ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す   作:木岡(もくおか)

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第38話 2人の作戦

 敵の武器編成はスプラチャージャーベッチュー、パラシェルターソレーラ、デュアルスイーパー、わかばシューター。メンバー全員が今までの相手とは比べ物にならないくらいの強者だった。

 

 特に厄介なのが評判通りの凄腕チャージャー使いのイカボーイ。一見ガールにも見える長髪と中性的な顔立ち。

 

 そのボーイは一度中央の高台に上がってからずっとそこに居座り、ユウキ達白チームを鋭い視線で見下ろしていた。弾を当てても外しても表情を変えず、淡々と相手チームに狙いを定め続ける。

 

 あの手この手でそこを崩そうにも上手くいかなかった。どれも返り討ちにされる。ボムを投げてどかそうにも構えた瞬間に射抜かれたり、冷静に躱された。カジキと連携を取ったりもしてみたけれど、どうにもこうにも。

 

 それというのも相手のチャージャー以外の3人がこれでもかというほどチャージャーを守ることに徹底していた。それぞれがいつでもチャージャーをカバーできる位置にいて、無理に前には出てこずじわじわとこちらの陣地を塗り広げる。

 

 インクアーマーやマルチミサイルもこちらのスペシャルに合わせてチャージャーを守るために使われた。

 

 1度、キルできそうな距離まで近づいた時に敵の1人がチャージャーのすぐ隣に潜伏していたのも面を食らった。

 

 今回のフェスマッチのナワバリも試合時間は5分間。もう既に3分が経過している……。その間、白チームは初動から1度も打開できずにいた。常にピンチの状態で一瞬の人数有利を作ることすらできていない。

 

「カジキ。もう一度さっきの作戦やってみよう」

 

「分かった。今度はナイスダマでやる」

 

 リスポーンの前の広場で短い会話をしてからカジキと別れる。試合後半に差し掛かり、もう後がないユウキ達はとにかく相手のチャージャーを仕留める作戦に出る。

 

 カジキは左側、ユウキは右側からステージの中央を目指す。ユウキは体を出さずに、オレンジの海の中を少ない白色のインクを辿って進んだ。泳ぐ際はインクの飛沫を立てずにゆっくりと。

 

 この試合中、先ほども1度やった囮作戦。シンプルだがカジキの対面の強さを生かしてヘイトを買い、チャージャーが1人浮いて油断したところをユウキがキルを狙う。

 

 ある程度の距離まで静かに近づき、インクの中から覗く高台にはやはりまだ敵のチャージャーイカボーイがいた。スコープ越しに今も敵を探している。

 

 ユウキが良い位置まで来たとき、丁度良いナイスなタイミングでカジキが高台から降りるのも見えた。心の中でカジキを褒める……ユウキも機を逃さぬように集中する。

 

 カジキは隠れようとはせず、プライムシューターベッチューで高台への道を塗って進んだ。いや、進もうとした。あれはフェイク。進み切らずにチャージャーの攻撃が届かない距離で他の相手と撃ち合いを始める。

 

 敵のチャージャーもすぐに反応した。カジキのほうへチャージャーの先を向ける。焦らず、確実に当てようとする構えで……。

 

 そうすると、遠方のカジキはすぐにナイスダマを発動した。ユウキから見れば少し早いと思ったが、きっとここからでは分からない何かの危機を察したんだと思う。

 

 この世界では声に出して「ナイス」と言えば、味方にパワーを送ることができる。しかし今回、ユウキは黙ったままそれを見守った。

 

 予定ではナイスダマを高台に投げ入れるはず……ユウキはその瞬間を待つ。けれど、運が悪いのか読まれていたのか、丁度ナイスダマを発動した瞬間に敵のデュアルのマルチミサイルがカジキに向かって飛んでいた――。

 

 無情にも……他の敵の攻撃もあってナイスダマを投げる前にカジキは空中でデスした……。

 

 しかし、問題ない。

 

 ユウキはその間に敵の高台の裏まで侵入することに成功していた。最小限の塗りで飛ぶように素早く。

 

 高台へ白い道を作って、泳ぎ上る。ここしかない……カジキもデスしてしまった。ここで決めなければ万事休すの状態になりかねない。

 

 どうせまたこの辺にいるだろう。経験上、先ほどと全く同じ場所にはいない……おそらく、ここ。

 

 ユウキはまずチャージャーの背中を狙わず、チャージャーの近くにまた別の敵が潜伏していることを予想して決め打ちした。思惑通り誰もいないオレンジインクにスシコラの弾が音を立てて吸い込まれる。

 

 この弾を当てる瞬間がたまらなく気分を高揚させる。

 

 まだ、チャージャーもこちらを振り向いていない。それどころかチャージャーを構えっぱなしでこちらに気づいてもいない。

 

 取ったっ。勝ったと思った……しかしその瞬間ぶっ飛んだのはユウキの体のほうだった。白色ではなくオレンジ色のインクが弾ける。半分以上白だった高台は再びオレンジ一色になった。

 

 一瞬何が起こったのか分からなかった。しかしリスポーンに戻る頃には分かる。

 

 ドラッグショット……ゲームじゃないからそうは言わないのかもしれない。弾を撃つその瞬間以外は別の方向を向いていて、撃つ瞬間に即座に向きを変えて敵を射抜く。

 

 スーパープレーだ。完全にやられた……。プロはここまで強いか。

 

 そのプレーでユウキは正直なところ負けを悟ってしまった……相手のほうが実力が上だ……ここから勝てるチャンスなんてあるだろうか……。

 

 さらに加えて、この試合6度目のデスから復帰したユウキが見たのはアユ子の姿だった。自陣高台の深い場所でチャージャーを構えながらもチャージャーの先は弱弱しく斜め下を向いていた。

 

 アユ子の表情は先日のナワバリのラストのように眠たそうで、それでいて頬には汗がつたっている。

 

「アユ子ちゃんっ」

 

 ユウキは敵の位置や塗り状況なんて忘れてアユ子に向かって走り出した。

 

 この試合もう負けてもいい。負けてもいいからアユ子の身に何も起きないでほしい。

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