ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す 作:木岡(もくおか)
「さっきのバトルの中盤ぐらいでさ、屋上から下りてくる青チームの2人をキルしてたじゃん。あれどうやったの?」
「えっと、あれは相手が上にいるなって分かった時にスプラッシュボムを高く投げたんです。スプラッシュボムって地面に接している時に爆発までのカウントが縮んでいくじゃないですか?上手いことベランダの手すりの所で爆発するのを狙ってみたら……なんかうまくいっちゃって……ごめんなさい」
「壁とか窓のくぼみにぶつかるのを計算して投げったってこと?」
「……はい」
「え、めっちゃすごいじゃんそれ」
「そんなそんな。あれは本当にまぐれなんです。あんなにうまくいくなんて思ってなくてちょっとでも注意を引けるかなくらいで投げたんですけど2人もキルできてしまって申し訳なかったです」
フウラは手をあわあわさせて、ユウキは何もしていないけれど少しだけ離れる。
「あれ以外のところでもボムを投げるの凄く上手だったよ。助かった」
「スプラッシュボムを投げるのだけはちょっとだけ自信あるんですよね。ずっと使ってるし勉強してるので」
バトルの合間の準備室でベンチに座ったフウラとユウキは雑談していた。スプラッシュボムの新たな使い方を知ったユウキはフウラが持つそれ以外のボムの技術にも興味があった。
「――背中から投げる奴もすごかったね」
「あ、あれはプロの選手がやってたのを真似して練習してみたんです。私バショウさんっていうとってもスプラッシュボムを投げるのが得意な選手のファンなんです」
余程好きなのかその話が始まったフウラは急に饒舌になっていろんなことを教えてくれた。小さい頃からのファンで試合後にサインをもらったこともあるのだとか。そのサインはフウラの宝物とも言っていた。
「――次の試合も頑張ろうね。おいサンゴ、もうあんな身勝手なプレイはやめてくれよ」
同じ準備室内には同じチームであるサンゴも当然いて、ユウキとフウラからそっぽを向き、無言で座っていた。
「やだね。誰がてめえの言うこと聞くかよ」
「あんなにデスしてたら勝てるもんも勝てないだろ。お前だって勝ちに来てるんじゃないのか」
「その分キルも取ってんだろ。大人しく立ち回るなんて退屈だね」
どうしても言うことを聞く来がないサンゴを見て、ユウキはまたフウラと一緒に動いてサンゴと連携するのは諦めるしかないと思った。プライムシューターよりももっとサポート寄りの武器を持つことも考える。
「フウラちゃんはどう思う?次の試合はこうしてほしいとかこうしたいとかある?」
「そうですね……。やっぱり前線で上手く生き残って維持したり敵陣を塗ったりする人は欲しいので私もさっきよりは前に出ようと思います。ナワバリの前線は立ち回りが難しいと思うので皆でカバーしましょう」
「うん。そうだね」
「はい……よっぽど実力がある人じゃないと1人で前線は無理だと思います。皆初めてやるステージでしょうし、そんなことできる人なんて……」
「俺ができるわっ。舐めてんのか」
サンゴが急に立ち上がり、やっとこちらを向いた。
「私、そんなつもりじゃ……」
「次の試合見とけよ。完璧な前線ってのを見せてやる」
準備室を出て行くサンゴ……。ユウキはそれを呆気に取られて見ていた。
こいつ……意外と扱いやすい奴だったのかもしれない……。
そこからの試合、ユウキ達3人のチームは他のチームを圧倒した。元々実力的にはB帯離れした3人だったのでちゃんとした立ち回りをすれば、序盤から終盤までずっと1位をキープできた。
四つ巴のガチナワバリでは2位でもウデマエが上昇するがほとんどの試合を1位で終えることができた。終盤は他チームが結束してユウキチームを狙うこともあったが、それでも3位や4位にはならなかった。
サンゴは一試合目とは別人のような立ち回りを見せて、自陣塗りこそしなかったが、見せつけるようにひたすら前線で潜伏や良いタイミングでの裏取りをした。実際に活躍したときは「どうだ」と言って、後ろのユウキとフウラにドヤ顔を見せつけた。
ユウキもせっかくの初体験のルールとステージを楽しむ余裕ができたので、サンゴの活躍は褒めたし、フウラも緊張が解けてきてさらに活躍を見せた。
「最後のボムラッシュはやっぱり強いですね……。毎回この動きができる人がS帯やプロになれるんだろうなあ」
「俺は元S帯だぞ。次からは毎回やってやるよ」
「私、サンゴさんに言ったんじゃ……」
もしかするとわざと狙って言ってるんじゃないかと思えるようなやり取りもあって、フウラが今日のMVPだとユウキは思った。
聞くところによると、フウラはガチマッチに潜るのが怖くて最近までずっとナワバリバトルしかやってこなかったらしい。そういう訳もあってナワバリの立ち回りはユウキにも学べるところが多いほどだった。
ガチマッチ終了後のロビーで自分がA-に上がっていることを確認したユウキは小さくガッツポーズをして喜んだ。これでようやくお金を稼げるようになれるしプロのスカウトにもアピールできる。
C帯からA帯への最速記録ではあったがユウキにとっては短いようで長く感じる戦いだった。外にでると朝に降っていた雨はあがっていて、雲間から太陽の光が見えた。ちょうどその直射日光に当たる場所に立ったユウキはここからが始まりだと眩しさを見上げる……。
「――エンペリー・エンペラーズ 7位指名 ウデマエA- ユウキ」
その次の日、テレビで選手指名市場セリを見ていたユウキは飲んでいたお茶を吹き出した。