ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す 作:木岡(もくおか)
プライムシューターベッチューを使うことにしたのは射程が欲しかったからだった。3vs3vs3vs3のナワバリバトルでは12人のプレーヤーで塗り合う分ステージは通常の2倍近くの広さが基本的にある。「ヒラメが丘団地・2番地」も例に漏れず、広くて高低差もあるので射程があるほうが有利だとユウキは考えた。それと、ナイスダマによる生存能力の高さ……。
リスポンから出るとスタジアムの天井に取り付けられた大きな照明の光が目に沁み入ってくる。細めた目を徐々に開いていくと都会のスタジアムの中とは思えない団地が立ち並ぶ住宅地の景色が広がる。
すぐにバトル開始のホイッスルが空間へ鳴り響くとインクの飛沫をあげながらステージへ踏み出す……。
まずは様子見で自チームのリスポン近くを塗ろうかと構えのユウキはスプラシューターよりも少し重いプライムシューターの引き金を引く。地面の隅っこから丁寧に塗っていくと表面だけの作り物とはいえ布団や室外機までピンク色のインクで汚すのは気が引けた。
「お先ー」
マップを確認していたユウキに肩をぶつけ我先に中央の最も高い団地へ進むサンゴ。その手にはシャープマーカーネオが握られていた。
「おい。まだ1人で動くな」
「俺の勝手だ」
「待て」
サンゴはニヤリと笑いながら振り向いて手を振るとさらに速度を上げてインクを泳ぎ出す。
慣れないステージとユウキのルール分析ではじわじわと塗り面積を広げていくのが定石だと思っていたが仕方なくユウキはカバーできる位置を意識してサンゴについて行く。
その際にフウラの様子を確認するとまだリスポンから出てすぐのところでこれでもかというくらい丁寧に地面に向けてインクを撃っていた――。
「おい待てって。もっと慎重に進め。もう敵陣に近いエリアだぞ」
「出てきた奴全員ぶっ倒してこの中央をキープすりゃいいんだろ。俺にはできる」
サンゴは一切進行に無駄な塗りは行わず一直線に進んだ。たまに遊ぶように適当にクイックボムを投げて。その1つを注意した味方であるユウキに投げつけると窓と壁を付着したインクを使って泳ぎ、団地の屋上まで上った。
スプラシューターではなくシャープマーカーネオを持っているものだから少しはナワバリをやる気があるのかと持っていたが微塵もそれを感じられない。
その時、敵チームの誰かが撃ったチャージャーの弾が一閃、サンゴに向かって放たれた。
「あらよっと」
ヒットするように見えた青いレーザーみたいなインクをサンゴはひらりと長身の体を回して躱した。
さらに今度は黄色のインクを発射するタコボーイがサンゴに接近して攻撃を始めた。ユウキもそれが見えると同時に敵のタコボーイへ向かって攻撃したが、弾が当たる前にサンゴがあっさりと返り討ちにした。
元S帯なだけあってB帯の敵は苦にしていない。しかし……。
さらに2人の敵がサンゴを挟み撃ちで攻撃してサンゴの体を染め上げた。
「くそっ。B帯の雑魚どもが」
それを見たユウキもすかさず反射とも呼べるスピードでサンゴを倒した2人へ弾を撃ちボムを投げリスポンへ帰したが……その内にチャージャーで撃ち抜かれてしまう。
乱戦、混戦、予想していた通りの展開……。青色に爆発したユウキがリスポンで復活すると初動の撃ち合いを制した青チームが団地の上からインクをばらまいていた。
ユウキとサンゴは2人で3人をキルしたが、ユウキ達ピンクチーム以外から1人ずつキルしたので、2人キルされたピンクチームだけが人数不利という状態になってしまった。最悪と言える初動だ。
このルールではバトルに参加する12人の内9人が敵。どんな戦いやゲームでも3つ巴や4つ巴のような条件の時は漁夫の利を狙っていくのがセオリー。
ユウキは最初からその考えのもとで立ち回りを考えていて、初動で負けてしまった後も手遅れになる前に上手く横入れを入れていくバトル展開を作りたかったが……。
「今度は潰してやるぞB帯」
サンゴはその後も単騎で不利な場所へ向かっていく一匹狼の立ち回りを続けた。
味方1人がそういう立ち回りをする以上、カバーを入れるしかないと考えたユウキもバトル中盤にサンゴの後を追って、サンゴと2人同時にキルされてしまう。
「お前いい加減にしろよ。もう1人で行くのはやめろ」
「てめえのカバーが下手なんだよ」
「俺のせいな訳ないだろ」
リスポンの中、2人でいがみ合いながら急いで前線へ戻ろうとした時にユウキはその光景を見た。
ピンクチームで1人浮いてしまったフウラを団地から飛び降りながら狙う2人の青チームの敵。その方向を見てすらいないフウラに向かって「危ない」と言ったユウキの声も距離が離れているので届かない。
そのままフウラがキルされてしまうかと思われたが……爆発したのは青チームの2人だった。
何だ……何が起こった……?
フウラはリスポンへ帰した2人に向かって何度も頭を下げていた。