ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す 作:木岡(もくおか)
「――どこからステージに入ってきたんだ?」
「分からない。とにかく医務室に運んでやろう」
微かに取り戻した意識の中に声が響いている……うっすらとぼやけている視界ではインクリング達が険しい顔つきで自分を見下ろしていた……。
ああ……また意識が遠のいていく……。きっと夢から覚めるんだな……。
ベッドの上で、目を開けるユウキ。今度はしっかりと眠りから目覚めるような感覚があった。大きなあくびをしながら体を起こす――しかし、背中に痛みがしてまたベッドに沈んだ。
そして、その痛みですぐに眠気が飛んだユウキは目覚めた場所の景色が自宅ではないことに気づき、驚きで血の気が引いた。
ど、どこだ……ここは?……つーか、俺昨日何してた?
首だけを動かして自分が寝転んでいる部屋を端からじっくりと観察する。来たことがない他人の部屋であることは間違いない――薄いピンク色のカーテンにマシュマロみたいなクッション、鏡が置いてある丸机。雰囲気的にどうやら女の子の部屋らしい。
あとは――スプラチャージャー!?
部屋の壁に立てかけてあったのは間違いなくスプラチャージャーだった。ちょうど原寸大くらいに見える大きさで形と色はスプラ1の時のもの。公式ではあんなもの売られてないだろうし部屋の持ち主はよっぽどのスプラ好きだということが分かる。
自分の置かれている状況を忘れて、ファンなら興奮せざるを得ないクオリティのスプラチャージャーの作り物に注目するユウキ。目を輝かせていると、部屋の外で足音がして正面に見えていたドアが開く。
「あ、目が覚めた?」
「へ?」
誰かしら人間が入ってくるものだと構えたユウキは入ってきたのがまさかのイカガールで、しかも日本語で話していることに情けない声が出た。
「体は大丈夫?見たところ大ケガはしてなかったけど」
頭に紺色のリボンを付けたイカガールはユウキがいるベッドの横まで歩いてきた。八重歯のように尖った2本の歯も、吸盤がある長い髪も偽物には見えない――それに、そういえば確かこの子は――夢の中で「危ない」と声を掛けてくれた子だ。
「……もしかして気を失う前のこと覚えてない?名前は分かる?」
首だけ起こして何も言えないでいるとリボンを付けたイカガールは顔を近づけてユウキの顔を覗き込んできた。
「……あ、あの俺……ユウキです」
「ユウキ?この辺じゃ聞かない名前だね。私はアユ子。よろしく」
怖いのではなく可愛いのだが、初めて見るものだから――ユウキは近いアユ子の顔から逃げるように離れて、壁を利用して体を起こす。
「あなた突然バトル中のステージの中に入ってきたのよ。何であんなことしたの?…………大きなケガはしてないみたいだったから……生身でマルチミサイルに当たって気絶したあなたをとりあえず私が家に……」
アユ子の話は上手く耳に入って来ない。なぜなら、自分の手を見て足を見たからだった。数か所に包帯が巻かれた手足は明らかに短くなっている。恐る恐る触った頭は悪い予想通りにぬめっとした感触がした。
信じられないことだがなんとなく状況は理解した……これがまだ夢の中ではないのなら……俺はスプラトゥーンの世界に転生してしまっているっ。
「――もしもーし。聞いてる?」
「……どうなってんだ」