ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す   作:木岡(もくおか)

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第17話 進むべき道

 ユウキもそこまで深刻な問題ではないと思っていた。コイ吉お爺さんも前からあることと言っていたし、アユ子は1日休めばふらっと元気になったりするんじゃないかとも考えたりした――。

 

「チャージャー恐怖症?」

 

 それはアユ子と話をしたコイ吉爺さんが、その日のうちにユウキに話してくれたことだった。試し撃ち場で練習後にインクに潜っていたユウキが呼ばれるとすぐに話は始まった。

 

「そう。アユ子にとっては拭い切れていないトラウマを呼び起こすスイッチみたいなもんじゃなチャージャーは。昨日のアユ子の最後の試合、相手にチャージャーがいたんじゃないか?」

 

「……はい。確か、いたと思います」

 

「特定の武器に対して強く苦手意識を持つのはプレイヤーとして珍しくない。でも、たまに苦手意識が強くなりすぎてその武器を見ただけで体が硬直してしまったり震えて目を閉じてしまう者がおる」

 

 ユウキは話を聞きながら大体の症状は察した。現実世界の野球やサッカーのプロスポーツ選手にも精神的な原因で思い通りのプレイができなくなってしまう選手がいると聞いたことがある。

 

「アユ子も実はそういう症状を持っておってな。プロプレイヤーでもたまに患ってしまう武器恐怖症のアユ子にとってはチャージャーがそれじゃ。幼い頃に受けた心の傷により持ってしまったんじゃが、最近では全く発症しておらず完全に克服したとばかり……」

 

 

 ――とりあえずは無理に励ましたりバトルに参加させたりせずに、アユ子の様子を見守るしかないとコイ吉お爺さんは言っていた。

 

 ユウキもそうすることには同意だった。アユ子の気持ちも考えれば、自分が下手に練習に誘ったりしないほうが良いと思った。悪化させてしまうこともあるかもしれない。

 

 話を聞いた時はすごくショックだった。話の内容も――そんなことがあればトラウマになっても仕方ない。聞いているだけでユウキも血の気が引いて息を呑んだ。

 

 じゃあ、どうするか……。

 

 ユウキはコイ吉お爺さんに話を聞いた後、数日間はずっとそれを考えていた。その中で、確かなものは見つからなかったが漠然と道は見えてきた。

 

 霧の中にあるような道だけど、その道を進むためにも自分まで暗くなってはいけないと毎日ユウキは試し撃ち場に籠って体を動かしながら頭も動かした。

 

 そして、前から望んでいたことだけれど……プロになるなら、隣で一緒に目指すアユ子と一緒にプロになりたい。できれば同じチームで。

 

 この世界のガチマッチには4人一組で潜ることもできる。ちゃんと同じチームになれば今までよりもずっとアユ子の力になることができるし、たとえそれがダメだったとしても……。

 

 仮にアユ子がもうどうしても立ち直れなかったとしても、自分がプロになれば道場を復活させたいというアユ子の夢が半分叶って、救われるんじゃないだろうか。

 

 とにかく――自分が今できることは早くA帯に上がること――。

 

 

 それからさらに数日後、ユウキは初めて1人でイカスツリーまで来ていた。本日は午前中B帯のガチマッチが行われる日。もちろんイカスツリーに来た理由はガチマッチに参加するためだった。

 

 天気は珍しく雨……ビニール傘を差して駅からツリーに向かった。スタジアムには屋根があるのでガチマッチは天候に関係なく開催される。

 

 午前中から雨の中を歩かされるのは億劫だった。けど、C帯やB帯のガチマッチは午前中がほとんどなので仕方がない。周辺の飲食店やテレビにも映ったりするガチマッチは昼や夜はA帯やS帯、レベルの低い試合は朝の内に片付けられる。

 

 自動ドアを抜けて、ノリノリなBGMの中を受け付けに向かって歩く。

 

 ユウキの現在のウデマエはB+1歩手前といったところだった。今日勝ち星をたくさんあげることができればA-になれるかもしれない。

 

 B帯に上がってからはさすがに全勝とはいかず、勝率はちょうど8割くらいに留まっていた。当然もの凄く高い勝率だがユウキにとってはB帯で8割では物足りないし、今日も8割ならたぶんA帯には届かないだろう。

 

 Xの判断能力がありながら、圧倒的に勝ちきれないのには理由があった。B帯のガチマッチにはユウキが経験したことがないルールやステージがあったのだ。

 

 8人対8人で行われるバトルや見たことがないステージでエリアやヤグラの位置も知らない状態でのバトル。スプラトゥーン3と呼べるようなバトルがここにはあった。

 

 今日のルールは3人vs3人vs3人vs3人で行われる四つ巴のナワバリバトル。ユウキにとっては初めてでルールもステージも数回映像を見て予習してきただけだったが、全部勝つつもりだった。

 

「ごめんなさいごめんなさい。ぶつかってごめんなさいごめんなさい。もうしませんから許してください」

 

「おいてめえのせいで濡れちまったじゃねえか」

 

 振り向くと、あの日アユ子に怒鳴ったので懲らしめてやった長身ボーイと小柄なガールが何やらもめていた。

 

 再会と出会いの中、波乱のB帯ガチマッチが始まる。

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