大崎さんには負けられない。   作:バナハロ

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無意識って怖いね。

 誕生日当日。今日も今日とてお仕事。わざとです。もしかしたら、他の子達に祝ってもらえるんじゃねーかなと思って。

 プレゼントが欲しいとかじゃ……いや嘘。貰えるなら欲しいけど、どちらかと言うと「おめでとう」って言って欲しい感じ。今まで祝ってもらったことないから。

 さて、そんな日の事務所だが……すごいよね。みんな外回りかオフかの二択だわ。一人残らず。

 唯一、いるのが甘奈と甜花と桑山さん。嬉しいし祝ってくれたけど、ある意味わかってた人たちじゃん! 甘奈とはこの後一緒にどっか行くしよ! 

 

「はぁ……」

 

 思わずため息が漏れる。はーあ……なんか、俺ってこんなんばっかだな。もしかして、物欲センサー働いちゃってんの? 

 まぁ、でもそんなため息もさておき、仕事は仕事。必死に仕事を進め、ようやく終業時間となった。

 スマホをふと見ると、大量のメッセージが届いていた。

 

「えっ?」

 

 何かと思ってみると、アイドルの半数以上からお祝いの言葉が届いていた。

 

「……」

 

 やばい、文だけでも普通に嬉しかった。まさか、陰キャラJAPAN代表を取れる自分が、たった二年でこんな風に祝ってもらえるなんて……。

 感動で少し目に涙が浮かぶ。

 

「うおおおおお‼︎ 俺もう死んでも良いいいいいいい‼︎」

「ダメだよ!」

「え?」

 

 甘奈に聞かれていた。割と本気で心配そうな顔で迫られ、両手を握られる。

 

「死ぬって何⁉︎ まさか……誰にも祝われないから⁉︎ ダメだよ、そんな下らない事で死んじゃ!」

「いや、違くて。落ち着いて甘奈」

「何が違うって言うの⁉︎」

「いや、他のアイドル達からお祝いのチェインをもらって喜んでて」

「は? それはそれで見過ごせないんだけど」

「温度差!」

 

 怖いわ! あと色々と重いわ! なんか後者の方が怖いし! 

 

「だ、だって嬉しいもの! 俺、誕生日家族以外に祝われたことないし!」

「それは分かるけど……でもだめ」

「え、喜んじゃ?」

「違う。死ぬほど喜ぶのはだめ」

「……そうですね」

 

 うん、死ぬほど嬉しいは盛った。というか、なんならまだ甘奈と付き合えてないし死にたくないわ。

 

「なんかごめん」

「……それに、死ぬほど喜ぶのは、この後なんだから……」

「お、おう……」

 

 そうだった。これからうちにくるんだっけ……なんか、恥ずかしいんですけど……。

 そんな中、二人の元に甜花と千雪が駆け寄ってきた。

 

「あ、ひ、ヒデくん……!」

「ヒデちゃん、もう帰るの?」

「あ、はい」

「じ、じゃあ……その前に、これ……!」

 

 甜花が差し出したのは、プレゼント。紙袋を手渡された。

 

「何これ。ゲーム?」

「ちがう……」

「コントローラ?」

「そ、それも違う……! 千雪さんと、一緒に選んだから……!」

「あ、じゃあリ○グフィットか!」

「ヒデちゃん、どういう意味?」

「……ヒデくん、きらい……」

「冗談ですよ、半分」

 

 ゲンコツが降り注いだ。

 

「大人の女性に対して、生意気言わない」

「重い拳だ……」

「もう一回?」

「嘘です反省しました!」

「今のはヒデちゃんが悪い」

「甜花なら、死体撃ち案件……」

「それ俺殺されてる……」

 

 というか、頭がマジで痛い。本当に重い拳だったわ。頭蓋骨が逝くかと思ったレベル。

 

「とりあえず……プレゼント開けたら?」

 

 甘奈に言われ、とりあえず開けてみることにした。すると、中から出て来たのはぬいぐるみだった。A○EXに出てくるプラウラーという獣の。

 

「わおっ……すげぇ!」

「ふふ、甜花ちゃん。とても頑張って作ったんだよ?」

「え、これ甜花が作ったの?」

「……にへへ、自信作……!」

「大丈夫? 指で呼吸出来てない?」

「心配よりも褒めて……」

「ありがとう。毎日一緒に寝……あ、いややっぱり枕元に飾るわ。桑山さんもありがとうございます」

「ふふ、喜んでくれたかな?」

「はい!」

 

 これ最高! ……果穂に取られないように隠して飾っておかないと。

 

「……じゃあ、甜花達……帰るね」

「え、帰んの?」

「ええ、お邪魔しちゃ悪いもの」

「一人だけ二十歳超えてるとか、気にしませんよブフォッ!」

「じゃあ甘奈ちゃん、頑張ってね」

「が、がんばれ……なーちゃん!」

「う、うん……!」

 

 え、何を頑張るの。ちょっと怖いんですけど。

 そのまま甜花と桑山さんは退散した。残った俺と甘奈は、ひとまず顔を見合わせる。なんか気恥ずかしくて、少しだけほんのりと頬を赤らめてしまう。

 

「え、えーっと……」

「……う、うん。じゃあ……行こっか」

「……」

「……」

 

 なんだこれ、ラブホに行く直前の空気か? なんか無駄に緊張すんだけど。

 大丈夫だろ、別に何か特別なことするわけじゃない。誕生日を祝ってもらうだけ……だから、大丈夫……! 

 

「よし、頑張れ、俺!」

「どしたのいきなり」

「な、なんでもない……」

「じゃあ……行くよ」

 

 ……その緊張した顔やめろ。こっちにまで緊張が移るんだよ。

 

 ×××

 

 さて、そんなわけで、二人で並んで俺の家へ向かう。その間、会話はない。とてもこれから楽しい誕生日会が始まるとは思えない空気だ。

 甘奈は今、何を思っているのだろうか? というか、なんでそんな照れてんの? 

 

「あ、そうだ。甘奈。実は今日、果穂からもう誕プレもらったんだよ」

「そ、そうなんだー。どんなの?」

「聞いて驚け……! ……ジャスティスファイブなりきり隊員ベスト」

「……それ着て表歩けるの?」

「歩くよ。果穂がくれたものだし」

「シスコンも大概にしたら?」

「お前が言うな」

 

 それお前いい加減にしろよほんと。お前が言って良いセリフじゃないから。

 

「ちなみに……その、ジャスティスナンとかのベストってどんなの?」

「これ」

「赤……デカデカとロゴが……派手……それ一緒に着て甘奈と歩かないでね」

 

 写真を見せただけでドン引きされてしまったが、気持ちは分かる。だから大丈夫、基本、一人か果穂と一緒の時しか着ないから。

 

「ていうか、果穂ちゃんも中々、独創的な感覚なんだね……」

「ヒーローバカだからな。俺もそのノリに結構、全肯定して付き合ってたから、あいつはこの世の人間、みんなヒーローが好きだと思ってるし」

「つまり、ヒデちゃんの所為?」

「違うから」

「そう言ってたよ今」

「果穂を否定する奴には万死に値する罰が下る世界が悪い」

「そんな世界知らないけど⁉︎」

 

 うんうん、少しずつ場がほぐれてきたな。このまま変な空気は払拭させよう。

 

「何だお前、知らねーのか? じゃあ一回、試してみ?」

「試すって……果穂ちゃんを否定するようなこと言うの?」

「マイルドな奴にしとけよ? 死ねとか言ったらキツイのいくぞ」

「ヒデちゃんが下す気満々じゃん! 何でストレッチしてるの⁉︎」

 

 ばれたか、まあ大丈夫。冗談だから。ストレッチもフリだけ……なんて思っていると、甘奈は少しだけ頬を赤らめて「ヒデちゃんの、天罰……」と呟いた。

 え……何その顔。何か期待してるような顔されても困るんだけど……。

 

「……か、果穂ちゃん……小学生なのに甘奈よりスタイル良くて……ちょっと妬んでた」

「…………」

「…………」

「……あ、そう」

「天罰は⁉︎」

「欲しいのかよ!」

「欲しいよ!」

 

 欲しいって言ったよ! マジかお前⁉︎

 え、で、でも……どうしよう。天罰とか、言われても……何か思いつくわけでもないし……と、とりあえず蹴る? ぶつ? 勿論、軽めに。

 甘奈は覚悟を決めたように頬を赤らめて、後ろで手を組んで目を閉じる。……心なしか胸が強調されているような……。

 天罰……て、天罰か……ううむ、天罰……。

 ……。

 …………。

 …………ああもうっ! 

 

「名探偵コナン第8話、美術館オーナー殺人事件」

「ゲェッ」

 

 喉を正面からズムッと突いた。

 見事に当たり、咳き込んだ甘奈は涙目で顔を真っ赤にしながら怒鳴ってきた。

 

「な、何するのいきなり⁉︎」

「天罰」

「いきなり喉突く⁉︎ 女の子が出しちゃいけない声出ちゃったじゃん!」

「似合ってたよ」

「喧嘩売ってるんだ! 買ってあげる!」

「逃げまーす」

「あ、こ、コラ待ちなさーい!」

 

 そのまま二人で家まで走った。フゥ……我ながらナイス判断。あんな顔で待たれて、一瞬だけ「キスしたい」なんて思ってしまった。ファーストキスもまだなくせに。

 まだ付き合ってもないのにそれは許されないでしょ。

 そんな事を思いながら家に到着した。玄関を開けて中に入り、とりあえず手洗いうがい……つーか、家の中暗いな。誰もいないの? 

 

「ただいまー」

 

 やっぱ返事ないや……。何してんだいったい。……ていうか、甘奈はその辺にツッコミ入れないのな。

 そのまま二人で電気がついたリビングに入ると、目に入ったのは一枚の紙切れ。机の上に置かれていた。

 

『甘奈ちゃんのお願いで、今夜はお父さんと飲みに、果穂は有栖川さんのお宅でお泊まりに行ってくるので遅くなります。二人きりだからと言って、やりたい放題しないように』

「……」

 

 あまりにも狂気に満ちた内容だった。なんで人の友達の言うことホイホイ従ってんだ、馬鹿なのかうちの親は。

 すぐに俺は振り向いた。主犯の方へ。すると、甘奈はサッと目を逸らす。

 

「おい……なんだこれコラ」

「あ、甘奈何も知らないけど?」

「そうか。後20分で親父達帰って来るって」

「ええっ⁉︎ 話が違っ……」

「はい負け」

 

 言いながら紙を見せる。しっかりとバカの痕跡が残っていた。

 

「は、ハメるなんて酷い!」

「先にハメようとしたのはお前だろ。どういうことだこれ」

「ううっ……だ、だって……二人きりが、良かったから……」

「……」

 

 はぁ、もうほんと馬鹿……。……そんなの、俺もその方が良いに決まってんだろ。わざわざどうも。

 

「とりあえず、準備しようや。晩飯作るから、座って待ってて」

「いやいやいや! ヒデちゃんの誕生日だから! ていうか、準備ももう出来てるし」

「?」

 

 言いながら、甘奈はリュックを下ろす。そういやそれずっと持ってたな。気になってた。

 中から取り出したのは保冷バック。そしてその中からさらに、タッパーを取り出した。中に入っているのは、おそらく醤油、にんにく、生姜、わさび、胡椒で味付けした鶏肉だ。つまり……。

 

「唐揚げ?」

「そう! ヒデちゃん、好きかなって」

「……甘奈……」

 

 てことは……わざわざ朝早起きして下準備してくれた挙句、いつもより多い荷物をずっと背負ってたって言うのか? 

 ……たかだか、まだ彼氏でもない男の誕生日のためにそこまでしてくれたと言うのだろうか? 

 

「えへへ、じゃあ、サクッと作っちゃうね」

「甘奈ー!」

「ふわああああああ⁉︎」

 

 感極まって、正面からハグしてしまった。

 

「ひっ、ひひひヒデちゃん何もそんなこんな公衆の面前でハグなんてしなくてもいや気持ちは嬉しいけどでもどうしたら良いのか……」

「公衆の面前じゃねーよバカ……ちょっと、俺もうほんと大好きだわ……」

「ふぇっ⁉︎ こ、こんな時にそんな……!」

「待っとけよ、お前の誕生日の時は、キャヴィア取ってきてやるからな!」

「いやいいよ食べたことないし! ……あ、あの……それより告白の返事……」

「じゃあ、せめて晩飯作るの手伝うから! 付け合わせは何が良い?」

「え? じゃあキャベツ……それで、告白の返……」

「うしっ、やるぞ!」

 

 気合が入った! 本気出すわ、まじで! 

 

「あの……告白の……」

「他に何か冷蔵庫入れたほうが良いものとかない?」

「え? あ、手作りのケーキ……」

「じゃあ、それ入れちゃおう! よーし、やんぞオラァッ!」

「……うん。頑張ろうね」

 

 何故かテンションが下がっている甘奈と、晩飯の準備を始めた。

 よし、決めたわ。俺は今日中に甘奈への告白をする。そして、今日でこの友達にしては近すぎる距離を卒業するんだ! 

 

 

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