ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す   作:木岡(もくおか)

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第14話 最強のB帯

 今日のアユ子にとって最後のガチマッチだった試合――たしかに、動きはあまり良くなかった。単純に誰にでもある調子が悪かったというものだったり一度のミスを引きずってしまったのか、それとも何か別の理由があるのか。

 

 そんなことは分からないが、こいつは許せない。

 

 ハコフグ倉庫で自分と同じように中央へ向かう長身ボーイの姿を見たユウキは拳を強く握ったが、すぐに緩めてゆっくり息を吐いた。怒りに飲まれると勝てるものも勝てなくなる。バトルとはそういうものだ。

 

 落ち着いて――より冷たく――より鋭く――

 

「よう。クソザコB帯」

 

 お互いに中央にあるU字の高台の広場に来たユウキと長身ボーイ。ユウキがそのまま真っ直ぐに進むと、壁に潜伏していた長身ボーイに横を取られる。

 

 すぐに攻撃を始める構えを取ったユウキだったが、相手の弾を躱し切れずにインクの弾を一発しか撃てないままリスポンへ返された。

 

「ははははっ。やっぱ弱いな。おーい、聞こえるかクソザコ。もうやめとくかー?」

 

 中央で大声を出す長身ボーイの声がハコフグ倉庫の中を響いて聞こえる。そして1on1のルール通りにスーパージャンプで帰っていく長身ボーイも見えた。

 

 どちらかがデスする度にキルを取ったプレイヤー側もリスポンへ帰る。そうして公平な状態で撃ち合いを繰り返し、最終的に相手を倒した数が多いほうが勝者となる。サブウェポンは使ってもいいがスペシャルウェポンは使用禁止。

 

 ユウキはもう一度中央へ向かいながら思い出す――ゲームで1on1をやる時もハコフグで似たようなことをやっていたっけ――。何百回かはやったと記憶しているその様々な撃ち合いが頭の中に蘇ってきてなんだか笑ってしまった。

 

 色んな武器を持って色んな相手と撃ち合ったその百戦錬磨の経験。同じパターンの撃ち合いもあったが細かく塗り状況なども加味するとその全てが違っていた……。

 

 今度はU字の高台に上るルートを取って攻め込むユウキ。しかし、相手陣地側に長身ボーイの姿はなかった。

 

「こっちだ」

 

 長身ボーイは最初のユウキのように真っ直ぐに自陣に向かっていてすれ違う形になってしまった。

 

 ユウキは下にいる長身ボーイに向かって攻撃を始める――長身ボーイも当然攻撃を始めていて撃ち合いが始まる。高低差がある撃ち合いで最初に放った数発はどちらも外した。

 

「おらっ」

 

 その後、長身ボーイはクイックボムを取り出して力いっぱい投げつけ、怯んだユウキに向かって追い討ちをしかけた。そうして2本目も長身ボーイが勝利してしまう。

 

 リスポンで口に入った紫色のインクをふっと吐き出すユウキ。不意にやってきたあくびは我慢せずに思い切り外に出した。

 

「はい2本目。ザコを蹴散らすのは気持ちいいなあ。降参なんかしてくれるなよ。時間いっぱい俺にやられに来い」

 

 また、中央から大声を飛ばす長身ボーイの声が聞こえる。ユウキはその中で手足を伸ばしストレッチをした。膝の屈伸を終えるとまた中央へ向かう――。

 

 そして、3本目の撃ち合いは……一瞬で勝負が決まった。

 

 長身ボーイがデスして飛び散ったインクを見下ろすユウキの目は森でも眺めているかのように静かだった。

 

 スーパージャンプでリスポンに戻った後始まった4本目の撃ち合いも……勝ったのはユウキだった。

 

 長身ボーイがユウキの姿を視界に入れる前に決着は着いた。長身ボーイが索敵の為にユウキ側の広場を塗ろうと顔を出した瞬間にユウキが放った弾が長身ボーイを貫いた。

 

「おいっ!まぐれだろ。良かったなまぐれで二本取れて次はねえぞ!」

 

 今度はユウキが中央にいてリスポンに長身ボーイがいる状態で大声が響く。それを背中で聞いたユウキは淡々とリスポンに戻る。

 

 ……そこからこの1on1でユウキがデスすることはなかった。

 

 5本目、ムキになった様子で真っ直ぐに突っ込んできた長身ボーイを落ち着いて潜伏から奇襲したユウキが一歩も動かず勝利。

 

 6本目、今度は先程やられたように潜伏からの奇襲を狙った長身ボーイだったが、体を晒す前に潜伏場所へユウキの攻撃が飛んできて、ユウキの勝利。

 

 潜伏場所へ飛んできた攻撃はユウキが最初に投げたクイックボムだった。まるで分かっていたかのように高台へ一発で。

 

 相手に撃たせてからこちらが攻撃をする。その為に潜伏したり、相手を釣り出すようなフェイントの動きをしたり。そうした動きを相手がしてくると想定して潜伏していそうな場所にはボムを投げてクリアリングしたりする。

 

 そういった撃ち合いに勝つための駆け引き。口に出してみれば当たり前のことかもしれないが、優れたプレイヤーでも試合の流れの中で選択をミスしてしまうことや、塗り状況が悪い中で囲まれるなどのどうしようもない状況でデスしてしまうことがある。

 

 特にムキになった時には――。

 

 何も考えず自分を格下だと思い込んでしまっている相手をいなすのは容易い。長身ボーイが押してくればユウキは退いて対応して、長身ボーイが退いてくればユウキは押して対応した。

 

 7本目……8本目……9本目……ユウキが勝ち星を増やしていく。クイックボム2発だけで取った試合や、ユウキが開始直後に真上に高く放り投げたクイックボムで決着した撃ち合いもあった。

 

 徹底的に叩きのめしたかったのだ。徹底的に勝ちたかった。

 

「降参なんかすんなよ」

 

 撃ち合いの中でユウキは冷たい口調で言った。

 

「――てめえ」

 

 長身ボーイがユウキの攻撃を躱しながら近づいてカウンターを狙って来たところをさらにユウキが躱して攻撃を当ててリスポンへ帰す。

 

 そして4分40秒が経過して、時間的に最後となった撃ち合い。U字の高台を挟んで長身ボーイは体を晒す前に声を出した。

 

「おいっ。最初の2本は手を抜いてたっていうのか?」

 

「そうだよ」

 

 ユウキはインクの中から出て、ヒト状態になってから答えた。

 

「クソ野郎がっ!」

 

 最後の長身ボーイの攻撃は高台からのスーパーチャクチだった。使用禁止だったはずのスペシャル――発動の音と共に高く飛び、予備動作に入る。

 

 ユウキは走り出し真下に向かいながらクイボを投げて弾を発射、スプラシューターで出せる最速のキル速でそれを撃ち落とし、勝負は終わった。

 

 結果はユウキが11キル2デス、長身ボーイが2キル11デス。

 

 最終的に相手が腹を立てていた2キル11デスという数字で終わるように時間を調整しながら元S帯を圧倒したB帯。その事実は勝負の後少しすれば広まり……ユウキの名は多くのプレイヤーに轟くこととなる……。

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