大崎さんには負けられない。   作:バナハロ

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プロローグ
始まりの日。


 高校生活の始まりは、誰もがバラ色生活のスタートに感じる事だろう。何せ、高校とは青春の代名詞。人によって様々だが、友達とバカやるも良し、彼女を作って思い出を刻むも良し、部活に入ってスポーツに真剣に打ち込むも良し、愛好会を作って好成績を残すとは別の目標を立てるも良し……とにかく、なんでも出来る時期なのだ。

 俺も、新しく始まる高校生活に胸を躍らせていた。何せ、中学まではソシャゲに全てを注ぎ込み、友達や彼女を作ることなどなかったのだ。

 その結果、残ったのは虚無感のみ……ということを、中学の卒業式を迎えて思った。いや、正直、今でも少しやってるんだけどね……。そんなすぐには卒業出来ないから。

 そんな事はさておき、とにかく俺はこれから変わるんだ。まだどんな青春を送るかは考えていないけど、友達でも彼女でも部活でも愛好会でも作って、みんなで仲良くワイワイやる。

 この入学式後が、その第一歩だ……と、思っていた時期が私にもありました! 

 

「はい、アルベールー」

「ひぃん……ず、ズルい……! もう、レヴィオンはこれだから嫌い……」

「いやいや、甜花の黄金都市も似たようなもんだからね」

「そ、そんな事ないよ……! 少なくとも……甜花のデッキは、一枚のカードで……逆転されるものじゃ、無いし……」

 

 こうして、クラスの女の子と友達になってゲームをやるようになっていた。まさかのスマホゲームに逆戻りである。いや、一緒に遊ぶ相手がいる以上、全くもって前と同じというわけでもない。

 ただ、まぁ少し虚無感はあるよね。

 事の発端は、入学初日。友達欲しいなーと思っていたけど、スマホ以外の友達がいなかった俺は、話しかけるきっかけすら見つからなかった。

 そんな中、教室に今、一緒に遊んでいる子が、グスッと鼻を鳴らしながら入って来たのだ。

 

『ぐすっ……な、なーちゃん……別のクラス……たすけて……』

『え、ちょっ……な、なんで泣いてんの⁉︎』

 

 俺に妹がいる事もあって、反射的に大慌てでフォローしたのがきっかけだ。

 で、その後、何とか泣き止ませて(ゲーセンでとったデビ太郎のモチモチストラップを差し出すことで)、少し話せるようになって、その日の放課後に遊びに誘ってみた。

 

『あ、ね、ねぇ! よかったらこの後、飯行かない?』

『え……て、甜花……お昼寝したいから、嫌だ……』

 

 まさかの友達との親睦よりもお昼寝を取られてしまい、俺の中に大きなトラウマを残されるハメになった。誘い慣れてない奴が誘って断られると本当に死にたくなるんですよ……。

 で、その日の帰り際、ふと独り言で「仕方ない……家で、A○EXでもするか……」と、呟いた時だ。

 急に俺の肩に手を置き、急接近して声を掛けてきた。

 

『て、甜花もっ……一緒に、やりたい……! フレンドになろう……?』

 

 との事で、初日から一応、連絡先を交換するに至ったのだ。で、次の日以降は土日だったのだが、その日は二日ともA○EXだけでなく、モンハン、アソビ○全、グラブルVSなど様々なゲームで交流を交わし、今日に至る。

 現在、二人でお昼を食べながら、スマホゲームをしている。

 

「そ、そもそも……ず、ズルい……! 甜花対策に、熾天使の剣3枚も積むなんて……!」

「そりゃ、正直、俺は甜花ちゃん以外とこのゲームやらんし。甜花ちゃん対策取るのは普通じゃね?」

「うう……こうなったら、甜花も小宮くん対策を……」

「やめろよ」

「にへへ……やめない……」

 

 なんて話しながら、二人でゲームをぽちぽちいじっていると、教室に先生が現れた。

 

「あ、先生来たよ」

「むっ……せっかく、対策が終わった、のに……」

「後でいくらでも相手するから」

 

 もしくは他のゲームやっても良いんだけどね。グラブルとか。

 実を言うと、卒業してから甜花ちゃんと会うまでの間、ソシャゲにはなるべく触れないようにしていたので、また割と置いていかれている。

 ただでさえ、俺は無課金勢。その上、リミテッド(強キャラ)と干支(強キャラ)は当たらない病気にかかっているので、どこまで行っても限界がある。

 ちなみに、唯一にして多数持っているリミテッドが杉玉。幸か不幸か、これだけ7回当たってるから、水だけ神石編成という課金者向けの編成が出来てる。

 ……でも、こうして一緒にゲームできる友達が出来たって事は、またガチでやっても良いのかな……。それこそ、バイトとかして課金してみても……。

 

「……ちなみに甜花は、課金とかした事ある?」

「……ノーコメントで……」

 

 あるのか……。まぁ、薄々そんな感じはしてましたけどね。

 

 ×××

 

 さて、昼休み。とりあえず、高校が始まってから初の昼休みであり、給食がない生活は初めてのことだ。

 学食、というものが気になった俺で母ちゃんに弁当を断った俺だが、登校中に「あれ? 学食って一人で行って平気なのかな」と勝手に不安になり、コンビニでざるそばを買った。すみませんね、小心者で。

 

「甜花、飯食わん?」

 

 ちなみに、下の名前で呼ぶようになったのは、甜花の一人称が「甜花」だからだ。大崎、よりも呼びやすいし、甜花自身も気にしてなさそうだったので、俺も甜花と呼ばせてもらっている。

 

「う、うん……! ……にへへ……友達と、お昼……!」

「あー良いよな。給食みたいに一緒に食べる人が決められてなくて」

「……甜花、給食中もあまり……同じ班の人と、話さなかったから……」

「……そうか」

 

 俺と一緒かよ……。なんか、気持ちが分かるのが困る。

 ま、悲観することはない。これから一緒に食べるんだからな。

 

「甜花、弁当は?」

「……おべんとう?」

 

 え、留学生? お弁当の発音がひらがなに聞こえた。

 

「いや、昼飯」

「……あ、そ、そっか……給食ないから、自分で用意しないと……!」

「買ってないの?」

「ど、どうしよう……甜花、お金ない……」

 

 おいおい……本当に高校生ですか……? 

 

「こ、この前のグラフェス、張り切り過ぎて……」

 

 しかも同情の余地無しときましたか……。とはいえ、まぁ生活リズムの変化、と言えば分からなくもないので、とりあえず今日くらいは優しくしておくか。

 

「なら、ざるそば半分食べて良いよ」

「え……?」

「箸は……俺が逆側使うから。はい。先に食べて」

「……良いの?」

「良いの。代わりに帰ったらランク戦ね。カジュアル飽きてきたからそろそろ本格的にやりたい」

「う、うん……分かった……!」

 

 よし、決まり。そんなわけで、箸を手渡した。

 

「良いよ、先に」

「あ、ありがと……にへへっ、優しい……」

「っ……」

 

 ……ダメなとこが目立ってて忘れてた。この子、困った事に、普通に可愛いんだよな……。あー、守ってやりてー! 

 っと……いかんいかん、あまりにオープンになり過ぎると下心が出る。無いとは言えんけど、何もそういう裏があって仲良くしてるわけじゃない。単純に友達になりたいし、甜花を逃したら多分、友達ができなくなるから誘ってる。

 

「よし、じゃあとりあえずやるか! シャドバ!」

「う、うん……! 今回は、勝つよ……!」

 

 なんて言い合いながらスマホを起動した直後だった。教室の扉が勢いよく開かれると共に、後ろから大声が響いてきた。

 

「甜花ちゃーん! お弁当持ってきたよー!」

「! な、なーちゃん……!」

 

 え、噂のなーちゃん? たまにゲーム中に、甜花がよく自慢してきた双子の妹さんだっけ。

 

「一緒に食べ…………はっ?」

「? ……なーちゃん?」

「甜花ちゃん、その男誰?」

 

 ……え、何この冷たい声。雪女か何かなの? 本当に甜花の妹? 

 

「え……あ、なーちゃんは、初めてだね……。えっと……小宮秀辛、くん……」

「……ふぅん?」

 

 軽く会釈したものの、甘奈の目つきは冷たいままだ。何これ、喧嘩売られてる? 

 ……と、思ったが、なーちゃんと呼ばれた少女はニコリと笑みを浮かべた。

 

「大崎甘奈です。よろしく☆」

「あ、うん。よろしく」

 

 握手を求められたので、とりあえず応じる。直後、甘奈は足元をもつれさせた。

 

「わっ……!」

「ちょっ、あぶなっ……!」

 

 慌てて支えようとしたが、咄嗟だったので甘奈は俺に抱きつくように姿勢を崩してくる。

 

「ごめんごめん☆ ちょっと慌てちゃったみたい」

「な、なーちゃん……大丈夫……?」

「大丈夫だよ。甜花ちゃん」

 

 まぁ、怪我は無さそうだけど……しかし、まぁ甜花の妹って感じだな。ドジというか何処か抜けてるというか……。でも、妹の分、社交性はありそうではあるけどね。

 なんて思っている時だった。耳元で、ボソッと囁かれた。

 

「……甜花ちゃんを変な目で見るようなら、これから夜道では気をつけてね☆」

「……」

 

 ……。

 

「さ、甜花ちゃん。コンビニ弁当なんて身体に悪いし、甘奈が作ったお弁当食べて!」

「あ、ありがと……そっか、甜花のお弁当、なーちゃんが用意してて、くれたんだ……!」

「もち☆」

 

 ……やばい女だ、こいつ……。シスコンどころじゃねえ、姉を守る最後の盾とも呼べる女だ……。

 目の前で勝手に他人の机に座った甘奈が、甜花の机に弁当を広げる。

 なんつーか……やばいなコイツ……。姉のためなら手段は選ばない感じ、割とマジで普通じゃない。

 これは……どうしよう。そもそも変な目で見る、という基準も曖昧な上に、それらの判断を下すのも全部、あの妹だ。このままじゃ、俺の命が危ない。

 これは……甜花と友達になるのは諦めた方が……と、思った時だ。ふと、大崎妹と目が合った。

 

「……」

「……ふっ」

「!」

 

 ……そ、そうだ。俺は中学でインキャは卒業すると決めたんだ。ならば、例え誰とぶつかってでも、友達を作る! そのためには、まず第一歩として甜花と仲良くなるしかない! 

 夜道? やってみろコラ。女に手を挙げるほどクズじゃないつもりではあるが、命の危機となればそうも言っていられない。そっちが来るならやってやるよ! 

 

「甜花、とりあえず妹さんが弁当をくれるなら、そばは平気?」

「う、うん……。ごめんね……?」

「気にしなくて良いよ。とりあえず、飯を食った後で、ゲームはゆっくりやろうな」

「そ、そうだね……!」

「‼︎」

 

 大崎も、驚愕の表情でこっちを見る。が、それに対して俺はほくそ笑んで答えてやる。甘く見るなよ、大崎甘奈。青春に憧れる男子を甘く見るな! 

 

「にへへ……なーちゃんと、小宮くんと……一緒にご飯……! 甜花、嬉しい……!」

「「……そうだね☆」」

 

 無邪気に大崎が作ったご飯を食べる甜花を挟んで、俺と大崎は火花を散らす。これから先の高校生活、何がどう転ぶか分かったものではないが、少なくとも悪くないスタートダッシュを切れた。

 何せ、友達と好敵手が同時に出来たのだ。こんなカオスなスタート、そうそう切れるものではない。

 甜花をめぐる決戦、存分にやり合ってやるよ。

 

 

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