大崎さんには負けられない。   作:バナハロ

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プレゼントにかけるべきは金ではなくエンタメ。

 退院してからも、しばらくは松葉杖。片足首折れただけで、移動には両腕と残ったもう片方の足を使わなければならない。やっぱり、怪我なんてするものではないね。

 移動がかなり不便になったにも関わらず、入院する前より遥かに忙しくなった。

 現在はテスト期間。あと一週間で試験が始まる……にも関わらず、まず昼休み。勉強を教わると銘打って、屋上で飾り付けの相談。

 

「大体、準備は整ってきたよ。あとは当日、飾るだけ」

「クリスマスも兼ねてるから、ミニツリーとかの用意は?」

「元々、うちにある奴使うよ」

「それにさ、デビ太郎とかA○EXのストラップとか飾ったら面白いんじゃね?」

「わっ……良いかも」

「って思ったから、色々持ってきてあるよ」

 

 言いながら、手に持ってる紙袋をひっくり返す。落ちたのは、俺がハマっていたゲームやアニメ、漫画のキーホルダーだ。中には自作したものもある。

 

「あ、その袋それだったんだ……。もう、怪我してるのに荷物増やすようなことして」

「良いんだよ。使えそうなもんがあれば持って帰ってもらうから」

「……あ、うん。まぁ良いけど」

 

 そんなわけで、飯を食べながら二人で中のキーホルダーを漁る。

 

「これ何?」

「グフの盾」

「グフ?」

 

 イントネーション。なんで俺が言った後で間違えるんだよ。

 

「モビルスーツだよ。ガンダムに出てくる青い巨星」

「いやそう言われても分からないけど……あ、これ可愛い! これは?」

「アシマリ。俺が大好きなポケモン」

「はえ〜……甘奈もこれ好きかも。……気が合うかもね?」

 

 っ、そ、そういうのやめよう! てか、そもそも甜花のこと大好きな時点で趣味が一緒なのはわかってるだろ。

 そんな中、大崎が「あっ……!」と嬉しそうな声をあげて一つのストラップを手に取る。

 

「これ、プラウラーじゃない⁉︎」

「ああ、そうだよ」

 

 プラウラーとは、みんな大好きA○EXに出てくるサブマシンガン。ケアパッケージという救援物資からしか出て来ない特殊なSMGだ。装填数35、単発15ダメージの上、鬼の連射速度を誇る最強のSMGだ。現在のケアパケ武器では、トリプルテイクの次に使いやすい。

 ……甜花はともかく、大崎みたいな最近の女子高生がSMGを見て喜ぶようになったのは、俺の所為なのだろうか? 

 俺の複雑な心境を他所に、目を輝かせた大崎は聞いてくる。

 

「これどこで買ったの⁉︎」

「自作した」

「自作⁉︎ 何者ほんとに⁉︎」

 

 や、そんな大したもんじゃないよ。プラ板とプラモのランナーとかを削って色塗って重ねただけだから。

 よーく見れば手作り感に気付くと思う。引き金とか引けるように細工したかったんだけど、流石に無理だった。

 

「でもなんでプラウラー? あんまりケアパケ武器好きじゃないって言ってなかった?」

「昔は普通に落ちてる武器だったんだよ。5点バーストのサブマシンガンで、セレクトファイアってポップアップをつけるとフルオートに出来る奴」

「そうだったんだ……」

「その時、愛し過ぎてて自作した。他にもほら、EVA-8、ウイングマンのもある」

「す、すごい……ね、甘奈にR-301作って!」

「今度な」

「やたっ……!」

 

 ……う、嬉しそうに……。これは、下手なもの作れないぞ。

 他にも、色々あるデビ太郎やらキングワルりんやらモンスターボールやら、もうやっていないゲームのキャラまでいくつか見繕い、俺が持ってきたビニール袋に大崎はしまった。

 

「えへへ、たくさん借りちゃった。ありがとう!」

 

 ……あげないからね? 貸すだけだからね? 

 

 ×××

 

 さて、昼休みが終わった後は、放課後である。これまた勉強をする、という名目で甜花とケーキ作りの練習。場所は大崎家。

 ちなみに、大崎も一緒。名目は「俺がクリスマスに作るケーキの試食だけど、甜花には料理を教えてあげるって伝えてある」という頭がこんがらがりそうな理由である。

 

「とりあえず、今日のはチーズケーキな」

「おお〜……美味しそう……!」

 

 完成し、甜花と一緒に大崎の前にお皿を置く。早速、フォークで先端を割いて掬った大崎が口へ運ぶ……様子を、甜花は目を爛々とさせながら緊張気味に眺めていた。可愛い。

 もぐっ、もぐっ……と、咀嚼してから、大崎は思いっきり目を見開く。

 

「美味しい!」

「にへへっ……」

 

 甜花が嬉しそうにはにかむ。俺は隣で指示出してただけ。作ったのは甜花だからな。

 

「美味しいのは結構だが、どのケーキが良いか教えてくれよ。てか、なんなら小さいケーキを少しずつ作ってやっても良いけど」

「うーん……それやると、体重が……」

「なーちゃん、全然太ってない、よ……?」

「や、甘奈じゃなくて甜花ちゃんの……」

「ひぃんっ……⁉︎」

 

 まぁ俺も冗談のつもりで提案したから。とりあえず、二人で試食する様子を眺めながら、俺は台所の片付けを進めつつ、話しかけた。

 

「それなら、残りは両親に取っといてやれよ。お前ら、試食だからって食い過ぎると死ぬぞ」

「……た、確かに……?」

「ぱ、パパならもう手遅れだし、いくら食べても平気だよねっ!」

 

 ひでぇこと言いやがる……。俺もいつか将来、娘が出来たらこんな態度を取られるんだろうか? そんなの、普通に死にたくなる。妹でさえ溺愛しているのに、俺が娘を溺愛しないわけがないからな。

 ……ていうか、まず果穂に反抗期が訪れたらと思うと……。

 

「……」

 

 ……考えるのはやめよう。ただでさえ疲れてるのに。

 や、ホント甜花に料理を教えるのは大変だよ……。やる気十分なのは良い。ちゃんと邪魔にならないよう、長い髪をサイドポニーに束ね、腕捲りをしてエプロンもデビ太郎のクソ可愛い、鼻血出そうになる程、似合ってる奴で死にそうになる。

 その上、素直でありがたいんだけど……たとえば、生クリームを仕立てるために泡立て器使う時も、ボウルをひっくり返すのは一度や二度じゃない。包丁を使う時だって、指が真下に来ることもある。

 こっちの心臓がヒヤヒヤだよ……。甜花に泣かれると俺も嫌だ、というのもあるけど、何より大崎に殺される。ちょうど包丁あるし。

 

「……はぁ」

 

 片付け大変だよ……。片足使えないから尚更……。でも、一応教えている立場の俺が片付けをしないと不自然だ。二人が食べている間に、手早く片付けねえと……。

 

 ×××

 

 大崎家での仕事を終え、ようやく帰宅……と、思ったが、まだダメだ。二人の誕プレを買わなければならない。

 そんなわけで、退院してから色んなショッピングモールを見てまわっている……が、やっぱダメだ。何を渡せば良いのか分からん。果穂ならヒーロー系のものを渡せば安パイだが、他の女子ならそうもいかないだろう。……いや、二人ともデビ太郎関係の何かをやれば喜びはしそうだな。

 しかし……そうなると、キャラ物グッズはかなり値段が終わってるし、格好つけて甜花の料理練習の材料費を少しだけ出してあげたりとかしている身としては、あんま高いのは勘弁だ。

 

「……やはり、アレしかないのか」

 

 桑山さんに頼るしかないか……と、思いながら、松葉杖を付いていると、後ろから「ヒデちゃん……?」と声を掛けられる。振り返ると、桑山さんが驚いた目をしていた。

 

「あ、どうも……」

「どうしたの? その足」

「あ〜……ちょっと、ヤンチャしちまいまして……」

「あらあら……もしかして、普段しない行動をして怪我した、みたいな?」

「……」

 

 なんで分かるんだよ。エスパーかあんたは。

 あの時の話はいまいち原因を思い出せないだけあって話したくない。それより、話を逸らそう。

 

「桑山さんは仕事は?」

「買い出し中よ」

 

 確か、全部手作りの店なんだっけ? つまり、その袋の中は材料とかそういうのか。

 ここで会えたのはちょうど良いや。とりあえずお店にお邪魔して、何か選ぼう。

 

「桑山さん、今からお店お邪魔して良いですか?」

「良いけど……果穂ちゃんのクリスマスプレゼント?」

「あ、いえ。今日はちょっと別の……」

「あ、前に言ってたクラスの子?」

「まぁ……そうですね。特に、片方には世話になったんで、良いの買いたいんですけど……どんなのが良いかなと思って……」

 

 ……なんすか、その生暖かい目は。

 

「ふふ、クリスマスに、女の子にプレゼントなんて……本当に仲良しになったのね?」

「や、そういうんじゃないんで。世話になったから……」

「はいはい。で、どんなの渡したいの?」

「それが困ってましてね……その子の姉と俺の妹にも渡したいし、でも資金は最大限度額5000円しかなくて……どうしたら良いですかね?」

「……」

 

 すると、少しむっと考え込むような姿勢を取る。仕事中なのにこんな質問にも真剣に考えていただいて……どうもありがとうございます。

 しばらく黙り込んだ後、ふと何か良い案が浮かんだのか、笑顔で提案してくれた。

 

「手作りとかどう?」

「……は?」

 

 いきなり何を言い出すんだこの人は。

 

「ヒデちゃんが作れば、コストなんてかからないでしょ?」

「それはそうですけど……でも、特に妹の方には入院中、めっちゃ世話になったんで、良いもん渡したいんですよ」

「良い物、を決めるのは貰う側だよ? 要するに、気持ちが大事にも限度があるから、女の子にウルトラマンの人形とか送っても仕方ないけど、想いが篭った物をあげれば大体、喜んでくれると思うよ?」

 

 ……前も思ったけど、ほんとこの人ロマンチストだな。学生時代、かなり憧れたんじゃないだろうか。

 でも、この人の事だ。憧れなくても普通にモテてそう。だって胸とか死ぬ前に一度は揉んでみたいと思えるほど柔らかそうだし。

 ……っと、そんなことよりも、相談だ相談。手作りって言うと、飯とかか? 

 

「でも、俺もうだいぶ二人に手作り料理ご馳走してますし……今更、手作りのもんを渡して喜ぶかは……」

「手編みの物とかは?」

「え、使える物ってそういう?」

「うん」

 

 手編みか……一応、出来なくもない。経験はあるけど、それでも素人に毛が生えた程度。

 ……でも、金がないのも確かなんだよな……。

 

「コツだけなら、教えてあげられるよ?」

「え、桑山さんがですか……?」

「うん」

 

 ……ここまで言ってくれているんだ。お言葉に甘えて良いかもしれない。

 

「じゃあ……よろしくお願いします」

「うん。じゃあ、早速今から見てあげるね」

 

 ふっ、これから更に忙しくなるぜ……。でも、もう頑張るしかないさ。

 

 

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