ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す   作:木岡(もくおか)

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第10話 上げろウデマエ

 自信はあった――けれど、想像を超えて体は動いた――。

 

 試合開始直後から全速力で中央に向かったユウキはコンブトラックの曲面を滑るように移動して敵陣へ――まずはエリアを塗ろうかという相手を狙って攻撃を始める。

 

 ボムすら投げずに横を取ると、エリアの手前で塗るわかばをキルして、その勢いのまま奥で振りかぶっているダイナモへ弾をヒットさせてリスポンへ帰した。

 

 奇襲に成功したユウキは一旦引いてカウントが進み始めるまでエリアを塗ってからインクに潜る……。空に近くなったインクを回復させながら次に取る行動を考えれば、回復しきる前に決めることができて、満タンになると同時に動き出す。

 

 

 この2週間で分かったことがある――。いや、分かっていたものが確信に変わったというべきか……現実世界で4000時間以上スプラトゥーンをプレイした経験はこの世界でも通用する――。

 

 数的有利を作ってカウントを進める。ガチマッチの基本だ。自分に気づていない敵を狙って、自分は敵に狙われる場所では体を晒さない。撃ち合う時はしっかりと自分と敵の武器の射程を把握して、状況に応じた対応をする。

 

 エリアを確保した後は敵の打開を潰しにかかる。ステージによりけりだが、敵が出てきやすい場所へ攻撃して圧をかけたり潜伏したり。1つのルートを抑えれば敵は別のルートを狙ってくるので良いタイミングで移動する。

 

 ユウキはC-でありながら、そういったバトルの状況や行動のタイミング――言うならば「流れ」を意識しなくても高いレベルで見ることができた。

 

 右に左にステージを泳ぎ、ほぼ1人でエリアを守るユウキ。他の味方3人は敵を見つけた時には既にユウキが攻撃を始めているので、立ち止まってしまう。それほどの働き。途中、敵がリスポンから下りてきて着地すると同時にその足元で爆発するボムをノールックで投げるという芸当も見せた。

 

「何だよあいつ。本当に同じC帯かよ」

 

「……勝てる気がしねえ」

 

 初戦は一度もエリアを取り返されてペナルティを付けられることなくノックアウト。1分20秒ほどで終わらせた。

 

「あいつのこと知ってる?」

 

「知らねえ」

 

「私次の試合あの人と味方だ。ラッキー!」

 

 試合の合間の準備室ではユウキの噂をする声がヒソヒソと聞こえてきた。

 

 人にこれほど注目される経験はあまりないし、周りからの視線が恥ずかしい。ユウキは1人で座るベンチで脇を固めて少し小さくなっていた。下唇を口の中に引っ込めて周りに気づかれないくらいの力で拳をグッと握る。

 

 しかし、これ以上目立たないようにしようなんてことはせず――次の試合でも、その次の試合でもユウキは全力でプレイした。むしろ自分の腕を見せびらかすくらいの動きをした。

 

 必ずプロになる為に、なるべく早く結果を出したい。ゲームとは違ってキル数や外でバトルを見るガチマッチ運営のスタッフが採点する貢献度もウデマエの変化に関わるのだ。手を抜くわけにはいかない。

 

 それと、単純に気分が良かった。人に「すごい」と言われて、自分でも想像以上の動きができて本当に気持ちが良い。

 

 気持ちがハイになったユウキはタチウオのリスポンからのバンジージャンプばりの高さからのジャンプも怖くなかった。一人称で経験するそれはかなり迫力があったが手を広げて風を受けながら笑顔で飛んだ。

 

 ダイナモだろうがリッターだろうが関係なく撃破に向かう。ゲームのC帯よりは弾を当ててくるが、やはりまだ行動が一歩二歩遅い。行動に迷いがないユウキはどんな相手でも流れを読むまでもなく撃ち合いで勝てた。

 

「俺もいつかあの人に追いつけるだろうか」

 

「私もあの人みたいなプレイがしてみたい」

 

「神様だ――神様の生まれ変わりだ」

 

 気が付けば周りのイカ達はそんなことまで言い始めて、輝いた目でユウキを見る者もいた。

 

 

 ――ユウキのガチマッチ初日の戦績は15勝0敗。平均キルレは5.5。ガチマッチ初挑戦としては異例な記録で……インクリングの世界で過去最速、1日でB帯への昇格が決まった。

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