第5話 出撃!…前日!(午後)
ーー1627 春島飛行場ーー
提督「ふう、漸くついたな。さて、迎えに来るとの話だったが…」
???「君が廣井中佐でよろしいかな」
提督「ええ…貴方が草柳中将ですか」
中将「いかにも。ようこそ春島へ。といっても、時折買い物などで訪れていたようだが」
提督「秋島では揃わない物も多いですから、これからも度々訪れることになるかと。…しかし、私のパイロット時代より発展してるようですね」
中将「鎮守府ができてから、我々の日用品や艦娘の外出などで需要が増えてね。結果金が集まる。さすれば人も物も集まるという訳だよ」
提督「なるほど。では時間まで少し買い出しがありますので、お暇いたします」
中将「ではまた夜にな」
提督「はっ」
提督「…さて、買い出しを済まさねば。食料品と、たわしと食器用の洗剤だったか…」
ーー1745 ○○堂ーー
提督「失礼する。私は日本海軍中佐、廣井という者だ。草柳中将に招かれたのだが、予約は入っているか」
店員「ええ、承っております。廣井中佐ですね、確認いたしますので少々お持ちください…はい、確認取れました。
ご案内いたします」
提督「頼む」
店員「こちらになります」
提督「案内ご苦労。チップはこれでいいか」
店員「ありがとうございます」
中将「おう、早かったじゃないか」
提督「買い物の後、結局時間を持て余しまして。中将こそ、お早いようですが」
中将「私が主催者だからね。最初に着いておかないと格好がつかん」
提督「して中将、本日は第2鎮守府の木崎大佐も来られるとのことでしたが…木崎大佐はどのような方でしょうか」
中将「ああ、木崎君か…彼は艦娘の育成について得意な人だね。彼と演習すればすぐに練度も上がるだろう」
提督「なるほど、ぜひお話を伺いたいものです」
中将「ああ、聞いてみるといい」
大佐「木崎大佐、ただいま到着いたしました。お二人とももうお揃いのようで」
中将「おう、では少し早いが始めるとするか。では、まず私の自己紹介から始めるとしよう」
中将「私は草柳という。春島のトラック泊地第1鎮守府司令官並びにトラック泊地鎮守府群の統括を任されている。残念ながら色々タイミングが悪くて実戦に出たことはないんだが、それでも戦略や作戦立案に関してはは結構自信がある。勿論、何か不満や不備があったら遠慮せずに言ってくれ。特に今日来てくれた廣井君はおそらくこの中で一番実戦経験があるだろうしね。…こんなもんかな。次、木崎君」
大佐「初めまして廣井中佐。木崎です。夏島のトラック泊地第2鎮守府の司令官を務めております。廣井中佐は元パイロットとのことで、空戦関連で何か助言など頂けますとありがたいです。艦娘の育成に関してはどこの鎮守府にも劣るつもりはありません。私にできることであればお教えいたします」
提督「(やはり中将は将器というかこう言っては失礼だろうが、食えない男、といった感じだな、実践に出たことがないのは意外だが。そして大佐のほうは職務に忠実な生粋の軍人といった印象を受ける。私より若干年嵩か?)」
中将「では、次は廣井君だね」
提督「はい、草柳中将は先ほど振り、木崎大佐は初めまして。明日を以て正式に始動いたします秋島のトラック泊地第3鎮守府司令、廣井です。パイロット時代には戦友に恵まれそれなりの戦果を挙げさせていただきました」
中将「はは、あまり謙遜するものでは無いよ。『蒼空の覇王』さん」
提督「嘘を言ったつもりはありませんよ、本当のことです。あと、そのあだ名あんまり好きではないんです」
中将「おっとそれは失礼。さて、自己紹介も終わったことだし飲むとするか!」
大佐「飲み物も来てないのにですか」
中将「いやこういうのは気分の問題だよ。さ、廣井君も我々に何か聞きたいことがあれば聞けばいい」
提督「では…お二方の鎮守府の艦娘の練度はどれほどなのでしょうか」
中将「私のところは主力艦隊が70程、予備戦力が50程、遠征艦隊が35程だな」
大佐「私のところは主力艦隊は90前半、予備戦力が70程、遠征艦隊は60程でしょうか」
提督「大佐のところは遠征艦隊の練度も高いですね。何故ですか?」
大佐「ああ、私のところは遠征艦隊も非常時の戦力として練度を上げておりますので。その代わり資材の消費が激しくて、恥ずかしながらあまり装備などの開発などは進んでおりません」
提督「なるほど、でその練度の上げ方は…」
大佐「主には演習。そして、空母随伴での反復出撃ですね。空母の航空先制攻撃で敵を沈黙させれば、無傷での勝利は比較的容易になります。ただしボーキサイトの消費が大きくなるのが難点です。そのあたりは備蓄と相談ですね」
中将「ボーキサイトは遠征などでまとまった数の入手が困難だからねえ。その割に需要は高いし」
提督「参考にします。では質問をもう一つ。この鎮守府群の活動領域はどのあたりまでですか」
中将「北はアリューシャン、南はソロモンって感じだね。勿論、普段はこの辺りのことが多いけど」
大佐「ですね。北方に出したりすると結構な間帰って来なかったりしますから…」
中将「基本的にあそこに出すのは『イベント』と呼ばれる大規模作戦の時か、海域出撃許可が下りて次の出撃許可のために出撃するときだけだな」
提督「北方ですか…航空機で随伴するのは難しいですかね」
中将「まず、出撃に航空機で随伴しようっていう発想がぶっ飛んでるんだけどね」
大佐「料理が運ばれてきましたよ」
中将「おお、ではいただくとしようか」
そうして、3人の司令官たちは食事を楽しみつつ軍事のことについて語り合った。海上砲撃戦、雷撃戦、航空戦…いつの間にか大本営への愚痴になっていたことと、航空戦、艦載機関連で廣井が物凄く熱弁を振るい、ほかの二人がちょっと引いたのはご愛敬である。
第6話 初陣!鎮守府正面海域敵勢力ヲ撃滅セヨ!
ーー翌日0630 食堂ーー
提督「さて、全員揃っているな。本日0700より、本鎮守府は正式に鎮守府としての機能を開始し、演習、出撃の許可が下りる。以降、私が休暇の日を除く毎日、このように0630に食堂にて連絡事項を通達する朝礼を実施する。早速、今日の予定について通達する。0730より我々の初陣、鎮守府正面海域の近海警備行動を開始する。向かうのは第一艦隊。…そもそも第一艦隊しかいないしな。これには私も航空機にて随伴する。昼食を挟み、午後からは第二鎮守府第3艦隊との演習が入っている。以上、第一艦隊各員は0715までに出撃準備を済ませておくように」
不知火「質問です」
提督「何か」
不知火「0730の作戦開始で0725までに準備完了なら最もと思いますが、何故0715なのでしょう?」
提督「今回は君たちの、そして私の提督としての初陣であるから、私も航空機にて随伴し指揮を執る。そして君たちの準備完了を確認してから航空機の発進までを考慮すると他の鎮守府と比較して早い段階で出撃準備を済ませておく必要があるからだ」
不知火「了解しました」
提督「ほかに質問は…無い様だな。では今日の朝礼はこれまでとする」
ーー0715 執務室ーー
提督「それではこれより集合の確認を取る、神通、綾波、吹雪、白雪、不知火」
それぞれ「はい(!)」
提督「よし全員いるな。それでは第一艦隊出撃せよ!」
第一艦隊「応!」
提督「大淀、留守は頼む」
大淀「お任せください」
ーー0730 鎮守府正面海域ーー
提督「廣井から各艦へ、これより私は貴君らの上空より指揮を執る。私も索敵に加わるが各艦周囲索敵を怠るな」
神通「了解。現在艦隊は針路を東南東に取り、28ktで航行中。敵影無し」
提督「そろそろ敵が出てきてもおかしくない。各艦無線を開きっぱなしにしておけ」
提督「…敵艦隊見ゆ!11時の方向、距離12000!艦種不明なれども小型艦1隻!全艦取舵、右舷砲戦用意!」
各艦「了解!」
提督「距離10000、艦種判明、敵艦はイ級駆逐艦、神通砲撃を開始せよ。その他の艦も砲を1時に指向、射程に入り次第砲撃を開始せよ」
神通「よく…狙って!」
神通搭載の140mm単装砲から砲撃が開始される。練度が低いこともありやや狙いが拙いが、徐々に着弾地点が敵に寄っていく。
提督「廣井より各艦へ。敵の砲撃開始を確認。駆逐艦、砲撃開始せよ」
綾波「綾波が…守ります!」
駆逐艦からも砲撃が開始され、徐々に敵に照準があっていく。
白雪「白雪、敵より至近弾!損害軽微です!」
神通「神通、敵に砲撃命中、敵中破」
不知火「敵に砲撃命中しました。敵大破」
綾波「敵に砲撃命中です。敵艦撃沈!」
提督「よくやった。被害を報告せよ」
神通「白雪に至近弾、損害軽微です」
提督「それでは進撃する。針路は…」
妖精 コッチヤデ
提督「よし、針路を南東に取れ」
神通「了解」
ーー0853 鎮守府正面海域ーー
提督「そろそろか…敵艦隊見ゆ!巡洋艦1,駆逐艦2!3時の方向、距離16000!」
提督「各艦速度落とせ。ひとまず丁字で迎撃する」
神通「敵艦隊回頭を開始、同航戦に持ち込む模様」
提督「速度戻せ、各艦、右舷砲戦用意!」
提督「敵艦種判明!旗艦はホ級軽巡、随伴艦はイ級駆逐艦!射程に入り次第砲撃開始、目標、敵旗艦」
神通「射程に…入りました!撃ちます!」
神通「初弾命中!敵中破!」
提督「そろそろ駆逐艦の射程にも入るはずだ。綾波、吹雪は敵旗艦、それ以外は随伴艦を狙え」
各艦「了解!」
駆逐艦の127mm砲の砲撃が飛び交う。それは敵艦の周囲にいくつもの水柱を立て、敵からの砲撃も艦娘たちの周りに水柱を立てていく。廣井は初めて見る砲撃戦というものに若干気圧されていた。
提督「(これが砲撃戦か。やはり迫力がある。私も一撃くらい喰らわせてやりたいが…)」
無論それは無謀というものである。だが、彼の性からして、非常に高みの見物しかできない自分を不甲斐ないと思ってしまうのは当然のことだった。
綾波「敵旗艦に砲撃も敵3番艦に阻まれました!3番艦は大破!」
白雪「敵3番艦に追撃、撃沈しました!…きゃっ!?」
白雪「白雪に至近弾!小破しました!」
不知火「敵2番艦に砲撃命中、中破」
提督「よし、全艦速度増せ、雷撃戦用意!」
吹雪「吹雪に至近弾!損害軽微です!」
提督「各艦、各自のタイミングで魚雷発射せよ!」
神通「魚雷…発射!」
神通「敵二番艦に雷撃命中、撃沈しました」
吹雪「敵旗艦に雷撃命中、撃沈です!」
神通「他に敵影無し、敵主力部隊の撃滅によりこれより帰投します」
提督「ご苦労だった。また、初陣ながら見事な活躍ぶりだった。損害も白雪小破、吹雪軽微と文句なしだ」
神通「ありがとうございます。提督のおかげですね」
提督「いや、君たちあっての私、それについてはお互い様だ…では先に戻っている」
ーー0934 執務室ーー
神通「提督、神通です。第一艦隊、帰投しました」
提督「改めてご苦労だった。全艦の補給並びに白雪と吹雪に入渠の指示を頼む。また、本作戦の経過をまとめた報告書を作成してくれ」
神通「了解しました。先に補給を済ませてきますね」
提督「さて、昼食後には演習が入っているが…神通の報告書が出来次第反省会を行うべきか」
神通「神通、ただいま戻りました。報告書の作成でしたね」
提督「ああ。作戦中の大体の航路と大まかな戦闘経過を時系列で並べ、戦闘の結果の練度の変化があればそれを記述すればいい。それが仕上がったら第一艦隊で反省会を行う」
神通「あっ、大事なことを伝え忘れておりました。海域からの帰投中に妖精さんが駆逐艦朝潮の「艦の魂」を発見し、それを元に建造作業が行われています」
提督「中々に重要なことだな。しかし「艦の魂」から艦娘が建造されるっていうのは良く分からんな」
神通「私たちにとっても妖精さんの実態は謎ですから何ともお答えしかねます…」
提督「まあ、海軍全体で妖精に対して余計な詮索はしないと約束しているらしいからな、詮索はやめておこう」
神通「はい」
提督「さてさて、さっそく駆逐艦朝潮に関して調べをつけなければ…」
神通「では、その資料の捜索とお読みになっている間に報告書を進めると致しましょうか」
提督「…これだな。駆逐艦朝潮。戦時中は第8駆逐隊に所属し、南方での戦いに従事。最後はビスマルク海海戦」
神通「毎度思うのですが、何故毎回着任する子の艦時代をお調べになるのですか?」
提督「艦娘は見る限り艦時代の記憶が性格などに大きく反映されている。艦時代を知ることでその子の不満や心配に容易に気づけるようになれば艦隊運用がやりやすいと思ってな」
神通「なるほど」
ーー1132 執務室ーー
神通「お待たせいたしました。報告書、完成いたしました」
提督「よし。ではいい時間だし、昼餉にするとしよう。反省会は演習のものとまとめて演習後だ」
神通「了解です」
ーー人物紹介ーー
提督:本名廣井空の本作主人公。前回などに大体のことを乗っけているのでそちら参照。艦娘の艦時代を調べるのは艦隊運用とその子の過去を知ることで交流を深めるため。
中将:本名草柳健。春島のトラック泊地第1鎮守府司令官並びにトラック泊地鎮守府群総括。前線に出たことはないが作戦の立案が見事である。豪放磊落な性格で真面目×2のトラック泊地鎮守府群のムードメーカーでもある。
大佐:本名木崎正樹。艦娘の育成が得意な夏島のトラック泊地第2鎮守府の司令官。育成が得意な代わりに指揮が少々不得手であり、そこを艦娘の練度でカバーしている。じつは艦娘に対しては非常にフレンドリー。
拙作を読んで下さりありがとうございます。
距離は私の知識不足故、単位はmです。
若干短いですが、キリが良かったのでお許しください。ここから、朝潮の面接、演習となると長くなりそうだったので…ちなみに自分は艦これ初めて1ヶ月ほどの新人提督(トラック泊地)です。それ故に至らないところ多々あると思いますが、これからもこの拙作を読んでくださると幸いです。