ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す   作:木岡(もくおか)

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第21話 持っていた少女

 遠くで起こった謎のキルの真相を確かめる為にユウキの体は自然とフウラの所に向かった。

 

「おいてめえ。まだ話は終わってねえぞ」

 

 後ろで怒鳴るサンゴを無視して周りも警戒せずにインクの中を泳ぐ――確かにピンクのインクで弾けているが、その場所まで辿り着いてもユウキはどういう風に敵がキルされたか分からなかった。

 

 なぜなら、青チームの2人は床に着地する前に爆発して、ピンクのインクは壁にバケツでぶっかけられたように付いているのだ。

 

 ボムで爆発したような感じだったがボムなんてどこにあったのだろう。それにフウラのサブはキューバンボムではなくてスプラッシュボムなので壁には貼り付けられない。

 

 ユウキは数秒その場で立ち止まったがバトル中に深く考えている時間はないので、敵インクに塗られた部分を塗り返すためプライムシューターを構えて弾を撃ちだした。

 

 スプラシューターよりも一回り大きいプライムシューターは程よい重さで扱いやすかった。弾を発射するときの反動が脇から肩に心地良く伝わる。

 

 手首に付けている黒いリストバンドのモニターを確認すると試合時間は半分が過ぎていた。とにもかくにも中央を制圧していた青チームが2人デスして状況を良くするチャンスが生まれたのでここから気合を入れて取り戻さなければ。

 

 ユウキはサンゴに付き合うのをやめてフウラの近くで行動を取ることに決めた。先程のキルも気になるし、せめて2人では連携を取ってこの試合を勝ちにいきたい。

 

 できることなら1人で無双してでも。いやしなければいけない。

 

 マップの端の坂になっている部分から団地の屋上に塗り進むフウラが見える位置でユウキも後ろから塗りながらついて行く。フウラは終始、首を横に振り怯えている様子で自分が歩いてきた道はしっかり100%ピンクにしていた。表情も唇をきゅっと結んでいて固い。

 

 その表情を見てユウキはやはりどうにか自分がやらなければいけないと思った。さっきのような謎のキルに期待してはいけない。

 

 団地の上のほうではインクを撃ち合う音が激しく聞こえていた。スペシャルを使用した大きな爆発音やスタジアムの外からの応援の声もそこに微かに混じっている。

 

 音の鳴る方向を見上げると黄色のインクが一滴落ちてきてユウキの頬に付いた。アメフラシの雨雲もスポットライトの灯りを遮って浮いている。

 

 プライムシューターを握り直し、いざ戦場に出ようかという時、ユウキは背中に激しいシャワーを浴びせられたような感覚がした。

 

 後ろには黄色チームのパラシェルターがいた。

 

 しまった――。

 

 フウラの動きと上の音に気を取られて、後ろから迫っていた敵に気が付かなかった。

 

 いったい……どこから来た……?

 

 ユウキは近くにあったバルーンの後ろにすかさず身を隠したが状況は悪い。無情にも傘を開いて接近してくる敵。

 

「危ない!」

 

 後ろからフウラの声がして振り向く前に小さなガールがユウキの前に走り出した。手にはスプラッシュボムが握られている。

 

 フウラは背中にボムを潜ませ、相手からは見えない位置から手首だけでボムを上に投げた。そして、傘と撃ち合いを始める。

 

 フウラが最初に投げたボムは上手く隠すことができているみたいで、気にせずわかばシューターと有利な対面を始めた黄色チームのパラシェルターはすぐに後に落とされたボムで爆発させられた。

 

「ユウキさん。アーマー吐くのでお願いします」

 

「……分かった」

 

「そこのプロペラから上に行けます。サポートは頑張るので」

 

 フウラの控えめなガッツポーズを見届けると、最後にフウラが投げてくれたスプラッシュボムがあるプロペラにユウキは乗った。

 

 ユウキの強さはステージ理解度によるところが大きかった。けれど、今日は初めて立つ見たこともないステージ。敵が進行してくるルートも全ては分かっていないので、1人でなんて勝てるわけが無かった。ユウキはすぐに考えを変えた――。

 

 ハイパープレッサーにマルチミサイルといったスペシャルが飛び交い全チームが集結している団地の中央屋上。もう見慣れたがそれでもまだスペシャルに狙われると怖くて……でも、当たったら凄く痛いという訳じゃないのでそれがまたワクワクする。

 

 ベストタイミングで発動されたアーマーが魔法のように体に張り付いて、泡に全身を包まれているような不思議な安心感を得るとユウキは慌ただしい戦場に飛び込んだ。

 

 1人1人、キルできるかできないかを見極めて、浮いた敵に確実に弾を当てていく。スペシャルの応酬を掻い潜りながら上手く相手の隙を突く。

 

 これだけの人数のバトルはやっぱり派手だ。少し足元にかすったハイパープレッサーの強力なビーム。かすっただけでその部分が少し痺れる。

 

 あと一発でキルできる敵をフウラが動きを読んでいたかのような場所へボムを投げてキルを取ってくれた。

 

 この子はバトルが下手じゃない――それどころか――

 

 フウラと2人で3人の敵をキルすると一旦下がって、インクとダメージを回復する……。

 

「ナイス」

 

「ナイスです」

 

 ゲームとは違って面と向かってナイスを言える。ユウキはそこで初めてフウラのイカ特有であるニカっとした笑顔を見た。

 

 いける。いけるぞこのチームは。あとは……サンゴが……。

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