ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す 作:木岡(もくおか)
「え?声をかけたい子?」
「うん。1人いるんだ。今日もナワバリバトルやってて……俺たちのチームに足りてないものは何だろうって考えてたんだけどさ。それはきっと、募集するときにも話したけど塗りとサポート。キルは足りてると思うんだ」
「うん」
「それで、それが上手くこなせるんじゃないかと思う人が1人いる」
「誰だ?ユウキの知り合いっていったら大体俺達も知ってる人じゃないのか」
「違うんだ。たぶんカジキは知らない。俺が1回ガチマで一緒のチームになったていうだけの仲なんだけど。だから、声かけてもどういう答えが返ってくるか分からない」
ユウキはなんとなく恥ずかしくって名前まで出すのをためらった。バトル中、そのイカを最後の1人に当てはめてシュミレーションするとすごくしっくりきた。
だから、できればチームに入ってほしいけど、声にも出したが誘っても入ってくれるとは思えない。たった1回会っただけだ。
「で、誰なの?」
「フウラちゃんっていうんだけどさ。わかば使ってて。すごく上手だったんだ。一緒のチームになった時のガチマはその子のおかげで勝てたと思うくらい」
「へーユウキがそんなに評価する奴か」
「うん。ボムの使い方とか学べるものが多かったし、塗りもサポートスキルも文句なかった。たぶん俺たちに足りないものを持ってる……でも、どうだろう連絡も取ったことないし」
「いいじゃん。試しに誘ってみれば。ダメだったらダメだったらだし。じゃあ俺こっちだから。明日結果を聞かせてくれ」
分かれ道でカジキとは小さく手を振って別れた。
居候するいつものアユ子家に帰ってきたユウキはその日の夜、自室でスマホとにらめっこしていた。メッセージアプリをタップして開いて、開いたまま固まっていた。
働いているのは指ではなく頭だった。誘ってみたい子がいるとは言ったとはいえ、いきなり初めてのメッセージで「チームに入らないか?」と送るのも違う気がする。別に違わないけど、急にそんなメッセージが送られてきたらどう思うだろうか。
プロを目指している以上、こちらが求めるものは必然的に多くなるし、お願いされたら断れないような子だったから。
それよりもまず、本当に彼女で良いんだろうか。今日募集を開始してまだ誰も来ていないのに、自分の感覚だけで誘うのもなあ……ユウキは優柔不断な部分が発動していた。
思い立ったのはスマホを握ったまま20分が立とうという時だった。
そうだっ。もっとちゃんと考えてから誘おう。この世界のバトルについてもっと勉強してから。
深く考える前に誘ってみればいいと分かっていながらも、もう少し自分の決断に自信が欲しかった。いつかはやらなければと思っていたことでもある。
自分が目指すプロという次元のバトルについて、そしてずっと気になっていた「バトルの神様」と呼ばれ自分とも重ねられた男について。調べよう。
「アユ子ちゃん。俺さこの世界のバトルの歴史みたいなものが詳しく知りたいんだ」
「じゃあパソコン使う?」
そうと決めたユウキはアユ子の部屋に行った。アユ子はチャージャーの手入れをしている時だった。
「Xリーグの公式サイトでプロチームの成績とは使用武器のデータが見れるよ。それとも、歴史っていうなら道場に行く?昔からの色んな資料が保存されてるよ」
「ほんと?じゃあ……どっちも」
「よしきた。じゃあまた先生が色々教えてあげるよ」
「つーか、道場ってそんな軽いノリで行けるところだったんだ」
「そりゃそうだよ。私の両親の……いずれは私の道場なんだから」
アユ子はわざわざ眼鏡を取り出して頭に乗せてから、ユウキを家の隣の道場に案内した。柵を挟んですぐ隣、アユ子家より大きな敷地を構えた道場。その中に入るのはユウキにとっては初めてだった。
和風な外観からは全く想像できない近代的な作り、道場の扉の奥にはそんな景色が広がった。
そこで、ユウキはいくつか驚きの事実を目にする。