装者がひたすら曇る御話(当社比)   作:作者B

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戦闘シーン?
そんなもの、ウチにはないよ。


叶わぬ再会

「容体は安定しました。しばらくすれば、目を覚ますでしょう」

「……ありがとうございました」

 

 弦十郎さんは頭を下げると、病院を後にする。

 きっと、あの白い鎧の行方を追うのだろう。

 

 私は座っている待合室の椅子から、立ち上がることができないでいた。

 ……結局私は、何もできなかった。

 

「貴女が気に病む必要はありませんよ。翼さんが自ら望み、自ら行ったことなのですから」

「緒川さん……」

 

 すると、二課の一員であり、翼さんのマネージャーも兼任している緒川さんが、私の対面に腰を掛けた。

 

「それに、絶唱を使用したにもかかわらず、大きな怪我にならなかった。そういう意味では、彼女には感謝しないといけませんね」

「4人目の、装者」

 

 翼さんが絶唱を放ったとほぼ同時、突然現れた正体不明の装者が、翼さんの放つ光へ飛び込んだのだ。

 光が収まった頃には、地面に倒れる翼さんの他に、白い鎧の少女を小脇に抱えた、新たな装者が立っていた。

 

 夜風に靡く黒い長髪に、槍を携え、小脇に抱えた少女と同じく白いギアを身にまとった少女。辺りは暗く、目元はバイザーで隠されていてよく見えなかったけれど、彼女も私と同い年ぐらいだった。

 

「どうやって絶唱を抑えたのか、何故あのタイミングで介入したのか、彼女たちの目的は何なのか。今の我々には、圧倒的に情報が足りない。ですが、逆に言えば、これからの調査で大きく事が進展するでしょう」

 

 バイザー越しに彼女と視線が交わった時、私は動くことができなかった。

 恐怖じゃない。何か、言いようのない感情が私の中で渦巻き、喉からは声にもならない空気が零れるだけだった。

 

 彼女は、一体誰なんだろう――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ……危ないところだった。

 蒼い侍ガールが何やら歌ったと思ったら、急にシャイ〇ングみたいな技を出したんだもん。びっくりしたわ! いや、あれはどちらかというと、メガ〇テか?

 慌ててギアを纏って、彼女の体内のフォニックゲインを相殺して、それからクリスちゃんを小脇に抱えて逃亡し、なんとか事なきを得た。

 

 ちなみに、どうやって侍ガールのフォニックゲインを抑えたのかというと、私のシンフォギア『トリシューラ』の力だ。

 名前的に大層な力を持っているかと思いきや、こいつはフォニックゲインを増減できる完全サポート型のギアなのだ! まあ、その代わりに一切の攻撃力が無いけど。

 

 だってこれ、曲がりなりにも槍のはずなのに、穂先についてるのは刃じゃなくて音叉なんだぜ?

 こんなの槍じゃないわ! ただの飾り付きステッキよ!

 

 その代わりと言っては何だけど、トリシューラは私の左腕もアームドギアの要領で生成してくれるので、おかげで割と不自由なく暮らせている。

 ギアお手製の義手は生身の右腕と遜色なく動くし、現代に流通しているモノよりもよっぽど高性能なんだろう。何より、ギアの待機状態でも、左腕だけ展開してくれるのはありがたい。

 

 そんなわけで、実働は専らクリスちゃん担当で、戦闘力のない私はフィーネさんに身体をいじられる担当になっている、というわけだ。

 

 

 

 そして、帰ってきた私が今は何をしているかというと、フィーネさんによるクリスちゃんへの電撃攻めが終わるのを待っている。どうやら、クリスちゃんの纏ってた鎧が身体に侵食してたんで、それを取り除くためにやってるらしい。

 でもなんか、『素っ裸で悪い笑みを浮かべては電流を流す⇔一旦止めて耳元で何やら囁く』を繰り返しているんだけど、どう見ても洗脳してる悪の女幹部だ、これ。

 フィーネさん、もしかして楽しんでない?

 

 あっ、一通り処置が終わったみたいだ。

 クリスちゃんを寝かしつけたフィーネさんが、此方へ歩いてくる。

 

「調子はどう? もっとも、大して戦っていないみたいだけれど」

 

 おっと、それは直前まで手を出さなかった嫌味かな?

 

「秘密裏にフォロー、鎧の回収。その命令しか受けていない」

「相変わらず融通が利かない。あの場で立花響を回収することだって出来たろうに」

 

 そう、それだよ! 態々、フィーネさんのお楽しみタイムが終わるのを待っていたのは、聞きたいことがあったからだよ!

 

「……彼女がターゲットだったのか」

「ええ、そうよ。そういえば、貴女と面識があったのよね」

 

 この、さも『今、気が付きました』と言わんばかりの、わざとらしい言い方。本当、100点満点の悪女ムーブするよね、この人。

 そんなんだから、言われた最低限のことしかやりたくないんだよ、私は。

 

「何故、響が欲しい?」

「貴女と同じだからよ、茜。融合症例はとても希少、サンプルは一人でも多い方がいい。何より、貴女は少々特異すぎる」

 

 マジで? ビッキーも私みたいに腕や脚が吹き飛んだの? ちらっと見た感じ、そうは見えなかったけど。

 ていうか、ビッキーも装者になったのか。いつからだろう? もしかして、私が知るずっと前から? いやいや、それならあのライブの時には戦えているはずだし。となると、2年前の一件で死に瀕して、そこからパワーアップしたってところかな? 少年漫画的に。

 

「そうか」

「あら、それだけ? てっきり、彼女には手を出すな、くらい言うと思っていたのだけれど」

 

 いや、どうせ何を言ったって止める気ないじゃん。頑固なのは、ここ2年一緒に暮らしてれば嫌でもわかるわ。

 それなら、私の目が届くところにいた方が、まだ安心だしね。まあ、誘拐はしたくないし、しないに越したことはないけど。

 

「使うなら、私以外にしろ」

「ふふっ。ええ、そうさせてもらうわ」

 

 えっ、何この人。急に笑うとか怖いんですけど。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

 

 

 

 そして、私の出動からしばらく経った。

 フィーネさんが言った通り、私はアレから一度も任務に赴いておらず、ひたすらフィーネさんのデータ取りに協力している。

 

「なぁ、ちょっといいか?」

 

 自主練と検査をひたすら繰り返す日々に飽き飽きしていた頃、珍しく深刻な面持ちでクリスちゃんが話しかけてきた。

 何か真面目な相談事みたいだけど、いやーそんなにも私に心を開いてくれたのか。愛いやつめ、今度目一杯愛でてやろう。

 

「どうした」

「茜がアイツ、立花響の知り合いだってフィーネが言ってた……本当なのか?」

 

 なーぁに他人の友好関係ベラベラと喋ってんだ、あの人。まあ、別にいいけど。

 でも、なんでそんなことが気になるんだ?

 そういえば、この間のデュランダル?とか言うのを掻っ攫う作戦もビッキーに邪魔されたようなことを、フィーネさんが言ってたな。

 

「ああ、そうだ」

「――ッ! そうなのか……」

 

 それを聞くや否や、クリスちゃんが悲痛な表情を浮かべた。

 これは、またフィーネさんに変なこと吹き込まれたな? やめてよね、クリスちゃんは純粋なんだから。

 

「…………茜は、アイツのところに帰りたくないのか?」

 

 重々しく口を開いたかと思ったら、クリスちゃんが

 もしかして、『いい子にしてないと、茜を家に帰しちゃうわよ』とか言われたのか?

 まったく、無駄に不安を煽って楽しむんじゃないよ、愉悦民が!

 

「帰らない。少なくとも、お前が居る限りな」

 

 正直、帰るのは今更感あるよね。今まで何してたんだとか問い詰められても、『悪の女幹部みたいな人に人体実験されてました』とか言った日には、頭のおかしい人認定されるだけだし。

 それに、クリスちゃん一人で置いてくのは不安すぎる。フィーネさんがよからぬことをしないとも限らないし、何よりクリスちゃんが思い詰めて暴走とか洒落にならん。

 

「そう、か……ぇへへっ」

 

 私の言葉を聞いて、クリスちゃんは恥ずかしそうに頬をかいた。

 もぉ~、可愛いな! ナデナデしちゃうもんね!

 

「あっ、こら! 子供扱いすんな!」

 

 顔を真っ赤にして手を弾かれてしまった。しょんぼり。

 自由に撫でさせてくれないところとか、本当に猫みたいだな。そこが可愛いんだけど。

 

「よぉし! 次に会ったときは、アイツに目にもの見せてやる!」

「……程々にしてやってくれ」

「へへっ、やなこった!」

 

 なんか、すっごい気合入ってるな……

 まあ、盛り上がってるクリスちゃんに水を差すようなことを言えるはずもなく、やる気を出している様子を温かく見守る私なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アタシには何もない。

 友達も、大好きだった両親も、何もかも。そして、それを奪った戦争は絶対に許しはしない。

 だからアタシはフィーネの誘いに乗った。例えフィーネに利用されようとも、アタシの目的が、戦争の火種をなくすことができさえすれば、それでよかった。

 

 そんな中、フィーネが連れてきた、(一人の少女)に出会った。

 アタシよりも年下の癖にやたらと達観して、無口で、不愛想で、腕っぷしが滅茶苦茶に強くて。それでいて、どこまでもお人好しな奴だった。

 

 最初はそれが気にくわなくて、喧嘩を吹っかけては返り討ちにあって。いつしかそれが日課になる頃には、私は自然と笑みを浮かべていた。

 もう、こんな風に笑うことなんてないと思っていたのに。

 

 そんな時、立花響(アイツ)が現れた。

 茜を、アタシよりも前から知る存在。

 甘えたことをほざいて、碌に戦いも知らない素人で、そのくせ茜のようにお人好しな奴。そんなところが、余計にアタシの癇に障った。

 

 茜だって、過去がある。アイツの大切な人は、まだ生きている。だったら、茜だってきっと……

 また、居なくなるのか? 大切な人が、アタシの前から――

 

 

 

『帰らない。少なくとも、お前が居る限りな』

 

 

 

 それを聞いて、歓喜に体が震える。

 そっか。茜は、立花響(アイツ)よりもアタシの方が大事って言ってくれるんだな。

 だったら証明してやるよ。あんたの隣に立つのに相応しいのは、アタシだってことを!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 調査記録

 20■■年■月■日

 

 表題:融合症例について

 

 装者の身体能力を引き上げると共に、炭素転換能力を防ぐ対ノイズ用コーティング、位相差障壁を無効化する固有振動の調律といった特性を有するのが、聖遺物から製造されたFG式回天特機装束(シンフォギア)である。

 

 シンフォギアから生み出されるエネルギーの負荷は、すべて装者にフィードバックされるため、自ずとギアの出力は装者に依存せざるを得ない。

 これは、人と共鳴して稼働するシンフォギアの設計思想において、本来人体にとって異物であるギアのエネルギーを同調させる際にエネルギーロスが発生し、その余剰分が負荷という形で装者に返ってくるためと考えられる。

 

 この制約を取り払う方法があるとすれば、それは人と聖遺物の同化である。

 聖遺物が人の一部になれば、エネルギー循環の改善・出力の上昇・さらには、聖遺物の持つ機能の恩恵を受けることが可能になると考えられる。

 

 この理論においてカギを握るのは、融合症例と呼ばれる存在だ。

 

 

 

・融合症例第一号『立花響』

 2年前の事件にて、体内にガングニールの破片が混入。後に、体内を侵食させる形でギアを起動し、ガングニールの装者となる。

 かつて、約10万人の観客から引き出したフォニックゲインにより起動したネフシュタン、それと同等の完全聖遺物であるデュランダルを立花響一人の手で起動せしめたことからも、人と聖遺物が一体となったことによる恩恵は計り知れない。

 

 彼女の存在は今後、融合症例を解析・再現する上での重要なサンプルとなる。

 

 

 

・融合症例第零号『天月茜』

 公的には存在しない、最初の融合症例。

 2年前、生身の人間であるにも拘らず、体内から微量のフォニックゲインを検知したため、回収した後に綿密な調査を実施。

 結果から言えば、彼女の体組織は通常の人間と何ら変わりない。

 

 しかし、試しに米国から借り受けたシンフォギア『トリシューラ』を与えたところ、彼女の失われた機能を補うように、左肩から先の腕部を生成して見せた。

 左肩の境界面では、体組織と神経・細胞レベルで接合されており、以上のことから、聖遺物を人体の一部とする融合症例と判断した。

 

 だが、前述の融合症例第一号と異なり、彼女の体内にトリシューラが侵食することはなく、あくまで接合のみに留めている。これはあらゆる検査・投薬をもってしても変化することはなく、サンプルに最適な融合症例第一号が現れたこともあり、以降は定期健診と経過観察を実施するものとする。

 

 

 

 補遺:融合症例第零号の運用について

 

 融合症例のサンプルとしては適さない第零号だが、従来の装者よりもシンフォギアの力を引き出せている点は、第一号と共通している。

 そこで、彼女と一体化したトリシューラの機能であるエネルギーの増減機能について、件の計画への利用が考えられる。荷電粒子砲を放つには相応のエネルギーが必要であり、トリシューラの能力を用いれば、大幅な削減が期待できる。

 そのためには今後の検査で、エネルギーの増幅限界、および彼女自身の耐久度(・・・)について、調査する必要がある。

 

 

 

 以上

 

 

 

 特異災害対策機動部二課所属

 櫻井了子

 

 

 

 

 




オリ主が居るおかげで、クリスちゃんの依存先が微妙に変わっています。


〇相関図
・オリ主
→クリスちゃん:放っておけない妹的存在。
→フィーネさん:ドS痴女。告白する前に露出癖を直した方がいいのでは……?

・クリス
→オリ主:唯一の理解者。
→フィーネ:目的を果たすために協力しているだけ。原作ほど依存していない。

・フィーネ
→オリ主:希少な融合症例のサンプル
→クリス:体の良い駒&オリ主を自分の下に置いておく為の楔
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