ウデマエXの俺はスプラの世界に転生してもウデマエXを目指す   作:木岡(もくおか)

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第45話 強者の足跡

 初めて入る道場には独特な空気があった。入り口から伸びる廊下はビルの廊下のようで、飾り気がない。けれどそれでいて吸い込む空気が外よりも暖かく新鮮な感じがする。空気が籠っていたからか。

 

 匂いも無臭……だけど、その奥から微かにインクの匂いがした……。

 

「じゃーん。ここが道場のメインルームです」

 

「うわあ。すげえ」

 

 真っ直ぐに廊下を進んで辿り着いた大部屋には見渡す限りのスペースとイカの形のバルーンが所々に散りばめられていた。

 

「ここは、試し撃ち場?」

 

「そう。家の隣にあるのよりも豪華でしょ。ここで昔はたくさんのバトル大好きなイカやタコが練習してたんだ。お父さんとお母さんの指導の下で」

 

「へー。本当にすごいや。こんなスポンジやプロペラまであるんだ」

 

 その体育館のような広さの試し撃ち場にはステージギミックも再現されていた。それを見ているとユウキは体を動かしたくなってくるような興奮を覚えた。

 

「1人や2人で使うには広すぎるでしょ。片付けも大変だし。だから今は誰も使ってないんだ。もったいないと思わない?」

 

「うん。そうだね」

 

「だから私はまたここをいっぱいにしたいんだ。両親の為にも」

 

「これから一緒に頑張ろう。アユ子ちゃんならできるよ」

 

 そこでアユ子はもじもじと数歩歩いた。そしてユウキに振り返る。

 

「実は……ユウキ君に隠れてチャージャー練習する為にこの前まで私1人で使ってたんだけどね」

 

「そうなんだ。ここで練習してたのか。俺のことなんて気にしないで良かったのに」

 

「うん。でも、これからはもうそんなことしないよ……あ、バトルのお勉強だっけ。それならこっちの部屋かな」

 

 続いてアユ子が案内した道場にある一室は倉庫のような部屋だった。ドアを開いてすぐに大きな棚が置かれていた。

 

「ここが色んな本とか置いてる部屋。たぶんここには為になるものがあるはず……」

 

「ここもすごいな。確かに面白そうなものがありそう。見ていっていい?」

 

「うん。どうぞごゆっくり」

 

 アユ子が似合わない眼鏡をくいっとさせてドヤ顔をした。

 

 使い古したであろう武器に……本棚いっぱいに入っている数々の本……そして、まず最初に目に付いたのは金銀のトロフィーやメダルが飾られた棚だった。

 

 興味を持ったユウキは少し埃っぽい倉庫の中をその輝く棚に向かって進んだ。おそらくプロだったアユ子の両親が現役時代に手にしたものだろう。アユ子家の中にもそういうトロフィーやメダルが飾られた棚があるがここにもまだこんなにあったとは。

 

 第〇回××カップ優勝……第△回□□トーナメント準優勝……。感心してユウキは眺めた。そして、思いもよらなかった名前を目にして驚く。

 

「これって……コイ吉お爺さん!?」

 

「そうだよ。どうしたの」

 

「あれ?え?」

 

「ん?なにかおかしなところあった?」

 

「いや……そっか。そうだったんだ。コイ吉お爺さんも昔はプロだったのか」

 

 ユウキはそれに気づいて頭を働かせるとハッとした。なぜか今まで失念していたというか、思ってもみなかった。アユ子の家は代々プロの家系だと聞いたことがあった。だとしたら、アユ子のお爺ちゃんもそうであるはずじゃないか。

 

「あれ?ユウキ君ってもしかして聞いたことなかったの」

 

「うん。今ちょっと驚いてる」

 

「そうだったの。そこの棚のは全部お爺ちゃんのだよ」

 

 思えばバトルについて詳しいし、おっとりしていながら時々鋭いこともある。確かに気づいてみればそりゃそうだという感じだが、ユウキは驚きで開いた口が塞がっていなかった。

 

 目の前の棚に飾られたトロフィーやメダルは金や銀ばかり、しかもかなりの数だ。コイ吉お爺さんは現役時代一体どれほどの選手だったのだ……。

 

「お爺ちゃん昔はすごかったんだよ。私も現役時代を直接見たことはないけど、今バトルの神様って呼ばれてるミコト様にも負けず劣らずだったんだから」

 

「え。マジで」

 

「うん。でもまあ直接戦うと負けちゃってたらしいんだけどね。銀メダルが多いでしょ。神様は生涯無敗だったから」

 

「でもすごいよ。全く知らなかった」

 

「あ、神様と言えば神様がまとめられた本を見つけたよ。ほら」

 

「本当だ。ありがとう」

 

 ユウキはアユ子が持ってきてくれた分厚い本を受け取った。開かれたページで優勝トロフィーを掲げながら笑う神様がいた。

 

 そして、ユウキはそこでさらに驚く。神様が着ているシャツに「Splatoon」という文字があった。

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