ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す 作:木岡(もくおか)
3vs3vs3vs3のナワバリバトルが終わって、インクで汚れた服を着替えていたユウキはウデマエがA-に上がったことを確信して浮ついていた。ボーイ更衣室で周りに誰もいなければ鼻歌を口ずさんでいたところだ。
「おい」
着替えの途中で肩を叩かれる。後ろには同じチームで戦ったサンゴが立っていて、顔を見たと同時に手を掴まれる。
「じゃあな」
強引に小さく折りたたまれた紙を渡されて、それが終わるとすぐにサンゴは出て行った。まだバトルの興奮が冷めきらずに賑やかな更衣室を誰よりも早く。
紙には一言だけ書かれていた……「この前は悪かった」。
今日のバトルで彼の何かが変わり始めたんだと思った。悪くない方向に。ユウキはきっとそれはB帯で試合をしたからだと解釈していた。たまに自分のレベルよりも低い場所でバトルをすることで気付けることもある。
けれど、笑ってはいなかった。まだ何かを抱えているような、ユウキとは違って浮かない表情をしていた……。
居候するアユ子の家に帰ってきたユウキはA帯に上がったことを同居する家族の皆に伝えた。
「もうA帯にいったんか。そりゃ凄い」
「ユウキ兄ちゃんすごーい」
コイ吉お爺さんやミミちゃんギギ君は拍手をして喜んでくれた。
「今夜はご馳走にしないとねえ」
ナマ子お婆さんも張り切って夕食を作ってくれた。ユウキの大好物である特製のシーフードシチュー。1人1尾ずつ伊勢海老みたいに大きなサイズのエビフライが入っているのが特徴だ。
アユ子にも報告した。今日も部屋の中にいたので、そっとノックして部屋の中に入った。
「おめでとう」
アユ子は笑ってそう言ってくれた。以前よりは元気がないけれど、抜け殻のようになってしまっているということはない。ユウキも笑顔を見ると落ち着いた。
「私、まだ諦めてないから……少し休憩してるだけ。また……頑張るから」
2人きりの部屋の中で、アユ子はユウキに教えてくれた。アユ子の女の子らしい部屋に飾られたスプラチャージャーを見ながら、言い聞かせるように言っていた。まだバトルに復帰するとはコイ吉お爺さんにすら話していなかったので素直に嬉しかった。
けれど、不安もあった。
「本当?良かったよ。……ゆっくりでいいから。手伝えることがあれば何でも言ってね」
再びバトルをする日にチャージャー恐怖症が発症する可能性を思うと、「頑張って」とは言えなかった。また付けるようになった紺色のリボンを見て、ユウキはこの先どう転んでもアユ子を支えることだけはもう一度誓った……。
それからほぼ丸1日が経って、夕方にリビングのテレビで全国放送されているセリを見ていた。番組は終盤、目玉の各チーム1位指名や2位指名から競争の少ない下位指名を見ていったユウキは来年じゃまだ早いかもしれないが、再来年には自分もそこへ名を連ねたいという気持ちを抱いていた。
隣にはコイ吉お爺さんとナマ子お婆さんもいて、コイ吉お爺さんは贔屓のキングダムズが良い選手を獲得してホクホクしていた。
「――エンペリー・エンペラーズ 7位指名 ウデマエA- ユウキ」
もう、そろそろ終わりかと思えたセリの放送。ユウキが抱いた気持ちが冷めないうちに体を動かしてくることに決めて、お茶を飲み干そうとすると予想外の名前がテレビから聞こえる。
「ええ!」
隣のお爺さんお婆さんも驚いて声を挙げた。ユウキは開いた口が塞がらない。
ユウキ……?これって……俺か?俺なのか?
「では、7位指名なので500万円からスタートします」
テレビの画面内では、セリのルールに則ってユウキの競り合いが始まった。起こっていることが信じられないままに司会が進行する。
「はい。ブレーブス600万円――」
「はい。エンペラーズ1200万円――」
伝統があるチームカラーの鉢巻きを頭に巻いたスーツ姿のイカやタコが会場には座っていた。ユウキの指名に手を挙げたのはブレーブスとエンペラーズだけだった。エンペラーズが2倍の値段でブレーブスに応戦すると声は止んだ。
「……もうありませんか?……ではエンペラーズ1200万で決定とします」
困ったユウキはコイ吉お爺さんのほうを見た。しかし、コイ吉お爺さんもテレビを見て目を丸くしている。
「これって……」
「前代未聞じゃよ」
「え」
「A帯のプレーヤーがセリで指名されるのは何も珍しいことじゃない。今日も、何人かA帯の子も指名されたじゃろう。年齢やA帯での好成績を見て将来性を評価しているんじゃ。けど、昨日A帯に上がったばかりのまだ一度もA帯でガチマッチをしていないプレーヤーを指名するなんて聞いたことが無い」
ユウキも自分なりにセリについて調べてはいたが、ユウキの知る限りでも聞いたことが無かった。まさか、A-の自分が指名されるとは……。
「これって……やっぱ僕なんですかね」
「まず、間違いなくそうじゃろう。他にA-で指名される子なんて最速でA-になった君以外想像がつかん」
セリの放送が終わると、電話は鳴った。
「初めまして。エンペリーエンペラーズの監督補佐をしているジンドウです……」
翌日の新聞には1位指名と同じくらいの大きさでA-の新人がプロに指名されたことが載っていた。ネットニュースやSNSも盛り上がり、エンペラーズの監督コメントも話題を呼んだ。
「知っていますか?彼は神の目を持っているんですよ」
プロのXリーグはプレーオフに入り、それが終われば年に一度のフェスが始まる。季節は秋、この世界では最もバトルが盛り上がる季節だ。
ここから後書きです。
閲覧と評価の感謝と、今後の投稿頻度についてお話しておこうと思います。
興味の無い方はスクロールしてください。
まず、昨日からこのサイトに投稿を始めてから1日でたくさんの閲覧やお気に入りをもらえてめちゃくちゃ喜んでます。本当に皆さんありがとうございます!
正直なところこんなに読んで頂けると思っていなかったので驚きもしてます。感想でお褒めの言葉も頂けて創作のモチベも上がりました。また何か思うところがありましたら気軽にコメント書き込んでいってください。
この作品の投稿頻度ですが、昨日今日はかなりのペースで投稿していますけど明日からは毎日1話を「18時4分」に投稿していくことに決めました。ロクヨンかイヤヨって覚えてください。
これは2月中の話で、その分は既に書けてます。3月以降は書けたらその都度の投稿になる予定でどのくらいの頻度かは今のところは分かりません。なるべく頑張ります。