ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す 作:木岡(もくおか)
「おう。我が息子よ」
「時間ないはずだろ。早く行こうぜ」
「親に向かってなんだその態度は。まあお前に言われなくても行くさ。たしかにこんな奴らと話している暇は無いのでね」
サンゴはジンドウの肩に手を置いたまま、イカスツリーの奥を指差した。こちらは見えているはずなのに、ユウキとは目を合わせず立ち去ろうとした。
「じゃあねユウキ君。せいぜい頑張りたまえよ。そのアマチュアチームで」
ジンドウは眼鏡をずらして、ユウキを睨みつけてから立ち去って行った。
サンゴもそのまま、久しぶりに顔を合わせたのに会話はせず立ち去ろうとした。しかし、最後に……
「悪かったな……」
そう一言だけのこして、ジンドウの後に付いて行った。誰に対して、何のことを言ったのかは分からないが、そう一言だけ。
嫌な奴であり、なんとなくほっとけない奴でもあるけど、ユウキもサンゴと話そうとはしなかった。黙ったままそれを見送る。
あの2人が親子か……そう言われてみれば目元なんかはそっくりだと思う。鋭くて、悪く言えば目つきが悪い目。似てるとは思うけど、一見したところ親子という仲には2人は見えなかった。
不穏な空気だけがその場に残った……。
しかし、次の瞬間ジンドウが床に足をつまずかせて転んだ。周りからひそひそと笑い声が聞こえる。ジンドウとサンゴは2人で恥ずかしそうにイカスツリーの奥に消えた。
結局は彼らもこの世界の住人なんだなとユウキは思った。
「じゃあ、とりあえずこんな感じでいっか」
「うん。だれか良い人来るといいね」
気を取り直し、チームメンバーの募集を書き終えたユウキ達はナワバリバトルをする為に受付に向かった。本当は早くガチマッチに挑戦したいけど、最後の1人が決まるまでは我慢するしかない。
ユウキもガチマッチのつもりで真剣にナワバリバトルに挑んだ。
今日もスシコラを手に持ちイカやタコ達とのバトルに励む。インクを飛ばし、ボムを投げ、インクでドロドロになりながら撃ち合う――。
ユウキ達はその日のナワバリも全戦全勝だった。前から野良のナワバリで3人一緒のチームなら負ける気がしなかったが、アユ子が覚醒してからはより敵チームを圧倒できた。
チャージャー恐怖症を克服したアユ子の実力は想像以上だ。前とは打って変わって守りではなく攻めの動き。なんならユウキもカジキもいらないんじゃないかというほどの強さを見せていた。今やこのチームのエースである。
自分達ならきっとA帯でもS帯でも勝ち上がっていける。そんな確かな充実感を得てその日のナワバリは終わった。
「ふー疲れた」
「おつかれ」
「今日も皆良い調子だったね。フェスの日から未だ負けなし!」
夕日が眩しい街の中へ、イカスツリーを出た3人はスポーツドリンクを手に帰路に就いた。
「明日も集まる?」
「俺はいけるけど、ナワバリはもういい気がするな。やっぱガチマッチに潜りたい」
「確かに、ナワバリじゃもう物足りないかもね。アユ子ちゃんも調子よすぎだし、向かうとこ敵なしって感じ」
そう言って褒めると、アユ子は手に持っているチャージャーをぎゅっと抱きしめて満面の笑みを見せた。
「でしょ!もう私何も怖くないよ。バトル前にジンドウさんに嫌なこと言われちゃったけど、私、プレーで見返してやるから。今の私ならできる」
「そうだな。俺はエンペラーズの偉い人があんな奴だと思わなかったぜ。来年絶対1位指名されてやろうな」
ジンドウの件でユウキ達には火が付いていた。必ず1位指名されると燃えている。
「その為にもさ、俺明日からはチームメンバーが見つかるまで、探すのに集中すべきだと思うんだ。待つだけじゃなく、チームに入りたいって奴の募集見たり、1人でガチマ潜ってる奴に声かけてみようぜ」
カジキが続けて言った。そして、ユウキはそれを聞いてこのタイミングだと考えていたことを口に出す。
「それなんだけどさ。俺1人声をかけてみたい子がいるんだ」