ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す 作:木岡(もくおか)
「あと1勝でSに上がれてたっていうのによ。足引っ張りやがって」
「…………え?」
そのイカボーイは周りの目も気にせず続けて怒声を浴びせる。
「え?じゃねえよ。お前のせいで最後の試合負けたつってんだよ」
「…………」
言われていることを理解できているのかいないのか。アユ子は何も言い返さず、ただその場で立ち尽くしていた。
そんなアユ子に向かって、ひょろっとした長身で指輪やイヤリングのアクセサリーが目立つイカボーイはさらに畳み掛ける。
「見ろ!お前の最後の試合のリザルト。2キル11デスだぞ?どうやったらそんなことになるんだよ。他の2人も使えなかったがお前が一番クソだ。……おーいロビーにいるみんなー、こいつ今日の試合で2キル11デスなんてことしたガールだぞー」
ついには指を差して大声を出す長身ボーイ。ロビーにいたイカ達が何事かとアユ子と長身ボーイの周りに集まっていく――。たしかに、最後の試合のアユ子の動きは優れていなかった。けれど……。
ユウキはそれを見て言葉にならない感情が腹の底から込み上げてくるのを感じた……。
今にも爆発してしまいそうだから……1歩……1歩……床を見ながらゆっくり歩いて近づいた……。
「なあ、お前今から俺とソロのガチマッチやってくんね?そんで、負けたらよ――」
「――俺じゃダメかな?バトルの相手」
「ああ?」
ユウキは溢れる怒りを抑えながらギャラリーが取り囲む場へ足を踏み込んだ。アユ子の目から大粒の涙が零れ落ちた――その瞬間だった。
「あんた……。今何を言おうとした?」
「誰だか知らねえが教えてやろうか?俺に1対1で負けたら二度とバトルしに来るなって言ってやろうとしたんだよ」
「俺が受けるよその勝負」
「誰なんだよお前は。何か文句あんのか?」
「その子の友達だ」
「ほう。ウデマエは?」
ユウキがアユ子を守るように前に立つと、長身ボーイは憎たらしく笑う。
「――Bだ」
「あっはは。Bだあ?何だそりゃ。はははは、笑わせんじゃねえよ。お前じゃ話になんねえよ。何で俺がB帯なんかとガチマッチしなくちゃいけないんだ。まぐれで勝って俺のウデマエでも狙ってんのか」
わざとらしく大げさに腹を抱えて笑う長身ボーイ。周りを囲うイカ達もざわつきだして同じようにユウキを笑う者もいた。
「お前みたいな雑魚からウデマエなんて取らねえよ」
「なんだと?口には気を付けろよ。俺は元S帯だぜ」
「じゃあ逃げんな」
「ふん。そこまで言うならお前とバトルでもいいが、お前が負けたら後ろのガールも合わせて2人で二度とバトルしないと誓えよ」
「それでいいよ――もし、お前が勝ったらな」
「ついてこい。叩きのめしてやる」
長身ボーイは吐き捨てるように言って、親指でロビーの奥を差した。廊下のほうへ歩いていくと壁を拳で1発殴った。
「アユ子ちゃんは足を引っ張ってなんかなかったよ。ちょっと待っててね」
アユ子は耐えきれなくなって両手で顔を覆い、しゃがみ込んでしまっていた。
「あ、ゲソ太郎ちょうどよかった。ちょっと頼めるかな――」
ちょうど長身ボーイとすれ違うようにロビーにゲソ太郎がやってきたのでユウキは声を掛けた。そして、長身ボーイを追いかける。
「俺はこのイカスツリーにちょっとしたコネがあってよ。その気になりゃB帯からウデマエも吸えるんだけど、B帯なんかのしょっぱいウデマエを吸ってもなあ」
背中を追って入った先の準備室で、長身ボーイが半分笑いながら言う。バトルの設定をしているのかパソコンを乱暴にいじっている。
「まあ、これでガチマッチから雑魚が2人消えるんだ。お前武器は何使うんだ?」
「俺もスプラシューター使うよ。ちょうどメイン武器だし」
長身ボーイがスプラシューターを持っていたのでユウキも同じ物にした。本当はスシコラがメインだが同武器のほうがより重い結果を与えられるだろう。
「ステージはランダムでいいな?1on1ルールっと――これでよし」
長身ボーイが振り返りユウキへ中指を立てる。
「さあ始めようか。ステージはハコフグ倉庫だ」
ユウキは終始、落ち着いた態度で長身ボーイに接した。立てられた中指を見てもやり返さずに淡々とバトルステージへ向かう為、部屋を出る。
「なんだ今さらビビってんじゃねえだろうな。逃げんじゃねえぞ――」
手に持ったスプラシューターを回して遊び、軽く首を回しながらユウキがリスポンに入るとすぐにバトルは始まった。