ある日、ヒロトはクラスメイトからGBNに誘われた。
彼はそこで、意外な人物とバトルをすることとなる。
バトルで得たもの、失ったもの、ヒロトはもう一度ガンプラバトルを愛せるのだろうか。

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『リベンジ』

 厳しい寒さが去った。ほのかに吹く暖かい春風が春の到来を告げる。あのエルドラでの戦いが終結。ヒロトを始めとする面々は、のんびりとした穏やかな日々を送っていた。

「ヒロト。おはよう。」

「ああ、おはよう。」

 ヒロトが扉を開き教室に入る。入ると同時にクラスメイトからおはようと挨拶をされた。咄嗟にヒロトも明るい調子で挨拶を返す。以前の彼では考えられない反応に、彼の変化を感じ取ったクラスメイトは嬉しそうな微笑みを浮かべた。

「なあ、ヒロト。」

着席と同時に、後ろの席からクラスメイトが身を乗り出す。他人に聞こえないような小声で、座ったままのヒロトに声をかけた。

 

「……ん?何。」

「今日の放課後さ。GBNにログインしないか?……話があるんだ。」

「別に良いけど。」

 一瞬ヒロトは考えた。まさかクラスメイトの少年からGBNへのお誘いが来るとは。実に珍しい事だった。誘いを断る理由もないため、了承する。

 

 エルドラでの戦いが終わり、最近は学業も忙しくなって来た。パルヴィーズやカザミといったメンバーとの交流も以前よりは減り、ヒロト自身もガンプラバトルに飢えていた。だから、クラスメイトからの誘いを断ることは無い。

 

 

「お。来てくれたんだな。」

 

「……話って何?」

 

 GBNのロビーではクラスメイトの彼が待っていた。彼のアバターは金色のスーツを身に纏っている。その特徴的な装いは周囲の雰囲気からは少々浮いていた。だから直ぐに彼だと分かった。ヒロトはクラスメイトの態度に不審な色を感じ取り、思わず尋ねた。わざわざGBNまで来て話があるというのだ。余程の事なのだろうと予想はしていた。クラスメイトは言いにくそうにしながらも、時間をかけて重い口を開く。

 

「……ヒロトはさ。ヒナタさんと付き合っているのか?」

 

「は?」

 

「俺、あの子の事が好きなんだ……。だからさ……。」

 

「ただの幼馴染だから。」

 

 冷たく、そっけなく言い放つ。ヒロトにとっては特に関心があることでは無い。確かにヒナタとは幼馴染だ。特別意識したことは無い。しかしながら、周囲はそう見ないため、それが面倒くさい。迷惑に思うこともしばしばあった。ヒロトのその冷たい言葉にクラスメイトは少し安心したかに見えた。だが同時にヒロトに対していぶかしげな視線を送る。言いたいことがまだあるのだろう。態度で示していた。

 

「……本当にそれだけなのか?」

 

「ああ。悪いか?異性同士で仲良くするのが。」

 

「……じゃあ、俺があの子に告白しても文句は無いんだな?」

 

「……ッ!」

 

______告白。”ヒナタが告白”される。という言葉がなぜかヒロトの心に棘の様に刺さった。どうでもいいはずなのに。関係ないはずなのに。何故か胸をきゅうと締め付ける。

 

「告白……か。」

 

「その様子だと、やっぱ嫌なんじゃん?」

 

クラスメイトは安心した様に笑った。爽やかな笑顔。彼が身に着けているイヤリングも、風にゆらゆらと揺れている。

 

「じゃあさ。俺とバトルしてよ。」

 

「何でそうなる?」

 

「もし俺がヒロトに勝ったら……。俺はヒナタさんに告白するよ。」

 

「本気なんだ。……それにさ。」

 

 クラスメイトはタッチパネルを指で操作すると、ガンプラを呼び出した。そのガンプラの姿に、ヒロト自身も驚きを隠せない。

 

「こいつも、ヒロトとコアガンダムにリベンジしたいらしいぜ?」

 

金色の輝く四本足の機体が形成されていく。あまりにも特徴的すぎる機体。ヒロト自身も覚えがある機体。

 

「この機体は……!?」

 

「あ、覚えててくれたんだ。嬉しいね。」

 

 ヒロトの驚いた顔に満足そうな笑みを浮かべる。豪華絢爛な金メッキに包まれた機体。それが二人を見つめるかのように静かに佇んでいる。上半身はアカツキ。下半身はゲルズゲー。背部にはレジェンドのドラグーンユニットを装着。対ビームコーティングを施し、防御力に重点を置いた特徴的な機体。彼はすぐさま己の機体に乗り込む。どうやら本気でリベンジするらしい。いかにも自信満々といった風だ。

 

「早く、ヒロトのコアガンダムも出せよ。……バトルしようぜ。俺たちにはこれが一番いい。」

 

「……分かった。」

 

コアガンダムを呼び出し搭乗。臨戦態勢を取る。ヒロトは冷たいコックピットの中で目の前の敵機を眺めた。

 

「随分と強化したんだな。」

 

「お、分かる?元アヴァロン所属のヒロト君に褒められと照れるぜ!」

 

「……そして挑発的だ。コアチェンジ……サタニクス!!」

 

ヒロトはコアガンダムにサタニクスユニットを装着。即座に攻撃を仕掛ける。

前面に展開されたドリルが敵機を貫かんとする。が、彼もそれを読んでいたのだろう。ドリルを真正面から力強くつかみ勢いを殺していく。馬鹿な。そつ焦ったのもつかの間、ぼきりという嫌な音と共に根元からドリルがへし折られた。

 

「リベンジ……。って言っただろ?」

 

(フェイズシフトまであるのか……!)

 

 判断する間もなく、敵機はビームサーベルを展開しコアガンダムの上体を切り裂こうとする。

 

が、ヒロトもそれを間一髪のところで躱す。返し刃。腰から抜いたビームサーベルを袈裟切りに振るった。しかしアカツキの対ビームコーティングーーヤタノカガミにビームサーベルの刃が掻き消される。

 

 なんて頑丈な装甲だと呆気に取られた。敵もその隙を見逃さない。アカツキの四本足の前足がクローとなって襲い掛かる。後方に下がり回避。更に追撃が繰り出される。ヒロトは咄嗟に予備のビームサーベルを腰から引き抜く。差し向けられたクローをいなしていく。

 

「やるなヒロトッ!!だけどよッ!!」

 

 クラスメイトが叫ぶ。アカツキの金色に輝く背部から多数のドラグーンが展開。コアガンダムの四方八方からオールレンジ攻撃を仕掛けた。コアガンダムも上下左右に機体を大きく移動させながら回避行動を取った。しかし奮闘虚しく脚部の装甲に被弾。サタニクスユニットが剥ぎ取られていく。

 

(……このままじゃまずい!)

 

「サタニクストゥ……ジュピターブ!!」

 

 サタニクスユニットから高軌道形態のジュピターブユニットへと換装。不要となったサタニクスユニット。そこにドラグーンのビームが炸裂し融解。爆煙が舞い上がった。ヒロトはブースターを点火しアカツキへと急接近。機体をギリギリまで近づけるとビームシールドを展開した。

 

「くそっ……俺のヤタノカガミを利用したのか……?」

 

 ヤタノカガミにビームが反射し彼の目を眩ませる。この近距離では自滅の恐れがある。だからドラグーンでは攻撃できないのだろう。クラスメイトは焦る。頭部からイーゲルシュテルンを放つが、狙いを付けることが出来ず当たらない。コアガンダムにはかすり傷一つ与えられない。

 

「エクストラリミテッドチェンジ!!」

 

 その一瞬の隙を見逃すヒロトではない。腕部をマーズフォーユニットに換装。大型アックスを構え直しアカツキを力の限り殴りつけた。フェイズシフト装甲といえどその質量に耐えられるものではない。上から殴りつけられたアカツキが地面へと叩きつけられる。衝撃で地面が大きくクレーター状に抉れた。止めをささんとコアガンダムが上段の構えで大型アックスを叩き付けようと試みるが、アカツキはすぐさま態勢を整えると同時に背部ユニットを咄嗟に分離。コアガンダムに向かって勢いよく飛ばす。

 

「こんなものっ!!」

 

 舌打ち。コアガンダムが大型アックスでドラグーンユニットを破壊する。爆炎がコアガンダムを包み視界が遮られる。

 

(どこだ……?)

 

 煙が晴れていく。目の前には姿を変えたアカツキがいた。観察すると四本足を後方にずらしている。クロスボーンガンダムのX状のスラスターにすることで、機動力を確保しているようだ。

 

「強化したとはいえ、ここまで追いつめられるとは……。」

 

 クラスメイトの声が回線越しにヒロトに響く。見ると、アカツキは片腕がもげていた。左腕だけでビームサーベルを保持している。対するヒロトも急激なコアチェンジの連続で消耗。エネルギーが残り少ない。

 

ーー次の一撃で決着がつく。

 

「ヒロトおおおおおおおっ!!」

 

アカツキがビームサーベルを構えなおす。後部のブースターを全て展開。コアガンダムに向かって特攻機の様に勢い良く突っ込んできた。

 

「うおおおおおおおおおっ!」

 

避けられない。だから応戦するしかない。コアガンダムはビームサーベルを構ると、アカツキに向かって突撃を敢行した。

 

二機のガンダムが激突する。

同時に”BATTLE ENDED”と戦いの終わりを告げる無機質な音声が流れた。

 

 

 

 

 

「……はあ。また負けちまったよ。」

 

GBNのロビーで、クラスメイトが心底悔しそうに肩を落としている。

 

「君のガンプラも……強かった。」

 

ヒロトもクラスメイトの健闘を称えた。その表情はいつもの不愛想な彼ではない。楽しそうな笑みを浮かべている。その表情を眺めながら、クラスメイトもつられて笑った、

 

「……まあな。」

 

褒められたのが嬉しいのか、彼は照れくさそうに頭を掻きながら、ヒロトの方に向き直る。

 

「バトルには負けたが……ヒナタさんはまだ諦めてないからなっ!」

 

爽やかな笑顔でまっすぐヒロトの目を見つめながら、力強く言い放つ。

 

「だからそれは君の……」

 

ヒロトも言いかけたが、その爽やかな笑顔に毒気を抜かれたため、最後までは言わなかった。ただ、いいバトルではあったと満足そうに笑った。

 

 

 

 

 


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