玄界放蕩記~ゲームこそ人生~   作:粗茶Returnees

34 / 34
A級部隊③

 

「こんな日が来ると誰が予想できましたでしょうか! A級のランク戦ですら貴重というものなのに、まさかまさかのA級ドリームマッチ!! 2つのチームに別れてそれぞれ代表者が10人ずつ! 今回もしれっと混ざってるシアン選手は何なんでしょう! 実況はもちろん(わたくし)武富が務めさせていただきます」

 

 例に漏れず今回の試合も観戦可能となっていた。当事者たちにとっては、お祭り感覚でできる試合ではないのだが、予想していなかったことでもない。A級の試合ということもあり、C級だけでなくB級の隊員もその多くが観戦している。防衛任務に当たっている部隊は運が悪い。

 

「さて、解説にはこちらもまさかまさかの忍田本部長にお越しいただいております! 本当に恐縮なのですが、お越しいただいてありがとうございます」

 

「この試合となるとA級からは誰も来れませんからね。今のA級の実力をこういう形で把握できるのは、私としても貴重です」

 

 そしてその試合をどう見て学ぶのか。この場にいる隊員たちのその姿勢も見られることは言うまでもなかった。しかも武富にいたっては真横で実況である。誰よりも胃が痛い状況だが、プロ魂からか咳払い1つで切り替えた。

 

「私の緊張はひとしおと言ったところですが頑張ります。もう1人解説には寺島先輩に来ていただいてます! 現在はエンジニアですが、かつては凄腕の攻撃手(アタッカー)の1人! レイガストを開発された方でもあります!」

 

「経歴紹介も含めてありがとう。本当ならこういうのはやらないんですけど、本部長直々の頼みで来ました」

 

「そしてそして! 最後にはこの方! 少数精鋭の玉狛支部を束ねる林藤支部長です!」

 

「迅にやらせようかと思ったんですけど、逃げられちゃいました。ははは」

 

「林藤も昔は前線にいた人間で、中距離戦の心得もあります。その辺りの解説は任せていいでしょう」

 

「おっと中距離戦全般を振られちゃったか。まぁ解説の流れは普段のランク戦のものと同じでいいでしょ。細かな解説は終了後の振り返りの時にでも」

 

「そうですね。忍田本部長、今回の試合ですが注目すべき点はどこでしょうか? A級の試合というだけあって、どれも見逃せないとは思うのですが」

 

「そうですね。注目すべきは、()()()()()()()()()()()()()

 

「連携、ですか。たしかにドリームマッチとは言っても即席チームではありますもんね」

 

 武富の相槌に忍田はこくりと頷いて続けた。

 今のボーダーは毎月新人が入る体制になっている。以前からいるC級ならまだしも、比較的最近加入しているC級たちに向けて普段以上に丁寧な解説が必要だ。

 忍田も、他の2人もそこを念頭に置いている。

 

「普段のチームとは別での部隊戦であり、防衛任務とも違う。A級の人間なら即席でも問題なく合わせられますが、互いの強みをどう活かし合って動くのか。せっかくなので今回はそこに注目してほしいですね」

 

「チームでの連携や動きがあっても、そのチームがずっととは限らない。実戦教育を念頭に置いてる東隊が良い例だな」

 

「なるほどー、たしかにそうですね。そうなりますと、如何に他の人と合わせられるかが鍵になると」

 

「一概にはそうも言えないけど、基本的にはそうですね。ただその点で明らかに不利なのは、シアンがいるチーム2の方でしょ」

 

「というのはどういうことでしょう寺島先輩」

 

「即席チームとはいえ、互いのトリガー構成はそれぞれ頭に入ってる。太刀川や風間みたいにボーダー設立時からいる隊員だと、人柄や得意戦術だって知られてる。つまり連携が取りやすい。けど()()()()()()()()()()()()()

 

「シアンの人柄を一番知ってる太刀川隊は敵チーム。小南とか、シアンと仲良くしてる他の隊員もほとんどがそうだしな」

 

「さっきも言ったけど連携面は戦闘の1つの要因でしかない。けど、それが求められた場面で差が出るのは分かりきってる点になる」

 

「逆に言えば、シアンたちチーム2がそこをどう対応するのか。事前の決めごとも大事だな」

 

「戦いは開始前から始まっていると……」

 

「矛盾してる聞こえ方だけどそういう事」

 

 入隊したばかりの新人たちは混乱しそうなものだが、そこも含めて勉強だろう。

 この日、この時間は、何よりも重厚な時間になる。

 

「しかしそうなりますと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そこも重要になりますね忍田本部長」

 

「今回だと特にそうですね。通常のランク戦と異なり、()()()()()()()()()()()()()()()()()。決まってから開始までの10分間。そこの質の差は大きく響くことになりそうです」

 

 

 

 

 

 

「解説じゃああ言ってるが、シアンならその辺どうとでも合わせられる。メンバーのトリガー構成もすでに頭に叩き込んでんだろ」

 

「とはいえ大した連携までは取れないはずだ。状況次第ではお前の望む展開にはならないだろう。誰がシアンを落としても文句は言うなよ」

 

「そこまで子供じゃないですよ風間さん」

 

「シアンはあたしが斬るわ。そんでもってうちに引き込む」

 

支部長(ボス)はそんなこと言ってなかっただろ」

 

「城戸さん派閥の太刀川のとこより、玉狛(うち)所属の方がいろいろ楽でしょ。近界民(ネイバー)もいるし」

 

「それ決めるのはそれこそシアンさん次第だろ。ねえ柚宇さん?」

 

「まぁね~。私は残ってくれた方が嬉しいな~」

 

「元の鞘に納まるのが、落とし所として理想ですよね」

 

 国近の願望に三上が賛同して背中を押す。この件に関しては、三上は"対国近限定全肯定みかみか"なのだ。

 理想とは言ったが、ただ元通りになることが理想とは思っていない。互いに抱えてるものをすべて清算して、以前よりも強固な関係性になって戻ってほしい。三上の思い描く理想はそっちだ。

 

「こっちと向こうとじゃモチベーションの差もありそうですけど、向こうが手を抜くこともないっすよねー」

 

「ないでしょ。A級に共通点があるとすれば、その1つが()()()()()なんだから」

 

「はははっ、そりゃ違いないな」

 

「あ、マップが決まったみたいだね~」

 

「……予想していたマップの1つだな」

 

 

 

 

 

「このマップは…………どういうマップだ?」

 

「ふざけるな、と言いたいところだけど、個人戦しかしてないなら知らないのも当然か」

 

「市街地B。C級へのデモンストレーションも考えれば当然ね」

 

「時間も多くない。すぐに作戦を練りましょ」

 

「こっちのオペレーター気が強いのしかいねぇな」

 

 「それが何か?」と3者の視線が集中し、当真は首を竦めた。

 かつて東隊でオペレーターを務めた月見、現A級2位の部隊のオペレーターを務める真木、そしてボーダー唯一のオペレーターで隊長の草壁。

 こちらのチームのオペレーターを務めるのはこの3人だ。ちなみに真木はこの件で三上と対立する流れになったことにショックを受けている。風間隊が向こう側に行くなど予想だにしなかったことらしい。

 

「市街地Bは高低差のある建物が多いマップよ。一見射程持ちが戦いやすいマップだけど、射線を通せる場所と通せない場所がそれなりに別れてもいる」

 

「つまりその辺も織り交ぜて作戦を考えるわけか」

 

「そういうことね。出水くんは射線関係なしで攻撃できるから、そこは忘れないように」

 

「わかった」

 

 弾の軌道を変えられる変化弾(バイパー)。それをリアルタイムで好きに毎回引けるのは、B級にいる那須とヒュース、そして太刀川隊の出水だ。ヒュースはその経歴上まだ那須ほど綺麗に引けるわけではなく、そして那須と出水の撃ち合いでは出水が勝つ。

 某信者から対マン最強と称される二宮相手にすら、出水は撃ち合いで4割の勝率を保っている。射手(シューター)というポジション上、生まれ持つトリオン量の差が、そのまま戦いに影響するにも拘らずだ。

 たとえどんなマップだろうと、相手から警戒されるのは当然である。

 

「なんにせよ、こちらはこちらにしかない強みを活かす。それは絶対必要な条件だ。いつも以上に働いてもらうぞ」

 

「了解だ真木ちゃん!」

 

「あれ? 隊長ってどっちだっけ?」

 

「気にすんな。冬島隊(うち)はいつもこんな感じだ」

 

「へ~」

 

 いっそ隊長変わればいいのに、と思ったシアンだったがそれを口にすることはなかった。

 言ったら冬島は泣く。

 

 

 

 

 

「さあマップも決まり、残り時間も僅か3分ほど。ここで今回の参加者の発表をさせてもらいます!!」

 

「「おお!!」」

「「ついに!!」」

 

 ざわつく観客席の様子から、そういえばまだ発表してなかったなと解説陣は思い返した。彼らはすでに知っている身だったからこそ、両チームがどう作戦を練るのだろうとそれぞれ脳内で思い描いていたところだ。

 

「まずはチーム1の攻撃手(アタッカー)から! この3人が共に戦う姿を今後見る機会があるのか! トップ3の太刀川隊長、風間隊長、小南隊員! さらには乱戦で怖いもの知らず、奇襲が効かないでお馴染み影浦隊長! そして加古隊所属、A級最年少の1人の黒江隊員!」

 

 その発表と共に、5人の顔写真がトリガー構成付きで大型モニターに表示された。会場のざわつきも盛り上がりへと変わっていく。

 

「ははは、こうして見ると豪華だな~」

 

「影浦隊長は諸事情でポイントこそ減ってますが、実力は攻撃手の中で5本指に入ります。黒江隊員も次世代を担う1人として期待される隊員。他の3人は補足するまでもないですね」

 

「はい。では残りの5人も紹介します! 合成弾のパイオニアにして天才射手! あの二宮隊長と撃ちあえる出水隊員!」

 

 B級ランク戦はつい先日まで行われていたものだ。それ故にほぼ全員が二宮の存在を知っている。その二宮と撃ちあえるという紹介は、あまりにも「なにその化物」感が強い。

 しかし熱が入ってきた武富は止まらない。次々とメンバーを紹介していく。

 

「未だにボーダー唯一の存在! 攻撃手、銃手(ガンナー)狙撃手(スナイパー)の全距離でマスタークラスに到達している完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)の木崎隊長! その木崎隊長に続いて万能手No.2にしてボーダーの顔! 嵐山隊長! そしてそしてA級唯一のガールズチームの隊長にして、No.3射手の加古隊長!」

 

「基本的に各隊長には出てもらってますが、錚々たる顔ぶれですね」

 

 忍田の言葉にまったくだと観客たちがうんうんと頷き、やがて1人足りないことに気づいた。

 10人対10人の試合なのに、紹介されたのは9人である。

 あと1人は誰だろうと予測が飛び交う中、武富は再び口を開く。主に時間を巻かないといけないせいで。

 

「最後はこの人! 狙撃手の祖にして何人ものA級隊員を生み出し、今期のB級ランク戦では脅威の生存力を見せた生存力の鬼! 東隊長!!」

 

「聞いた時は驚いたなー。東もこういうの出るんだなって」

 

「東さんまでいるとか、俺ならこのチームと戦いたくないね」

 

「オペレーターは国近先輩、三上先輩、綾辻先輩の3人です。さて寺島解説員の言葉には納得の余地しかありせんが、そんなチーム1に挑むのがこの方々! お祭り騒ぎにはこの影あり! 強い事以外知られていない謎の清掃員ことシアンさん!」

 

((そういえばそんな役職にしてたな))

 

「清掃員なんだ」

 

「なんでも太刀川隊の作戦室を主に掃除するそうですよ」

 

 「そうだったんだ」とか「そういえば聞いたことあるような」とか。知られてないor忘れられていたシアンの役職に、武富も苦笑するしかなかった。

 余計な情報言っちゃったなーと軽く反省しながら、気を引き締め直して紹介を続ける。

 

「現攻撃手5位にしてダブルレイガスト使い! 片桐隊の一条隊員! 万能手3位にして以前の侵攻でも大活躍の三輪隊長! 隊長経験もあり草壁隊を支える中核! 佐伯隊員!」

 

「ランキングで考えると見劣りしそうだが、あれはポイントの性質上期間の長い奴ほど上位になりやすい点があるからな。特に攻撃手はそこが顕著だ。こいつらも十分張り合えるぞ」

 

 林藤のフォローを聞き届けてから、武富は残りのメンバーを紹介する。

 

「個人総合2位! 射手1位の射撃の王! 対マン最強とも言われる二宮隊長! 自他ともに認めるその二宮隊長の信者にして、銃手の頂点に立つ里見隊員! 銃手3位にして狙撃手も務める稀有な存在、片桐隊長! 一射一殺の必中狙撃を繰り出すNo.1狙撃手当真隊員! その当真隊員に引けを取らぬ技量を持ちます、No.2狙撃手の奈良坂隊員! そしてA級にしかないポジション、トラッパーの冬島隊長!」

 

「A級にはスポッターというポジションを行う隊員もいますが、今回は控えてもらっています」

 

「トラッパーの冬島さんが参加してるのも、冬島さんが隊長だからって理由だな」

 

「チーム2のオペレーターは月見先輩、真木先輩、草壁隊長の3人です」

 

 時間を一瞥し、ドンピシャで間に合ったことに武富は安堵して高らかに宣言した。

 

「時刻になりました! 各隊員はランダムに転送されます。では、試合開始!!」

 

 




 何話になるかも分からないですけど、試合を書き切ってから投稿できたらいいなと思ってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ボーダーにカゲさんが増えた。(作者:バナハロ)(原作:ワールドトリガー)

陰山海斗は、とあるサイドエフェクトによって幼少の頃から苦しんでいた。▼サイドエフェクトの名は「感情受信体質」。どっかで聞いたことあるサイドエフェクトだった。▼それと同じ名前のサイドエフェクトを持つ影浦雅人と主人公が、どうしようもない喧嘩を繰り返す話である。


総合評価:9580/評価:8.9/連載:90話/更新日時:2025年04月03日(木) 23:00 小説情報

痛みを識るもの(作者:デスイーター)(原作:ワールドトリガー)

 痛みを感じない/痛みを感じる▼ どちらの俺もあいつのために▼ 右腕と姉、そして痛覚を亡くした少年が、那須隊の一員として戦う物語。▼ ────サイドエフェクト、【感知痛覚体質】▼ それが、少年に与えられた副作用(ちから)の名だった。▼ 頂いたタイトルロゴ絵。▼【挿絵表示】▼


総合評価:5399/評価:8.47/完結:487話/更新日時:2022年07月25日(月) 03:58 小説情報

最強ノ一振り(作者:AG_argentum)(原作:ワールドトリガー)

目が覚めた時、見知った街は見知らぬ街に生まれ変わっていた。▼界境防衛機関『ボーダー』4年前三門市に創設されたこの組織に設立時から入隊している青年がいた。▼そして1年と半年ほど前、不慮の事故で昏睡状態に陥ってしまった青年が目が覚めた時、彼は入隊以降の記憶を忘れてしまっていて・・・▼失った記憶を取り戻す為、彼は再び剣を取る▼


総合評価:3382/評価:8.46/連載:44話/更新日時:2026年01月14日(水) 19:00 小説情報

彼方のボーダーライン(作者:丸米)(原作:ワールドトリガー)

音に色を感じる『共感覚』の副作用を持ち生まれた加山雄吾は、地獄を思い知る。▼化物が進行する地獄の音色の中を生き延びた彼は、――とある決意を、胸に抱く。▼


総合評価:8903/評価:8.86/連載:166話/更新日時:2022年07月30日(土) 10:00 小説情報

ワールドトリガー・Returner from another world(作者:もりいぬ)(原作:ワールドトリガー)

▼旧ボーダー。▼まだボーダーがボーダーとして世間に姿を現す前の、在りし日のボーダー。▼その「旧ボーダー」の一員であった1人の青年は、ある戦争の際、門の向こうへ落ちてしまう。▼しかし彼は、5年もの放浪の果てに故郷へ帰還を果たした。▼異世界からの帰還者が、新たな未来を創る。▼外伝「帰還者、未踏の秘話」を開始いたしました。▼https://syosetu.org/…


総合評価:1851/評価:8.22/連載:44話/更新日時:2026年03月15日(日) 13:40 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>