ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す   作:木岡(もくおか)

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第3話 アユ子の家族

「記憶喪失?」

 

「うん……何でここにいるのか分からないんだ」

 

「じゃあ、何か思い出すまで家にいなよ」

 

「え、いいの?――いや、いいんですか?」

 

「うん。いいよ」

 

 とりあえず、自分はどう家に帰ればいいのか分からないとありのまま伝えた……。そうすれば病院にでも連れていかれるかと思ったが、アユ子はもの凄く軽いノリで身分も分からないユウキを家に置くことを決めた。

 

「立てる?家族に紹介するよ――」

 

 アユ子に手を引かれるまま部屋を出て階段を降りると――インクリングが暮らしている家のリビングに辿り着く。特に珍しいことはないフローリングのリビングだった。

 

「あ、お兄ちゃん起きたのー」

 

 足に抱きついてくる小さな体が2つ。この家の住人であろう子供のインクリング達がユウキを見てはしゃいでいる。ボーイとガールが一人ずつ、どちらも元気が良さそうだ。

 

「お爺ちゃんお婆ちゃん。この子家にしばらく泊まることになったから」

 

「そうかい。ええよええよ。好きなだけいなさい」

 

「うん。ありがとう」

 

 奥にある机の横には背中が丸くなったイカ達が座っていた。低い声で返事をしたイカには立派な白い髭が生えていて、お婆さんらしいイカは両手でしわしわと湯気が出る湯呑みをすすっている。

 

 子どものインクリングに……老人のインクリング……?

 

「名前は何というのかね?」

 

「……ユウキって言います。初めまして。お世話になります」

 

 ユウキは挨拶が遅れていたことを不躾な態度だったと思い、姿勢を正してお辞儀をしながら言った。

 

「わしはコイ吉、こっちはナマ子お婆ちゃんじゃ。固くならんでええよ」

 

 コイ吉お爺さんとナマ子お婆さん。そう名乗った2人は優しそうにユウキに微笑んでくれた。

 

「お兄ちゃん。あそぼーよー」

 

「いてて」

 

「こら。怪我してるんだから引っ張らないの。ミミ!ギギ!」

 

 アユ子が子供たちを2人まとめて捕まえる。抱っこされた2人は怒られてもまだユウキの包帯に手を伸ばしていた。

 

「お腹空いてるでしょ?昼ごはんにしましょう」

 

「わーい。お昼ご飯――」

 

 

 ユウキがイスに座らされると、あれよあれよという間にアユ子の家族が総出で昼食を用意してくれた。サザエのつぼ焼きのような物に、魚介類がたっぷり入ったパエリアのようなご飯――隣に座った子ども達はよだれをすすり、今すぐ食べたそうだった。

 

「いただきまーす」

 

 自分という異端な存在がいるというのに、一切気にせず平和に始まるお昼ご飯。ユウキは戸惑いつつも食事に手をつけた。

 

「あ、そういえば。この子記憶喪失だから家で困ってたら助けてあげてね」

 

 アユ子が食べ物を口に入れながらさらっと重いことを家族に話した――。

 

「そうなんか。そりゃ大変じゃ。まあ好きなだけここに居ったらええわい」

 

「お兄ちゃん。これおいしいよ。ご飯食べたら遊んでね。」

 

 ――か、軽いっ。そして――もの凄く優しいっ。さっきからずっと。

 

 アユ子だけでなく家族全員でこんなノリなのか……。見た目通りにイメージ通りで、インクリング達はのほほんとキャラクターチックな性格だった。

 

 ユウキはテーマパークにでも来たような気分で昼食を頂きながら見える景色を堪能した。イカ達の生活は一体どんなものだろうかと現実世界で妄想を広げたことがあったが、家の中の景色は何というか――普通だった。住人が違うだけで日本のどこにでもあるような住居の景色。一緒に食卓を囲うイカ達はかわいらしくて、もう既に大好きだった……。

 

 

「――この部屋をあなたの部屋として使っていいから」

 

 昼食を終えると、アユ子に案内された部屋でユウキはイスに座っていた。さっき眠りから覚めたアユ子の部屋らしい場所の隣の部屋だ。

 

 窓の向こうには現実世界と変わらない青空があって、雲があり太陽がある……。

 

 しかし、まあ――とりあえず生きてはいけそうだけど、これから俺はどうなるんだろうか。まだ、異世界に来たという現実を深く考えられなくて……ユウキは他人事のように思った。

 

 一階からは洗い物をしている何でもない日常の音が聞こえてきていて――そして、それが止まったと思ったら、もの凄い勢いで階段を上る音が近づいてくる。部屋のドアが開いて揺れる紺色のリボン。

 

「ねえ!ユウキ君!今から練習するんだけど一緒に体動かさない?うち試し撃ち場あるんだ」

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