大崎さんには負けられない。   作:バナハロ

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彼女がいようがおっぱいは好き。

 夏祭りの季節というのはわかりやすいもので、町中に張り紙が増える物だ。

 それ故に、俺も少しずつテンションが上がる。何故なら、お祭りの日はノーバンノーブラの女性が増えるからだ。

 浴衣と言うのは、下に何も着ないものだという……つまり、何一つ買わずにお祭りを歩いているだけで、浴衣の女性とすれ違うことで胸の奥がワクワクする。「えっ、あんな清楚そうなお姉さんが今ノーパンなの?」とか「えっ、あの爆乳にブラつけてないの?」的な。

 そう言った「無知シチュエーション」を様々な女性で妄想することが許される日というわけだ。

 そのことにウキウキする中で、俺はプロデューサーに呼び出されていた。

 

「……と、いうわけで、君もお祭りに行ってアイドルの子達をさりげなく見ていてあげて欲しい」

「えっ、そんなことしちゃって良いんですか?」

「? うん?」

 

 言われた仕事の内容は、アイドルがお祭りに参加する日をプロデューサーが聞いておいてくれるから、その日に俺も行って遠目からトラブルに巻き込まれないように見ていてあげるというもの。

 

「ユニットによっては『この子達なら夜の街に出しても大丈夫』っていうユニットと『いやこの子達はヤバいな』というユニットがある。そういう子を見てあげて欲しい」

「放クラは⁉︎」

「あー……悪いけど、あそこは樹里と夏葉がいるから大丈夫」

 

 まぁ、だろうな。あの中で勝手に動き回りそうなのはいない。強いて言うならチョコ先輩? 食べ物の匂いに釣られてふらふら歩いていきそうだ。

 

「同じ理屈でストレイには冬優子、シーズにはにちか、ノクチルは透以外全員、アルストも千雪、イルミネにはピーちゃんがいるから大丈夫」

「マジすかー。え、ピーちゃん?」

「真乃が飼ってる鳩。あの子が危機を察知すると半径50メートル以内から鳥類の援軍を呼び出して目標を殲滅する」

「え……何それ怖い」

 

 めぐるの浴衣姿とか見たかったけど、そんな事になるなら行かなくて良かったかもしれない。貫かれる。

 ……いや、ていうか他にもツッコミどころは多々ある。

 

「シーズって七草にちかの方が年下じゃありませんでした?」

「そうなんだが、はづきも一緒に行くらしいんだ。とりあえず美琴が一人じゃなきゃ大丈夫」

「美琴さんって……大人じゃなかった?」

「人間、歳の数だけ成長するとは限らないんだよ」

「……」

 

 残念なことを聞かされた。まぁ他のところは特にない。ノクチルとか強過ぎるし。

 しかし、それらのユニットが決まっているのなら、他にどこにくっつけと言うのだろうか? 

 

「他は?」

「……アンティーカだよ」

「えっ、あそこヤバイんですか?」

 

 意外だ。何せ、メンバーはみんな高校生以上。特に三峰さんとか運転役を担うこともあるらしいし、月岡さんを除いて大丈夫なイメージがあった。

 

「結華と摩美々がいるから大丈夫だとは思うんだけど……ほら、その……スタイル抜群の咲耶と恋鐘の二人が1番、隙だらけだろ? その上、摩美々は結華をイジるのが好きだし……最悪の想定は『摩美々が結華をいじったタイミングで虫が飛んで来て恋鐘がドジを発生し、わちゃわちゃなってる時に霧子の身に何か起こること』だ」

 

 ……そんな特殊な状況あるのか? いや、ないとも言えないか。何にしても、俺もよく分かった。

 

「分かりました。じゃあ遠目から監視しておきます」

「頼むよ。もちろん、お祭りの費用はこっちが出すから」

「あざっす!」

「まぁ、アンティーカがそもそもお祭りに行かないってなったり、そもそも俺が残業にならなければこの話もなくなるから、あまり気負わなくて構わない」

「あ、まだ確定じゃないんですね」

 

 基本はプロデューサーがやってくれる予定らしい。早い段階でそういう話を聞かせてくれるのはありがたい。外回りの仕事って言ったら大袈裟だが、時間を空けておく必要があるから。

 さて、軽く伸びをしながら会議室を出る。……何より、白瀬さんと月岡さんはダイナマイト。あの人達のノーパンノーブラを大義名分の元で見学出来るのなら、それ以上の報酬はない。

 

「ケケケっ……ノーパン、ノーブラ……!」

「何が?」

「へぁっ⁉︎」

 

 笑みをこぼしながら台所に向かおうとした直後、そんな声が隣から聞こえる。顔を向けると、そこにいたのは甘奈だった。ニコニコ微笑んでいた。これでもか、というほどの畏怖を発しながら。

 

「何が? (二回目)」

「え……い、いや逆に何が?」

「二人でどんな内緒話をしてたらノーパンノーブラが出て来るの?」

「い、いや……その……」

 

 キュッと手首を掴まれる。その力が少しずつ強くなり……メキメキと軋む音を立て始めた。

 

「い、言う言う言う! 言うから怒らんといて!」

 

 仕方ないので白状することにした。まぁ要するにお祭りでトラブルが起きないようさりげなく見てて欲しいと言う話だ。

 その話を聞いた後、甘奈は顎に手を当てたまま呟いた。

 

「……その話のどこにノーパンノーブラの要素が?」

「さぁ、俺にもわからない。聞き間違いじゃない?」

「ヒデちゃん」

「ごめんってば! ほら、浴衣とか着物の下って下着つけないもんだろ⁉︎」

 

 こいつ本当に怖い。名前を呼ぶだけでここまでのオーラを出せる女は中々いないだろう。

 

「……今どきそんな人いないよ。みんなつけてるから」

「それはどうかな⁉︎ あそこには田中さんがいる! 度を超えた悪戯のつもりで月岡さん辺りに余計なことを言う可能性はなきにしもあらず!」

「甘奈がヒデちゃんをビンタしちゃう可能性もなきにしもあらず」

「ご、ごめんなさい……や、でも仕事だから仕方ないよね?」

「……」

 

 すると、甘奈は少し考え込むように顎に手を当て……そして、何かを思いついたように頷いた。

 それと同時に俺の手から手を離し、会議室に入っていった。あいつ……何をするつもりだ? 

 

 ×××

 

 さて、お祭り当日。アンティーカはお祭りに行くことになり、プロデューサーの仕事もしっかりと終わらなかった事もあり、俺が遠目から監視する役割を担った。

 アンティーカの待ち合わせ場所である公園の入り口から少し離れた駐車場。待ち合わせしている風な様子を漂わせながら、一人で待機している白瀬さんを眺めた。流石は王子様。お姫様達を待たせないように一番乗りである。

 ……しかし、あの抜群のスタイルを着物で包み、しかもその下には下着さえ着けていない真っ裸……いや、ヤバイよそれ。だってエロ過ぎるもん普通に。

 ミステリと言う勿れ、によると外国人が日本に遊びに来る際「痴漢とかに気をつけて」と言われるらしいが、情けない話だとは俺も思う。思うけど日本の文化がそうなっているんだろうな、何で諦めの境地でもある。

 だって伝統的な着物や浴衣がアンダーウェアテイクオフを推奨してんだから、そもそもすけべな国なんだろ。

 ……だから俺は、国を代表してあの白瀬さんのアンダーウェアテイクオフ状態を堪能する……。

 

「でもなんか……思ったより先端尖ってないな……ノーブラって乳首のあたりがGNドライブみたいになるんじゃ……」

「勿論、下着をつけてるからだよ。ヒデちゃん」

「まぁ白瀬さんはワンコってだけでアホじゃないしな……やはり本命は月岡さんだ……ん?」

 

 つーか俺今誰に話しかけられた? と、周囲を見渡した直後、ガッと目に人差し指と中指の関節が直撃した。あまりの威力に後ろへひっくり返り、ワンパンでダウン。

 

「いってえええええ‼︎」

「ふふ、仮にも彼女がいる身で本当にそういうことしちゃうんだ。ヒデちゃん」

「ひょっ……」

 

 ……やばい声が聞こえた。今、一番聞いちゃいけない声。

 

「……あ、甘奈さん……?」

「ふふ、確認を取るまでもないよね? それとも他の女の子に夢中で彼女の声を忘れちゃった?」

 

 やばい、ブチギレている。何とかして誤魔化さないと、今度こそ消される。

 

「い、いやあのっ……ちゃうんすよ! 男の目線としてあの女性の何処が魅力的なのかを押さえておかないと痴漢の対策を取ることが出来ないという心理的駆け引きを用いたフォーマル作戦であり相対性理論的な面による見解を採用することでなんとか今回の任務を完遂させるという……!」

「ちょっと黙ろっか」

「……はい」

 

 どこかで聞いたことがある言葉で捲し立てたけど、全く効いていないし聞いていない。

 ようやく視界が戻って来て、ぼやーっと周囲が見え始めたと思ったら……ムギュッと甘奈は隣から俺の腕にしがみつく。まるで、胸を押し付けるように。

 そして、そのまま立たせて勃たせてくれた。

 

「っ、あ、あまっ……」

「良いよ。ヒデちゃんが他の子に目移りしちゃうなら、甘奈だってヒデちゃんを夢中にさせちゃうんだから……」

「えっ……?」

 

 ていうか……甘奈と胸が当たる距離で腕を組むのは初めてじゃない……のに、なんか今日のは腕に当たる感触がいつもと違わない? 何でだろうか……と、思ったのとほぼ同時、甘奈は自分の浴衣の胸元に指をかけ、チラリと捲る。

 ……えっ、お前何してんの? いやニヤニヤ笑ってるけど顔真っ赤なの分かってるからなお前……あれ、ていうか谷間が見えてるけど……その辺って、下着の布がないとおかしくない? あれ、ちょっと……。

 と、そこで浴衣を戻す。それと同時に、少し背伸びして俺の耳元に口を近づけた。

 

「……ヒデちゃんの望み通りに合わせてみたよ」

「ふぁっ……」

 

 つまり、この女は今ノーパンノーブ……あ、ダメだ。それは許さん。すぐに、俺は白瀬さんの方をチラッと見てから、まだ1人しかいないことを確認すると、甘奈の肩を抱いて移動を始めた。

 

「えっ、ひ、ヒデちゃん?」

「お前ちょっと来い」

 

 そう言って、強引に移動。こいつはちょっと本当に許されない。男を甘く見過ぎている節がある。そう言うことをするとどうなるのか、分からせる必要があるようだ。

 向かった先は、公衆トイレだ。あまりこう言うことは好きではないが、身体障害者用の広いトイレに入れさせてもらうことにした。じゃないとやるべきことが出来ない。

 

「……ふえっ⁉︎ ひ、ひひひヒデちゃん⁉︎ しょっ……しょこで一体何をするつみょり……⁉︎」

「分かってることを一々聞くな」

「っ、い、いいいやもちろん甘奈もそういうことはシたいなーとは思っていたけれど初めてでいきなりトイレなんてあまりにもちょっとマニアックがすぎると言うか……!」

 

 こいつうるせーな。入るところを誰かに見られると面倒なのは分かってんだろ。

 仕方ないので、唇に人差し指を添えて黙らせた。

 

「……少し黙ってろ」

「っ……」

 

 こくっ、と小さく頷く。なんだこいつ、ほんとにやたらと顔赤いな。

 そのままさっさと中に入る。鍵を閉めてから、甘奈を赤ちゃん用の台座の前に立たせた。

 

「っ……ひ、ヒデちゃん……」

「お前が悪いんだからな。何しに来たのか知らんけど、そんな格好で表に出るとか」

「う、うん……甘奈、悪い子なの……だから、お仕置きして下さい……」

 

 そう言いながら、甘奈は顔を赤らめつつ、若干胸元を張るように背筋を正し、顔を俺から背ける。

 その甘奈の肩の上から、俺は着ていたパーカーを羽織らせた。

 

「ほれ」

「んっ……んっ?」

「あとー……これ」

 

 そう言いながら、鞄からパンツを取り出した。夏なので仕事中に大量の汗をかくこともあり、パンツとかびしょびしょになったら死にたくなるので替えのものを用意している。今日は外に出る機会がなかったので未使用だが。

 それを差し出すと、何故か甘奈はキョトンとする。

 

「え……こ、これ何?」

「パンツ」

「誰の?」

「俺のだよ。俺が他に誰のパンツ持ってんの」

「くれるの⁉︎」

「レンタルに決まってんだろバカめ」

「えっ、ど、どういう……お、おかずにしろってこと?」

「いや履けよ。何のために貸してると思ってんだ」

「履いて良いの⁉︎」

 

 何をさっきから興奮してんだこいつ。少し俺怒ってるんだけど。どう言う情緒? 

 

「何喜んでんの?」

「よ、喜んでないもん! て言うか、これ何なの⁉︎ 何がしたいの? 脱がされると思ったらむしろ着させてくるし!」

「馬鹿野郎、仮にも彼女がノーパンノーブラで人が多く集まる場所に来てんのに、そのまま行かせる彼氏がいるか!」

「えうっ……⁉︎」

 

 今になって怒られている自覚を持ったのか、甘奈は縮こまる。誰と祭りに行くつもりだったのか……いや、どうせ甜花か千雪さんだけど、何にしてもノーパンノーブラはダメだ。何か対策をして欲しい。

 

「ていうか、お前人の彼女である自覚を持て。何考えてんだ一体」

「いや、彼女いるのにノーパンノーブラの他人に思いを馳せてる人に言われたくないけど⁉︎」

「うるせーよ! 他の女とお前を一緒にすんな!」

「はうっ……⁉︎」

 

 いくら美人でも、他の女性と甘奈を同列に扱うわけがない。大事な人だからこそこっちもそれ相応の対応をするのだ。

 すると、甘奈は頬を赤くしながら肩を落とす。そして、少しため息をつきながら拗ねたように唇を尖らせる。

 

「も、も〜っ……自分勝手なんだから……」

「うるせーよ」

「……そもそも、普通自分のパンツ履かせる? それはそれで変態プレイだと思うんですけど……」

 

 ……確かに。いやでも履いていないよりはマシだ。女性用下着と男性用下着の差はよく分からないけれど、役割は果たせるだろう。ボクサーだし。

 

「使わないなら返せ。俺だってちょっと恥ずかしいんだよ」

「う、ううん……確かに、ノーパンよりマシかもしれないから……じゃあ、履くから向こう向いてて」

「はいはい……」

 

 ため息を吐きながら背中を向ける。しばらく後ろからゴソゴソと音がする。まったく、こいつには困ったものだ。ていうか、本当に何しに来たのか? 

 

「てか、お前何しに来たの?」

「ヒデちゃんのお仕事のお手伝い」

「は?」

「どうせお祭りを回るなら、甘奈も一緒の方がヒデちゃんも楽しいかなって」

「あ、じゃあそのノーパンノーブラ……」

「……ひ、ヒデちゃんがこう言うの好きって言ってたから……」

 

 ……なんか悪いことをした気分だ。俺のために恥ずかしいのも我慢して来てくれたと言うのに……。いや、でもノーパンノーブラは流石に……いや、謝るだけ謝っておこう。

 

「なんか……悪かったな」

「う、ううん……今思えば、甘奈も冷静じゃなかったから……」

 

 羞恥心が戻って来ていた。本当にドンマイだし泣かないで欲しい……。

 そう思うと、近くにこう言う公衆トイレがあったのは幸運なのかも……と、そこで俺は閃いた。今、ここならば周囲に誰も何も見られない。

 ……ならば、今振り返って甘奈の甘いところが見えても問題ないのでは? と。

 

「甘奈! そういえばさ!」

「ん?」

 

 振り返ると、もう着替え終えていた。

 

「……なんでもない」

「ごめん、上着も借りるね」

「好きにしろよ……」

 

 遅かった……自分の判断の遅さが憎い……なんて思っている間に、甘奈は俺の腕にさっきまでと同じようにしがみつく。

 

「さ、行こ? 仕事なんでしょ、一応?」

「あ、ああ。行こうか」

 

 まぁ……甘奈もなんだかんだで気を遣ってくれたみたいだし、そこはご好意に甘えよう。……そして、上側はあろうが結局のところノーブラな胸を堪能しよう。

 

「あー……甘奈」

「何?」

「言い忘れてたけど、浴衣似合ってる」

「ふふっ、ありがと」

 

 話しながら、トイレを出た時だった。

 

「近道近道……ん?」

「「あっ」」

 

 バッタリと出会したのは、田中摩美々だった。

 よりにもよってやべー奴と出会し……その結果、にんまりと微笑まれる。あ、ヤバイ。これはちょっとほんとにやばい奴……。

 

「ふたりともー、避妊はしっかりねー?」

「ち、違うからな⁉︎」

「う、うん……」

「受け入れてんじゃねーよ! お願いだから果穂には言うなよ⁉︎」

「ちょっと! 結局、果穂ちゃんはどこまでも別枠なの⁉︎」

「当たり前だろうが!」

 

 そんな事をしながら、いつの間にか摩美々には逃げられていた。

 

 ×××

 

 さて、お祭りに参戦。勿論、仕事なので俺と甘奈は後ろからじっくりとアンティーカの後を追うだけ……なのだが。

 

「ううっ……」

「どうした? 甘奈」

「お、男の人のパンツ……慣れないよう……」

 

 まぁ、それはそうだろう。俺だってブリーフからトランクスに履き替えた時期は割と慣れなかった。特に、こう……なんかスペースがある感じがとても不愉快で。

 その後、ブリーフは小5まで履いていたけれど、すぐにボクサーパンツの存在を知って一年で乗り換えた。

 

「でもボクサーだからフィット感すごいでしょ」

「す、すごいけど……なんか、こう……いや、何でもない……」

 

 何かあったのかな……と、考えてみてすぐに分かった。ボクサーパンツとブリーフの唯一の差だろう。

 

「あーあれか、けつの穴か。意外と割れ目に布が吸い付いてくんだよな慣れないうちは」

「な、何ではっきり言うの……!」

「大丈夫、みんな通る道だから。直すなら少し止まるけど?」

「だ、大丈夫だから! そう言うのは言わなくて良いの!」

 

 いや、あの不愉快な感覚が分かるからむしろ言った方が良いと思ったのだが……まぁ、嫌ならやめておこう。

 そんな中、今度は甘奈の方から声を掛けてくる。

 

「ね、ねぇ……正直さ、今甘奈って変態みたいになってない……?」

「は?」

「い、いやその……ちょっと恥ずかしくて……」

 

 そう言いながら、浴衣の下の足をもじもじと動かす。あ、やばい。ちょっとかわいい。細かく動くマッサージ機を埋めて外を歩かせるタイプのエロ漫画で興奮する人の気持ちが少しだけわかってしまった。

 ……ていうか、俺も冷静じゃなかった。なんで履かせようと思ってしまったのか。

 

「……帰る?」

「嫌」

 

 ……いや、ちょっと喜んでないかこいつ? そこまで即答でキッパリ言う? 

 そんな俺の視線に気がついてか、甘奈は強引な話題を変える。

 

「そ、それより……思ったよりやることないね……」

 

 ……まぁ、ちょっと俺も負い目あるし、いじるのはやめておこう。このまま乗っておくことにした。

 

「まぁ、腐っても平均年齢18歳前後だからね、奴ら」

 

 のんびりと後をつけながらも、そんなことをつぶやく。五人とも楽しそうだ。射的をやっては、三峰さんの背中を田中さんがなぞって邪魔をし、その横で白瀬さんが優しく幽谷さんにコツをレクチャーしていて月岡さんは普通に射的屋のおっちゃんに誤射している。

 くじ引きをやっては、三峰さんは本気でシャンクスのフィギュアを狙いに行って外しまくり、白瀬さんはカブトムシが当たって涙目になりながらも田中さんに何とかしてもらっていて、月岡さんはなんか訳もわからずゲームソフトを引き当てて幽谷さんと祝っている。

 で、全員で違う味のあんず飴を買って食べさせあったり、かき氷で頭キーンってなったり……羨ましい。

 

「ヒデちゃん……甘奈、お腹すいた」

「我慢しろ。あとつけないといけないんだから列に並んでる暇ねーよ」

「甘奈が買ってくるからー……」

「バッカお前ノーブラボクサーパンツ女子のお前を1人に出来るか」

「普段からそんな感じの言い方しないで!」

「ていうか、俺が作った飯のがうまいんだから、わざわざ高い金払ってこんな所で食う理由ないだろ。本来、お祭りってのはノーパンノーブラ女子鑑賞会なんだから」

「本来じゃないでしょそれは全然!」

「デカい声出すな、やってる事はアイドルグループのストーカーなんだからバレたら面倒臭いじゃん」

 

 なんて、こそこそ話しながら移動をする。いや、まぁ別に楽しくないわけではない。だってこいつがいるし。ノーブラパイパイが当たっていることを差し引いても退屈はしなかった。

 

「……帰ったら、甘奈の食いたいもの作ってやるから、今は我慢しろ」

「大体、これいつまであの人達の後を追うの?」

「大体、大丈夫そうだと思ったらやめて良いってよ。誰かと一緒ならお前もお祭り楽しんで良いってさ」

 

 今日、改めて行く直前になってそう言われた。でもまぁ誰かを誘えるわけがなくて。

 

「誰か誘って良いって言われてるじゃん! なんで甘奈のこと誘ってくれなかったの⁉︎」

「ノーパンノーブラ女子鑑賞会に彼女を連れて行けるか」

「ノーパンノーブラ女子鑑賞会を彼女がいるのにやるな!」

 

 そんな中、甘奈が足を止める。腕を組んでいるので、必然的に俺の足も止められてしまう。

 

「っ、な、なんだよ」

「ていうか、それ多分甘奈と一緒に楽しめって事だと思う」

「はぁ? 何でだよ。甘奈が今ここにいることはあの人にとってもサプライズのはずだが?」

「鈍いなぁ……ヒデちゃんが最初にその話を受けた時、甘奈も手伝うってあの後言いに行ったの」

「……は?」

 

 そうなの? いや、そういえばなんか会議室に突入していた気がする。あれってそう言うことだったのか。

 

「じゃあ……なんかするか?」

「うん、遊びに行こ?」

「いや……でももう少し様子を見てた方が……」

「何でそんな意地悪言うの」

「いやプロデューサーさんからお祭り費用の1000円貰っちゃってるし……この分は働かないと」

「真面目か! ……いや、そこは真面目にやるべきだね」

「だろ?」

 

 そんな話をしている時だった。スマホが震える感触。ポケットから抜くと、プロデューサーからだった。

 

「もしもし?」

『あーもしもし、こちら正義の味方だ』

「善吉」

『正解』

 

 挨拶の後、用件を話し始めた。

 

『俺今、お祭り会場に到着したから、あとは俺が見てるよ』

「えっ、でも結構混んでますけど場所大丈夫です? 見つけられます?」

『大丈夫だから。甘奈も一緒でしょ? 楽しんでおいで』

「あ、はい」

 

 まぁ……そこまで言うなら仕方ない。思いっきり楽しんでしまおう。

 

「ありがとうございます」

『じゃ』

 

 そこで電話は切れた。

 

「遊んで良いって」

「じゃあ……遊ぶ?」

「超遊ぶ」

 

 超遊んだ。

 

 ×××

 

 残念ながら、今日は花火大会がある日ではない。まぁ俺正直花火とかあんま興味ないからそれはいい。

 さて、今は帰宅中。当然、甘奈を家に送る必要があるわけだが、割とはしゃぎすぎた。疲れた。

 

「あー……ねっっっむいわ……」

「もう、そこは女の子が眠そうにしてて、男の子が背中で寝かせてくれるところだよ?」

「いや、だいじょうぶ……流石に甘奈に背負わせるほど彼氏としての自我がないわけではない……」

「いや、意味分からない。それを言うなら自覚じゃない?」

「自虐……? 何言ってんだ、彼氏としての自虐って甘奈のこと馬鹿にしてるじゃん……」

「……だ、ダメそうだなぁ……」

 

 眠い……いや、俺が送ってあげてるんだから、流石にこのまま寝るわけにはいかない……眠い……。

 

「ちょっと……気つけしないとダメだな……」

「? キツケ?」

「S級ヒーローのように、眠りに落ちる前に自身の頭を……金属バットで一気に……!」

「う、あわわわ! ま、まったまった!」

 

 拳で顔面を穿とうとした直後、慌てて甘奈が俺を止める。

 

「そんな真似しなくて良いから! てかそんなことするくらいなら素直に寝てよ! 甘奈が持って帰ってあげるから!」

「鬼でも竜でも俺はいけるぜィ……」

「っ、も、もー!」

 

 苛立ったのか、甘奈は焦ったような声を漏らすと俺の正面に立ち、両手を俺の後頭部の方に伸ばす。……そして、ぐいっと胸の中に顔を抱き寄せた。

 

「寝てて!」

 

 うっ、おぉ……柔らかっ……何だ、この柔らかさは……羽毛布団より遥かに暖かく、柔らかい……あ、だめだこれ。寝ちゃう……まるで、天使の羽の中で……なんか、意識を保たないことがとても惜しいことのような気がするが……とに、かく……寝ちまおう……。

 そのまま、深淵に意識を沈めた。

 

 


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