くしている。

 

「少しでもエネルギーを補いたいのなら、ギアだけを食べさせるだなんてケチなことを言っている場合ではありません。もしかしたら彼女……」

 

 

 

  ――ネフィリムの餌にされてしまうかもしれませんね――

 

 

 

「――――ッ!」

 

 私の言葉が聞こえたのか、ソフィアさんは覚醒と同時に勢いよく起き上がる。そして私へ視線を一切向けず、聖詠を口ずさむことなく撃槍(ガングニール)をその身に纏った。

 そのまま、彼女は破壊音を響かせながら部屋の壁を突き破って甲板上まで駆け上がり、一直線に海上へと飛び出していった。

 

「くくくっ……素晴らしい。素晴らしいですよ、ソフィアさん! やはり貴女は英雄(私の手本)に相応しい!」

 

 彼女を見送りながら、私は愉快そうに喉を鳴らした。

 目覚めたばかりであるにも関わらず!置かれている状況を即座に理解し!親友のために自らの身を顧みず戦場へと駆ける!

 何という英雄的行動! 今ここに! ルナアタックの英雄が蘇った!

 私は拳を握りしめ、感動に打ち震えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうもこんにちは。

 ソフィア・カデンツァヴナ・イヴ改め、天月茜です。

 記憶も無事に思い出し、自分がまさかの日本人だったということに衝撃を受けている今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか? 私は今――

 

「もう、戦わなくていいんだよ? 茜も響も、私が戦いから解放してあげる」

 

 絶賛、2人目の親友『小日向未来』と殴り愛の喧嘩をしています。

 いや、どうしてこうなった? 寝ぼけ眼で未来がヤバいみたいなことをドクターが言ってたんで急いで駆けつけて来てみれば、その張本人が平和を謳いながら攻撃してくるとか、恐怖以外の何物でもないんだけど!?

 第一、未来の目に光がないんだけど、あれ明らかに正気じゃないよね!?

 

『まさか事情を聴き終わる前に出て行ってしまうとは……念のため通信機を取り付けておいて正解でした』

 

 混乱しながらも未来が乱射する光線を躱していると、どこからともなくドクターの声が聞こえてきた。

 おい! 十中八九この件に関わってるドクター! 何が一体どうなってんの!

 

「……説明を要求する」

『今の未来さんはシンフォギアを装着するために少々調整されていまして。動作を制御するため、後頭部に制御装置を組み込みました。ソフィアさんの感じている違和感は、その装置のせいでしょう』

 

 なんかさらっと爆弾発言を複数投下されたが、とりあえずあのギアがすべての原因だということは分かった。

 だけど、あれだけ光線を連射しているのに、未来のギアはどこからかエネルギー供給を受け続けているようで、その力は依然として衰える様子を見せない。

 

『このままでは押し切られてしまいますね』

「……」

 

 無言のまま、未来の扇型アームドギアが鏡のように展開していく。それを見た瞬間、私は反射的にその場から大きく飛び退いた。

 直後――

 

―― 閃光 ――

 

 まるでレーザーのような複数の光が未来持つ扇から撃ち出された。

 突然の物量攻撃に思わず身を捻りながら避けようとするも、躱しきれずに右手が光に呑まれてしまう。

 

「ぐッ!」

 

 即座に右腕を後ろへ引くが、手首から先がまるで切り取られたかのように綺麗さっぱり消失していた。

 な、なんじゃこりゃぁあ!!(ジーパン刑事並感)

 

『あぁ、そうそう。言い忘れていましたが、未来さんの纏う神獣鏡は聖遺物を消滅させる力を持っています。端的に言えば、今のソフィアさん(・・・・・・・・)にとってすこぶる相性の悪い相手ですので、くれぐれも直撃には気を付けてください』

 

 それを早く言わんかい! ドクターめ、完全に私を弄んで楽しんでいるな? くそぅ……。

 ドクターの説明を聞きながら、私は息を吐きだし意識を集中させていく。すると、金属を切断したかのように綺麗な右手首の断面から、結晶状の物質が生成される。そして、拳程度の大きさになった結晶は独りでに砕け、消失する前と寸分変わらない右手が出現した。

 おぉ、なんか気合い入れたら生えてきた! ……まあ、とりあえずこれで大丈夫かな。

 そして、その隙を狙って再び襲ってきた光の束を今度は横へ跳んで回避する。その際、空中で姿勢制御を行いつつ、左手を地面に置いて勢いを殺し、両足を揃えて着地。そのまま未来の方へと視線を向ける。

 

「やっぱり、すごいね。茜は」

「……」

 

 荒くなった呼吸を整えつつ、改めて自分の状況を確認する。

 

 まずは、現状の確認。

 あの光に当たるのは絶対に駄目だけど、それ以外の攻撃に関しては特に問題なし。

 次に、戦闘方法について。

 こちらの槍は遠距離攻撃ができない以上、未来からの砲撃には打つ手がない。あの弾幕の中を掻い潜り続けるのは至難の業である以上、答えは一つ。

 

 そこまで思考していると、相対する未来が口を開いた。

 

「ねぇ、茜。なんで戦うの? これ以上傷つく必要なんてどこにもない。茜が戦わなくても私が全部やってあげる。だから、もう何も怖くないよ。ほら、一緒に帰ろう?」

 

 先程の攻勢とは一転して、未来はこちらへ手を伸ばした。だけど、それに矛盾するように彼女の纏うギアはこちらを射殺さんと出力を上げている。

 

「それはできない」

 

 私は彼女に視線を合わせ、そして一蹴した。

 彼女の発した言葉は幾分か本心が混ざっているのだろう。だけど、未来の意思に関係なく無理やり戦わされているこの現状を許容するようなことは断じて出来ない。

 

「どうして? 私と居る方がずっと幸せになれる。私が、茜に降りかかるどんな災いからも守ってあげる。そうすればこんな戦いから解放されて、悲しまなくて済むようになるんだよ?」

「……それでもだ」

 

 私はそれだけ言うと、手に持った槍を構え直す。

 少なくとも、目の前にいる彼女を救うことが、今ここでこうして戦っている理由なのだから。

 

「……私が悪いんだよね? 私が二人をライブに誘ったから。それで響も茜も巻き込まれて、酷い怪我をして、今も苦しんでいる。でも、もう安心していいんだよ? これからは私がちゃんと守るから。だからあの時の事故も、これまで辛かったことも全部忘れて、全部無かったことにして、今度こそ三人で楽しく過ごそう」

 

 "全部無かったことに"

 それが、未来の本音なのか……。

 

「未来」

 

 私の呼びかけに、未来は無言で首を傾げる。その姿はまるで、出口を求める迷子の子供のようだった。だからこそ、言わなくてはならない。残酷な現実と可能性に満ちた未来(みらい)を。

 私は深く息を吸い込むと、腹の底に力を込めるように吐き出した。

 

「過ぎた過去は変えられない。だけど、未来を救う(今を変える)ことはできる」

 

 その言葉を聞いた瞬間、未来の顔に明らかな動揺の色が浮かぶ。

 だけどそれも一瞬のこと。すぐに表情を戻すと、彼女は静かに呟いた。

 

「そんなこと、無理だよ」

 

 ギアの出力が更に上がり、周囲の空間が歪む。

 そして、未来は脚部装甲から円形のミラーパネルを展開させると、エネルギーを充填し始めた。

 

「未来!」

「どうしてわかってくれないの!? 私は貴女と、皆と一緒に居たいだけなのに!」

 

―― 流星 ――

 

 未来の言葉と共に、極太のレーザーが放たれる。

 それを見た瞬間、私は反射的に左腕を前に突き出した。

 

 刹那、眩い光が視界を埋め尽くす。

 だけど、私自身は光に呑まれることなく、目の前に掲げた左手は破魔の光を切り裂くように受け止めていた。

 

『これは……フォニックゲインの無力化? いや、指向性を与えることでエネルギーを四方八方に散らしているのか! 球体関節の義手を渡してくるなんてとんだ老頭児(ロートル)錬金術師だと思っていましたが、まさかこんな仕掛けをしていたとは!』

 

 一人ハイテンションになっているドクターの声を聞き流し、私はそのまま未来の方へと突き進む。

 確かにこの光は聖遺物に対して強力みたいだけど、その効果があるのはあくまで聖遺物のみ。

 私は大気中の水分を周囲に集め、それを分厚い氷の板へと加工する。そして、その氷を突き出している左手の周りで衛星のように高速で回転させた。

 

「魔を祓い聖遺物を消滅させる。それは、神獣鏡も例外ではない」

 

 左手の義手によって逸らされたレーザーが、展開された氷の表面を何回も反射し、未来の方へと襲いかかる。

 しかし、未来もレーザーの出力を上げ、反射された光をさらに押し返した。

 

「……まだだ!」

 

 今度は右手に持つ槍を地面へ突き刺す。すると、槍を中心に地面から氷の結晶が生成され、それが未来の足元まで伸びる。そして、地面へ縫い付けるように彼女の脚部を凍らせた。

 

「ッ!?」

 

 未来は咄嵯に脚を動かし拘束から逃れようとする。だけど、それを阻むように氷が彼女の脚を覆っていく。

 私はその隙を突き、左手でレーザーを弾きながら一気に間合いを詰めた。

 

「捕まえた」

「あ……っ」

 

 私の左手が未来の胸元に触れたと同時、未来の身体から力が抜ける。それと同じくして、氷の板で反射された極光が未来の身体を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最終決戦間近なせいで、オリ主からシリアスが抜けきらない……。

とりあえず、G編のノルマその1である393攻略は達成したので、次はノルマ②のマリアさんかな。
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