大崎さんには負けられない。   作:バナハロ

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激突編
クラス分けとか、教員は考えてるようで考えてないから。


 高校二年生、高校生活にも慣れ、先輩も減り、後輩が増え、おそらく遊ぶ機会が一番多い学年に、俺と甘奈と甜花は進級した。

 高校2年生にはイベントが多い。まずうちの高校のみかもだが、4月には大学見学。進学校を意識しているうちの高校は、そういうのもしないといけない。

 そして6月には校外学習。なんと、デ○ズニーランドに行けちゃいます。経営に関する話をランドの方から聞く機会を与えられ、それが終わった後は遊び回れる。

 9月には修学旅行。しかも、なんと沖縄! 9月だから、まだ海に入れるという奇跡! 最高だー! 今年の夏はいつもより長いぜ! 

 とにかく、他にも色々とイベントがあるが、俺は楽しみであることこの上なかった。

 

「おはよー、ヒデちゃん!」

「お、おはよ……ヒデ、くん……にへへ」

 

 そんなウキウキな俺に、二人の天使が声をかけて来た。

 

「甘奈、甜花。おはよう」

「今日から2年生だね」

「今年は、なーちゃんも……同じクラス、かな……」

「だったら良いな」

 

 うちの高校は高三から文理選択。そのため、少しでも同じクラスになれるよう調整、みたいなことは出来なかった。ちなみに、俺は文系の予定。まだ何も決まってないけど、とりあえず楽な方行きたいから。

 

「同じだろ。少なくとも、さ……ささ……笹本? だっけ? あいつと同じクラスは無いでしょ。もう小学生じゃないし、あからさまに仲悪そうな奴と同じクラスに入れる、みたいな反強制的なアレはしないと思うし」

「……だよね」

 

 というか、小学生の頃のアレはなんなんだろうな。もちろん、証拠があるわけじゃないけど、心なしか俺はいつもクラスで浮いていた気がする。あれ? あれってもしかしてクラスじゃなくて俺の所為……? 

 ……考えないようにしよう。ついうっかり泣いてしまいそうだ。

 そうこうしているうちに、校門前まできた。なんか見たような見ていないような顔が昇降口に向かう。どんだけ俺の交友関係の幅は狭いんだ。

 昇降口前に、クラス分け表が貼ってあった。

 

「お、あるじゃん。見ようぜ」

「うん」

「今年こそ、三人一緒が良いね?」

「だな」

 

 去年、割とマジで寂しかったんだろうな、甘奈の奴。まぁでも、確かに仲良し三人の中で一人だけ違うクラスってのはキツいわな。

 まぁでも、先生方だって鬼じゃないし、その辺は空気読んでくれるだろう。仮にダメでも、隣のクラスくらいとかならすぐ会いに行けるし……。

 

「あっ、甘奈のあった! わっ……甜花ちゃんも一緒だよ!」

「ほ、ほんと……? 何処……?」

「ほら、あそこ」

「わっ……ほ、ほんとだ……! にへへっ、やった……!」

「やったね! 今年こそは同じクラスだよー!」

 

 ギューっと抱き合う二人。いやぁ、去年見たら不愉快極まりなかったろうに、今となっては心の底から「良かったね」と言ってやれる。……でもまあ、今は二人の世界だし邪魔はしないが。

 さて、俺もいい加減、自分のクラスを探さないと……というか、まず大崎姉妹のはだれだ? ……あ、アレか。大崎って二つ並んでるから分かりやすい。

 てか、そのクラスを辿って行けば分かるじゃん。えーっと……お……金子、木下……倉田、け……夏油……夏油って苗字の人、本当にいるのか。で、次は……佐藤? 

 あ、あれ……おかしいな。あっ、と、隣のクラスか……。隣のクラスの……こ、小林……ジョニー……あれ? またいない……。

 そのまま隣、さらに隣……と、見て行った結果、いた。一番端っこのクラスに。はっ、はははっ……。

 

「あれ? ヒデちゃんは?」

「分かんない……どこ行っちゃった、のかな……?」

 

 そんな声が聞こえ、俺は逃げるようにその場から去ってしまう。俺は別に悪くないのに、なんか気まずさを感じて逃げてしまった。

 

 ×××

 

 クラス? もちろん、馴染めなかったよ。いや、すごいよね。運って。まず俺の前の席があの佐々木というね。

 その上で、斜め前もサッカー部、左隣もサッカー部、右隣はサッカー部のマネージャーの女子、左斜め後ろもサッカー部、真後ろはバスケ部、右斜め後ろもバスケ部。つまり、馴染めるわけがなかった。

 久しぶりにクラスで誰とも会話することなく教室を出たな。

 

「次の席替えが待ち遠しい……」

 

 思わず遠い目をしながら昇降口を出ると、やたらと映える二人の美少女が待っていた。

 

「あ、ヒデちゃん遅いよ! ていうか、朝いきなりいなくなったでしょー?」

「も、もう……甜花達……探して、遅刻しそうになっちゃったよ……?」

 

 ……あれ、なんだろうこの気持ち……なんか、胸の中が満たされて行くような、この感じは……。

 そうだ、いくらクラスが変わったって、俺にはこうしてわざわざ別の昇降口まで迎えに来てくれる二人がいる。

 たかだか別のクラスになったくらいで、俺は……! 

 

「甘奈、甜花ー!」

「ぎゃえええええっっ⁉︎」

「わあっ、大胆……!」

 

 思わず二人をまとめてハグしてしまった。

 

「ちょっ、ひ、ひひヒデちゃん! 人が……人が見てるから……!」

「愛してるぞお前ら!」

「にへへ……巻き込まれちゃった……」

 

 そのまましばらく気が済むまで両腕に力を込めた。勿論、照れが爆発した甘奈に、鼻の頭へ張り手をもらい、正気に戻った。

 

「も、もう……! そういうのは、誰もいないところでやって……!」

「あの……鼻血出ちゃったんだけど……」

「ほら、ティッシュ。女子力高いでしょ?」

「いや、あるからいい。ティッシュとハンカチとアルコールスプレーは嗜みだろ」

「この人にいつか絶対、女子力で勝ってやる……!」

「あの、二人とも……そろそろ事務所行かないと……」

 

 甜花のセリフで、ようやく学校を出ることにした。

 ここから事務所までは電車。なので、まずは駅に向かう必要がある。俺の場合は事務所の最寄りがさらに自宅の最寄りでもあるため楽だが、二人は家から真逆の方向。まぁ、だからといって何がどうというわけでもないが。

 ぼんやりと歩いていると、甘奈が聞いてきた。

 

「そっちはどうだった? クラス。楽しそうな人とかいないの?」

「360度あらゆる角度をサッカー部とバスケ部に囲まれてる俺の話する?」

「……ごめん」

「しかも佐々木の取り巻きにいたサッカー部の連中がいてさぁ。もうあれ完全に意図的に無視してるから。ゴールデンウィークまでに、席替えしないといじめが始まるぞあれ」

「え……そ、そんな事になったら、甘奈……」

「おいおい、俺がいじめられたままで終わるとでも? 手を出してくるようなら、こっちはコンパスでも差し出すよ」

「ヒデくん……仕事人みたい……カッコいい……!」

「いや褒めないで甜花ちゃん! 甜花ちゃんに褒められると、この人も甘奈も本気にしちゃうから!」

「お前もかよ」

 

 お前はダメだろ、女の子だよね、一応。いや男でもダメだが。

 そんな中、俺の手を、甘奈が横からきゅっと握る。何かと思って横を見ると、少し心配そうな顔で俺を見ていた。

 

「でも……本当にいじめられそうになったら、すぐに言ってね。甘奈が、助けてあげるから」

「て、甜花も……協力する、から……!」

「……大丈夫だよ。お前らに守られなくても、自分の身くらい自分で守れる」

 

 ていうか、女の子に守ってもらうとかダサ過ぎでしょ。男としてないわ。

 

「お前らはクラスどうなん?」

「めっちゃ楽しいよ!」

 

 即答かよ。

 

「う、うん……! 甜花も、なーちゃんと一緒に友達、出来た……!」

「しかも、アイドルやってる甘奈たちのこと知っててくれてさぁ。今度みんなで1○9行く約束までしちゃったんだよねー」

「甜花は、少し緊張……するけど……でも、楽しみ……!」

「へー、良かったじゃん」

 

 まぁ、良い奴には良い奴が寄ってくるもんだよな。結局、そういうとこなんだよ。人間関係。

 でも、気になるのはそこじゃない。

 

「やー、その……男子とは?」

「え、あ……」

「男子もめっちゃ良い人多いよ! 甘奈の隣の……なんだっけ。小池くん? サッカー部の。ゴールキーパーで渋くてカッコ良いの! そんな人と、少し話せちゃったんだ」

「……あそう」

「ひぃん……甜花の妹、すごくバカ……」

 

 ……や、まぁ良いけどね。友達が出来ることは別に。男であれ女であれ。

 

「……俺も、友達作るためにまた他の女の子にお弁当作ってきたりしようかなー」

「は? だ、ダメ!」

「なんで?」

「甘奈がいるからに決まってんじゃん!」

「……じゃあ、お前もダメ」

「何が? ……あっ。……そんなことで怒ったの?」

「……」

 

 うるせーな、ガキだよ俺はどうせ。……喧嘩になるかも。いや、でもまぁ喧嘩になっても別に良いし……いや、良くないけど、でも……どうしよう。やっぱ今からでも謝ろうかな……。

 ……なんて、ヒヨっている間に、甘奈がクスッと微笑み、俺の頭に手を置いた。

 

「……ふふ、ヒデちゃん。可愛い。……大丈夫、甘奈はヒデちゃんのものだよ」

「……な、何言ってんの……」

「……ごめん。今のは甘奈も普通に恥ずかしかったカモ……」

「……」

「……」

 

 二人揃って顔を赤くし、俯く。そんな中、甘奈の隣にいる甜花のお腹から「ぐぅ……」という音が鳴った。

 

「甜花、おなかへった……」

「っ、そ、そうだね。甜花ちゃん、ご飯食べないとね!」

「てか、何食うか? そろそろ決めないとな!」

 

 そうだそうだ、今日は午前で終わりだし、飯食わないとな! 

 

 ×××

 

 今日の仕事が終わった。俺と甜花と甘奈と果穂の四人で帰るため、俺は三人が着替え終えるまで待機。

 誰もいない部屋のソファーで寝転がりながら待機していると、俺の頬にふにっと指が当てられる。

 

「ヒーデちゃんっ、お待たせ」

「んっ……おお。もう行く?」

「ん、甘奈だけ先に出てきた。……あっ、もう少し寝てて」

「は?」

 

 どうした? なんて聞くまでもなく、甘奈はソファーの前に立つと、俺の上半身を起こしてから座り、俺の頭を膝の上に置いた。

 

「っ、な、何……?」

「この前の、膝枕……咲耶さんだけ、ズルいし……」

「……あ、ああ」

 

 っ……や、柔らかいな……。いや、でも柔らかいなんて言ったら、太ってるって言ってるって思われるのかな……。

 

「どう?」

「……」

 

 やばっ、感想を言う前に聞かれてしまった……え、えっと……気持ち良い? いや、なんか変態的だな……え、えっと……でも、黙ってるのも良く無いし……えっと……。

 

「い、良い脚してるね……?」

「え……? ……っ、きっ、ききっ、急に何言ってんの⁉︎」

「ご、ごごごっ、ゴギガガガギゴめん!」

「も、もうっ……でも、ありがと……」

「っ、お、おう……」

「お礼に、頭撫でてあげる」

 

 ……なんだこれ、なんなんだこの感じ……。なんか、こう……甘えるみたいな感じ……。

 

「……甜花さん、どうしましょう……」

「……分からないよ……」

 

 そんな二人の声が耳に入っても、俺は気にする余裕もなく、甘奈の太ももを堪能した。

 5分後、二人の視線に気付いた甘奈が立ち上がったことにより、俺はソファーから落とされた。

 

 

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