「田舎に畑を持っているマキマさんの友達」の話   作:ティラミス

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翌日に投稿するつもりで気づいたら九ヶ月経過していた。


後編:「家族・追憶・友人」

 

 第二次世界大戦が終わり――というか■■■■■■のお陰で初めから無かったことになり――軍も解体された。

 私とマキマはお役御免で処分されるということもなく、相変わらず人間様のため働かされることになった。セツナに連れられるまま、公安警察の特異課へと配属された。国民の税金で飯にありつくデビルハンターとしてだ。

 公安のデビルハンターは、安全と相互監視のために、たいていバディを組んで行動していた。私のバディはやっぱりマキマだった。悪魔同士がバディを組むなんて滑稽だけど、「支配の悪魔」に「支配」されないデビルハンターじゃないと意味がないし、私もマキマも「忘却の悪魔」の目を盗んで逃げ出したり暴れたりなんてできないから、自然な組み合わせではあった。

 公安のデビルハンターの仕事は、国外の悪魔や人間を殺すというものではない。単に国内に現れる悪魔を殺すだけ。私とマキマは、東京で悪魔が出れば殺し、他の地方から強い悪魔が出て要請を受ければ、飛んで行って殺す、そんな変わり映えのない生活を送った。

 戦争の時代、恐怖に覆われた時代は終わったので、現れる悪魔もそこまで大したものはない。私自身を「孤立」させながら干渉を防ぎ、悪魔を外界からしばらく「孤立」させて殺す、それだけ。自分より格の低い悪魔なら、負けようがない。

 マキマもまた、色んな能力で適当に攻撃するか、悪魔を直接「支配」して終わり。マキマも私のように脆弱なヒトの体しか持たないけれど、他のヒトや悪魔にダメージを押し付ける反則じみた力を持っていたから、実質無敵だった。

 さらにマキマは、強い悪魔を殺すたびに、新たな能力のコレクションをどんどん増やせてしまう(出会ったときから、上位の悪魔特有のわけのわからない能力やら地獄で「支配」したらしい悪魔の能力やらを色々と使っていたけれど)。セツナは当然、その辺りのことは危惧していたはずだ。私とマキマが公安に戻ってくると、何の悪魔を倒したのか、その記憶だけさっぱり消してしまっていたと思う。記憶を消された記憶もないけれど、倒した悪魔の名前だけ覚えていないから、多分そうなのだろう。ほかにセツナがどんな記憶を私達から消したのか、それとも消していないのかは分からない。

 

 ……それでもやっぱり、マキマが徐々にさらに強くなっているような気はしたし、手駒が着々と増えていた気はしたし、公安での影響力もじわじわ増しているような気はしたし、「支配」の悪魔としての格も心なしか高くなってる気もしたけれど(恐怖政治の超大国が存在している以上は、世界の人々は「支配」を強く恐れる)。セツナは相変わらずマキマを大人しく服従させ続けていた。なんで国のため人間のために大人しく働いているのか分からないほど、セツナはあまりに強大な悪魔だった。公安で働く裏で、何か壮大な野望を抱いているという節もなさそうだった。悪魔は大抵、ヒトを八つ裂きにして殺したい、苦しめ痛めつけて泣き叫ぶ声を聞きたい、腹いっぱい喰らいたいと思っているもの。けれどもヒトそっくりの姿を持つセツナは、私と同じく、特にそんな欲望も無いようだった。

 

 ところで地獄に長いこといる間、私はずっとヒトの子供のような姿だった。けれど、なぜか現世に来てから少しずつヒトの大人の姿に成長していった。そしていつの間にか止まった。私は若い人間の見た目であり続けた。マキマも同じ。

 

 私とマキマが悪魔であることを知っている者は、国の本当に一握りの人間しか知らないようだった。――前から知っていた人は少なかったけれど、戦争でごっそり死んでしまったし、それに「忘却の悪魔」の能力は相変わらず強力だった。私とマキマがずっと若い姿で公安にいることにも、私とマキマが公安の本部に住み付ているということにも、公安にいる誰も疑問を抱かなかった。

 まあ、私達についての疑念を仮に胸に抱いたとしても、どうせデビルハンターはすぐに死ぬか辞めるかしてしまうのだけど。ヒトは脆弱だ。体も心もすぐに壊れる。もともとヒトは、悪魔と互角に戦える生物ではない。

 無駄に悪魔に挑んで壊されるだけでもご愁傷様というほかないのに。デビルハンターはその上、悪魔と無理矢理同じ土俵に立って戦うために、わざわざ「狐の悪魔」やら「幽霊の悪魔」やら他の悪魔と契約しなきゃいけないのだ。

 そういった、デビルハンターに力を貸す悪魔――公安に囚われている悪魔や、公安と協力関係にある悪魔――は、人間に比較的友好的な悪魔が多い、とは言われる。それでも飽くまで悪魔基準で「比較的友好的」というだけで、結局は悪魔らしいクソみたいな性格の悪魔ばかりだ。……たとえば「未来の悪魔」とか。他人(他悪魔)のロクでもない未来を覗き見て楽しみ、本人(本悪魔)に予言して楽しみ、その未来が実現するのを見届けて楽しむ、まさに悪魔みたいな悪魔。私は全力で奴を拒絶し続けた。私自身も知らない私のプライバシーを見られて吹き込まれるなんて嫌に決まってる。

 ヒトのデビルハンターはみんな、そういうロクでもない悪魔どもの力をほんのちょっぴり借りるためだけに、重い代償を支払わされるのだから、まったくご苦労様と言うほかない。彼らが呆気なく死んだり代償に苦しむのを見ると、悪魔に生まれて良かったとつくづく思う。

 

 ……いや、「弓矢の悪魔」の心臓を宿したデビルハンターは例外だったか。彼女みたいな、武器の悪魔の心臓を宿した人間は――ヒトでも悪魔でも魔人でもない、▲▲▲▲って呼ばれる奴らは――完全な人の体と心を持っているし、人から悪魔に好きなときに変身できるし、悪魔みたいに血を啜れば回復するし、悪魔とは違って死んでも地獄に行かず現世で復活する。反則みたいな存在だ。良いとこどりじゃないか。

 彼女はずっと昔から悪魔を狩って生きてきたらしい。悪魔に変身しなくても、人間離れしたスピードで攻撃してほとんどの悪魔を倒していたが、ひとたび「弓矢の悪魔」に変身すれば壮絶な量の矢を浴びせて、「悪霊の悪魔」とか「窒息の悪魔」とかの透明な体も瞬時に消し炭にしていた。私の能力も貫かれない確信はなかったので、私はあの女にはなるべく近づかないようにしていた。

 

 そうやって二十年三十年は公安で暮らしただろうか。次第にマキマとバディを組むこともなくなり、日々のパトロールも行く必要がなくなった。たまにセツナの指示で強い悪魔を狩りに行くほかは、公安本部の片隅の自室でのんびり独りで寛いだり、気ままに外出して寛げる場所を探したり、たまには有給をとって遠出をしたり。ヒトに溢れた東京のど真ん中で、ヒトがうじゃうじゃしてる公安の中で暮らすというのは、「孤独の悪魔」としては中々に苦痛ではあったけれど――それなりに快適な暮らしはさせてもらえていた。公安の外に住むことは許されなかったとはいえ、公安の地下に捕まってる悪魔どもとは違って、飽くまで普通のヒトとして扱われ続けた。私がゆったり住み着いている間に、ヒトのデビルハンターはほとんど入れ替わってたようだけど。もともと彼らと関わることはなかったし、興味もなかった。

 

 

  ●  

 

 

 そんなある日、仕事を終えたセツナに、料亭に突然呼び出された。広い部屋で小さな卓を囲み、酒と料理を味わう。

 元来セツナも私も、とても口数の少ない方だ。セツナはべつだん何か話を切り出すわけでもなく、黙々と箸を口に運ぶ一方であったし、私の方も、久方ぶりの高級な料理に、ほくほくと舌鼓を打つのに忙しかった。

 ほとんどの皿をあらかた平らげた段になり、なおもセツナは私をじっと見たままだったので、さすがに私は会話の口火を切ることにした。

 

「……今日はまた、どうしたんですか。食事に誘ってくれるなんて、久しぶりじゃあないですか」

 

 セツナは微笑み、杯をぐっと(あお)る。

 

「私は多分、もうそろそろ、ここにいられない。最後にお前に会っておこうと思ってね」

 

「……公安の仕事に飽きたんですか?あなたなら、いつでも去ってどこでも生きていけるでしょうけど」

 

 セツナは何も言わず、ただ薄く笑うのみだった。しばらくして、口を開く。

 

「これまで長い付き合いだったが、お前も、人間様のためにいつまでも働く義理もないだろう」

 

 眉をひそめる私をよそに、セツナは続ける。

 

「お前についての周りの記憶も記録も、消そうと思えばすぐにでも消せる。人里離れて孤独に暮らしたいなら、言え」

 

「……また唐突な」

 

 私は言いながらも、少し考える。ここでの暮らしも悪くはないが、そろそろ独りで自由に暮らしたいところだった。マキマの近くにいるのも怖くなってきたし。しばらく唸った末に、言葉を返す。

 

「私も辞めたいです。お願いします」

 

 私の答えを聞いて、忘却の悪魔は短くうなずいた。

 

「でも突然どうしたんですか。そもそも今まで私をこの仕事に縛り付けてきたのは、あなたじゃありませんか」

 

「……私は、ヒトが何かを忘れることを恐れる心から、そしてヒトが世界から忘れられることを恐れる心から生まれた悪魔」

 

 忘却の悪魔は、銀髪を手でかき分け訥々と言葉を紡ぐ。

 

「……それなのに私は――いや、だからこそ私は――誰の記憶にも残らないのが、怖い。何よりも怖いんだ。だから私は、対価もなく、今まで国に協力していたのかもしれない。こうしてお前にお節介をするのも、その一環かもしれない」

 

 私はセツナの、どこか悲し気な声に拍子抜けした。私はそれまで、セツナがなんでヒトのためにおとなしく身を粉にして働いているのかさっぱり分からなかった。まさかそんな理由とは――。

 

「……しょっちゅう他人の記憶を消す癖に、他人に覚えておいてほしいなんて矛盾してませんか。それに公安から去るなら、あなたのこれまで活躍の記憶も全部、消さなくちゃならないでしょう。忘れられても良いんですか」

 

「…………ああ、そうだな。矛盾している。……でも、それが私の、『忘却の悪魔』の(さが)だから。相手の記憶を消したくてしょうがない。相手の記憶を消しながらでないと、相手と接することさえままならない」

 

 セツナは俯くと、私をまっすぐ見つめた。

 

「私は、お前たちを拾って、ヒトのように生きてくために色々なことを教えたが――それでも、ヒトとしてのヒトに対する接し方を――ヒトの世界で生きるための、いちばん基本的な態度を教えてやれなかった。ヒトの親が子に接するように、ヒトの師が弟子に接するように、お前たちに接することができなかった。……それは私の、罪だ。償うことになる罪だ」

 

 セツナの口調には悔悛の色が滲んでいた。

 

「……お前の言う通り、私のこれまでの記録は公安からすべて抹消される。……だからお前だけでも、私のことを覚えていてほしい。私のこれまでの生き様が、誰か一人の記憶に残っていれば、お前が覚えていてくれさえすれば、私はそれで十分だ」

 

 セツナは殊勝に(こうべ)を垂れた。私は思わず笑う。

 

「なんか貴方、悪魔の癖に、妙に人間らしいめんどくさい性格ですね。ヒトをたらふく食いたいーとか、血をがぶがぶ飲みたいーとか、なんかよくわからない偉大で崇高な野望を果たしたいーとか、他の悪魔らしくスパッと分かりやすくないんですね」

 

「たしかに悪魔の価値観や思考はヒトとは明らかに違う。とはいっても、それでも悪魔はヒトの恐怖から生まれた存在だ。変なところで人間臭くなるのは当然だろう」

 

 私の率直な物言いに、セツナは苦笑して答える。

 

「それに、私は『忘却の悪魔』だから。忘れる、忘れない、忘れたい、忘れたくない、忘れられたい、忘れられたくない――ヒトが人であるための本質のような概念、そこから生まれた悪魔だ。変に人間っぽくなるのも仕方ないのかもしれない」

 

 セツナは右の掌を持ち上げると、灯りに透かして自らの白い肌を見つめた。ヒトそっくりの肌。

 それに、とセツナは続ける。右の指を、私の胸元へ向ける。

 

「お前の方が、どこまでも人間臭いと思うよ」

 

「……そうですかね」

 

「そうだよ」

 

 沈黙が流れる。セツナは自らの徳利を杯に傾けた。酒は残りわずかだったようで、ちょうど杯が満たされたところで、最後の一滴が落ち果てた。セツナは一息に呷ると、息を短く吐いた。残りの皿をすべて片づけた私も、箸を置き、手を膝に乗せた。

 

「……これまでお世話になりました。色々なことを教えてくれて、ありがとうございました。ヒトや悪魔と関わるのは面倒でしたが、何だかんだいっても、今までそれなりに楽しかったですよ」

 

 私は頭を下げる。

 

「ほら。そういうとこ、最高に人間臭い」

 

「あなたのお陰ですよ」

 

 セツナの口角が満足そうに持ち上がった。青い靄に覆われた異様な眼も、心なしか笑っているように見えた。

 

 

 ●

 

 

 セツナは翌日には跡形もなく消えていた。恐らく公安の誰の記憶にも、いかなる記録にも残っていなかったろう。

 セツナがそれまでいた地位には代わりにマキマがついていた。セツナが単に公安の仕事に飽きてマキマに押し付けていったのか、マキマとの力関係が逆転して去ったのか、あるいは何か他のことが起きたのか、私は知らないし、わざわざ知ろうとはしなかった。

 私もその日のうちに公安から去った。セツナのお陰で、私のことも公安から忘れ去られていたから、私は悠々と歩いて出ていくことができた。「忘却の悪魔」がいなくなった今、マキマをコントロールできる者が――もしかしたら国の上の方にはいるのかもしれないけれど少なくとも今の公安には――残っているとは思えなかった。あいつの考えはさっぱり分からないかったけれど、何か厄介ごとに付き合わされるのは面倒だったし、そろそろ独りになりたいところだった。……私は悪魔だから、公安やこの国がこれからどうなろうと知ったことではない。まあ少なくとも、「支配の悪魔」が人類滅亡を目論むということはないだろうし。どうせヒトは色んなヒトや概念にがんじがらめに支配されて生きているものだし。支配されている状態を喜んですらいる節があるのだからヒトというものは不思議だ。マキマに支配されてもあまり変わらないだろう。

 

 私は東京から遠く離れ、山間の小さな田舎町に居を構えた。独り暮らしの農家の老女(ちょうど数日前に悪魔に食われてしまったらしい)の家を拝借した。私はほとんどヒトに近い体を持つ悪魔だ。ヒトは私を悪魔だと見抜けないし、ほとんどの悪魔も私を悪魔だと見抜けない。

 私の「孤独」の能力も、田舎の人々の詮索を交わすには十分だった。能力を解除しない限りは、私への関心はシャットアウトされ、私は路傍の石のように人々から思われていたことだろう。

 私はひっそりと野菜を作って、野菜を売ったり物々交換をしたりして生きていた。他人様にあまり迷惑をかけない悪魔として生きていた。正直に言えばかなり迷惑をかけてたけど。つまり「孤独」の能力を使って足りない金や物をちょくちょく盗んだり勝手に物々交換もしていたけれど。町に出る悪魔を狩る手間賃として見逃してもらって良いはずだ。並のデビルハンターじゃたぶん殺せないような悪魔もちょくちょくこの町に現れたし、こんな田舎町にはデビルハンターはすぐには来れない。……もしかしたら、悪魔(わたし)が住んでいるからそんな悪魔が引き寄せられるのだろうか?悪魔が現世に現れるとき、その場所がどうやって選ばれるのか、その仕組みはよく分からないけど。まあなんにせよ、私がここに住んでから、この町の悪魔による死傷者はゼロなんだから、別に良いだろう。

 そうして畑を耕したり収穫をしたり、本を読んだり散歩をしたり、私は快適なスローライフを送った。数十年ぶりに、気楽な孤独を満喫していた。逃げたら国から処分されるとは言われていたけれど、私の存在が既に公安から「忘却」されている以上は気にも留めなかった。仮に私をわざわざ探して殺そうと思ったところで、私の相手になる悪魔やデビルハンターが公安にいるとは思えないし――。

 

「仕事中だった?手伝おうか?」

 

 ……こいつを除いては。ある晴れた秋の昼下がり、マキマは平然と私の方に歩いてきた。数年ぶりだというのに、まるで昨日別れたかのように気軽な口ぶりで。

 

「そんな顔しなくても良いよ、公安として『孤独の悪魔』を殺しにきたわけじゃない」

 

「……どうしてここが?あなたが遠くの声を拾えるのは知っているけど――ほとんどいつも、私の声や家は『孤立』させてあるはずなのに。というか、そもそもまだ私を覚えているの?」

 

 私の「孤独」の能力がマキマに効かなくなったとすれば、もう私はマキマのなすがままだ。私の悠々自適ライフもここまでかあ。

 

「この辺りでは悪魔が出現したとしても通報してデビルハンターが来るまでにだいぶ時間がかかる。それにここの県は民間も公安もデビルハンターの層が全然厚くないから、強い悪魔が出たとしてもなかなか対処できない。それなのに定期的にやたら強そうな悪魔の死体が発見されるし、悪魔の犠牲者はやけに少ないからね。キミみたいな人を襲わない強い悪魔がどこかに隠れ住んでいるとしたら、まず探すのはそういう場所だよ」

 

 私は溜息をついた。

 

「死体を丁寧に燃やしとくべきだった。面倒臭くて棄て置いたりせずに。欲をかいて闇市に売り飛ばしたりせずに」

 

 そんなことをしなくても、どっちみちいつか嗅ぎつけられていた気はするが。最近やけに悪魔が増えたと思っていたけど、もしかしたら私を炙り出す目的でこいつがけしかけてたということもあるのだろうか。考えすぎか。

 

「それに、セツナさんは公安のみんなからキミの記憶を消したみたいだけど、私がキミを忘れることはないよ」

 

 マキマは口角を吊り上げた。懐かしい名前を聞いて、セツナが今どうしてるのか気になったが、マキマに聞くのはなんとなくやめておいた。

 

「挨拶もなしに黙って消えるなんて、随分つれないんだね」

 

「……ちょっと独りになりたかったんだよ。……そっちはどう?忙しい?」

 

 私は恐る恐る声をかける。

 

「相変わらず悪魔を退治しているだけだよ。……キミがいなくなったおかげで、余計な仕事が増えたけどね」

 

 マキマは滑らかに言った。

 

「……そう」

 

「今は何をやっているの?」

 

「ネズミの害を防ぐために、罠を仕掛けているところ。私の能力だと、ネズミだけを選んで駆除するというのはちょっと大変で。他の役に立つ生き物も巻き添えにしちゃう」

 

 私は、足元に置いた、粘着テープと餌をあつらえた箱の数々を指で示した。

 

「そうなんだ」

 

 マキマの姿がかき消える。かと思えば、すぐにマキマは再び私の目の前に現れた。今度は右手にリードを握り、何頭もの大型犬を連れている。

 

「そういえば、巣穴を掘り返しながら、出てきたネズミを犬に食わせる方法もあるって聞いたことがあったんだ。試してみない?この子たち、みんな良い子で元気だよ」

 

 マキマは一頭の頭を左手で優しくなでた。どの犬も眼が爛々と輝き、息をはあはあさせている。

 

「……それじゃあ、せっかくだから」

 

 私はまだ、農業に不慣れだったので(住民達に手取り足取り教えてもらうわけにもいかなかったし)、マキマの提案に試しに乗ってみることにした。私がシャベルで土をほじくる間、犬は元気に駆け回り、元気にネズミに食らいつき、ぶんぶん振り回しては放り投げ、噛みちぎっては呑み込む。元気な大虐殺が行われた。マキマは優しい眼つきで、走り回る犬の巨体と散らばるネズミの残骸とを眺めていた。ひとしきりネズミの大虐殺が終わると、私は右の軍手で額の汗をぬぐった。

 

「この子たち、たしかに元気だね。ありがとう」

 

 マキマはにっこり笑った。

 

「私のことが大好きだし、忠実で扱いやすいし、賢いけれど愚かだし、見ているだけで面白いんだ。犬って、人そっくりで愛おしいよね」

 

 マキマは犬に頬擦りした。マキマの顔も犬の顔もほころぶ。

 

「悪魔のくせにヒトが好きだなんて、あなたつくづく変わってるね」

 

 私は率直な感想を述べて、仕事に戻った。土をならし、作業に一区切りつけたあと、道に立っているマキマの方を向いた。マキマは犬を帰した後にまた戻って来て、相も変わらずのんびりこちらを眺めていた。

 

「……私はもう仕事を切り上げるけど、マキマは帰る?……それとも上がってく?大したもてなしはできないけど」

 

 仕事を手伝ってもらった一応の礼儀として、私は家を指し示して声をかけた。マキマが本当に私を処分しに来たわけじゃないのかまだ確信が持てないが、仮にそうだったら、家に上がるのを待つまでもなく、私を殺しにかかっているだろうし。

 

「そうしようかな」

 

 私はマキマを家に上げてリビングに通し、テレビや本を自由に使ってと告げると、シャワーを浴びて夕食の支度をした。その間ずっと、マキマは洋画の再放送を見ているようだった。簡素な夕食(この国の人が普通に食べるようなメニュー、ご飯と味噌汁と生姜焼きだ。私もマキマも、ヒトと同じ食べ物を好む。人の肉も悪魔の肉も興味はない)を食卓に並べると、私はマキマと食事をとった。私はマキマと会話が弾むたちでもなかったから、ただ食器の音と映画の音声が響くばかり。

 

 味噌汁をすすり、マキマは箸を置いて手を合わせると、私に声をかけた。

 

「ご馳走様。美味しかったよ」

 

「お粗末様です」

 

「ところで。やっぱりキミ、そろそろ東京に帰ってこない?休息は十分とれたよね。また働いてくれないかな。べつに忙しくはないよ。たまに私の指示に従って動いてくれれば、それで良いから」

 

 私の背筋に緊張が走る。わざわざマキマが私のもとに現れた目的は、用済みの私を消すためか、連れ戻すためか、どちらかだとは分かっていた。セツナの制御がなくなった今でも、私にはまだ利用価値があるらしい。

 

「…………セツナに捕まったばかりの頃さ、子供が読むような童話を、色々読まされたの覚えてる?」

 

 私は慎重に口を開く。

 

「その中に、田舎のネズミと都会のネズミの話、あったでしょう。私は田舎のネズミなの。都会のネズミじゃない」

 

「あれは、文字通りに田舎と都会のどちらが良いかという話ではなくて、スリルもあって刺激も大きい人生の方が良いか、刺激が少なくてもリスクの少ない人生の方が良いか、という寓話だよ。キミにとって、東京が危険な場所でもないよね」

 

 マキマは笑った。お前が危険なんだよと言わないだけの分別は、私は長い現世の生活で身に着けていた。

 

「とにかく、私はここで独りでのんびりするのが性に合ってるの。刺激が大きいのが楽しいタイプでもない。放っておいてよ」

 

「これは命令です。私に従いなさい」

 

「嫌だ。放っておいて」

 

 マキマは不意に私を「支配」しようとした。私は間一髪で防ぐ。全身がひやりと凍り付き、鼓動が早くなった。

 マキマはしばらく私をじっと見つめた。先ほどマキマは、私を「殺しに来たわけじゃない」と言ったわけではないことに、私は突然気づいた。あくまで「『公安として』殺しに来たわけじゃない」と言っていたにすぎない。要するに、私の生殺与奪はマキマ個人の判断で行われるわけだ。

 

「……まあ、その、私はこれからも人間様の迷惑はかけないように生きていくつもりだし、これからもマキマの邪魔をするつもりもないよ。断じて。絶対に。いつまでも」

 

「それなら良かった。――それじゃ、今日はそろそろ帰るよ。また来るね」

 

 マキマはふっと笑うと、立ち上がって出て行った。私は胸を撫で下ろした。

 

 

 ●

 

 

 マキマは「また来るね」と言った通り、翌年の秋もやってきた。私は一年ぶりに心臓が凍り付いた。マキマは私の畑仕事を手伝い、入浴し、夕食を一緒に食べたあと、ふいにビデオテープを取り出してこう言った。

 

「映画観ない?これ、私のお気に入り」

 

 私の知らないタイトルだった。私は映画を鑑賞するよりは本を読むことの方が多い。興味を惹かれ、頷いて部屋を暗くすると、カセットにテープを差し込んだ。

 黙って最後まで観終えた後、灯りをつけて、ようやく私は口を開いた。

 

「良い映画だったね。でもマキマ、こういうの好きなの。意外」

 

「……良い映画だよね」

 

 そう呟くマキマの頬筋に静かに涙が垂れていたのを見て、私は再び意外に感じた。泣いていても画になる顔だ。なんとなく私は飲みたい気分になった。マキマに勧め、酒を飲み交わした。特に肴もなく、ほとんど会話もなく、日本酒を呷るだけだけど。お互いに酔わないたちだから、酒の力で腹を割って話すということも、急に怒ったり泣いたりということもない。じゃあなんで私は、わざわざこの飲み物をいつも嗜んでいるんだろう。人間でもないのに。

 

「そういえばキミってタバコやらないの?」

 

 家の酒が尽きかけてきた頃、マキマは口を開く。マキマと私の会話は、いつも脈絡がない。

 

「なんか合わなかった。家に臭いうつるし」

 

「やめられたんだ」

 

「悪魔だし」

 

「ふうん。ところでさ」

 

 マキマは声色を突然変えた。

 

「これは命令です。私に従いなさい」

 

「……嫌だ。独りにして」

 

 危ない。油断してた。マキマに気を許すほど、マキマのことを知るほど、私のことを知られるほど、「支配」されやすくなるような気がする。マキマの能力を詳しく知らないけど。

 

「頑固だね」

 

 マキマは溜息をついた。

 

「また来るから」

 

 マキマはそうやって毎年、ふらっとやって来ては、畑仕事を手伝い、映画を見て、時には泊まり、毎回私を東京に連れ戻そうとし、断ると「支配」しようとし、私がぎりぎり「支配」されないのを確かめると、そのまま帰っていった。マキマの力は相変わらず年々増していっているようだったから、秋が近づくたびに私は恐々としていた。

 とはいえ、今いる居心地の良い場所を引っ越すつもりもなかった。この国のどこに居を構えてもマキマからは逃れられないだろうし。他国に逃げたら、今度はマキマだけでなく他国のデビルハンターやら悪魔やらに狙われる危険がある。だから私は、マキマの気が変わって私を殺そうとしませんようにと祈りながら、ここに住み続けた。

 

 

 

  ●

 

 

「いま暇?ちょっとお茶しない?」

 

 それから何年経っただろうか。九月の下旬、秋もまだ始まったばかりだというのに、マキマは私の家にやって来た。いつもはもう少し後に来るから、油断していた。心臓に悪い。

 まあ、今日は雨が降っているし、一日暇をしていたところだ。誰かと話すのも良いだろう。

 マキマを家の中に通して、お茶を淹れ、テレビをつける。「銃の悪魔」が日本に再び出現し、そして死んだというニュースが大々的に報じられている。「銃の悪魔」――あまり思い出しくない名前だ。十三年前に突如出現し、世界の数百万人の命をわずか数分で奪い、世界を恐怖に陥れ、世界全体の悪魔の力を強めた悪魔。消息不明になっていた、()()()()()()()()悪魔。

 

 マキマの手土産のお菓子を食べながら、ぼんやりニュースキャスターの声を聞く。どうやら銃の悪魔は、秋田県にかほ市に現れ、わずか数秒間で千人以上を殺戮した後、今度は東京に魔人の姿で現れて、公安の「チェンソーマン」に倒されたという。……いや、チェンソーマンってなんだ。もしかして■■■■■■■のこと?公安にいるの?なんで?

 

「……『銃の悪魔』が死んだってニュースだね」

 

 私は慎重にマキマの反応を窺う。未だ公安にいるマキマがこの件に関わっていないわけはないだろう。

 

「これね。アメリカが、持ってる銃の悪魔の肉片を復活させて、私に仕向けて来てね。『天使の悪魔』と『蛇の悪魔』と『罰の悪魔』と『未来の悪魔』と『蜘蛛の悪魔』の力で瀕死に追い込んだ」

 

 魔人にした後は、“チェンソーマン”くんに始末してもらったけどね。マキマは冷ややかに笑った。

 

「…………豪勢だね」

 

 私は適切な返事が思いつかず雑に相槌を打つ。なんともスケールの大きな話だ。

 

「その前は、ドイツが『人形の悪魔』を私に仕向けて来たり、『闇の悪魔』に地獄に呼ばれたり、ここのところ忙しいよ」

 

「……世界中からずいぶん人気だね。よく生きてたね」

 

 私は脱力して皮肉を言う。まあ、「支配の悪魔」なんて他の国からしたら脅威でしかないだろう。どうせ色々恨みも買ってそうだし。

 

「でも、これでようやく、残りの『銃の悪魔』もまとめて支配できたことだし。アメリカも他国も、私や日本を狙ってくることは、もうしばらくは無い」

 

「……『銃』の力をもう完全に使えるの?」

 

 マキマは黙って立ち上がると、窓を開けた。右腕を真っ直ぐ伸ばし、人差し指を張って親指を立て、拳銃の手真似をした。左の掌を添えて、どこまでも無邪気に可愛く、明るく言う。

 

「ぱぁん」

 

 遠くの紫の山が、半円にぽっかり抉れた。しばらくして空気が悲鳴を低く轟かせる。私は冷や汗が垂れた。

 

「……」

 

「キミが十三年前、もう少し私に力を貸してくれたら、色んな国が『銃の悪魔』を持つなんてことなく、もっと早く済んでたかもしれなかったけどね」

 

 マキマの口調は穏やかだったが、目は笑っていなかった。

 

「……結果オーライだし、いまさら昔のことを蒸し返さないでよ。私じゃ力不足だった」

 

 十三年前、内戦や銃によるテロがやたらと頻発し、暗いニュースがメディアを賑わせていた頃。ある日、轟音が響いたかと思うと、私の畑の半分が吹き飛んでしまった。町の家もいくつか瓦礫と化していた。

 数秒経って、マキマが目の前に現れた。珍しく無表情で、「銃の悪魔」とかいう、久々に物凄く強い悪魔が現れたから力を貸してと、有無を言わさぬ調子で言った。私の無残な畑は、そいつの体がほんの少しだけかすめた結果らしい。私の穏やかな日常を脅かしかねない存在だし、畑をめちゃくちゃにされた恨みもあるし、私は逆らわなかった。そしてマキマの配下の「蜘蛛の悪魔」の力でインドの高原まで移動した。そこで馬鹿デカい銃の悪魔に相対し――「銃」という名前の割にはとんでもなく格の高い悪魔だった――十秒ほど「孤立」させて足止めしたのだった。ただ、それが限界だった。あの馬鹿力で超高速で暴れ回る巨体をそれ以上留めることは私には無理だった。おまけに世界中から悪魔やデビルハンターが大挙して押し寄せてきたから、私はマキマを置いて命辛々さっさと家に戻った。「拷問の悪魔」に「粛清の悪魔」に「竜巻の悪魔」に「龍の悪魔」に「蚊の悪魔」に――。色んな国が色んなヤバい悪魔を飼っているものだ。

 聞いたところによると、その後は、殺到したおぞましい悪魔ども相手に、さしもの「銃の悪魔」も敵わなかったようで、封印されたまま八つ裂きにされて、「銃の悪魔」の肉片の熾烈な争奪戦が数秒のあいだ起こったらしい。そして「銃の悪魔」は表向き「姿をくらました」ことになり、実際は大国が抑止力として所有する兵器となったらしい。

 さすがのマキマも、大量の強力な悪魔を一瞬で一度に「支配」することがかなわず、支配下の悪魔を呼び寄せる前に、他国に銃の肉片を持ち去られてしまったらしい。ほとんど「銃の悪魔」の肉片を獲得できないまま戻ってきたマキマに、私が先に帰ったことを無表情で責められた。もう少しキミがとどまっていれば「銃」を「支配」できたのに。あのときは殺されるかと思った。

 

 そして今は、マキマが「銃」の支配してしまった。他国の「銃」の肉片も、もはや意味をなさない。マキマの力は今までは、物理的な破壊力という意味では大して強くなかったが。今は無敵じゃないか。こわごわマキマに顔を向ける。

 

「私は今もこれからもずっと、マキマや人間様の邪魔をするつもりはないけど――」

 

「今日からしばらく会えないかも。もしかしたら、これが最後かもね」

 

 マキマはふっと笑った。

 

「……死刑宣告にしては、変な言い回しだね」

 

 私の怪訝そうな口調に、マキマは首を横に振る。

 

「もしかしたら、やっと夢が叶うかもしれないんだ、そうなれば今よりずっと忙しくなる。もしかしたら、跡形もなく消えるかもしれない。どちらに転んでも、私は幸せだけどね」

 

「……そう。頑張ってね」

 

 マキマの夢とやらについて、私はそれ以上聞く気はおきなかった。どうせろくでもないだろうし。

 

「ところで、公安に来たばかりの頃、ドクマナルドが初めて日本にチェーン店を出して。黙って抜け出して銀座まで行列並んで買いに行ったこと、あったよね」

 

「そんなことするわけないじゃない。というかドックが出来たのは割と最近でしょ?私がこっちに来る直前。いつの間にか見ないけど」

 

「そうだったね」

 

 間違いを指摘されてもマキマは飄々としている。

 

「じゃあ、エイズとかアルアルシ=アルジャウザ病とか比尾山大噴火とか核爆弾とか嘆疋菌とかオオスズメバチとかタヌキモドキとか暃々とか彁とかって、覚えている?」

 

「なんとなく、かすかには。思い出したくもないのばかりだけど」

 

「それは良かった」

 

 私に一方的に質問を投げかけると、マキマは安らかな顔になった。と思いきや、再び唐突な質問を繰り出す。

 

「明日世界が消えて生まれ変わるとして。今の世界で一つだけ、何かを新しい世界に残せるとしたら、キミは何を残したい?」

 

「私」

 

 私は考える前に即答した。

 

「キミらしいね」

 

 マキマは苦笑した。そして、どこからともなく、お酒の瓶を取り出し、私に押し付ける。

 

「また今度来たら、飲もう」

 

 ラベルをしげしげ眺める。ずいぶんと高そうだ。

 

「それじゃあ、帰るよ。お邪魔しました」

 

 マキマは続けて何か言おうとしたが、口を閉じた。私も何か言おうとしたが、何を言っても今更に過ぎるような気がした。

 

「…………今更だけど、地獄から連れ出してくれて、ありがとうね」

 

 私は目をそらして呟く。マキマは微笑んで去って行った。

 そういえば、マキマへの恩はまだ返していなかった。

 

 

 ●

 

 

 それから数日後。再びドアのチャイムが鳴った。私は怪訝に思う。まさかマキマではないだろう。しばらく会えないかもなんて言っておいて。慎重に扉を開ける。初老の男がぬっと顔を出した。私は素早く、男を頭から足もとまで観察する。顔には大きな傷があり、眼は虚ろで鋭く、血と酒の臭いを漂わせ、自然体のように見えて一切隙が無い。只者でない風格がある。たぶん、人にしては異常に強い。私を殺しに来たのなら面倒だな。

 

「公安特異課の岸辺だ。ここに悪魔が隠れている通報を受けた。話を聞かせてもらおう」

 

 男は、手帳を取り出した。……公安の身分を示す手帳ではなく、ただのメモ帳をだ。

 メモ帳には、「お前が『孤独の悪魔』で、公安でマキマとバディを組んでいたことを知っている。マキマについて話がある」と書かれていた。

 

「……この家は『孤立』させてあるので、マキマの盗聴を心配しなくても大丈夫ですよ。中に入ってください」

 

 私はそう言って、岸辺と名乗った男を中に上げる。私を奇襲しに来た可能性も無くはないだろうから、一応警戒は続けた。この男は何の悪魔と契約しているんだろう。ただの人間が――悪魔の不完全な力を借りているに過ぎない――私を殺せることはまず無いとはいえ。私の正体をどうにかして突き止めて、その上で敢えて私のもとに来ているのだ(ついでに言えばアルコールを摂取した上で悪魔の棲家に突撃しているのだ)、やはり彼は明らかにただの人間ではない。悪魔を狩るデビルハンターとして、相当な実績や、強さに裏打ちされた自信があるに違いない。

 

「甘いもの、お嫌いでしたらすみません」

 

 岸辺をリビングに通し、私はお茶とお請けを出した。岸辺は椅子にかけたが、お茶にもお菓子にも手をつけはしなかった。まあ、そりゃそうか。悪魔の出すものを食べるデビルハンターがいるわけない。

 

「一応、普通のお茶とお菓子ですよ。私はヒトと同じ食べ物しか食べないですし、毒入れるなんてちんけなことするくらいなら、最初から家に上げてません」

 

「すまない。辛党なものでね」

 

 岸辺はコートから酒のボトルを取り出すと、ぐびりと一口飲んだ。彼は今は勤務中じゃないのだろうか。もしかしたら、私がここで畑をのんびり耕している間に、東京や公安の常識が変わったのかもしれない。それなら何よりだ。

 

「……岸部さん、いつ頃から公安にいらっしゃいました?失礼ですが、見た感じの年齢からは、私と時期が被っていそうですが……」

 

「もう35年になる。ずっと現場で悪魔を殺し続けてきた」

 

「じゃあ、ちょっと被っていましたか。いくらヒトと関わっていなかったとはいえ、あなたほど強そうな方を覚えていないなんて迂闊でした」

 

「お世辞はやめろ」

 

「わざわざヒトにお世辞なんて言いませんよ。……というか、どうしてここが?そもそも私のことも、当然あなたは『忘却』しているはずですが」

 

 岸辺は「伝手があった」と言うのみで答えず、そのまま続ける。

 

「公安でマキマを殺す準備をしている。協力を仰ぎたい」

 

「無理です。あいつを殺す方法なんて思いつかない。」

 

 私は即答した。私やアメリカに出来ないのなら、この男にも無理だろう。

 いや、公安にいながらマキマの「支配」の影響を逃れているとしたら、それほどの強者なのかもしれないが――あるいは単純に「支配」するメリットがデメリットを上回らなくて放置されているのか――あるいは何かこの男にはマキマも思うところがあるのか――。

 

「方法ならある。『孤独の悪魔』に参加してもらえれば、なお心強いというだけだ」

 

 私の思案をよそに、岸辺は淡々と答える。

 

「……そんな方法があるんですか?マキマの力を舐めてませんか?この世界でマキマと互角以上の悪魔はほとんどいないでしょう。地獄にはそりゃマキマより格が高い悪魔もたくさんいますが、そんな悪魔を現世に呼び出してうまくぶつけられるとはとても――。いえ、協力しない以上は、その方法とやらを私に教える筋合いはないでしょうが」

 

「……成功する可能性は見込んでいる。直接参加はしなくても、デビルハンター達と契約はできないものか?お前は、マキマから逃げてここに住んでいるんじゃないのか?」

 

 マキマを消す、か。そうしたら、私の自由を脅かすものは無いかもしれない。私はしばし黙り込む。

 

「私の力は、契約したところで十全にはヒトに貸せません。それに……」

 

「……あいつがぶっ殺されるのは別に構わないのですけど、ロクでもないこと色々やってるんだと思いますし自業自得だと思うのですけど――」

 

 私は言葉を探す。

 

「なんといいますか、マキマとは長い付き合いでして。私は地獄で生まれて――地獄って行ったことありますか?すごく嫌な場所なんですよ――たまたまマキマに会って現世に連れてってもらって。その頃からの付き合いなんです。なので、あいつの殺害計画に自分で関わるのは、気が進まないというのが正直なところですね」

 

「――要するに、マキマとあんたは友達ってことか」

 

 眉をひそめる岸辺の言葉を、即座に否定する。

 

「それは違いますよ。マキマは『支配の悪魔』ですよ?あいつはヒトの演技はうまいかもしれないですが、結局は悪魔です。周囲を支配したくてしょうがないんです。私はなんとかマキマに『支配』されることも殺されることもなく済みましたが、私を積極的に潰すよりは、放置しておく方がメリットが大きいと判断したのでしょう。一応は監視と牽制のために毎年ここにやってきていましたが。今日みたいに暗殺計画を手伝わされそうになっても、マキマと敵対する側に回らないって思ってるのかもしれません」

 

「……」

 

 岸辺は黙った。

 

「……友達ならマキマの目的は何か知っているか」

 

 話を聞け。

 

「私にはとても分かりませんよ。あいつの考えることなんて、初めからずっと」

 

 岸辺はしばらく動かなかった。虚ろな目を向ける。

 

「……知っていたとしても、俺に教える筋合いはないだろうな」

 

「それはそうです」

 

 岸辺は黙ったまま。

 

「話がそれだけなら、お引き取り下さい。それとも、デビルハンターとして悪魔を処分しますか?」

 

 彼は首を横に振る。

 

「人間様に手出すつもりがない、友好的な悪魔なら興味無い。というかマキマの前に、お前とマジバトルしたくない」

 

「……本当に人間に友好的なら、公安を去ったりしてませんよ。驕りではないですが、私が残っていれば、東京での悪魔の犠牲者はもっとずっと減るはずです」

 

「そういうことを気にする時点で、異常だ。悪魔は、自分にしか興味が無い」

 

 岸辺は的外れにも断言する。私は口をとがらせる。

 

「……それを言うなら、あなたこそ、ヒトにしては異常です。ヒトのデビルハンターは、さっさと体がぶっ壊れるか、心がぶっ壊れます。あなたはヒトなのに、そんな長い間、こんな年齢にもなって、体も心も壊れずに、公安のデビルハンターとして前線に出続けている。まともじゃない」

 

「……ぶっ壊されたくないものが、人間様には沢山あるってだけだ。悪魔に分かってもらえるか分からないけどな。そういうものが壊されるくらいなら、自分が壊れるほうがマシだって思いながら、俺はデビルハンターを続けていただけだ」

 

 岸辺は自嘲するように吐き捨てた。

 

「……俺は昔から、周りより力も運も少しだけ強かったから、今日まで生き延びてきただけだ。少しだけしか強くなかったから、自分だけがぶっ壊れないまま、周りがぶっ壊れてくのをただ見るだけで、嫌になってくるけどな」

 

「――私も、この今の生活はぶっ壊されたくないなと思いますよ。大切なものを壊す要因を摘みたいという気持ちは理解できます。マキマの正体を知ってなお挑もうとする理由が、分かってきました」

 

「いや、俺個人の私情ならいくらでも見ないふりするつもりだったけどな。人類全体にとって、益より害ある存在になったと思っただけだ」

 

 私は岸辺の目をぼんやり見つめた。岸辺は「邪魔したな」と言って立ち上がった。しかしなぜか私は、気まぐれで、彼を引き留めて座らせた。立ち上がり、リビングのクローゼットから絆創膏を取り出し、キッチンに向かい、棚から小さな空のガラス瓶を、引き出しから果物ナイフを、冷蔵庫の野菜室から玉ねぎを取り出す。左の手の甲を切る。痛。血が滲む。瓶に血を数滴垂らし、手に絆創膏を貼る。次いで、玉ねぎを微塵切りにする。眼からボロボロこぼれる涙を、瓶に数滴注ぐ。流しの蛇口を回して、水も少し入れる。瓶を軽く振って中身をかきまぜる。掌をかざし、「孤独」の力を注ぐ。血と涙と水は、澄んだ灰色の液体へと変わった。

 

 私は岸辺のところに戻って、瓶を置く。

 

「……なんだこれ」

 

 私の血と涙だということは、まあ、言わなくて良いだろう。

 

「私の力を封じ込めたものです。一回きりですが、酒にでも混ぜて飲めば、酔いが回ってる間くらいは、私の能力を少しだけ使えるようになります。周囲から自分を『孤立』したり、対象を『孤立』させたり」

 

「……手助けをしないと言った直後に、随分あっさり気が変わるもんだな」

 

 岸辺は怪訝そうな顔つきをした。

 

「いや、こんなの、私の能力をほんのちょっと真似るだけです、マキマを殺すのに使おうとしても無駄ですよ。多分、マキマから逃げる役にも立ちません。高位の悪魔相手には、ただの子供騙しです」

 

 あっさり私は答える。

 

「ただ、人間やほとんどの悪魔には十分効果があると思います。だからそのうち役に立つこともあるでしょう。……マキマの殺害が上手くいくとは思えないですが、あなたはしぶとく長生きしそうな気がしますし」

 

 岸辺は不審な目つきのまま、瓶を眺める。

 

「……これ、本当に飲んでも大丈夫なのか?なにか副作用は無いのか?」

 

「たぶん、このくらいの量なら、毒にはならないと思いますが……しばらくは、少なくとも一ヶ月くらいは、『孤独』になると思います。ご家族がいらっしゃるなら、その間うまくいかないのを覚悟した方が良いと思います。お友達とも」

 

「それなら良い。元から独りだ」

 

「女遊びもたぶんしばらく無理ですね。あなたは普段は中々モテそうですが。良い男ですし」

 

「悪魔に言われてもぞっとしねえ。女は好きだが、酒の方が好きだ」

 

 岸辺は瓶を懐に仕舞う。私はふと、疑問を口にする。

 

「……ところで、それにしても、わざわざ私を尋ねてくるなんて、協力を得られると本気で思っていたのですか?しかも独りで逆に襲撃されるとも思わなかったのですか?それとも、ぶっちゃけちょっと舐めてました?マキマから逃げた悪魔一体くらいなら、簡単に御せるだろうと」

 

 私は目を細めて声を低くする。岸辺は顔色一つ変えずに、肩をすくめた。

 

「『孤独の悪魔』を舐めるわけがないだろう。こうやって長年おとなしく隠居している悪魔なら、おとなしく話くらいは聞いてくれると思っただけだ」

 

「それに、マキマと長年バディを組んでいた奴なんて、どれだけイカれた奴なのかどうしても気になるだろ。そのツラを拝まずに死ねやしない」

 

 岸辺は酒のボトルをぐびと呷った。

 

「そうしたら、びっくりするくらいまともだ。俺が可愛がってきたデビルハンター達より、ずっとまともだ。悪魔のデビルハンターは、まともでも普通に生きていられる。羨ましい限りだ」

 

 岸辺の哀愁漂う瞳を見ても、どう声をかけたものか分からなかった。

 

「…………あなた、お酒飲みすぎじゃないですか?体壊しますよ」

 

「それ。やっぱりお前はまとも。……酒は、まともな人間の心を、少しの間は壊してくれるんだよ」

 

 岸辺は立ち上がり、今度こそ「邪魔したな」と言って去って行った。

 

 

  ●

 

 

 それから、私の家の戸口にマキマが現れることはなかったし、岸辺という男も現れることはなかった。世界が大きく変わるということもなかった。なんとなく、マキマの夢はかなわなかったのだろうという予感はあった。

 

 最後にマキマがやって来てから、二回秋が過ぎたある日のこと。私がいつものように仕事を終えて本を読んでいると、私の家の呼び鈴が鳴った。私は扉を開ける。マキマではなかった。高校の制服を来た、金髪の青年が立っていた。

 

「どうも、早川デンジって言います。突然すみません。公安のデビルハンターやってました」

 

 青年はぽりぽり頭をかいて頭を下げた。

 匂いは独特だった。公安にいた「弓矢」のデビルハンターも似た匂いがしたっけ。彼女と同じ、武器の悪魔の心臓を宿した人間か。……いや、武器の悪魔の心臓にしては、あまりにも――

 

「……あなた、ほんとに人間?その心臓、何かとんでもない悪魔……」

 

「ああ、俺チェンソーになれるんです。昔、悪魔を助けたことがあって、それから色々あって」

 

 ――とんでもない心臓の匂いがしたと思った。チェンソーになれる?■■■■■■■の心臓だって?冗談だろう?私は総毛立つ。今すぐ逃げなきゃ、まずい。本当にまずい。――しかし、この青年は、特に私を殺しに来たという雰囲気もなかった。いったん冷静になる。

 

「……それは凄いね。それで、何の用で来たの?」

 

「俺、借金地獄でクソみたいな人生だったんですけど、マキマさんに拾われて、色々世話になったんです。まァそんで、マキマさんのことについて、話があって。先生から――いや公安の岸辺から、あなたについての話を聞きまして」

 

「……そう。粗茶しか出せないけれど、良ければ上がって」

 

 デンジと名乗る青年は一瞬、ちらりと後ろを振り向いたが、そのまま従った。居間のテーブルにつき、お茶をすすってお菓子をつまみ、しばらく躊躇していたが、やがて私に自身の半生について長い話を語りだした。

 

「――それで今は、高校に通いながらデビルハンターやってるんです」

 

 私はただただ圧倒された。マキマにすべてを与えられ、マキマにすべてを奪われ、マキマのすべてを奪ったこの青年の話に。私は思わず笑ってしまった。マキマの文字通り悪魔みたいな所業にも、マキマの皮肉な最期にも、この青年のマキマへの愛にも狂気にも。

 

「……話してくれてありがとう。……とても失礼な言い方になってしまうけれど。私が最近読んだ物語のどれより、スリリングでハチャメチャな物語だったね」

 

 私は率直に感想を述べた。

 

「……それで、どうしてこの話を私に?もしかして謝罪?それなら気にしなくて良いよ。それともマキマを止めようともしなかった私を怒りに来た?マキマの同類の私を始末しに来た?」

 

 デンジは首を振った。

 

「いや、そんなんじゃないっす。俺ァマキマさんに今でも感謝してるし、マキマさんは死ぬべきだと今でも思ってます。今日来たのは……その、マキマさんはもういなくなったんスけど、代わりにあんたに会わせたい人がいまして」

 

 デンジは急に立ち上がると、「家の近くで待たせてるんで、呼んできます」と言いながら玄関まで行って家の扉を開けた。そして「待たせてごめんな。ナユタ、入ってこい」と大きな声をかける。

 

 しばらくして、足音とともに、ひとりの少女が戸口に現れた。

 肩まで伸びた黒髪に――禍々しい三重丸の瞳。私は思わず声を上げる。

 

「マキマ……?」

 

 言いながらも、すぐにマキマではないと気づく。マキマはこんなに小さくないし、こんな風に私を怯えた目で見ない。

 ……ああ、そうか、次の「支配の悪魔」か。マキマは地獄で生まれたから、現世で死んでも、また現世に転生することになったのだろう。

 

「ナユタって言います。こいつと今は暮らしていて、兄代わりとして育ててます」

 

 ……「支配の悪魔」が人間に育てられるなんて、まったくお笑い種だ。どうせすぐに「支配」されるのがオチ――いや、■■■■■■■に気に入られて心臓を宿すこの人間なら、もしかしたらうまくいくのかもしれない。

 

「岸辺先生が、あんたにお礼を伝えてくれって。中国からナユタを奪って逃げるときに、『孤独の悪魔』の力をちょっと借りたって言ってました。」

 

 そういえば、あの男に気まぐれで力を貸していた。そういうことなら、マキマに地獄から連れ出してもらった恩は、ようやく返したと言って良いだろう――もし目の前の「支配の悪魔」にとって、国に利用されるより、この青年のもとで暮らす方が幸せなら、と仮定してだけど。多分そうだろう。私は胸のつかえが一つ降りた気持ちになった。

 

「その……マキマさんを殺した俺が言うのもなんですけど……こいつと、ナユタと、『友達』になってくれちゃいませんか。『支配の悪魔』はタイトウな付き合いを望んでたってポチタに言われたんです。誰かと『家族』になりたかったって。マキマさんはああなっちゃったけど……ナユタはそうはなってほしくなくて。だからたまに、ここに通って一緒に遊んでやっても良いですか。年はちょっと離れてるかもしれませんけど……」

 

 少女は、デンジの背中に隠れ、心配そうな表情を浮かべながら、顔だけを私に見せていた。

 私は頭を下げ、申し訳なさそうな声を出す。

 

「…………本当にごめんね。私は『孤独の悪魔』だから、多分それには応えられない。友達にはなれない。……デンジ君がいてくれれば、ナユタちゃんにとっては十分だと思うよ」

 

 私は少女と視線を合わせた。禍々しい瞳を持っているけれど、実にまっすぐな顔つきをしている。ナユタは、「支配の悪魔」としては、格段にマキマより弱くなっているのだろう。今なら私でも勝てそうだ。……それでも、人間としては、格段に――。

 私が最後にマキマの眼をまっすぐ見たのはいつだったろう。いや、そもそも見ていなかっただろうか。

 私は視線をそらして呟く。

 

「…………それに、マキマと対等になれなかった私に、マキマと対等であろうとしなかった私に、いまさらその資格はないから」

 

 デンジは残念そうな顔をしたが、「今日はありがとうございました」と礼儀正しくナユタを連れて去っていった。

 

 私は棚から、ひとつの酒瓶を取り出した。マキマが最後にくれた、酒瓶。徳利とお猪口を机にならべ、酒を注いで満たす。

 

「マキマが、支配の悪魔が、家族を望んでたなんてね……」

 

 あの支配の悪魔が、本当は「支配」によらない関係を望んでいたなんて――物語なら、あまりによくできたオチじゃないか。傑作。

 私はふと思い至る。

 ……もしかしてマキマは、「支配」というコミュニケーションの手段しかもたない不器用なマキマは、私と本気で「友達」になろうとしてたのだろうか?

 

「そんなわけないか」

 

 他者にまるで関心のない、利用価値があるかないかの基準でしか測れない、「支配の悪魔」が、私に友情を見出してたなんてことはないだろう。「孤独の悪魔」が友達を求めるなんてことがないのと同じように。私はマキマにとって利用価値があった。マキマの思い通りにならないけれど、急いで処分するメリットも薄いから、放置して注視していた。私と心を通わせるふりをしつつ、「支配」する機会を絶えず窺っていた。それだけだ。……それだけに違いない。まさかマキマが数十年、未熟で不器用なコミュニケーションをはかっていたなんてことは。

 

「まさかね……」

 

 ……私は気づいていた。マキマが私をどう思ってたかなんて、私にはもう知りようがない。けれど私自身の未熟で不器用な気持ちには気づいてしまった。私にとってマキマは――。

 もし万が一、「支配の悪魔」が「支配」によらない関係を望んでいたというなら、私も同じだ。孤独を恐怖する人の心から生まれた私は結局のところ、孤独を何より恐怖していた。「友」をなにより望んでいた。そうでないなら、無人島にでも暮らしている。

 だからこそ私は、人がそこらに歩いているような田舎に住んで、家を年中「孤立」させることもなく、望めば誰でも玄関のチャイムを鳴らせるようにしていたのかもしれない。私はマキマの訪問を、心の奥底では望んでいたのかもしれない。私にとってマキマは、生まれて初めての、唯一の、そして多分最後の、特別な存在だったから。

 

「悪魔なのにね……」

 

 ヒトも悪魔も大嫌いなのに、一縷のつながりは求めてしまう。

 ひとりでいたいけれど孤独ではいたくない。

 

「……悪魔のはずなのになあ……」

 

 なんて面倒くさくて――なんて人間らしい気質なんだ。まったく我ながら、難儀な悪魔に生まれてしまったものだ。

 視界がぼやける中で、酒で喉を濡らした。杯を持ち上げたまま、窓の外の青空を見やる。

 

「ばいばいマキマ」

 

 今は亡き、友の名を呟いた。

 

 

 

 

 






・マキマにとって主人公が利用価値の大きい駒に過ぎなかったか否かの解釈は、マキマが果たして本当にポチタの言うように「家族」や「愛」などといったものを望む存在だったのか否かについての解釈などとあわせ、この二次創作において特に筆者として答えを出すつもりがなく、そのため原作のマキマと比して激しく乖離していないはずと考えている。
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